特集 クリニカルパスによる外科医療の進歩
第Ⅰ部:クリニカルパス導入の実践
クリニカルパス作成の実例
4.上部消化管
内視鏡的胃粘膜切除術のクリニカルパス
福田 隆
1
,
平良 高一
1
,
井川 澄人
2
Fukuda Takashi
1
1医誠会城東中央病院内科
2医誠会城東中央病院外科
pp.91-97
発行日 2003年10月22日
Published Date 2003/10/22
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407101563
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はじめに
胃における内視鏡的粘膜切除術(EMR)の対象は主には早期胃癌とadenomaである.特に今日ではリンパ節転移のない早期胃癌に対する治療法としてはEMRが外科開腹手術に代わりfirst choiceの地位を築いている.リンパ節転移がない,すなわち病変の局所切除により根治的治療が期待できる場合は低侵襲で機能温存がはかれ,術後QOLの高い内視鏡治療が外科的治療に比べて有益であることは論を俟たない.2001年3月に日本胃癌学会が提出したガイドラインにおいては,リンパ節転移がほとんどなく一括切除できると考えられる早期胃癌の具体的条件として表1の項目が示されており,これが現在早期胃癌のEMR適応基準として広く受け入れられている1).
当院においても数多くの早期胃癌,adenoma症例に対しEMRを施行してきた.1999年のクリニカルパス(以下,パス)導入以降は,原則的に重篤な合併症のないすべてのEMR症例はパスを使用して治療を行っている.当初は従来のEMR準備書を基に作成したパスを使用していたが,2002年9月にそれまでの使用症例のバリアンス分析と文献検討に基づいて大幅改訂を行い,以後新版パスとして使用している.本稿では,胃におけるEMR用パスの実際とその工夫点,特に旧版パスから新版パスへの改訂点を中心に述べて行く.なお当院では実際には電子カルテとパスを融合させた電子カルテクリニカルパス・システムでパスを運用している2)が,その特徴と有効性に関しては別項(電子カルテとクリニカルパス)に譲る.
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