臨床眼科 48巻3号 (1994年3月)

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緒言

 落屑緑内障exfoliation galucomaは落屑症候群に伴って発症する原因不明の緑内障である。高齢者の水晶体前嚢の落屑と緑内障の関係はVogt1)によって注目され,水晶体嚢緑内障galucoma capsulareと呼ばれた。その後,水晶体前嚢の病理組織学的検索で,落屑は水晶体前嚢の剥落によるものではないこと,落屑物質は水晶体表面だけでなく,虹彩表面,角膜後面,線維柱帯,虹彩後面,毛様体,チン小帯などにも認められることが明らかにされた。水晶体表面の落屑物質は水晶体嚢偽落屑と呼ばれ2),ガラス吹き工などに認められる真の水晶体嚢落屑と区別されてきたが,落屑物質は眼球内の各組織や眼球外の組織にも認められることから,最近では落屑症候群exfoliation syndromeの名称が用いられる傾向にある。

 落屑症候群は世界でもっとも早く高齢化社会をむかえた北欧諸国で高頻度にみられ,その他の国では比較的まれな疾患とされてきた。注意してみると,わが国でも50歳以上の高齢者にみられる開放隅角緑内障の大半は落屑緑内障であり,眼科臨床における重要な疾患のひとつになっている。

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 Lacquer crack lesion (以下LC)を有する26名35眼の病的近視眼に対し,平均6年7か月にわたり,LCの経過を観察した。その結果,35眼中21眼(60%)において,LCから他の近視性眼底病変への移行がみられ,その内訳はびまん性面状病変に9眼,斑状病変に9眼,血管新生型黄斑部出血に1眼,黄斑部萎縮に2眼であった。経過観察中に他の病変に移行しなかったものは35眼中14眼であった。

 以上から,強度近視性眼底病変において,LCは様々な病変に移行する予後不良の徴候である可能性が示唆された。特に斑状病変への移行が比較的多くみられたことは,視力予後の上で注意を促すものと思われた。

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 網膜血管閉塞性疾患は,高血圧,糖尿病,心臓血管病変,脳血管病変などの増加に伴い増加しつつある。Color DoPPIer imaging (以下CDI)は無侵襲に眼動脈,網膜中心動脈などの血管造影ができ,上記病変における眼循環動態の把握に有用である。今回,超音波診断装置SSA−260A (東芝)と付属の7.5MHzのリニア電子式プローブを用いた。対象は53〜77歳の男女25名で,正常者が12名,網膜血管閉塞性疾患患者が13名である。眼動脈については正常者で12眼,網膜血管閉塞性疾患患者で17眼が血管造影と流速計測が可能であった。網膜中心動脈については正常者で15眼,網膜血管閉塞性疾患患者で16眼が血管造影と流速計測が可能であった。平均流速については,眼動脈において,正常者では24.9cm/秒,網膜血管閉塞性疾患患者では16.2cm/秒であった。網膜中心動脈において,正常者では7.9cm/秒,網膜血管閉塞性疾患患者では5.2cm/秒であった。CDIは網膜血管閉塞性疾患の定量的診断,経過観察,治療効果判定などに有用な方法であると考える。

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 摘出豚眼を用いて,後房レンズ毛様溝縫着術施行時における残余硝子体と後房レンズとの関係を比較検討した。この際に,フルオレセイン液を用いて残余硝子体を染色し,眼球後面からの観察,およびエンドスコープにより硝子体と後房レンズとの関係の観察を行った。経瞳孔前部硝子体切除術を行った群においては,後房レンズのループへの残余硝子体の絡みや巻き込みが認められ,経毛様体扁平部硝子体切除術を行った群においてはそのような所見は認められなかった。後房レンズ毛様溝縫着術施行時には可及的に硝子体を切除すべきであると考えられた。

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 フォトコンパクトディスクはポジまたはネガのフィルムをデジタル化し,それをコンパクトディスク(CD)のデータとして記録したものでコンピュータやプレーヤでみることが可能である筆者らは今回フォトコンパクトディスクという新しいシステムを導入し,写真データの有効利用を試みた。デジタル化した画像を保存することにより,データの劣化がなく,画像の補正,修正も簡単におこなえ,データベース化も容易である。CD—ROMのメディアを使うことによって,取り扱いも容易で,誤って消去することもない。インデックスペーパーが付属しているため,記録されている画像やその番号がすぐに解る。同時に,画像を保存するメディアとしてもCD-ROMは,光磁気ディスクと比べ,費用が非常に安いメリットもある。

