臨床外科 58巻11号 (2003年10月)

特集 クリニカルパスによる外科医療の進歩

エディトリアル

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はじめに

 クリニカルパス(以下,パス)がわが国に本格的に導入され始めて数年になる.当初は看護部門中心にブームが起こったこともあって,医師側の関心が低く,抵抗があったが,最近の普及振りは加速度的で,2005年には80%以上の病院が使用するようになると予想されている1).この急速な普及の背景には,数年前の国立病院での試行で始まったDRG/PPSのわが国への導入が大学病院などに拡大し,本格化している中で,「入院診療計画」の策定がなければ社会保険診療報酬で入院基本料が減点されることになったことなどがある.

 本誌で2年半前に「外科におけるクリニカルパスの展開」の特集を組んだ当初は,パスを病院経営の重要な戦略ツールと位置付け,チーム医療の育成,医療の標準化,入院日数の短縮化,経営効率の向上などの効用が目論まれていたが1,2),最近ではわが国の医療を根底から見直させ,改善させる力がパスにはあると認識されるようになった2,3).そこで本特集号「クリニカルパスによる外科医療の進歩」が組まれたわけであり,その序文として本稿では,まずわが国における医療の問題点をいくつか取り上げ,パスのメリットとその活用による医療の改善~改革について考え,それらを踏まえてパスが関わる近未来を展望する.

第Ⅰ部:クリニカルパス導入の実践

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はじめに

 Critical path methodに由来するクリニカルパスは産業界においても医療界においても,「質」と「効率」という二律相反するものの解決策として編み出された,工程管理のマネジメントツールである.

 医療の分野においては人,物,金,情報を適正化,標準化,効率化し,診療の工程管理を行い,医療の質の保証を行っていくことに意義があり,更には病院経営のマネジメントツールとしても有用性が期待されている(図1).

 クリニカルパスは,「特定の疾病を持つ患者に対して,時間軸に治って行うべき診療,看護,検査,患者教育などの医療行為の集合を医療機関の資源を勘案し,期待する成果を明確にしたうえで標準化した医療管理手法である」と説明されてきたが,最近では,「医療チームが共同で作り上げた,患者のための最良の管理だと信ずるところを示した仮説」と定義されている1)

 以上の説明から理解できるように,クリニカルパスとは診療のアウトカムを日ごとに明示し,関連する専門職種が協働して医療サービスを行っていく工程表ともいえるクリニカルパス表と,それを作成→試用→評価→再作成を繰り返しながら医療の質の管理を行っていく一連のクリニカルパス活動のことを包括して表現しているものである.

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はじめに

 クリニカルパス(あるいはクリティカルパス,以下パス)は米国ではDRG/PPS(医療費の診断群類別の定額支払い制度diagnosis related groups/prospective payment systems)のもとでの在院期間の短縮や医療コストの抑制などの病院経営の観点から広まった1).しかし,わが国ではパスはインフォームドコンセントの充実,チーム医療の展開,患者中心の医療への変革,医療資源の節約,安全性の向上などの医療の質を高めるツールとして認識されてきている2)

 2003年から全国の82の特定機能病院で日本版DRG/PPSであるDPC(diagnosis procedure combination)による医療費の包括支払い制度が開始された3)ので,今後大学病院でのパスへの関心は急速に高まることが予想される.これまではわが国の大学病院におけるパスの取り組みは十分ではなかったようである.その大きな理由は医局講座制によるタテ割り組織の強固な大学病院では,従来のピラミッド型組織の平坦化をもたらすパス的な考え4)を受け入れにくかった面もあるが,学問・研究を重視する医師がパスを誤解して反対することが大きかったと思われる.パスに反対するおもな理由を挙げると(表1),1.プロトコールやマニュアルがあればパスは必要でない.2.個々の患者で独自の治療をするべきで,画一的なプログラムでの治療はもってのほか.とくに,バリアンスが多い進行癌や高齢者の治療にはパスの適応は難しい.3.バリアンスの多い疾患では患者は不安になるので,パスは治療の障害となる.4.パスで入院期間が短くなるので患者の満足度は向上するはずがない.5.医師の裁量権に基づいて独自の方法で治療すべきで,パスでは治療法が固定化してしまう.6.指示や記録などの業務が増えるので,かえって多忙となる.7.在院期間が短縮し病床稼働率が低下するので病院経営にはマイナスである,などである.まず,これらの抵抗勢力のパスに対する誤解を消す必要があるが,理解不足による偏見と誤解への説明は別論文を参照されたい5)

 本稿では,これからパスを作成する方々にいかにして使いやすいパスを作成するか,また作成したパスをいかにして臨床現場で使われるようにするかについて,そのコツを紹介する.

