胃と腸 41巻4号 (2006年4月)

特集 消化管内視鏡治療2006

序説

消化管内視鏡治療 幕内 博康
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はじめに

 腫瘍や狭窄,出血などの消化管病変に対する内視鏡治療の進歩・発展には目を見張るものがある.治療法や手技の発展にはそれを支える器機・器具の進歩がある.およそ先人の考えなかった治療はないように思われるが,新しい器機の開発により蘇ること,新しい芽を出すことも少なくない.

 高齢化社会の到来は,低侵襲治療への欲求を加速し,外科的治療から内視鏡治療へとの流れは勢いを増すばかりである.内視鏡治療に対する患者の要望とともに,医師の関心にも極めて大きなものがある.学会で会場に溢れるばかりの聴衆を集めた内視鏡治療を考えてみると,内視鏡的止血術,大腸ポリペクトミー,内視鏡的硬化療法,早期胃癌に対するstrip biopsyに始まり,食道・大腸へと広がった内視鏡的粘膜切除術(endoscopic mucosal resection ; EMR)などが挙げられる.最近は,内視鏡的粘膜下層剝離術(endoscopic submucosal dissection ; ESD)が花盛りであり,雑誌の特集や学会の主題,セミナー等盛況を呈している.

 本誌は各種の内視鏡治療のすべてが網羅されている.初心者はもちろんのこと,ベテランの医師も本誌を通読することにより,種々の手技の使い分け,適応の問題など今一度考えていただければ幸いである.それが,より良い内視鏡治療,新しい内視鏡治療法への発想へとつながることを希望する.

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“治療内視鏡を施行するにたる内視鏡医” には治療内視鏡技術だけでなく,治療内視鏡遂行のための各ステップを全うできる能力が求められる.すなわち,内視鏡技量とともに,全身状態や合併疾患の把握,治療対象疾患の正確な診断,適正な内視鏡治療の適応判断や informed consent,周術期や術後経過管理能力等が必要となる.また,“治療内視鏡を施行するにたる内視鏡医” には,相応の技術の習得や研修,資格が社会的に強く要求されており,その大前提として医師としての倫理性,社会性,遵法性が求められている.このため “治療内視鏡を施行するにたる内視鏡医” の育成にはこれまでも増して社会的に認知しうるトレーニングシステムやプログラムが重要となっている.

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偶発症発生頻度が少なくない消化管内視鏡治療を行う場合には,常にリスクマネージメントのありかたを検討しておかなければならない.インフォームド・コンセントによって,その必要性と生じる危険性を具体的に患者側に説明して理解を得ておくこと,さらに術前に危険因子についての状況を把握し,偶発症対策を講じておくことは内視鏡治療時の常識である.日本消化器内視鏡学会の各種委員会から安全な内視鏡診療を推進するための指針が提唱されている.内視鏡診療のありかたの基本理念を盛り込んだうえで,各病院の事情を考慮した最もふさわしいマニュアルが構築されることが期待される.

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近年,医療技術の進歩は各領域において目覚しい.特に内視鏡検査においても同様である.精密かつ複雑な内視鏡を用いた検査,治療等などが行われる一方,患者の苦痛を軽減するために,鎮静薬,麻酔薬を使用する sedation の必要性も増加してきている.内視鏡検査を学んだ麻酔医の立場より,内視鏡検査時に用いられる代表的鎮静薬(midazolam・propofol・flunitrazepam)と,これからの使用が期待される鎮静薬(dexmedetomidine hydrochloride)の紹介およびそれらの薬物の安全な使用方法について解説する.

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近年,消化器内視鏡件数は増加傾向にあるが,内視鏡検査や治療に伴う偶発症の発生件数や死亡数の頻度は必ずしも減少せず,医事紛争は増加している.偶発症は “いつ” 起きるかはわからないが,“なに” が起こりうるかはそれぞれの手技によってあらかじめわかっている.したがって起こりうる偶発症の内容を熟知して極力その防止に努めるとともに,万一偶発症が発生した場合には迅速で的確な対応が必要である.偶発症の発見の遅れは重症化の要因になる.対策としてはモニタリング機器や救急カートを内視鏡室に常備し,出血や穿孔に対する内視鏡処置具を常に用意しておくことが重要である.また,インフォームド・コンセントの徹底やクリニカルパスの作成を積極的に行うことも大切である.

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切除断端判定も含めた的確な病理診断を行うためには,内視鏡切除標本の適切な取り扱いが必須である.取り扱い過程は,①標本の伸展,②ホルマリン固定,③肉眼観察,④切り出し線の決定(割入れ),からなるが,原則的には内視鏡切除施行医自身が行うことが望ましい.標本伸展は,切除断端の明確化と病変の内視鏡像が再現された病理標本を作製するために必要である.肉眼観察には色素撒布や実体顕微鏡観察が有用である.割入れ前と後の写真を撮影し,病理診断依頼書に添付する.それを元に病変のマッピングを行うことで,正確な切除断端判定と内視鏡診断精度の検証が可能になり,内視鏡診断精度の向上にもつながる.

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内視鏡診断技術の進歩により,これまで発見が困難であった中・下咽頭の上皮内癌が発見されるようになった.これまで,中・下咽頭癌のほとんどは自覚症状を伴って進行癌で発見されていたため,侵襲の大きな外科的切除が行われていたが,上皮内癌の発見が可能になったことより消化管同様の EMR が応用されつつある.しかし,この分野はまだ産声を上げたばかりで,予後を考慮したいわゆる “早期の癌” の定義や治療方針もなく,長期予後も不明である.一方,低侵襲治療の観点からは臓器温存と機能温存が可能であり極めて画期的な進歩であることに異論はないだろう.今後,耳鼻咽喉科医や放射線治療医などの様々な分野との協調をはかり,様々な課題を解決しながら成熟させていく必要がある.