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 C型肝炎ウイルス(HCV)関連網膜症10症例について,網膜症と血清トランスアミナーゼ値の変動の関係を検討し,網膜症の発症機序およびインターフェロン(IFN)の投与による網膜症の誘発性について考按した。10例すべてにおいて,IFN投与の有無にかかわらず,網膜症の誘発あるいは悪化が認められた時期は,一時的に肝機能が悪化して血清トランスアミナーゼ値が上昇してからピークを形成し,約1〜4か月後であった。今回の結果から,生体の自然防御機構ないしはIFN投与に伴う治癒過程により,HCV感染肝細胞が崩壊し,循環血液中にHCVが逸脱後に免疫複合体が形成されて網膜症を発症する機序が考えられる。

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 佐賀医科大学眼科を受診した病型が同定できない内因性ぶどう膜炎の中で,前部ぶどう膜炎を除外した症例29例中の35%がHTLV-I抗体陽性者であった。HTLV-I抗体陽性者とHTLV-I抗体陰性者にわけてそれらの症例の眼科的病像を比較すると,HTLV-I抗体陽性者の方にベール状(膜状)の硝子体混濁が多くみられたが,その他には差はみられなかった。

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 ベーチェット病68例の治療を行い,各薬剤の眼症状に対する効果を比較検討した。主として局所療法のみの軽症例は女子に多くみられた。コルヒチン投与群は41%が有効であった。シクロスポリンA投与群では69%が有効と認められた。難治性ぶどう膜炎は68例中7例(10%)であった。FK506は7例中5例が有効であった。シクロスポリンAの投与期間は平均2.0年で,2〜3年で中止する症例が多かった。FK506の投与期間は平均9.3か月であり,主として随伴症状のため7例共中止となった。随伴症状は中枢神経症状,発熱および貧血が多くみられた。

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 切迫黄斑円孔の手術適応については現在議論されつつある。筆者らは予防的硝子体手術を行った9例11眼を検討し,その手術適応について考察を行った。Stage 1—Bの6眼中5眼,Stage 2の5眼中5眼,計10眼が2段階以上視力向上し,視力低下例はなかった。Stage 1—Bで手術を施行した症例は全例視力1.0以上を保持しており,Stage 2に比べ視力予後良好であった。特徴的な眼底所見を呈し,患者の十分な理解と同意が得られれば,片眼に黄斑円孔を伴わなくても早期に手術を行っても良いと思われた。

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 眼圧には日内変動が存在するが,眼圧スクリーニングでは,測定時間は必ずしも考慮されていない。筆者らは,1泊2日の人間ドック受診者1,097例に対して,初日の14時と翌日の9時の2回眼圧を測定し,その差異について検討した。その結果,右眼の平均眼圧は,14時が12.9±2.6mmHg,9時が14.0±2.8mmHgで,9時の眼圧が有意に高く(P<0.0001),9時の眼圧から14時の眼圧を引いた眼圧差は,9時の眼圧と正の相関を示した(R=O.419,P<0.0001)。また,21mmHg以上の眼圧は,14時が7例10眼,9時が20例30眼に記録され,21mmHg以上の眼圧は9時に多かった(χ2検定,P<0.005)。したがって,眼圧スクリーニングは午前に行うことが望ましいと思われた。

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 片眼もしくは両眼失明しているらい患者100例の失明原因について検討した。年齢は,55〜91歳の平均75歳であった。類結核型は3例のみで,らい腫型は93例,4例はそれ以外の型であった。僚眼も視力不良例が多く認められた。失明時期は,多くの症例が1945〜1955年の間であり,らいの化学療法が施行される以前に眼症状が悪化したと考えられた。失明原因には,虹彩毛様体炎が最も関与していた。この虹彩毛様体炎は,皮膚かららい菌が検出されなくなってからも,沈静と再発を繰り返していた。虹彩毛様体炎と兎眼性角膜炎が,今後の視力維持の重要な問題点であると思われた。

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 血液透析患者49例(うち糖尿病患者23例)98眼にシルマーテストI法の変法を行い,涙液の基礎分泌を測定した。また,自律神経障害の指標を示す心電図CVR-R%(以下%CV),眼底所見,血清クレアチニン値およびHbA1cを検査し,シルマー値と比較検討した。