第Ⅰ部:クリニカルパス導入の実践 クリニカルパス作成の実例 1.甲状腺

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はじめに

 クリニカルパスの導入効果としては1番に入院期間の短縮があげられる.そこで当院はクリニカルパスをshort stay surgery実施における有効なマネージメントツールと位置付け,改良を繰り返してきた1~6).それらの経緯と筆者らの最新のクリニカルパスを紹介する.

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はじめに

 近年,医療の質の向上,医療費の効率的使用,在院日数の短縮が提唱されており,そのためにクリニカルパス(以下,パス)を用いたチーム医療が注目されている1)

 国立病院九州がんセンター頭頸科においても甲状腺良性腫瘍,甲状腺悪性腫瘍(分化癌),喉頭癌,下咽頭癌についてパスを作成・導入している.本稿では甲状腺良性腫瘍について,現行のパスの紹介と,当科において現在までのパスの使用経験からその有用性についての検討を行った.

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はじめに

 甲状腺分化癌(乳頭癌,濾胞癌)は甲状腺悪性腫瘍の90%を占め,予後が比較的良好で,術後長期生存を期待できるため,合併症や後遺症のない手術治療が望まれる.しかし,手術の適応や手術術式については議論が多く,標準的な治療指針は確立されていない.髄様癌は多発内分泌腫瘍症(MEN)に合併することがあり,全身検索や他の合併腫瘍への治療が必要となることも多く,また未分化癌はきわめて悪性度が高く,集学的治療を行っても根治的な治療は困難で手術適応も少ない.このように甲状腺癌は多彩な病態を含んでいるが,手術治療にあたっては以下のような条件をもとに,クリニカルパス(以下,パス)を作成し,使用している.

第Ⅰ部:クリニカルパス導入の実践 クリニカルパス作成の実例 2.呼吸器

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はじめに

 1995年にZander Kが唱えたcritical path1)は後年さまざまに表現されるが,本稿ではパスと略称する.肺切除のパスについて,英語文献では1997年米国東海岸のマサチューセツ総合病院(MGH)から術後在院7.5日2),翌年西海岸からは同1日3)と報告された.また2001年当院からマーキングと胸腔鏡手術を組み合わせたパス4)が報告された.日本語文献では1998年野守による肺葉切除(以下,葉切)のパス5)がある.

 当院の取り組みは1999年に気胸に対する胸腔鏡下手術(VATS)のパスから開始され,好評にて葉切などに拡大された.これらを同年の日本肺癌学会総会にて報告した際,会場ではMGHにおける肺切除のpatient care pathwayと職員用clinical pathwayが配布された.前者はオンタリオ病院の患者用パス6)が類似する.また国内では広島赤十字病院7),黒部市民病院8)および当院9)が肺癌手術などの患者用パスをウエブ公開している.

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はじめに

 昨今,日本の医療制度は医療の質向上,医療情報の公開,医療の経済性を求めて大きくそして急激に変化を遂げている.クリニカルパスは医療の経済効率を高めるため,かつ医療従事者と患者が医療内容の共通認識を持つことにより質の向上をはかるためのシステムである.歴史的にはクリニカルパスは1985年に米国マサチューセッツのKaren Zanderが立案し,導入して以来その重要性が認められ世界中に広まった.またこの時期は米国では保険の支払い方式が出来高払いから定額払いに移行した時期であり,日本の現状に類似しているのも興味深い1)

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はじめに

 自然気胸の手術にVATSが導入されてすでに12年になる.肺嚢胞を含む部分切除に胸腔鏡下自動縫合器が便利である上,創が小さくて済む利点があり,低侵襲性概念と相まって事実上VATSが第一選択となっている.しかし,術後の気胸再発率は以前の腋窩開胸を標準としていた時代の3%以下から6~8%へと急増した.一方,日常臨床にクリティカルパスまたはクリニカルパス(以下,パス)が導入されて久しく,臨床の合理的標準化が意識されるようになった.自然気胸の手術に関する外科診療上のエビデンスに基づいて,最も合理的な診療計画を明文化するものである.

 元来,自然気胸の手術に施設間・外科医間の差異があったところへ,胸腔鏡手術における再発予防の手段が個々に講じられているため,普遍的なエビデンスはない.理論的には完全な標準化ができる筈で,それがパス利用のあるなしにかかわらず理想であるが,実際には手術治療に関する意見の完全な一致はない.したがってパスは個別化される.本稿ではその差異は論点ではなく,パスの実際と意義が主題である.原発性自然気胸を対象としたパスの適用について述べる.

第Ⅰ部:クリニカルパス導入の実践 クリニカルパス作成の実例 3.乳腺

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はじめに

 乳癌手術は手術経過が安定しており,バリアンスが少なく,クリニカルパス(以下,パス)の作成が比較的容易である.今回,乳房温存手術を中心に,当科のパスの特徴を概説する.

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はじめに

 当院では1999年3月から病院規模でクリニカルパス(以下,パス)を導入した.その目標は,「患者中心の質の高い医療を提供するためのチーム医療の実践」であり,医療の質とチーム医療に主眼をおいている.乳腺領域では1999年9月に乳房切除術のパスを作成し,その後改訂を重ね,現在5種類のパスを運用している(図1,2).ここでは乳房切除術のパスを中心に論じる.