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1988年,早期食道癌に対する内視鏡的治療法として “2チャンネル法” を開発した.2チャンネル法 は,把持鉗子で病巣部を把持しながら切除するため,設定した範囲を正確に,しかも必要最小限の組織欠損にて治療可能な手技法である.1回に切除できる粘膜の大きさが25mm程度と限られるため,これより大きい病変の切除は分割切除となる.把持鉗子で把持したまま切除標本を回収するため,病変の方向性が判定しやすく,分割切除の場合でも再構築が可能であるが,多分割切除例では局所再発を起こす可能性が高いため,最低でも治療後2年目までは,粘膜切除部を観察することが必要である.2チャンネル法は,食道のいずれの壁に病変が存在しても治療可能であるが,伸展にて管腔が広げにくい入口部直下や腹部食道に病変が存在する場合は,病変の把持がしにくいため治療困難である.偶発症として,3/4周以上の粘膜欠損例では,82%に食道狭窄を認めた.食道狭窄の程度は,粘膜欠損の周在と狭窄長により異なり,周在が広いほど,狭窄長が長いほど狭窄の程度は強く,ブジーによる拡張に時間を要した.現在まで穿孔例の経験がないのは,粘膜下層に十分量の生理食塩水を注入して粘膜を膨隆し,把持鉗子にて固有筋層を把持せず,分割切除時にも,切除操作のたびに生理食塩水を注入し,把持鉗子で潰瘍底を把持せず,スネアを粘膜切除後の潰瘍底にかけないように注意しているためと考える.

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食道表在癌に対する内視鏡治療の1つとして EMRC(キャップ法)は開発されたが,その簡便さから,あらゆる消化管領域で利用されている.外径18mmのソフトキャップにて1/3周性,長軸方向に2cmまでの病変は一括切除が可能である.広い病巣の分割切除の場合は局所再発が起きる可能性が高いが,遺残を疑う部分に,APC焼灼を加えることで補っている.広く取りすぎると高度の狭窄を来し,QOLを損なう場合や後治療に影響する場合があり,食道癌の場合はこの点にも注意して治療しなければならない.手技は比較的簡単だが,吸引の加減で水平,深部の大きさが規定され,切除が盲目的となるため,1%程度の可能性ではあるが,穿孔には十分な注意が必要である.

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早期食道癌に対する第一選択の治療法として EEMR-tube法による内視鏡的粘膜切除術(EMR)を施行してきた.一括切除が可能な病巣では,極めて短い治療時間で容易に手技を完了することができる.大きな病巣に対しては,安全で確実な分割切除法としてEEMR-tube 4段法を行っている.第1段階では病巣の口側より最深部が含まれるように切除する.第2段階では残存する範囲を同様の手技で,繰り返しの追加切除を行う.第3段階は辺縁部の小範囲切除で EEMR-tube のサイドチャンネルを利用しダブルチャンネルの要領で切除する.最後の第4段階では,ホットバイオプシーやAPCによるトリミング処置を施行し治療を完了する.

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正確な病理学的検討ができ,局所再発がないというESDの利点は食道においても共通だが,食道は固有筋層が薄く心拍動の影響も大きいため,一般にESDは困難とされてきた.本稿ではESDに至るまでの準備,マーキング,局注,粘膜切開,トリミング,粘膜下層剝離,止血,出血予防,穿孔時の対策まで,食道ESDを安全,かつ確実に施行するための手順を解説した.食道ESDも胃と同様に戦略を立てることが重要である.粘膜切開はどこから開始すべきか? 連続して切開するのか? 剝離はどこから開始するのか? 体位は? 出血時の対応は? すべての事態を予測し,対策法を考えてからESDを開始すると困難な状況を冷静に打破することができる.

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斜視型2チャンネル型スコープで大型把持鉗子とバイポーラスネアを使用し,mと診断した手術可能な胃癌560病変をEMRした.切除標本の病理検索で,mが93.2%,smが6.8%であった.大きさ別一括切除率は1cm以下では92.1%,1.1~2.0cmでは68.0%,2.1~3.0cmでは16.5%,3.1cm以上では0%であった.551病変を経過観察し,46病変(8.3 %)に遺残再発を認めた.大きさ別遺残再発率は1cm以下では8.1%,1.1~2.0cmでは6.3%,2.1~3.0cmでは9.0%,3.1cm以上では27.8%であった.遺残再発例のうち,29病変は再内視鏡治療により癌は消失したが,17病変は外科手術された.手術標本上での癌遺残はmが12病変,smが2病変,筋層以深への浸潤が3病変であった.

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内視鏡的吸引粘膜切除法(EAM)の基本手技とコツにつき詳述した.EAM法は,2チャンネル法の手技上の弱点を克服すべく開発した手法で,吸引により病変を挙上するため,病変存在部位によらない確実な切除が可能で,スネアを先端フードの外周にセットするため,吸引各法の中では,より大きな切除が可能であるという特長を有する.実際の手技施行にあたっては,手技の各ステップに,開発意図に沿った正しい方法があり,アスピレーション・ムコゼクター,局注針,局注液など,デバイス類の選択とその基本的なセッティングが極めて重要であり,内視鏡操作技術とともに,これらが手技の成否を最終的に左右すると言っても過言ではない.

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Hookナイフは先端が直角に曲がったナイフである.この部分を利用して,粘膜や粘膜下層の線維を把持し,固有筋層から遠ざかる方向に切開・剝離操作を行う.よって,穿孔の危険が非常に少なく,安全なESDが可能である.2003年11月から2005年9月まで,当施設でHookナイフを用いた胃ESD 170病変の成績は,一括切除率95.3%,一括完全切除率88.2%であり,同期間に行った従来のEMRと比較して,良好な成績であった.穿孔率は1.8%であり,EMRと差はなかった.安全なESDを行うにあたり,Hookナイフは有用なディバイスである.

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ITナイフ(insulation-tipped diathermic knife)は,病変の一括切除を目的として最初に開発および臨床応用された内視鏡的切開器具である.高周波針状ナイフの先端にセラミック製の小球を装着したナイフであり,絶縁チップにより,穿孔の危険性を減少させ,安全に切開および粘膜下層を剝離することができる.他の ESD 処置具との違いは,先端の絶縁体からシースまでの部分で切開することである.長所は粘膜下層を一気に剝離可能であり,他のデバイスに比べ術時間が短い点であり,短所は,ブラインドになる場合があること,粘膜下層を直視してまっすぐ前方を切開することができないことである.

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フレックスナイフの最大の特徴はその柔軟性にある.ナイフ先端の長さの調節を慎重に行い,深く潜り込まないようにストッパーを利用することで,穿孔の危険の少ない安全な切開・剝離を行うことが可能である.また,この処置具1本でESDを完遂することができ,コストパフォーマンスにも優れている.ナイフの特徴やウォータージェット機能,粘膜下局注法,止血術や後処置などを十分に熟知した上でESDを導入することにより,安全で確実な治療が広く普及していくことが望まれる.