 血液透析患者の平均涙液基礎分泌は6,94mmと低下を示していた。このうち,涙液基礎分泌が5mm以下は,非糖尿病患者群24眼(46%),糖尿病患者群は31眼(67%)と糖尿病患者群に多かった。

 血液透析患者の%CVは1.53%と低下を認めた。糖尿病患者群では%CVとシルマー値に相関関係(r=0.491,P<0.05)を認めたが,非糖尿病患者群の%CVとシルマー値に相関関係を認めなかった。

 シルマー値とクレアチニン値の間に相関関係を認めなかった。シルマー値とHbA1cの間に相関関係を認めなかった。

少数切開放射状角膜切開術 百瀬 皓
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 角膜のある経線に沿う放射状切開(R—切開)は,角膜全周を弛緩させ,角膜中央部をどの経線の方向にも扁平化し,角膜乱視をひき起こすことなく屈折度を減少させる。したがって軽度近視の矯正には1〜3本の切開で十分な場合がある。この1〜3本の切開法を少数切開放射状角膜切開術(以下少数切開R-K)と呼ぶことを提唱する。少数切開R-Kは角膜に対する手術侵襲が少なく,創傷治癒が早く,角膜と屈折度の安定が早く,角膜穿孔の頻度が少なく,過矯正と進行性遠視化の頻度が少なく,再手術のスペースも十分にある等の特長がある。筆者は13人20眼に少数切開R-Kを行い良好な結果を得た。

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 先天性感音性難聴,網膜色素変性,部分白内障を合併するUsher症候群は,本邦では比較的まれな疾患である。その重症度,進行度,全身症状の合併などからtype Ⅰ〜IVの4型に分類されている。筆者らは,今回type I Usher症候群に罹患した34歳と32歳の兄弟例を経験した。家族歴では,両親が従兄妹結婚であった。電気生理検査では,nonrecordable ERGを認めたほか,EOGのslow oscillationはflat typeを,fast oscillationでは消失のFOパターンを認めた。

 本症候群は30歳台以降にいわゆる3重苦となる可能性が高く,患者のquality of lifeは極めて乏しく,家族の負担は計り知れず,慎重な対応を要した。

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 胸肋鎖骨過形成症は胸骨,肋骨,鎖骨に異常骨化をきたす自己免疫疾患と考えられているが,これまで眼合併症の報告は知られていない。症例は59歳男性。前胸壁の疼痛・腫脹を主訴とし,CRP, ALP,赤沈,血清 IgG, lgA,抗核抗体の上昇が認められ,胸部X線で胸肋鎖骨の著明な肥厚,骨シンチグラムで RIの集積像が認められ,胸肋鎖骨過形成症と診断された。眼科的には両眼に軽度の前房混濁,角膜後部沈着物等の前部ぶどう膜炎の所見を認め,眼圧右18mmHg左33mmHg,左眼隅角は Shaffer II,pigment II,虹彩前癒着を認めた。左眼乳頭に緑内障性陥凹を認め,左眼視野は鼻側階段を認め,左眼続発性緑内障が考えられた。HLAはB52, B61, Cw3, DR2, DR12が陽性であり,仙腸関節の異常も認められた。本疾患の病因については,免疫異常をはじめ多方面からの検討が必要であることが考えられた。

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 生後1年以内に発症した乳児内斜視34例について,調節性要素に重点をおいて検討したところ,完全調節性が3例(8.8%),一部調節性が13.1列(38.2%),非調節性が16例(47.1%),手術後に調節性要素がみられたものが2例(5.9%)であり,全体の52.9%に調節性要素が関与していた。調節性要素が関与している症例の最低遠視度は,最小錯乱円で+1.5Dであった。乳児内斜視といえども,調節性要素が関与しているものは多くみられ,+1.5D以上の遠視がある場合,調節性要素の存在を考慮にいれ,十分に屈折矯正を行ったうえでの眼位観察が必要であると思われた。

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 緒言 角膜のSchnyder's crystalline dystrophyは1929年Schnyder1)によって報告された疾患で,両眼の角膜中央に針状結晶による円板状混濁を呈する常染色体優性遺伝を示す角膜変性症である。稀な疾患で,本邦では5家系11例の報告があるのみである2〜6)。今回筆者らは本症と思われる1症例を経験したので報告する。

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 緒言 球結膜下出血は,高血圧,糖尿病,そして高脂血症などの全身疾患に伴って発症することがあるといわれており1,2),成人病と何らかの関係があると思われる。そこで球結膜下出血と血液の脂質代謝との関連を追及するために,主要な血清脂質およびアポ蛋白を測定した。