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はじめに

 筆者らは乳房再建術を乳癌治療の一環として捉え,チームアプローチで取り組んできた.乳癌冶療は集学療法が基本となっており,更に病期,局所進展,年齢,生活習慣,患者本人の要望などで治療方針が決定される.特に治療の流れの中で乳房の形状をどのように位置付けるかはオプション性も踏まえ大事な要素となっている.筆者の施設で即時乳房再建の適応となった症例の多くは,

 1.広範囲な乳管内乳癌

 2.乳房温存療法後の乳房内再発

 3.多発乳癌

 4.局所進行乳癌

 5.大型葉状肉腫

などで,乳房温存が困難で患者が形状の再現を希望した場合であった.したがって,治療計画も手術療法のみならず同時進行の化学療法や術後の放射線療法の適応となる症例も含まれ,病態や治療に関する詳細なインフォームドコンセントがクリニカルパス(以下,CP)のスタートに際して必須条件となる.乳房再建に関しては複数の術式が実施されているが,今回は当院で最も多く適応され,またプロセスも複雑である腹直筋皮弁(TRAM)法による即時再建例のCPを示したい1)

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はじめに

 当院乳腺外科においては1999年3月から乳癌診療用クリニカルパス(以下,パス)の使用を開始し,さらに2001年4月から現在(2003年3月)までに約350名の患者に対し,術前診療情報提供用と入院後診療用の2段階式乳癌手術用パスを用いている.このパスは,①患者に対する詳細な情報開示とインフォームドコンセント取得の効率化,②医師と看護師の診療記録の一元化による問題の共有化と医療の効率化,③リスクマネージメントツールとしての利用,などの点で有用であることを報告してきた1,2).この有用性を乳癌の化学療法においても活用すべく今回化学療法用パスを作成したので報告する.

第Ⅰ部:クリニカルパス導入の実践 クリニカルパス作成の実例 4.上部消化管

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はじめに

 食道癌手術は消化器癌手術のなかでも手術侵襲の最も大きな手術の1つである.そのため,食道癌手術にクリニカルパス(以下,パス)を導入することは従来非常に困難と考えられてきた.しかし,パスは質の高い医療を安定して供給し,医療資源を有効に利用するうえで有用な手段であることは間違いない.パスを食道癌手術に導入することで患者の術後経過を安定させ,在院期間を短縮させることができれば,患者,医療者双方に大きなメリットとなる.

 本稿では,当院で施行している食道癌手術のパスにおける,その導入に至る経過およびポイント,施行後の成績について解説する.

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はじめに

 胃における内視鏡的粘膜切除術(EMR)の対象は主には早期胃癌とadenomaである.特に今日ではリンパ節転移のない早期胃癌に対する治療法としてはEMRが外科開腹手術に代わりfirst choiceの地位を築いている.リンパ節転移がない,すなわち病変の局所切除により根治的治療が期待できる場合は低侵襲で機能温存がはかれ,術後QOLの高い内視鏡治療が外科的治療に比べて有益であることは論を俟たない.2001年3月に日本胃癌学会が提出したガイドラインにおいては,リンパ節転移がほとんどなく一括切除できると考えられる早期胃癌の具体的条件として表1の項目が示されており,これが現在早期胃癌のEMR適応基準として広く受け入れられている1)

 当院においても数多くの早期胃癌,adenoma症例に対しEMRを施行してきた.1999年のクリニカルパス(以下,パス)導入以降は,原則的に重篤な合併症のないすべてのEMR症例はパスを使用して治療を行っている.当初は従来のEMR準備書を基に作成したパスを使用していたが,2002年9月にそれまでの使用症例のバリアンス分析と文献検討に基づいて大幅改訂を行い,以後新版パスとして使用している.本稿では,胃におけるEMR用パスの実際とその工夫点,特に旧版パスから新版パスへの改訂点を中心に述べて行く.なお当院では実際には電子カルテとパスを融合させた電子カルテクリニカルパス・システムでパスを運用している2)が,その特徴と有効性に関しては別項(電子カルテとクリニカルパス)に譲る.

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はじめに

 腹腔鏡下胆囊摘出術に始まった内視鏡外科は手術侵襲の軽減から開腹術に比べ早い術後回復が得られ,早期に社会復帰を可能にしてきた.そのなかで腹腔鏡下胃部分切除術・腹腔鏡補助下幽門側胃切除術も現在では手術手技も安定し,術後の合併症もほとんどなく,クリニカルパス(以下,パス)の適応のある治療法の1つである.

 筆者らは2000年4月から本格的に腹腔鏡補助下幽門側胃切除に対しパスを作成し,使用してきた.今回,腹腔鏡下胃部分切除の術後経過から新たに作成したパスも同時に呈示する.

