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はじめに
多忙な薬剤師の業務の中で,特に臨床薬剤師が貴重な時間を費やして書かれた記録が価値あるものとしてチーム医療の中で評価されなければならない.その目的を果たす有力な手段が医師,看護師との共通システムであるPOSである.しかし,めまぐるしく変化する今日の医療の流れの中で,新たにクリニカルパス(以下,パス)がチーム医療共通のシステムとして注目され,また多くの施設で実践されている.パス導入は時代の趨勢であり,これまで医療記録として実践されてきたPOS,フォーカスチャーティングとともに記録形式の一翼を担うことになりつつある.しかしながら,パスは医療管理手法として非常に有用ではあるが,医療記録として十分であるかどうかは多くの問題もあると考える.特にチーム医療で作成された共通パス表の中の薬剤師の記録部分では薬物療法に関わる薬剤師の考え,行動が十分に表現されない点である.現状ではパスから逸脱したバリアンス部分はPOSやフォーカスチャーティングによる問題解決技法を利用するという手法は多くの施設で取り入れられている.パス表そのものにPOSを組み込み,記録の質の向上と効率化を目指し,新時代の薬剤師業務に対応するためにPOSに基づいたパス構築を目標として「POS・クリニカルパス統合型記録」を作成した.この「POS・クリニカルパス統合型記録」は,医療チームで作成されたパス表の薬物治療部分を拡大し,薬剤師としての専門的知識に基づいたケアを実践し,なおかつ薬剤師の行動を他の医療スタッフや患者に示すものである.
POSによる論理的な問題解決思考過程を学ぶ臨床薬剤師教育の効果はパスのみでは十分でない点である.さらには薬剤師の記録が薬剤管理指導業務としての施設基準要件を満たし,算定可能であることも患者ケアの質の向上だけでなく,病院利益へ積極的に関与できることとして非常に重要な点である.パスとPOSの利点を生かし,欠点を補う記録として新しい記録システムが「POS・クリニカルパス統合型記録」である1,2).
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