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 緒言 慢性腎不全の治療として近年盛んに腎移植が行われるようになり,医療技術の発達によりその生着例も増加してきた。しかし,移植後の大量の副腎皮質ステロイド薬(以下ステロイド)や免疫抑制剤の投与により眼科領城における眼合併症も後嚢下白内障を始め多くの報告がなされてきた1〜3)。今回筆者らは,腎移植後に見られた網膜色素上皮剥離の1例を経験したので若干の知見を加えここに報告する。

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 緒言 角膜ヘルペス患者では時に結膜にも樹枝状,地図状の潰瘍が合併することが知られており,わが国では結膜ヘルペスとよばれている1〜2)。これとは別にヘルペス性結膜炎という用語があるが,ヘルペス感染によって生じる濾胞性結膜炎のことを指している。結膜ヘルペスはヘルペス性結膜炎とは別の病態であり,混乱を避ける意味でヘルペス性結膜潰瘍と命名した方がよいかもしれない。ヘルペス性結膜潰瘍では潰瘍部よりヘルペスウイルス(以下HSV)が分離されることが報告されており1〜3),角膜における樹枝状角膜炎・地図状角膜炎と同様に,結膜上皮においてウイルスが増殖している病態と考えられる。なお,従来の報告はほとんどが再発例における発生である。

 初感染のヘルペス性結膜炎におけるヘルペス性結膜潰瘍の発生については成書にも記載されているが,初感染であることの根拠が明確でかつウイルスの分離同定がなされている報告は見当たらない4〜6)。今回筆者らはウイルスの分離同定,血清抗HSV抗体価の測定により初感染と考えられるヘルペスでヘルペス性結膜潰瘍を発生した症例を経験したので報告する。

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 緒言 アトピー性皮膚炎に伴う眼病変として,白内障や網膜剥離の発生は周知の事実であるが,その発生原因が明らかでないことから1),難治性のことがある。白内障のために眼底透見が不可能であっても網膜剥離の存在に留意すべきである。今回,筆者らはアトピー性皮膚炎にSchwartz症候群の様相を呈した網膜剥離を合併した症例を経験したので報告する。

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 緒言 脂肪肉腫は軟部組織に生ずる悪性腫瘍のうち発現頻度の高いもののひとつであり,四肢,特に大腿部,躯幹,後腹膜に生ずることが多い1,2)。眼科領域,特に眼瞼に生じた例は非常に稀である。今回筆者らは眼瞼脂肪肉腫の1例を経験したので報告する。

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 緒言 近年,角膜乱視が外眼筋や眼瞼圧のような外圧と関連する一方,内圧としての眼圧に影響されることが臨床的にも,実験的にも報告されている1,2)。そこで筆者らは,眼球周囲組織が特異的に障害を受ける疾患のひとつとして知られているバセドウ病性眼症において,なんらかの変化が角膜乱視に出現していないかを調査した。

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 緒言 結膜は稀ながら悪性リンパ腫の原発組織となることが報告されている1〜3)。結膜原発の悪性リンパ腫はその大部分がB細胞性で,また悪性度の低いものとされており,かつては,偽リンパ腫pseudolymphomaと診断されていたものもあるようである。これらの腫瘍のモノクロナリティの証明には,免疫組織化学的検索や免疫グロブリン遺伝子再構成の検索によるモノクロナリティーの証明が非常に有用である4)。一方,Issacson5)は,粘膜組織原発の悪性リンパ腫をmucosaassociated lymphoid tissue lymphoma (MALT lymphoma)と一括して,ひとつのclinical entityに統合することを提唱しているが,現在のところ一致した見解が得られるには至っていない。今回,筆者らは,左下眼瞼結膜に原発し,放射線治療1年後に,右眼瞼結膜に転移したB細胞性悪性リンパ腫の1例を経験した。

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 緒言 本態性眼瞼痙攣とは,眼部に明らかな原因を認めずに不随意に眼輪筋の収縮が起こり,瞬目の増加や一時的に開瞼が困難となる疾患であり,患者の苦痛が強くしかも治療に悩まされることが多い1)。その原因はいまだ不明であるが,精神的な要因が強調されすぎ,眼科的要素が軽視されている傾向がある。今回,本態性眼瞼痙攣の症例を検討した結果,遠視や老視が大いに関与していることが推測されたので報告する。