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はじめに

 相澤病院外科ではインフォームドコンセントの充実,チーム医療の前進,情報の共有化,良質で効率のよい医療の提供,平均在院日数の短縮などを目指して2001年4月からクリニカルパス(CP)導入を開始した.CP導入に際しひとつひとつの疾患・手術に対してCPを作成するのではなく,EBMに基づいて周術期管理を標準化した後にCPを作成した.標準化を行うことによりCPの作成,運用が容易となり,CP導入が一気に進んだ.導入後3か月で幽門側胃切除術をはじめ15種類のCPが作成され,2003年4月現在19種類のCPが作成・運用され,新入院患者に対するCPの適応率は60%を超えている.

胃全摘術のクリニカルパス 山中 英治
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はじめに

 胃全摘術の対象となる胃癌は幽門側胃切除術の対象よりも進行癌であることが多い.リンパ節郭清などの手術操作範囲が広くなるが,自動吻合器の利用で手術時間は幽門側胃切除術と大差がなくなった.器械吻合のため縫合不全がなく,術後5日目くらいから経口摂取も可能である.また幽門側胃切除術よりも吻合部浮腫による通過障害も少ない.したがって,当科では胃全摘術も幽門側胃切除術と同じクリニカルパス(以下,パス)を使用している.

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はじめに

 医療の質向上と標準化を目的として当院外科では2001年12月以来,胃十二指腸潰瘍穿孔(以下,PPU)の治療法選択パスを活用して良好な治療成果を得ている1).狭窄のないPPUに対しては胃温存治療が一般的であり,保存療法2)や腹腔鏡手術3,4),開腹手術など複数の選択肢があるが,その適応には一定の見解がない.PPUでは選択された治療法によって短期アウトカムが左右されることと,速やかに方針を決定する必要があるため,筆者らは治療方針決定を支援するパスの有用性を以前から提起してきた1,5).本稿では,PPUの治療法選択パスについて概説する.

第Ⅰ部:クリニカルパス導入の実践 クリニカルパス作成の実例 5.肝・胆・膵

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はじめに

 近年,医療の標準化,患者サービスの向上,チーム医療・EBMの推進といった観点からクリニカルパス(以下,パス)の導入が進められている.さらに急性期病院特定加算の要件としてパス形式の入院診療計画書の作成,在院日数の規定が盛り込まれ,diagnosis related groups/prospective payment system(DRG/PPS)の導入も予想されるといったパスを推進する情勢の変化が出現している.

 当院でも昨年,クリニカルパス委員会が正式に発足し,パスの作成,審査,管理,見直しなどの活動を展開している.当科では以前から検査・治療手技に関して,前もって作成したプロトコールに基づいて術前・術後の管理を行ってきた.その中でこれまでに上部消化管内視鏡的治療,下部消化管内視鏡的粘膜切除術(EMR),内視鏡的逆行性胆膵管造影(ERCP)のプロトコールをパス化し,出血性胃十二指腸潰瘍のパスを加えて計4種類のパスを運用している.現在,その他の検査・治療手技のプロトコールのパス化を進めているが,今回は試作試行中の内視鏡的乳頭括約筋切開術(EST)のパスを呈示し,その特徴などについて述べていく.

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術後管理の標準化をはかる

 膵頭十二指腸切除(PD)の適応となる症例は一般に各施設とも多くはない.当院でも年間10~15例程度である.症例数は多くはなく,また症例ごとに経過が異なる場合も多いと思われるが,PDもクリニカルパス(以下,パス)を作成することにより,術前・術後管理を標準化し,システム化することが可能である.

 患者に対しては術前・術後の経過について説明し,理解していただくための資料となり,患者中心の医療の重要なツールとして役立つ.

 パス作成の過程を通して,術後管理の要点や問題点について,医療スタッフ間で共通の理解を形成することができるのも大きな利点として挙げられる.

 本稿では,当院の膵頭十二指腸切除術のパスについて概説する.

肝切除術のクリニカルパス 本田 五郎
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はじめに

 済生会熊本病院では年間約30例の肝切除術を行っており,肝切除術用クリニカルパス(以下,CP)は2000年5月から運用している1).当院の肝切除術は肝機能の良好な症例に対するものがほとんどであり,本CPはそのような背景のもとに作られたものである(表1,2).

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はじめに

 一般にクリニカルパスは実行するにあたってアウトカムをバリアンスから評価し適切な運用がなされる.肝臓移植が行われている施設は2002年末の日本肝移植研究会の報告によれば45施設で年間症例数は423例(内417例が生体肝移植)であり1),まだ一般病院で行える医療とはいい難い.また成人生体肝移植の場合ドナー側の因子によってグラフトサイズが制限されるので,サイズミスマッチ特に過小グラフト症例ではバリアンスが大きくなり,タイムスケジュールに大幅な変更を余儀なくされる.それに加え症例の約半数を占めるHBV,HCV肝硬変,肝臓癌症例が自費で行われ,保険適用となる原発性胆汁性肝硬変や原発性硬化性胆管炎症例でも医療費の総額は高額になることから包括支払い方式の枠外に置かれる情勢にある.一方,入院から退院までの一連のイベントをスケジュール化し,クリニカルパスで示すことは医師,薬剤師,看護師,栄養士,臨床検査技師らが共通の認識を持ち,スリムで効率の良いチーム医療を提供する上で有益なツールである.