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内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)は,病変粘膜の外側に切開を置き,粘膜下層を剝離して一括切除する画期的方法であるが,安全性はもとより切除後の病理学的検討が正しく行われるように質の高い標本を得る必要がある.当科では,十分な厚みが長時間持続するヒアルロン酸ナトリウム溶液を粘膜下層注入液に使用している.また粘膜下層の剝離の際は,フードを摂子のように用いて,切除する粘膜にカウンタートラクションをかけ,粘膜下層に潜って直視下に観察しながら剝離を行っている.このとき,狭い隙間や,小彎・後壁の病変に対しては,先端が細く,鉗子が中央から出てくるSTフードを用いるとさらに有用である.これらの工夫により,ガイドライン内病変はもとより,適応拡大病変においても高い一括切除率が得られている.

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三角ナイフは,ESDの先端処置系の道具であり,3方向に尖っているため,軸合わせの必要のないナイフである.基本手技は,標的の組織を三角プレートの角にフック様に引っ掛けて,消化管内腔側に筋層表面から挙上して,電気メスで切離する.マーキング,プレカッティング,周辺切開,粘膜下層剝離などの一連の手技をこれ1本で行う.マーキングのみはプレートを外筒に格納したままで,Forced coagulation 40W,effect 3(ICC200,VIO,ERBE)で行い,その後の一連の手技(プレカッティング,周辺切開,粘膜下層剝離など)はSwift coagulation 40W,effect 4(VIO,ERBE)で行う.ESDに際して,使用する処置具は,局注針,三角ナイフ,止血鉗子の3つがあれば実施可能である.本稿では,三角ナイフを用いたESDの実際と成績を概説する.

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スネアを用いた内視鏡的粘膜切除術(endoscopic mucosal resection ; EMR)は,現在では大腸内視鏡治療の基本手技になっている.被検者へのインフォームド・コンセント,EMRの適応を考慮した上で行わなければならないが,大腸では壁厚が薄く,柔軟であるため穿孔などの偶発症も危惧される.そのため術者は,基本的事項としてスネアの選択,位置取り,局注およびスネアリングの仕方を熟知した上で,謙虚な姿勢を守り,的確な手順を踏むことで安全にEMRを行うことが可能である.また適切な切除標本の取り扱いも正しい病理診断を得るために重要である.EMRの目的は単なる切除ではなく,患者利益に繋がることを肝に銘じておく必要があると考える.

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大腸腫瘍に対する ESD(endoscopic submucosal dissection)は,現時点では,まだまだ手技の難易度が高く穿孔などの偶発症発症率が高いため,一般内視鏡医が標準的に行う段階には至っていない.大腸腫瘍の臨床病理学的特性や術前の精密診断学の精度などを考慮すると,大腸腫瘍に対するESDの適応として,スネアによる一括切除が困難な①LST-NG,特にpseudodepressed type,V型pit patternを呈する病変,大きなポリープ,sm浸潤癌,②biopsyや病変の蠕動によるprolapseに起因する線維化を伴う粘膜内病変,③内視鏡的切除後の局所遺残早期癌,④潰瘍性大腸炎などの慢性炎症を背景としたsporadicな局在腫瘍など,が挙げられる.腺腫性病変は,計画的分割EMR(endoscopic piecemeal mucosal resection ; EPMR)で十分根治可能である.実際のESD手技には,FlexナイフやHookナイフなどの先端系メスが安全かつ有用で,先端フードや,局注液としてのヒアルロン酸ナトリウムは必須である.治療法選択にあたっては,EMR・ESD・腹腔鏡下切除術,いずれも術者の技量に大きく影響されるので,どれを選択するかは術者の技量や施設の状況に応じて決定すべきであり,技量を超えた無理な治療によって,これら新しい治療法の発展・標準化にブレーキをかけることのないようにしたい.

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種々の外科的な局所切除術式の中で最も低侵襲な経肛門的局所切除術の現状,適応,各術式の特徴とともに,管腔内切除術式(endoluminal surgery)として分類できるminimally invasive transanal surgery(MITAS)の成績についてtransanal endoscopic microsurgery(TEM,現状では内視鏡的治療に含まれて分類されている)と比較して概説した.これらのendoluminal surgeryは,病変部の完全一括切除と全生検,根治度の確認が可能な術式である.直腸早期癌の治療においては,内視鏡治療かこれらの局所切除かの初回局所的治療の選択は,患者の長期的なQOLを大きく左右する可能性があるため慎重に行い,病変部の完全生検が可能な治療法を選択すべきである.

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胃のポリープを中心にポリペクトミーの適応,手技,偶発症について述べた.ポリペクトミーの適応は,①貧血の原因,②局在癌の可能性,③精神的ストレスとなり不定愁訴の原因,④幽門輪への嵌頓による通過障害,などである.出血性素因がある場合には禁忌となる.高周波電源装置,高周波スネアは,病変の性状に応じてモードの選択や使用する器具を選択する必要がある.また,偶発症(出血,穿孔)の発生に十分に注意しなければならない.胃のポリペクトミーは消化管腫瘍に対する内視鏡的切除の最も基本となる手技である.EMRの初心者向けの治療と思われがちであるが,十分なインフォームド・コンセントのもとに処置具や基本手技を熟知して臨むことが肝要と考える.

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食道粘膜下腫瘍に対してわれわれの施設では20mm以下の病変では経過観察をしているが,20mm以上の病変であれば精査を行い,厳重な経過観察とするか治療を行うかを検討するようにしている.食道粘膜下腫瘍の内視鏡治療の適応は粘膜内にとどまる良性腫瘍が最も良い適応であり,内輪筋レベルでの病変が適応の限界と思われる.内視鏡治療が可能な病変であるか否か,もしくは質的な診断を行うには細径プローブによる超音波診断が有用と考えられる.必要に応じて生検診断を加えて正確な診断を期しているが,通常内視鏡観察でも慎重に観察を行えば得られる情報は多く,食道粘膜下腫瘍の初期診断を行う上で重要と言える.治療手技は食道表在癌に対する粘膜切除術に準じた技術で大部分が対応可能と思われるが,治療に至るまでの診断が重要であり,正確な診断がなされていれば良好な治療結果が得られるものと思われる.

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粘膜下腫瘍(submucosal tumor ; SMT)の内視鏡治療には各種の方法が用いられている.腫瘍径が30mm以下の有茎性の例がポリペクトミーの適応である.内視鏡的粘膜切除術(endoscopic mucosal resection ; EMR)は粘膜下層までに病変の主座がある例に用いられる.内視鏡的粘膜下腫瘍核出術(endoscopic scraping enucleation ; ESE)は粘膜下層を主座とし外輪筋が保たれている腫瘍に適応があるとされる.その他に,EMR併用エタノール注入法,純エタノール局注法,レーザー照射による熱焼灼療法も報告されている.いずれにしても消化管壁内での腫瘤の位置を確認することが安全に治療を行う上で重要である.