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 緒言 甲状腺眼症の眼瞼障害のうち眼瞼後退症の治療には,早期は交感神経遮断薬(guanethidine)点眼,進行例には手術療法が行われている1)。今回,筆者らは眼瞼後退症が主体の甲状腺眼症の症例に対し,水性懸濁ステロイドtriamcinolone acetonide(ケナコルト-A®)の眼瞼への注入およびβ-遮断剤点眼の併用療法をおこない有効例を経験しているので,治療方法およびその適応について報告する。

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 緒言 円板状角膜炎や桐沢型ぶどう膜炎の一部が帯状疱疹ウイルス(varicella-zoster virus:VZV)の感染によって生じることはよく知られている。しかし,VZVの眼局所からの分離は,ほとんどの場合困難で,臨床的には眼所見や抗体価でVZVによる感染を推定する他はなかった。最近開発された合成酵素連鎖反応(polymerase chain reaction:PCR法)は局所の微量なウイルスDNAを検出することができて,診断の一助とすることができるようになった。今回筆者らは,いくつかの眼疾患に対してPCR法を試みたので,その結果を報告する。

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 緒言 眼部帯状ヘルペスは高齢化とともに増加しているが,角膜ヘルペスと同様にその臨床病型分類は確立されていない。筆者らは自験例をもとに,本症の角膜病型を中心に検討した。

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 緒言 角膜移植手術は手術器械や手技の発展から最近良好な手術結果を得るようになった。今回,1982年の山梨医科大学眼科開設以来,これまでに施行された全角膜移植術施行症例の結果を検討した。

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 緒言 Wegener肉芽腫症は壊死性肉芽腫性病変と血管炎の両者からなる原因不明の全身疾患であり,しばしば強角膜壊死を主とする重篤な眼病変を発症する。その合併症のひとつである角膜潰瘍は深く,強膜側に進展し,しばしば眼球穿孔などを引き起こし,最悪の場合失明や眼球摘出にいたることはよく知られている。近年,眼合併症に対してもステロイド剤やシクロスポリン(ciclosporin,以下CYA)などの免疫抑制剤の全身投与の有効性が報告されてきている1〜4)。しかしステロイド剤の点眼や結膜下注射といった局所治療に関しては無効であったという報告がほとんどである5)。今回,筆者らは原因不明の強角膜潰瘍にてCYAの点眼治療を行い,良好な経過を示していた症例が心不全のため急死し,病理解剖の結果Wegener肉芽腫症と診断された1症例を経験したので報告する。

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 緒言 網膜色素変性症(以下本症)の合併症はいろいろあるが,重大なもののひとつとして緑内障があげられる。病型としては原発性閉塞隅角緑内障が最も多く,他に原発性開放隅角緑内障,続発性緑内障などが報告されている。しかしながら本症について,緑内障を伴うことが多く,高齢者に多発するとされている水晶体嚢偽落屑(以下偽落屑)に関する報告はない。今回筆者らは,本症と偽落屑の関連について検討したので報告する。

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 緒言 毛様体冷凍凝固術は緑内障難治例に施行される術式であり,眼圧に対する定量性,術後の疼痛,白内障の進行など問題も多く,適応症例も限られ,手術成績の報告も少ない1〜3)。今回筆者らは毛様体冷凍凝固術の眼圧下降に対する効果を検討したので報告する。

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 緒言 原発開放隅角緑内障(以下POAG)に対するトラベクロトミーの単独手術とジヌソトミー併用手術の比較検討において,併用手術眼で術後の一過性視力低下をしばしば経験した。検査の結果,術後角膜乱視が最大の因子であると考えられたため1),各手術が術後角膜形成に及ぼす影響について比較検討した。

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 緒言 シリコーン眼内レンズ(intraocular lens:IOL)は小切開から移植可能であり,術後早期の視機能回復が期待できる。しかし,レンズデザインによっては,強い前嚢収縮,レンズの偏位,前房内への脱臼,bulgingなどの合併症の報告例がある1,2)

 今回,当科でシリコーンIOLの導入初期に使用されたワンピース型IOLが,術後21か月を経て自然破嚢を起こしたと考えられ,硝子体腔へ完全脱臼した稀な症例を経験し,それを治療し得た。その手術方法を報告するとともに,自然破嚢の原因について若干の考察を加えた。