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はじめに

 筆者らの施設における総胆管結石症の治療方針は内視鏡的乳頭切開術(EST)もしくは内視鏡的乳頭拡張術(EPBD)を行い,結石を十二指腸側へ取り出し,その後に腹腔鏡下胆囊摘出術を行うことを第一選択としている.しかしながら症例によっては乳頭筋機能を温存でき,かつ1回の手技で胆囊総胆管結石症に対する治療を完結できる腹腔鏡下総胆管切開術をその低侵襲性から施行している.今回,筆者らは腹腔鏡下総胆管切開術におけるクリニカルパスの実際を示し解説する.

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はじめに

 腹腔鏡下胆囊摘出術の適応と手術手技に関して細かい点では施設間格差が見受けられるが,一般外科の中では標準化が進んでいる術式と考えられる.このため各施設でクリニカルパス(以下,パス)の導入が進んでいる.当院でも腹腔鏡下胆囊摘出術のパスを1998年から導入し,症例の蓄積の中から各データを分析し,改訂を行い,現在に至っている.今回新たに見直しの結果,2002年8月から改訂版のパスを使用している.この改訂内容を中心に紹介する.

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はじめに

 2003年4月から特定機能病院においては診断群分類(DPC)に基づく包括定額制が導入された.今後は本邦の医療機関においても最小限の資源の投入で最大の効果を上げることが求められる.包括払い方式への対策としては,コストの把握と削減,在院日数の短縮,最適なDPCの付与,などがあげられる.

 在院日数の短縮とコスト削減の方策の1つとしてクルニカルパス(以下,CP)が重要となる.本稿では,腹腔鏡下脾臓摘出術(以下,LS)用のCPのポイントを述べたい.

第Ⅰ部:クリニカルパス導入の実践 クリニカルパス作成の実例 6.下部消化管

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はじめに

 外科領域ではクリニカルパス(以下,パス)は急速に普及し,またバリアンスが多くパスになじまないとされる疾患も対象に取り組まれている.パスの効果は医学面,医療面,病院管理面など多岐にわたって認められている.急性虫垂炎手術は術前確定診断の困難さ,術式・麻酔の変更,術後合併症,術後経過の多様性などパスを設定しにくい疾患であるが,パスを導入することで以下にあげるようないくつかの利点,とりわけ患者にとっての利点があると考え,これを重視してパスを作成した.

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はじめに

 近年各施設において医療の標準化と付随するさまざまな効果を期待して,クリニカルパス(以下,パス)が導入されている.

 当然のことながらパスは導入が目的ではなく,導入した後それが所期のとおりであるのかどうかが重要である.期待すべき効果が得られなければ改良するか,廃止することになる.

 部署,立場により期待するものはそれぞれ異なっている.患者の立場に立つと,見晴らしの良い入院計画が呈示されるのでおおむね好評のようであるが,最大公約数をとるため細かい個人差については目をつぶることになる.例えば安静度や食事制限など,万人が共通して十分に納得するものはおそらくないと思われる.

 医療現場のスタッフにとっては業務の効率化がなされるか否かが最も大きな問題点と思われる.

 消化器科はマススクリーニングの科であり,内視鏡,超音波検査などのルーチン業務が多く,またその対象者は病人とは限らず,すべての人でありうる.時間内にほとんどフリータイムのないのが一般的である.また時間外でも救急患者はひっきりなしに来院する.そのため,業務の効率化に対しては当然強いインセンティブが働く.

 このような状況の中ではパスは導入されやすい.それと他のコメディカルスタッフ,特に看護師に対するメリットもなければ頓挫してしまう.

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はじめに

 腹腔鏡下大腸切除術(以下,LAC)は進行癌に対しても保険適用となり,大腸癌に対する術式として認識が広まっている.当施設では1993年から本術式を導入,手技の習熟に伴って適応を拡大,現在では減圧不良なイレウス,開腹他臓器合併切除により予後の改善が見込まれる症例,心肺合併症などのために気腹が困難な症例のみを適応外とし,進行癌も適応に含めており,2002年12月までに大腸癌355症例に対し施行した.低侵襲性と術後早期回復が本術式の最大の利点の1つであることから,2000年3月からクリニカルパス(以下,CP)を取り入れ,入院期間の短縮,早期経口摂取を試み,腹腔鏡下手術の利点を生かすべく取り組んでいる.当施設におけるLACに対するCPの現状について報告する.

