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食道は,胃への水分や食事の通過経路であり,周囲には呼吸,循環という生命維持に重要な機能を司る気管,肺,縦隔,大血管,心臓がある.食道癌は進行すると狭窄により嚥下障害が出現し,さらに進行すると周囲臓器への浸潤が問題となる.特に気管,気管支,縦隔へ浸潤すると瘻孔を形成し致死的な肺炎,縦隔炎を併発する.これまで瘻孔を伴う食道癌症例に対する根治的外科手術は不可能であり,緩和医療を含めた対症療法を行うしかなかった.1990年代より形状記憶合金でできた食道ステントが開発され,なかでもポリウレタン膜でカバーされた食道ステントは瘻孔合併食道癌症例に対し経口摂取を目的とした内視鏡的な緩和医療のひとつとして選択されることが多くなった.近年では,気管や縦隔への瘻孔形成を伴う局所進行症例でも根治的化学放射線療法(chemo-radiotherapy ; CRT)により瘻孔閉鎖や延命効果が得られ,さらには治癒が期待できる症例も認めることより1)2)内視鏡的な緩和医療を第一選択とするのは高齢者や全身状態の悪い症例に限られてきている.
瘻孔形成食道癌に対するステント留置術
ステント留置は狭窄や瘻孔を合併した進行食道癌に対する内視鏡的な緩和治療として有効であり,特にself-expandable metallic stent(SEMS)は従来のplastic stentと比較するとより内腔が狭い状態でも拡張術を行わずに留置可能で,合併症も少ない3).Shinらは,食道・気管,気管支瘻61例(食道癌57例,気管支癌4例)に対するSEMSによる緩和治療の長期成績を報告している4).55例に対して食道ステント,5例に対して気管支ステント,1例で両方にステント留置がなされており49例(80%)で誤嚥の症状が消失したが,その後のフォローアップでは,49例中17例(35%)で再び瘻孔が形成され,61例のステント留置からの平均生存期間は13.4週間であった.
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