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 緒言 白内障眼や偽水晶体眼の視力検査にもグレアー試験,コントラスト感度試験が用いられるようになり,術前・術後の視機能評価に有用な手段となっている。コントラスト感度試験は,見え方を質的に把握する上では優れた検査と言えるが,検者側にとっては得られた感度値から患者の見え方を評価することは難しい。筆者らは今回,コントラスト感度を加味した簡便な視力検査として,低コントラストの「ひらかな視力表」を試作したので,その有用性について検討を行った。

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 緒言 超音波乳化吸引術(phacoemulsificationaspiration:PEA)を効率良くかつ安全に行う目的で,超音波発振方式を連続発振とパルス発振とに使い分け,両者の超音波発振時間およびエネルギー量を比較し,効率的なパルスモードの使用法について検討した。

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 緒言 シリコーン眼内レンズは,その屈折特性から比較的大きなA定数が設定されている。シリコーン眼内レンズの術後屈折の変化については,PMMA眼内レンズほどはデータの蓄積がなされていないと思われるので,術後屈折値の結果からこのレンズのA定数の補正を試みた。術式が異なる術者別のpersonal A con—stantを求めることが理想的であるが,自己閉鎖創の作成と眼内レンズの嚢内固定がほぼ確実となった現在,術者による変動は少なくなり,この補正値は他の術者の参考になると考えられる。

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 緒言 後発白内障による視力低下は,水晶体嚢外摘出術後の50%に発生するとされ,術後視力低下の最大の原因である1)。通常,YAGレーザーによる後嚢切裂術が行われるが,通院を中断した患者には施行できない点が問題である。1990年,Gimbel2)の提唱したpos—terior continuous curvelinear capsulorhexis (以下PCCC)は,破嚢した後嚢を円形に切除する方法であり,後発白内障による視力低下を防ぐ効果がある。筆者らは,後発自内障による視力低下を予防するため意図的にPCCCを行い,術後成績と合併症について検討した。

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 緒言 増殖糖尿病網膜症(proliferative diabetic retinopathy:PDR)に対する硝子体手術を確実に行うために,永年の福岡大学眼科での経験をふまえて,術前に手術方法を決定して手術を行い,prospectiveにその結果を検討した。

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 緒言 青壮年者を中心として梅毒性網脈絡膜炎の報告が近年増加しつつある1〜3)。その眼所見は網脈絡膜炎,網膜血管炎を主とするが,網膜浮腫,ごま塩状眼底,眼底の灰白色調変化,網膜出血,硝子体混濁,視神経炎,視神経乳頭浮腫,視神経萎縮,網膜色素上皮剥離および網膜剥離など多彩である1〜3)。今回,血清梅毒反応が強陽性を呈する極めて難治でかつ特異な経過をたどった片眼性のぶどう膜炎を経験したので報告する。

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 緒言 C型肝炎あるいはそれに対するインターフェロンα投与に関連して生ずる網膜症が近年注目されている1〜3)。綿花様白斑や線状出血が共通の眼底所見としてみられ,免疫複合体による血管閉塞やC型肝炎ウイルス(hepatitis C virus:HCV)による直接の血管障害などがその原因として考えられている1〜3)。今回,極めて特異な進行を呈した両眼の閉塞性網膜動静脈炎を経験し,HCVとの関連が疑われたので報告する。

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 緒言 強度近視は,視覚障害の原因の上位を占め1),視機能に様々な障害を起こすことがよく知られている。視機能障害のうち,視野異常は病的近視の,初期の視機能異常として大切であるが,静的量的視野計測による検討は,黄2)の報告があるのみである。今回は,強度近視の視機能の初期の経時的変化を知る目的で,豹紋状眼底のみで,かつ矯正視力も良好な症例について静的量的視野計測を行い,その結果を部位別に比較検討した。更に多変量解析法(数量化Ⅱ類)を用いて,年齢別,性差別,屈折度別,眼軸長が経時的変化に及ぼす影響についても検討を試み,興味ある知見が得られたので報告する。

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 緒言 筆者ら1)は,前報において中心性漿液性脈絡網膜症(central serous chorioretinopathy:CSC)の再発例のフルオレセイン螢光眼底造影(fluoresceinangiography:FA)の検討で,その成因が単純ではないことを指摘した。今回,その成因の一つと考えられる脈絡膜の循環障害の関与を検討するため,再燃または再発を繰り返した症例にインドシアニングリーン赤外螢光眼底造影(indocyanine green angiography:IA)を施行した。