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はじめに

 クリニカルパス(以下,パス)が必要とされる理由の1つは患者中心の良質な医療を目指すためのツールとしての活用である.しかし,パスを作成はしたもののなかなか期待した医療の変化も見えず,パスの難しさを実感することも多い.

 バリアンスの分析は医療を再考する機会である.パス改訂の過程を振り返るとあらためて大きな変化に気づく.当外科ではすでに18種類のパスを使用しているが,その中で結腸切除パス(回盲部切除からS状結腸切除)について紹介する.

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はじめに

 直腸低位前方切除は現在ではほとんどが器械吻合によるdouble stapling anastomosisが行われている.以前に比べ,吻合器具の進歩にもより縫合不全の合併症も少なくなり,比較的安全に行われるようになってきた.しかし,操作および吻合部が骨盤内低位にあり,術後の縫合不全・骨盤内感染のみならず,排便・排尿・性機能障害の管理なども術後の重要な問題となってくる.

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はじめに

 近年,わが国でも医療の質と効率の向上を目指してクリニカルパス(以下,パス)が導入され,全国的に普及しつつある.当科でも腹腔鏡下胆囊摘除術,ヘルニア修復術などバリアンスの少ない術式からパスの導入が始まり,乳癌手術,幽門側胃切除術,結腸癌手術などに次第に適応を広げつつあり,現在10種類のパスが実際に運用され,効果をあげている.しかし,直腸切断術の場合は術式が術前に必ずしも決定しないこと,閉鎖孔リンパ節の郭清の有無とその程度,それに伴う排尿障害の問題,会陰部の死腔感染などバリアンスとなる因子が比較的多いのでその意義に関してはまだ不確定な部分も多い.今回呈示するパスは筆者らが現在行っている術式,郭清度を標準として設定し作成されているが,今後評価を繰り返しながら改訂していく必要があると考えている.

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はじめに

 クリニカルパス(以下,パス)は「医療の介入内容を計画化,書式化し,医療の評価と改善を行うためのシステム」1)であると言われている.

 ご承知のように肛門疾患の特徴は外科手術の中でも頻度の高い疾患で,多くの一般外科病院や医院で行われている.一方,肛門専門の施設で集中的に行われる.

 また,いくつかの基本的疾患の群に分けられることも特徴である.いずれの術式も肛門疾患の根治とともに形態・機能温存を目指して改善されている.三大肛門疾患の1つである痔核では肛門上皮軟部組織温存の結紮切除閉鎖法2),痔瘻ではくりぬき法などによる括約筋温存根治術3),裂肛ではsliding skin graft(SSG法)4)などである.更に最近の傾向としては痔核に対してレーザーや超音波といった特殊機器を用いたり,PPH法など専用機器を用いる方法も導入されている.したがって,パスを応用する対象として大いに適している疾患群であると言える.一方,患者の希望や排便困難,疼痛,出血,感染,難治,腰麻後頭痛などの術後の症状や合併症の発生によってバリアンスを生じやすい疾患でもある.

第Ⅰ部:クリニカルパス導入の実践 クリニカルパス作成の実例 7.その他

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はじめに

 鼠径ヘルニアは厚生労働省が定める短期滞在手術基本料1を申請できる疾患の1つである.つまり,同一の日に入院および退院とする日帰り手術ができる疾患として位置づけられている.よって,鼠径ヘルニア根治術のクリニカルパス(以下,パス)の最終目標は日帰り手術を基本としたパスとなる.

 当院では2003年4月15日の開院以来,鼠径ヘルニア根治術に対して日帰り手術のパスを実施しているので,当院における工夫,周術期の注意点,さらに現在のパスの問題点を紹介する.

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はじめに

 クリニカルパス(以下,パス)はチーム医療を行う上で有用なツールとして,また患者・家族,医療従事者,医療施設の各々を満足させうると期待されている.今回,当科で使用されている小児鼠径ヘルニアのパス運用の実際と問題点について述べる.

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経緯

 当院のクリニカルパス(以下,パス)は1999年年頭に全病院的に取り組むことが決定し,パス準備委員会が組織された.2000年4月からコンピュータ部門が参加し,それまで各科による手作りであったものから大きく様変わりし,カラーイラストが入った様式に統一され,パスの数も増加した.このうち下肢静脈瘤のパスは2001年7月に導入され,本年3月までに154例に使用した.

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はじめに

 国立南和歌山病院内科では1998年10月以来,糖尿病血糖管理・教育パスを活用し,退院後の血糖コントロールがパス導入前に比較して改善される治療成果を得た1~3).クリニカルパス(以下,パス)に沿った,患者中心のチーム医療による患者の血糖管理意欲高揚がその主たる要因であると考えられる.本院および他院に通院している糖尿病患者が手術を受けるケースでは平常時に比べさらに良好な血糖コントロールが要求される.手術が決定した糖尿病患者では既成の糖尿病血糖管理・教育パス2)に沿ってコントロールを行い,目標が達成できればパスを終了にして,手術を実施する科へ転科にする.そして,手術3日前から周術期血糖管理パスを内科共観にて使用開始する.このパスの担当責任者を内科医師とした.