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出血の原因となる上部消化管の血管性病変として血管腫,胃前庭部毛細血管拡張症,angiodysplasiaに着目し内視鏡治療について概説した.血管腫の治療は,外科的切除が基本であるが,大きさと肉眼形態により内視鏡的切除も可能である.前庭部毛細血管拡張症とangiodysplasiaは内視鏡治療が第一選択であり,ヒートプローブやアルゴンプラズマ凝固法による粘膜焼灼が有効である.血管性病変に対する内視鏡治療においては,処置中の大量出血に対処できるよう,慎重な対応が必要である.

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近年,小腸内視鏡はカプセル内視鏡とダブルバルーン内視鏡の出現によりめざましく進歩した.特にダブルバルーン内視鏡の開発によりこれまで非常に困難であった深部小腸の内視鏡治療が比較的容易に行えるようになった.本稿ではまず小腸の良性腫瘍・腫瘍性病変の種類,頻度,症状,および内視鏡治療の適応について概説する.次にわれわれが経験したPeutz-Jeghers症候群の小腸ポリープ,リンパ管腫,迷入膵の内視鏡下摘除の症例を呈示し,その有用性,偶発症について報告する.また,内視鏡治療後のフォローアップにカプセル内視鏡を使用した経験についても述べる.

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ポリープを安全に内視鏡治療するためには,術前の準備として,偶発症に関するインフォームド・コンセントと,抗凝固剤服用の有無の確実なチェックが重要である.手技においては,体位変換やスコープの回転操作などにより病変の基部を5~6時方向に移動させることが重要で,その位置でスネアリング,切断,回収などすべての操作を行う.内視鏡治療が広く行われるようになった現在,偶発症としての出血に対しては局注,留置スネア,クリップ,凝固などにより,穿孔に対しては一度に長く通電しない,局注量を多くするなどして偶発症の予防・対策に努めることが重要である.

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大腸粘膜下腫瘍は上皮性腫瘍(腺腫,癌)と比較するとまれな疾患である.しかし粘膜下腫瘍様形態を呈する疾患は様々であり,鑑別診断は容易ではない.大腸粘膜下腫瘍に対する内視鏡治療の適応は限られており,また出血や穿孔といった偶発症を引き起こす可能性もあるため,大腸内視鏡検査や超音波内視鏡検査などにより術前に正確な診断をすることが非常に重要である.本稿では,大腸粘膜下腫瘍の診断,内視鏡治療方法および内視鏡治療の適応について概説する.

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消化管に好発する血管性病変として,血管異形成(angiodysplasia),動・静脈奇形(arteriovenous malformation),Dieulafoy 潰瘍,血管腫が挙げられる.前2者はいずれも大腸に好発し,消化管出血を来す場合は治療の適応となる.大腸の血管性病変に対する内視鏡的治療法として凝固法,局注法,機械的圧迫法,切除法がある.粘膜内毛細血管の拡張にとどまる血管異形成に対しては上記のいずれも有効であるが,動静脈奇形では静脈瘤に準じた硬化療法が必要となる.したがって,両者を鑑別することは重要である.Dieulafoy潰瘍に対しては凝固法,局注法が用いられてきたが,最近では機械的圧迫法として止血クリップが簡便かつ有効とされる.一方,血管腫の中でも単発性海綿状血管腫は明らかな隆起性病変を呈し,内視鏡的ポリペクトミーによる切除例が増加しているが,偶発症の報告は少ない.

各論 3. 通過障害に対する内視鏡治療

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上部消化管狭窄を拡張する目的は主に摂食可能とすることであり,拡張器具はTTS型CREバルーンが普及している.急激な過度の拡張は穿孔を誘発するので注意を要する.逆流性食道炎では炎症を改善させたうえで,段階的に拡張する.食道空腸吻合は大半が膜様狭窄で,1回で十分な拡張が得られることが多い.食道癌術後吻合部狭窄は縫合不全が起因していることが多く,難渋する場合がある.胸壁前吻合は屈曲が強く,硬性ブジーも有用であり,状況に応じて使い分ける必要がある.EMR後の狭窄は拡張時期が遅れると瘢痕狭窄が高度になるので,早期から計画的に行う.アカラシアは進行性疾患であり,軽症例に対してバルーン拡張を行う.

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下部消化管狭窄,特に良性狭窄には,主としてバルーンを用いた内視鏡的拡張術が施行されている.本法は偶発症なく完遂し有効な場合は侵襲が少なく利点の多い手技であるが,穿孔が発生すれば緊急手術の回避が困難であることを留意しなければならない.術前に内視鏡およびEUSで狭窄部の線維化の程度を判定して,穿孔を防止し有効な拡張が得られるための最適な方法を検討し選択する必要がある.拡張術の施行は,緊急手術を含めた外科的治療が可能な全身状態にあることが前提条件である.内視鏡的拡張術は外科的治療と対比して十分な理解を得たうえで選択されなければならない.

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Self-Expandable Metallic Stentは,留置が比較的容易で,少ない侵襲で高い治療効果が得られ,根治不可能な悪性食道狭窄の緩和治療として有用である.自験食道悪性狭窄例への留置92回の成功率は99%で,非切除・再燃胸部食道癌46例の留置では80%が粥以上摂食可能で35%が補助栄養なしに一度退院した.胸部食道留置の合併症は疼痛・穿孔・出血などだが頻度は低い.この他にもdislocation,ingrowthへの対応が必要となる.頸部食道や噴門にまたがって留置する場合の問題点,瘻孔や気道圧排への対応,他治療,特に放射線併用の注意など種々の問題点がある.安易な留置は避け,十分なインフォームドコンセントが必要である.

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胃・十二指腸悪性狭窄に対するステント留置はあくまでも対症療法の1つである.ステント留置前に全身の検査を行い,ステント留置で狭窄症状の緩和が期待できる場合にのみ行うべきである.ステントは食道用に開発されたSEMSが使われている.したがって胃・十二指腸では時にステント留置が困難な場合もある.留置成功率は80~100%,食事摂取改善率は50~90%と報告されている.今後,胃・十二指腸悪性狭窄に対するステント留置適応症例は増えると思われるが,さらなる器具の改良と手技の開発が必要である.

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大腸狭窄に対するアプローチとして経肛門的減圧術が最近は導入され,注目されている.そのうちステント留置術は,他の部位よりも臨床応用が遅れていたが,最近は主に悪性疾患による狭窄への姑息的留置または狭窄型大腸癌に対する術前処置として,欧米を中心に良好な臨床成績の報告が増加している.今後,大腸悪性狭窄患者に対する治療として,姑息的または一時的な人工肛門造設などの過大侵襲を回避し,QOLを向上させるためにステント留置術の果たす役割は大きい.専用ステントとキットの導入および保険適用の獲得が待たれる.

