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はじめに
クリニカルパス(あるいはクリティカルパス,以下パス)は米国ではDRG/PPS(医療費の診断群類別の定額支払い制度diagnosis related groups/prospective payment systems)のもとでの在院期間の短縮や医療コストの抑制などの病院経営の観点から広まった1).しかし,わが国ではパスはインフォームドコンセントの充実,チーム医療の展開,患者中心の医療への変革,医療資源の節約,安全性の向上などの医療の質を高めるツールとして認識されてきている2).
2003年から全国の82の特定機能病院で日本版DRG/PPSであるDPC(diagnosis procedure combination)による医療費の包括支払い制度が開始された3)ので,今後大学病院でのパスへの関心は急速に高まることが予想される.これまではわが国の大学病院におけるパスの取り組みは十分ではなかったようである.その大きな理由は医局講座制によるタテ割り組織の強固な大学病院では,従来のピラミッド型組織の平坦化をもたらすパス的な考え4)を受け入れにくかった面もあるが,学問・研究を重視する医師がパスを誤解して反対することが大きかったと思われる.パスに反対するおもな理由を挙げると(表1),1.プロトコールやマニュアルがあればパスは必要でない.2.個々の患者で独自の治療をするべきで,画一的なプログラムでの治療はもってのほか.とくに,バリアンスが多い進行癌や高齢者の治療にはパスの適応は難しい.3.バリアンスの多い疾患では患者は不安になるので,パスは治療の障害となる.4.パスで入院期間が短くなるので患者の満足度は向上するはずがない.5.医師の裁量権に基づいて独自の方法で治療すべきで,パスでは治療法が固定化してしまう.6.指示や記録などの業務が増えるので,かえって多忙となる.7.在院期間が短縮し病床稼働率が低下するので病院経営にはマイナスである,などである.まず,これらの抵抗勢力のパスに対する誤解を消す必要があるが,理解不足による偏見と誤解への説明は別論文を参照されたい5).
本稿では,これからパスを作成する方々にいかにして使いやすいパスを作成するか,また作成したパスをいかにして臨床現場で使われるようにするかについて,そのコツを紹介する.
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