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はじめに

 透析患者の数は年々増加し,平均年齢も徐々に高齢化している.原因疾患は糖尿病,動脈硬化症の占める割合が増加し,必然的に心疾患,脳卒中,癌,骨折を合併し,手術を受けるケースも増加傾向にある.一方,透析患者は尿毒症という特殊な病態にあるため,その周術期管理には神経を使い,クリニカルパスによる標準化には至らないのが現状である.

 本稿では当院にて作成した血液透析患者の人工骨頭置換術クリニカルパスを例に,血液透析患者の周術期(麻酔中を除いた術前・術後)管理について述べる.

第Ⅱ部:クリニカルパスをめぐる諸問題

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はじめに

 バリアンスは逸脱と解釈されてきたが,最近は「アウトカム(臨床上の目標)を達成できない状態」とより厳密でかつ明確に定義されるようになった.すなわちアウトカムを設定して初めてバリアンスの議論になるわけで,アウトカムがなければいわば行き先を定めない旅行であり,逸脱かどうかも判断できず,どこにも行けないのと同じである.治療は行き先を定めないひとり旅ではなく,目標をしっかり決め,各職種がベクトルを合わせてアウトカム達成に向けて努力する共同作業(チーム医療)である.クリニカルパス(以下,パス)でのバリアンスは定められた標準からはずれていく状態であり,そこにこそ患者の個別性が出てくる.バリアンス対処はまさに個別性に対するきめ細かい対応そのものであり,画一化とは全く相対する概念である.

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はじめに

 1999年米国医療アカデミー(IOM)から医療事故の状況が報告され,米国国内で年間4.8~9.2万人もの患者が医療事故で死亡しているという衝撃的なレポートがなされた1)(表1).わが国でも著名な大学病院での医療事故に端を発し,医療の安全対策が急務となってきた.

 当院でも1999年12月に抗癌剤の大量投与による医療事故が起きた.以来,医療安全管理委員会,QC委員会,インシデント・アクシデント報告など各種の安全管理の整備が進められた.

 クリニカルパス(以下,パス)は1999年11月に委員会が設置され,2000年から導入された.以来,バリアンス・アウトカム調査を3回行い,現在は改訂第5版を使用している.第5版では幽門側胃切除術,胃全摘,結腸切除術,年間およそ500例の患者が全く同じパス,同一の周術期管理がなされるようになり,より病棟の看護業務が簡略化するよう配慮されている.

 本稿ではパスの導入から3回の改訂を経て現在に至るまでの経緯を述べることで,パスの導入が実質的にセーフティマネジメントに貢献していることを報告したい.

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はじめに

 現在日本において,医療分野でも医療費のその伸び率を抑えようと,2003年4月からは大学病院でDPCという定額支払い方式が一部開始された.今後,これらが試金石となり,一般病院にも定額制導入が始まるのはそう遠くない時期になると想定される.一方,医療に関する国民の関心は医療の安全性,整合性という点である.このような時期に医療人として何をなすべきかと考えると,医療情報の電子化を行い,データを抽出し,これに基づいた医療の標準化,透明性の確保を行うべきであると思う.このような意味で電子カルテが運用され,またクリニカルパスがその有効なツールとなるのではないだろうか.

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はじめに

 医療はサービス業であることを十分認識しながら提供する医療の質の管理や患者満足度の向上に積極的に取り組んでいく必要がある.医療の中心に位置する患者自身の意思が尊重されることが何より重要であり,患者の意思が中心にあってこそすべての医療従事者,すべての職種間の効果的な連携が可能になり,そのことにより医療の質を向上させられると考えている.医療の流れはより効率化,より適正化,より標準化へと進んでおり,これを進めていくにはクリニカルパス(以下,パス)は有効な1つのツールである.まさにチーム医療のツールの最たるものがパスと言っても過言ではないであろう.

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はじめに

 今日,医療経済の逼迫とそれらに伴う医療行政の改変により医療環境が急激な変化を遂げつつある.医療施設においても医療の効率化,機能分担,経営改善,患者の視点に立った医療などに努力を払い,患者に選ばれる医療機関を目指しての競争社会に入った.この状況下において現在盛んに論じられ,かつ導入されつつあるのがクリニカルパス(以下,パス)である.一方,臨床検査においても1980年代初期を境に前後10数年でこれもまた急激な変化をした.この背景には自動分析機器などの普及によるところが大きく,多検体,多検査項目の処理を可能にし,診断・治療に貢献してきたことは事実である.しかしながら,わが国の国民皆保険制度による医療機関へのアクセスフリー(利便性),医療保険制度(診療報酬点数制)すなわち検査出来高払いに伴う過剰検査などを招き,これが医療費増大の一因になったこともまた然りである.これらを踏まえて政府行政機関は,「医療費抑制政策」として医療機関の存在価値をも含めたあり方を問うてきた.このような中で検査部そして臨床検査技師として「どうあるべきか?」,「何をすべきか?」.その1つにパスへの参画がある.