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腸閉塞におけるイレウス管による減圧は有効な治療であり,広く行われている.挿入に際し,まず十分説明し患者の同意を得る.透視台に患者を仰臥位にし,イレウス管先端が胃内に挿入されたら,用手圧迫や体位変換などを行い,幽門輪に誘導し,通過させる.イレウス管を十二指腸下行脚から Treitz靭帯を越えた上部空腸に進める.幽門輪通過が困難な場合は内視鏡を併用する.バルーンを膨らませ,ガストログラフィンにて造影し,イレウス管の位置を確認する.可能ならば閉塞部位を検索する.イレウス管操作は患者の状態を考え,慎重かつ愛護的に行う.

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腸閉塞を合併した左側大腸癌に対する,経肛門用イレウス管による減圧術の臨床的有用性について検討した.経肛門的減圧術を試みた大腸癌は53病変で,うち原発癌が42病変,転移性癌が11病変であった.原発癌の10病変は高度狭窄のためにイレウス管の挿入が困難であったが,挿入例では腸閉塞症状の改善を88%,腹部単純X線所見での腸管ガス像の減少を81%で認めた.原発癌と転移性癌で経肛門的減圧術の治療成績に,明らかな差は認めなかった.なお原発癌に対しては,経肛門的減圧術が緊急手術の回避に有用であった.減圧術の偶発症は,穿孔を2例,発熱を伴う腹痛を2例に認めた.経肛門的減圧術は,左側大腸癌に伴う腸閉塞の改善や緊急手術の回避に有用であると考える.

各論 4. 出血に対する内視鏡治療

1)クリップ 三宅 直人 , 長南 明道
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消化管出血に対する内視鏡的止血術は広く普及しており,その方法も多岐にわたる.その1つであるクリップ法に用いるクリップ装置とクリップは種々のものが市販されており,止血を行う病変の部位や硬さによって使い分けることが可能である.クリップ法による止血術は,露出血管を伴う潰瘍出血や憩室出血が良い適応である.クリップ法には出血点の確認が重要であり,確実な止血のためには,可能な限り出血点を正面視し,処置を行うことが肝要である.クリップ法などの機械的止血法は組織の変性がほとんどなく,比較的安全に施行することができるが,クリップ法による止血術が困難な場合には,他法の選択や他法と併用することが重要である.

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内視鏡的止血術は現在消化管出血に対する止血法の第一選択に位置する.内視鏡的止血術には,様々な止血法(クリップ法,熱凝固法,局注法等)があるが,局注法は比較的簡便で安価なため広く普及している.純エタノール法は強力な組織脱水・固定作用を有した止血法であり,適応範囲も広い.HSE法は末梢血管収縮,組織膨化,フィブリノイド変性,血栓形成を止血機序としており,現在では他法との併用の際の一次止血として使用されることが多い.近年,各種止血法の普及により局注法の単独での使用は減少傾向にあるが,その特性を考えた適切な使用は現在においても十分有用である.

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消化管出血に対する焼灼凝固法は,クリップ法や局注法よりも手技的に簡便で安全と考えられており,欧米においても広く用いられている内視鏡的止血法の1つである.焼灼凝固法における選択には,止血鉗子,アルゴンプラズマ凝固(APC),ヒートプローブ,マイクロ波などがあるが,最近,EMRやESDの内視鏡治療の増加に伴い,高周波装置を用いた止血鉗子やAPCの使用頻度が増えている.焼灼凝固法を施行するには,各種デバイスの止血機序やその特徴を熟知したうえで,病変および出血の性状に合わせて止血術を行っていく必要がある.また,1つの止血法に固執することなく,他の止血法との組み合わせも念頭に置いておくべきである.

各論 5. 静脈瘤に対する内視鏡治療

1)食道静脈瘤 小原 勝敏
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食道静脈瘤の内視鏡治療として,硬化療法(EIS)と静脈瘤結紮術(EVL)が行われている.わが国の静脈瘤治療は不完全治療をせずに完全消失を目指すことにコンセンサスが得られている.そのための標準的治療法がEO・AS併用法であり,さらに再発させない手技が地固め法である.一方,EVLは単独では再発が高率であり,その対策としてEVLとEISの併用法が行われている.それでも再発率はEISより高くEVLの限界と思われる.静脈瘤治療においてはEISとEVLの基本的手技を完全に習得し,それぞれの特徴を生かした安全かつ効果的治療を行うことが重要である.そのためには患者の病態と門脈血行動態の把握が不可欠である.

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胃静脈瘤の内視鏡治療では患者の生命に密接にかかわることが多くインフォームドコンセント(IC)は特に重要である.筆者らが行っているICの実際と,胃静脈瘤の内視鏡治療の現状を中心に述べた.ICにおいては,治療の必要性,治療により起こりうる偶発症の説明およびその対処の仕方を説明し,患者の病態に合わせて,実際に静脈瘤の血行動態の模式図を書いて説明している.胃静脈瘤の内視鏡治療はcyanoacrylate系組織接着剤による硬化療法,EVL,EIS,EISL,EVLs+EISLがその中心であり,それらの使い分け,成績等を紹介した.

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直腸静脈瘤,内痔核に対する内視鏡治療を述べた.内視鏡的結紮術では,反転能が優れている内視鏡を用い,結紮器具は食道静脈瘤用の器具を使用する.観察後,内視鏡の先端に結紮器具を装着し,静脈瘤や内痔核を結紮する.内視鏡的硬化療法は,食道静脈瘤用の硬化療法針を使用し,静脈瘤や内痔核周囲の粘膜下層に0.5~1%のaethoxysklerolを注入するか,あるいは静脈瘤を穿刺し血液の逆流を確認後,透視下で5%ethanolamine oleate with iopamidolを用いて静脈瘤造影を行う.門脈圧亢進症患者の下血には内視鏡治療が推奨される.痔核出血では,まずは肛門鏡下止血を行う.

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消化管異物はその機械的あるいは化学的刺激によって消化管穿孔や腸閉塞などの重篤な合併症を惹起する可能性がある.その治療方針は異物の部位と種類によって異なる.上部消化管では,食道嵌入例とボタン電池あるいは鋭的異物誤嚥例において消化管穿孔の危険性が高く,直ちに内視鏡的摘出術を施行する.内視鏡的摘出術の際には,個々の異物の形状に適した処置具を選択し,回収時のadditional damageを予防するために透明フードなどの補助具を併用すべきである.経肛門的に挿入された大型の直腸内異物に対しては,腰椎麻酔下の経肛門的外科的摘除も考慮する.