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 緒言 膜性増殖性腎炎(membranoproliferativeglomerulonephritis,以下MPGN)は,ネフローゼの10%位に見られ,腎メサンギウム領域の細胞基質の増生と糸球体基底膜の肥厚を示し,IgG,C3,C4,Clqなどの濃染沈着物の部位により3型に分類されている。1989年のDuvall-Youngら1)の報告以来,MPGN2型では眼底変化として,ドルーゼン様の沈着物,脈絡膜新生血管,網膜色素上皮萎縮などがある2-4)が,MPGN1型の報告はない2,3)。今回筆者らはMPGN1型で漿液性網膜剥離(serous retinal detachment,以下SRD)を繰り返し,網膜色素上皮剥離,網膜下沈着物などを認めた症例を経験したので報告する。

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 緒言 裂孔原性網膜剥離では前房フレア値が正常コントロール群に比べ有意に上昇しており,臨床因子の中で,脈絡膜剥離の有無,網膜剥離の範囲,眼圧,剥離期間,裂孔の位置,水晶体の有無の6項目が前房フレア値と有意な相関関係を持つこどが第1報1)で得られた。今回筆者らは,臨床因子と前房フレア値の1対1の関係のみだけでなく各因子の関係について多変量解析を用いて検討を加えたので報告する。

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 緒言 Macular pucker (以下黄斑パッカ)は,網膜剥離術後,増殖硝子体網膜症,糖尿病網膜症,ぶどう膜炎などに認められ,視力低下,変視症,さらには牽引性網膜剥離などをきたし,その発生にはグリア細胞,網膜色素上皮細胞,炎症細胞,硝子体皮質などが関与しているとされている1〜3)。硝子体手術後にグリアの再増殖により黄斑パッカをきたした増殖糖尿病網膜症の膜剥離手術の成績を報告する。

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 緒言 黄斑円孔の硝子体手術による円孔の閉鎖と視力改善が近年報告されている1)。しかし,その術後視機能に関する詳細な検討はいまだなされていない。グレアは眼内で散乱する光による網膜像のコントラストの低下であり,それによる視機能の低下は,中間透光体の混濁2,3)のみならず,網膜,視神経疾患においても報告されている4)。筆者ら5)は,後部硝子体膜症候群の硝子体手術後のグレア難視度についてすでに報告した。今回は,同じく後部硝子体膜の関与する特発性黄斑円孔閉鎖症例について,グレア難視度の測定による評価を試みた。

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 緒言 網膜色素変性症(retinitis pigmentosa:RP)は遺伝性の変性疾患で,夜盲,視力低下が徐々に進行し,最終的には失明の危険を伴う。分子生物学の進歩により常染色体優性RPおよびX染色体性RPにっいては遺伝子診断が可能になったが1),いまだ有効な治療法は皆無である。

 筆者らは高圧酸素療法(hyperbaric oxygen ther—apy:HBOT)がRP患者の視力向上に有用であることを見いだしたので報告する。

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 緒言 網膜色素変性症に対する治療法として,高圧酸素療法や星状神経節ブロックは以前より試みられてきたが,その評価は一定していない。近年,渥美ら1,2),松村ら3)は網膜色素変性症患者に高圧酸素療法を行い視力,中心フリッカー(以下CFF)の改善を認め有効であったと報告している。筆者らも高圧酸素療法を網膜色素変性症患者に対し試みたのでその結果を報告する。

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 緒言 小児視神経炎は多くの特徴をもつとされているが1-4),発症頻度が低いため,臨床統計や成人の視神経炎(以下,成人例とする)との比較検討に及ぶものは少ない。今回筆者らは,当教室における過去12年間の小児視神経炎について,成人例との比較検討および文献的考察を行った。また,最近経験した症例も供覧する。

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 緒言 小児の視神経炎は成人に比べ頻度が少なく,その臨床像は,両眼性,乳頭炎型が多く,回復が良好といった特徴を持っている。今回筆者らは,無菌性髄膜脳炎の経過中に片眼性の球後視神経炎と思われる症状を呈した14歳の症例を経験したので報告する。

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 緒言 Leber病は重篤な視力低下をきたす両眼性の遺伝性視神経疾患として知られており,その病因についてもミトコンドリアDNA (以下mt-DNA)遺伝子の変異が発見されることにより徐々に明らかにされつつある。しかし,単に遺伝的要因だけでなく,何らかの誘発因子が存在する可能性は以前から指摘されている。例えばNewmanら1)は全身疾患,栄養障害,ミトコンドリアエネルギー産生に毒性のある物質を,Wilsonら2)はタバコ,アルコール摂取によるシアン化合物の蓄積を誘因として唱えている。本邦でも頭部外傷が誘因となった症例がいくつか報告されている3)