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はじめに

 多忙な薬剤師の業務の中で,特に臨床薬剤師が貴重な時間を費やして書かれた記録が価値あるものとしてチーム医療の中で評価されなければならない.その目的を果たす有力な手段が医師,看護師との共通システムであるPOSである.しかし,めまぐるしく変化する今日の医療の流れの中で,新たにクリニカルパス(以下,パス)がチーム医療共通のシステムとして注目され,また多くの施設で実践されている.パス導入は時代の趨勢であり,これまで医療記録として実践されてきたPOS,フォーカスチャーティングとともに記録形式の一翼を担うことになりつつある.しかしながら,パスは医療管理手法として非常に有用ではあるが,医療記録として十分であるかどうかは多くの問題もあると考える.特にチーム医療で作成された共通パス表の中の薬剤師の記録部分では薬物療法に関わる薬剤師の考え,行動が十分に表現されない点である.現状ではパスから逸脱したバリアンス部分はPOSやフォーカスチャーティングによる問題解決技法を利用するという手法は多くの施設で取り入れられている.パス表そのものにPOSを組み込み,記録の質の向上と効率化を目指し,新時代の薬剤師業務に対応するためにPOSに基づいたパス構築を目標として「POS・クリニカルパス統合型記録」を作成した.この「POS・クリニカルパス統合型記録」は,医療チームで作成されたパス表の薬物治療部分を拡大し,薬剤師としての専門的知識に基づいたケアを実践し,なおかつ薬剤師の行動を他の医療スタッフや患者に示すものである.

 POSによる論理的な問題解決思考過程を学ぶ臨床薬剤師教育の効果はパスのみでは十分でない点である.さらには薬剤師の記録が薬剤管理指導業務としての施設基準要件を満たし,算定可能であることも患者ケアの質の向上だけでなく,病院利益へ積極的に関与できることとして非常に重要な点である.パスとPOSの利点を生かし,欠点を補う記録として新しい記録システムが「POS・クリニカルパス統合型記録」である1,2)

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はじめに

 医療におけるクリニカルパス(以下,パス)の目的は,「一定の疾患を持つ患者に対して入院時から退院時までの間に対処すべき,すべての治療,処置,ケアを整理し,スケジュール表にまとめる」ことである.医療の質の標準化と作業の効率化を推進し,入院日数の短縮をはかることになる.多くの病院で看護師,医師を中心にパスの導入を進めている.一方,栄養管理や栄養教育を行う管理栄養士もチーム医療への参画が進む中で,パスへの取り組みが急速に進められている.

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はじめに

 栄養管理はすべての疾患治療の上で共通する基本的医療の1つである.一般に栄養管理を疎かにすると,いかなる治療法も効力を失い,さらに外科手術に代表される侵襲的な治療法に伴う合併症や副作用の発生を容易にすることが知られている1).したがって,栄養管理が確立された上で種々の疾患に対する治療を実施することはごく当然のことであり,治療法を対象とするクリニカルパス(以下,パス)においても,いや標準的な医療の実施をめざすパスだからこそ,グローバル・スタンダードな栄養管理法をすべてのパスの根底においておくこと(栄養パス)が必要とされる.しかし,実際の臨床の場では必要エネルギー(カロリー)や必要栄養素は治療対象となる症例個々によって異なっており,具体的に各症例の状態や各疾患治療に応じて適切な栄養管理を実施することが要求される.この各症例に最も適した栄養管理を職種の壁を越えて実践する集団(チーム)がnutrition support team(NST:栄養サポートチーム)である1,2).パスとNSTはいずれもチーム医療の1つとされるが,その活動内容は全く異なる.しかし,これら2つのチーム医療を推進していくと,これらはまさしく表裏一体(NST&Clinical Package)となるべきものであることに気づく.すなわちパスとNSTはそれぞれの長所を増幅するとともに短所を相補的に補う関係にある.したがって,パスとNSTを同時に稼働することによって,それぞれが単独で活動するよりも医療の質の向上,医療安全管理の確立,医療経済・病院経営の改善の面で飛躍的な力を発揮するものと考えられる1,3).そこで,本稿では尾鷲総合病院の病院構造改革の主軸として構築したNST&Clinical Path Complex(NCC)の概要と活動状況を紹介しつつ,NSTとパス同時稼動の有用性を概説し,さらにパスの適応を大きく拡大する目的で新たに考案したNSTパスについても言及する.

基本情報

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臨床外科
58巻11号 (2003年10月)
電子版ISSN:1882-1278 印刷版ISSN:0386-9857 医学書院

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