各論 7. 内視鏡的胃瘻造設術

内視鏡的胃瘻造設術 嶋尾 仁
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1990年代後半から増加した本邦の内視鏡的胃瘻造設術件数は2005年では造設約10万件,交換約30万件に達している.造設方法には従来と大きな変化はみられていないが,偶発症発生減少のため,瘻孔周囲の胃壁固定が併設されるようになっている.適応では,恒久的な栄養瘻以外に,一時的な栄養瘻や減圧目的とされるものも増加してきた.栄養剤投与は逆流防止の観点から,固形化栄養の考えが導入されてきた.カテーテル交換にまつわる医療事故はここ数年,マスコミの報道で知られるとおりで,刑事告発される事例が増加している.発生頻度は低いが死亡例を含む重症合併症となるため,安全な交換の方法についての活発な議論がされている.

各論 8. 内視鏡治療の偶発症の対策

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内視鏡機種や処置具,その周辺機具の開発もあり,内視鏡治療の普及は目覚ましい.その適応が拡大傾向にある一方,安全性,偶発症,合併症が問題視されている.食道内視鏡検査・治療を行うにあたってはその必要性と偶発症についてインフォームド・コンセント(IC)をとる必要がある.食道は解剖学的に内腔が狭く接線方向での観察にとどまる点,さらにその存在部位が後縦隔であるがゆえの検査・治療の困難性と偶発症の重篤さがある.本稿では食道内視鏡治療における偶発症の種類と原因,予防と発生時の対策などについて述べた.

2)胃 小野 裕之
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胃疾患に対する内視鏡治療に伴う偶発症の多くは,ポリペクトミー,EMR(ESDを含む)など,胃腫瘍に対する治療の際に起こる.治療時の出血に対しては止血鉗子などのクリップ以外の手法が用いられる場合が多い.後出血予防には,切除後潰瘍面の血管の十分な焼灼が有用であると思われるが,過度の焼灼は遅延性穿孔の原因になりうるので注意が必要である.また,穿孔に対してはクリップによる縫縮により多くは保存的に治療可能である.穿孔時の気腹は重篤な腹部コンパートメント症候群を引き起こす可能性があり,患者のモニタリングが重要である.

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日本消化器内視鏡学会の第4回全国調査(1998~2002年)によれば,大腸内視鏡に伴う偶発症の頻度は0.069%であり,その90%以上が出血と穿孔であると報告されている.また,広島消化器内視鏡治療研究会のアンケート集計(1994~1999年)によれば,出血は大腸内視鏡治療の1.37%に発生し,手技別検討ではEMR2.46%,ポリペクトミー1.52%,ホットバイオプシー0.47%であり,穿孔は大腸内視鏡治療の0.02%に発生し,手技別検討ではEMR0.06%,ポリペクトミー0.02%であった,と報告されている.偶発症はすべての内視鏡医が遭遇しうるものであり,われわれ内視鏡医は,そのメカニズムを理解し,事前に偶発症を最小限に抑える対策を講じ,偶発症発生時に適切な対処を行う術を身につけておく必要がある.

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胃食道逆流症に対する内視鏡的治療には現在6種類の方法があり,3つのカテゴリーに分類できる.第1のカテゴリーは噴門部に皺襞を形成する方法でEndoCinch法(endoluminal gastroplication ; ELGP 法),full thickness plicator法,endoscopic suturing device法(ESD法)が,第2のカテゴリーはLES領域の筋層を変性させる方法でStretta法が,第3のカテゴリーはLES領域に異物を挿入する方法でEnteryx法とGatekeeper法がある.治療成績については,症状と酸逆流の改善はほぼすべての方法で認められるが,食道内圧所見まで改善しているのは第3のカテゴリーである.PPI中止率は70%前後の成績が多い.Enteryx法は安全性の問題で2005年9月から使用できなくなった.今後は有効性,安全性,耐久性,費用対効果,適応などのさらなる検討が重要である.

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はじめに

 食道表在癌の治療は内視鏡的粘膜切除術(endoscopic mucosal resection ; EMR)と三領域リンパ節郭清を伴う根治手術という,対極をなす治療法の実施に分かれていることは周知の事実である.癌の病態は連続的であるため,その中間病変も存在する.現在は低侵襲・機能温存がもてはやされ,EMRの適応を拡大することが社会的に要求されており,それに応えることが優先される感があるが,それで良いのだろうか.このあたりの事柄について私感を述べたい.

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光線力学的療法(PDT ; photodynamic therapy)は 腫瘍親和性光感受性物質PS(photosensitizer)とレーザー光によって引き起こされる光化学反応を利用した治療法である.具体的方法は参考文献1)2)を参照していただきたい.

 食道表在癌の内視鏡治療(EMR, ESD)後の局所再発病変に対しては,再度同様の治療が試みられることがあるが,瘢痕のため病変のliftingができない症例など技術的に不可能なこともある.病変が小さく,浅い症例では簡便なAPC(argon plasma coagulation)が行われるが,放射線治療や食道切除を選択する施設も多い.われわれはEMR,ESD後の局所再発症例に対し積極的にPDTを施行している.症例を提示する.

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局注針の種類と選択

 局注針には上部・下部消化管用があり,針の長さ,先端形状に差異がある.

 針の長さは4ないし8mmで,上部用では針の先端角度が20° のショートベベルと14° のレギュラーベベルのものがあり,下部用では鈍角の30° になっている.

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endoscopic submucosal dissection(ESD)の登場は,早期胃癌に対する治療に大きな革命をもたらした.ESD は,ITナイフ,フックナイフ,フレックスナイフなどのデバイスを用い,病変を切開・剝離する方法で,従来のstrip biopsy法やEMRC法よりも大きな標本を一括切除できる手技である.ただし,その適応を誤れば,生命予後を大きく左右する可能性も含んでいるため,慎重な治療選択が行われなければならない.早期胃癌に対する内視鏡治療の適応について述べる.

 胃癌に対する内視鏡治療はリンパ節郭清を伴わない局所治療であるため,対象となりうる病変はリンパ節転移のないことが大前提となる.しかし,術前の深達度診断,範囲診断などの正診率は100%ではなく,術前の段階での内視鏡治療の対象病変は,あくまで “根治できる可能性がある病変” でしかない.よって,切除後の標本における正確な病理組織学的検索が重要で,この場合分割切除されたものより一括切除された標本のほうが容易かつ確実な病理診断が可能であることは言うまでもない.この考えのもと2001年3月,日本胃癌学会より「胃癌治療ガイドライン」が発表された.ガイドラインでは “2cm以下の肉眼的粘膜癌(cM)と診断される病変で,組織型が分化型(pap,tub1,tub2).肉眼型は問わないが,陥凹型では UL(-)に限る” 病変が内視鏡治療の適応と記載されている.

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腫瘍に対する内視鏡治療には,組織切除法と組織破壊法がある.組織切除法は高周波電流切除を用いて内視鏡的に病巣を切除する方法であり,ポリペクトミー,内視鏡的粘膜切除術,切開・剝離法などが挙げられる.これらの方法は手技に熟練を必要とするが,切除標本が得られるために組織学的検索が可能である.一方,組織破壊法には組織凝固法(レーザー,マイクロ波,高周波など),局注法(抗癌剤,純エタノール,免疫賦活剤など),光線力学的治療,局所温熱療法などがあり,いずれの方法も手技は比較的容易であるが,治療効果が一定でない,組織学的検索ができないなどの欠点がある.

APC(argon plasma coagulation)

 アルゴンプラズマ高周波凝固法(APC)は,アルゴンガスを媒体として高周波により凝固を行う方法である.プローブ先端でアルゴンガスが高周波電流によりイオン化され,アルゴンプラズマ流となって組織凝固を行う.高周波電流は抵抗の低い部分に向かう特性を有するため,凝固が進むと組織の抵抗が高まり同一部位の凝固は進展しない.したがって,APCを用いた治療では腫瘍の深部破壊は不可能であるため,粘膜や粘膜下層浅層の組織破壊に限定される.実際には,粘膜内癌の内視鏡治療後の取り残しや遺残再発,腫瘍ではないがGAVE(gastric antral vascular ectasia)やvascular ectasia,食道静脈瘤に対するEVL(endoscopic variceal ligation)/EIS(endoscopic injection sclerotherapy)後の地固め療法,止血法の1つとしてAPCが用いられることが少なくない.

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早期大腸癌に対する内視鏡治療にはポリペクトミー,内視鏡的粘膜切除術(endoscopic mucosal resection ; EMR),内視鏡的分割粘膜切除術(endoscopic piecemeal mucosal resection ; EPMR),粘膜下層切開・剝離法(endoscopic submucosal dissection ; ESD)など種々の方法があり,これらの方法で病変を十分に切除するには高周波スネアの特性を理解し,使い分ける必要がある.

高周波スネアの種類と特性

 1. スネアの形状と大きさ

 スネアの形状には半月型,六角型,楕円型などが,スネアのループ径は9~33mm(9,11,13,15,20,22,25,27,28,30,33mm)が販売されている.また,スネアループが360° 自由に回転し,病変を捕獲しやすくするローテータブルスネア(ボストン・サイエンティフィック社製,ループ径13,20mm)も販売されている.

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1985年以降,内視鏡治療にEMR(endoscopic mucosal resection)を導入し現在まで5,000を超える大腸腫瘍性病変に対しEMR・EPMR(endoscopic piecemeal mucosal resection)を施行した.EMRの適応は主として陥凹型ないし,側方発育型(laterally spreading tumor ; LST)が主である.陥凹型は腫瘍径の小さなものが多く,ほとんどが一括切除可能であるが,LSTは大きなものが多く,EPMRによる分割切除を余儀なくされることがある.

 早期胃癌においては,標本の再構築の困難さ,再発率の高さ,および再発の場合の治療の困難さから分割切除はあまり評価されず手術を積極的に行うことが多かった.さらに最近になり,ESD(endoscopic submucosal dissection)の導入により一括切除が比較的安全に行われるようになった.

回収法 清水 誠治
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大腸における内視鏡摘除標本の回収法は,鉗子チャンネルを通して吸引する方法と,鉗子で把持して回収する方法に大別される.鉗子チャンネルを経由してトラップで回収する方法では,スコープにより異なるが7mm前後までの病変が対象になる.トラップのチャンバーを変えていけば病変の数に制限はない.少し大きめの病変であっても把持鉗子で牽引して鉗子チャンネルに格納できれば吸引による回収が可能になる.それ以上の大きさの病変では吸引口に吸着した状態,あるいは鉗子で把持した状態でスコープとともに引き戻して回収する.この目的には三脚あるいは五脚の把持鉗子が使用されることが多いが,把持力が弱いため大きな病変の回収には適さない.むしろ切除に使用したスネアを病変中央にかけて軽く絞扼すれば全く同様に病変の回収が可能であり,器具の入れ替えが不要であり簡便である(Fig. 1).特に大きな有茎性病変を切除した際には,茎の部分を絞扼すれば脱落や絞断の危険性が少なく,強力な把持力を発揮できる(Fig. 2).また回収ネットを用いれば大きな病変を損傷なく回収することが可能である(Fig. 3).

 大型の病変が多発している場合,下部大腸であれば病変を切除するたびにスコープを引き抜いて回収することが可能であるが,深部大腸では難しい.あらかじめ大型の病変が存在することが判明している場合には,スライディング・チューブを下行結腸に留置しておくと,回収ルートとして利用できる.予期せず,深部大腸で比較的大型の多発性病変を治療する必要が生じた場合には,バスケット鉗子や回収ネットを用いれば複数の病変の回収が可能である.しかし,前者ではせいぜい3個が限度であり,後者では多分割の標本の回収を含めて収納できる総容量が大きいが一度収納すると外すことができない.多少煩雑ではあるが,糸付きクリップを用いて複数の病変を回収することも可能である.吸引での回収はできないが良性であることが明らかな病変であれば,スネアで分割したうえで吸引して回収することもある.

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内視鏡治療の適応

 内視鏡治療では,あくまでも根治を目指すべきであり,その適応の原則は,リンパ節転移の可能性がほとんどなく腫瘍が一括切除できる大きさと部位にあることである.腺腫と癌の鑑別は切除標本の病理診断によるため腺腫は以下M癌として取り扱う.多くのリンパ節転移予測のうち,術前に診断可能なものは深達度のみである.「大腸癌治療ガイドライン2005(大腸癌研究会編)」1)では内視鏡治療の適応として,以下の条件が挙げられている(Fig. 1).

 ・腺腫,m癌,粘膜下層への軽度浸潤癌.

 ・最大径2cm未満.

 ・肉眼型は問わない.

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食道は,胃への水分や食事の通過経路であり,周囲には呼吸,循環という生命維持に重要な機能を司る気管,肺,縦隔,大血管,心臓がある.食道癌は進行すると狭窄により嚥下障害が出現し,さらに進行すると周囲臓器への浸潤が問題となる.特に気管,気管支,縦隔へ浸潤すると瘻孔を形成し致死的な肺炎,縦隔炎を併発する.これまで瘻孔を伴う食道癌症例に対する根治的外科手術は不可能であり,緩和医療を含めた対症療法を行うしかなかった.1990年代より形状記憶合金でできた食道ステントが開発され,なかでもポリウレタン膜でカバーされた食道ステントは瘻孔合併食道癌症例に対し経口摂取を目的とした内視鏡的な緩和医療のひとつとして選択されることが多くなった.近年では,気管や縦隔への瘻孔形成を伴う局所進行症例でも根治的化学放射線療法(chemo-radiotherapy ; CRT)により瘻孔閉鎖や延命効果が得られ,さらには治癒が期待できる症例も認めることより1)2)内視鏡的な緩和医療を第一選択とするのは高齢者や全身状態の悪い症例に限られてきている.

瘻孔形成食道癌に対するステント留置術

 ステント留置は狭窄や瘻孔を合併した進行食道癌に対する内視鏡的な緩和治療として有効であり,特にself-expandable metallic stent(SEMS)は従来のplastic stentと比較するとより内腔が狭い状態でも拡張術を行わずに留置可能で,合併症も少ない3).Shinらは,食道・気管,気管支瘻61例(食道癌57例,気管支癌4例)に対するSEMSによる緩和治療の長期成績を報告している4).55例に対して食道ステント,5例に対して気管支ステント,1例で両方にステント留置がなされており49例(80%)で誤嚥の症状が消失したが,その後のフォローアップでは,49例中17例(35%)で再び瘻孔が形成され,61例のステント留置からの平均生存期間は13.4週間であった.

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は じ め に

 経皮経食道胃管挿入術(percutaneous transesophageal gastrostomy ; PTEG)は超音波ガイド下,X線透視下に局所麻酔で行う食道瘻造設術で,経皮内視鏡的胃瘻造設術(percutaneous endoscopic gastrostomy ; PEG)が手技的に困難な患者,また消化器癌による腸管閉塞および癌性腹膜炎による麻痺性腸閉塞の腸管減圧に用いられる方法である.

 本法は1994年大石らにより局所麻酔下に施行可能な頸部食道瘻造設術として考案され1),1997年には穿刺用非破裂型バルーンカテーテル(rupture free balloon ; RFB)の開発により手技がより安全で簡便なものとなった2).そのため現在急速にその造設数が増加している.

経皮内視鏡的腸瘻 宇野 良治
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経皮内視鏡的腸瘻造設には,空腸から経管栄養を行うための空腸瘻造設(jejunostomy)と大腸の減圧や順行性浣腸を行うための結腸瘻造設(colostomy)がある.

 内視鏡的空腸瘻造設法には経皮内視鏡的胃瘻造設(PEG ; percutaneous endoscopic gastrostomy)と同様に空腸に直接チューブを挿入するDPEJ(direct percutaneous endoscopic jejunostomy)がある.また,空腸からの栄養方法にはPEGの瘻孔から長いチューブを空腸に留置するPEG-J(percutaneous endoscopic gastrostomy with jejunal extension)がある(Fig. 1).PEG単独により栄養の逆流による肺炎が予防されたとする研究パワーの強いエビデンスはないが,PEG-JではTreitz靭帯を越えた部位で栄養が投与されるため肺炎の予防が可能になる.欧米の報告1)ではDPEJとPEGの合併症発生率は同等とされている.従来,PEG-Jには煩雑なチューブ留置操作,専用チューブが細く閉塞などの不都合が生じるなどの欠点があったが,筆者は5.9mmの超細経内視鏡を直接PEGから挿入し,同径の経鼻用チューブを用いることによってその欠点を克服している2)

穿孔させないためのコツ 田村 智
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大腸内視鏡検査の普及によって,ポリープだけでなく陥凹型腫瘍や側方発育型腫瘍(laterally spreading tumor ; LST)も多く発見されるようになってきたため,内視鏡的粘膜切除術(endoscopic mucosal resection ; EMR)は日常診療において,欠かすことのできない手段となっている.本稿では,LSTを対象に,確実で安全なEMRの方法と適応について述べる.

 LSTは腫瘍径の大きな病変が多いため,分割EMRとなる場合が多いが,局注とスネアの架け方次第で一括切除が可能となる.腫瘍径から,その一括切除率を検討すると,20mm以下では80%が一括で切除されているが,21mm以上になると逆転し,31mm以上になると約90%が分割切除になっている.以上の結果から,腫瘍径から評価した一括切除可能病変は,20mm以下であるが,局在・肉眼形態や蠕動運動などで好条件下では,40mmくらいまで一括切除可能である.

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欧文目次

編集後記 大谷 吉秀
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 消化管内視鏡治療の最前線を網羅する「胃と腸」増刊号をお届けする.内視鏡治療は適切な適応選択と正しい操作により,安全で,低侵襲,機能温存が図れる卓越した治療手段である.内視鏡診断の進歩,機器の開発,手技の工夫による著しい変化は目を見張るものがあり,今日では内視鏡治療が日常的に行われている消化性潰瘍や静脈瘤の止血術も,かつては手術が第一選択として行われていた時代があったことを知る若い内視鏡医は少ないと思われる.特に最近 10 年間に,内視鏡の解像度,操作性の向上,処置具の開発や電気メスなどの周辺機器の改良などが図られ,広い意味では医学と工学の有機的な融合が,人類の幸福に貢献している証と言える.

 増刊号として,初心者からベテランの先生方まで参考にしていただけるように企画を工夫した.総論では,内視鏡治療を行ううえで求められる基本的事項として,インフォームドコンセント,セデーション,切除標本の取り扱いなど,そして各論では,早期癌に対する粘膜切除,拡張術,ステント,イレウス管挿入,潰瘍や静脈瘤に対する止血,異物除去,胃瘻造設術,逆流性食道炎に対する内視鏡治療まで系統的に網羅した.もちろん,偶発症対策についても詳しく記載されている.これほどまとまった消化管内視鏡治療に関する特集号は初めてで,1 冊の本として十分匹敵する内容である.日常診療の現場で大いに役立つことを確信している.また,将来に向けた新たな内視鏡治療の開発につながるアイデアも随所に触れられている.執筆に関わられた先生方の熱意と労力に心から感謝する次第である.

基本情報

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胃と腸
41巻4号 (2006年4月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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