 今回筆者らは両眼に高度の眼圧上昇をきたし,その後急激な視力低下をもって発症したLeber病の症例を経験した。その発症に高眼圧の関与が考えられるので,他に同様の報告例はないが,本症の発症機転をさぐるうえで貴重な症例と考え報告する。

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 緒言 神経サルコイドーシスは脳実質内,髄膜,脳神経,末梢神経,脊髄,筋肉など神経系のあらゆる部位に発症する。特に腫瘤形成型は髄液循環の障害から致死的になることもあり,早期診断が極めて重要である1)

 今回筆者らは,眼科的検査を糸口に,神経サルコイドーシスによる尿崩症と診断され,早期治療により良好な予後を得るに至った1例を経験したので報告する。

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 緒言 偽性脳腫瘍(pseudotumor cerebri)は,頭蓋内に空間占拠性病変が存在しないのに頭蓋内圧充進症状を示す症候群で,両眼うっ血乳頭をみる,脳脊髄液圧の上昇はあるが髄液成分は正常,局所的神経症状を認めず,脳室系の拡大・偏位はないといった特徴がある1,2)。良性頭蓋内圧亢進(benign intracranial hyper—tension)とも呼ばれ,自然治癒傾向が強いが,一部に視機能転帰が「良性」でない症例がある1,2)。今回筆者らは,真性多血症および横静脈洞血栓症を伴った偽性脳腫瘍の1例を経験し,脳室—腹腔シャント術によりうっ血乳頭の改善が得られたので報告する。

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 緒言 急性特発性視神経炎は自然緩解が見られる疾患であるが,通常はステロイド療法を行ってきた。そのためそれぞれの症例で副腎皮質ステロイドが奏効したのかどうか判然としないのが常であった。そこで,最近筆者らが経験した症例についてステロイド療法を行ったものと行わなかったものとについて,retro—spectiveにその経過の比較を行った。

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 緒言 ハイドロダイセクションを水晶体深層にも行うことにより,より小さな水晶体核中心部を分離して8mm以下の切開創1)で水晶体嚢外摘出術(extracap—sular cataract extraction:ECCE)を行っているのでその手術手技について報告する。

連載 走査電顕でみる眼組織……What is This?・9

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網膜毛細血管外表面の走査電顕写真。毛細血管壁にペリサイト(P)が観察される。ペリサイトは一次突起(矢印)を様々な方向に伸ばしているのがよくわかる。塩酸・コラゲナーゼ消化法。家兎眼。×5,200

連載 眼の組織・病理アトラス・89

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 前眼部に鈍的外傷を受けた際に,外傷の直後あるいは数か月経過して,眼内圧が上昇する。これを隅角後退緑内障angle recession glaucoma,あるいは打撲緑内障contusion glaucomaという。

 虹彩根部が離断したものを虹彩離断iridodialysisといい,毛様体実質が裂けて毛様体経線線維と輪状線維が離れるものを隅角離断goniodialysisという。すなわち,隅角離断では毛様体の経線線維は強膜に付着したままである。毛様体筋の全てが強膜から完全に離れるものを毛様体離断cyclodialysisと呼ぶ。

連載 眼科手術のテクニック—私はこうしている・63

網膜下液排液の方法(3) 樋田 哲夫
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 網膜下液排液の手技と注意点については前2号で十分に述べられており,筆者の方法もほとんど変わりはない。冷凍凝固とエクソプラントを主体としている術者として,いくつかの相違点を加えることに留める。

連載 今月の話題

虚血性視神経症 前田 修司
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 前部虚血性視神経症(以下AION)の臨床症状は特徴的であり典型的なものは診断に迷うことはないが,ひとたび診断困難なものに遭遇するとその診断は診断医の先入観,偏見に左右される恣意的なものとなりがちである。これまでのところ視神経乳頭の循環動態を他覚的に定量化する方法はなく螢光眼底撮影もその力には限界がある。現在AIONの持つ大きな問題の一つはその診断のあいまいさである。少なくとも科学的な土壌の上でAIONの話をするための共通のAIONの診断基準の確立が望まれる。

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緒言

 近年,原発閉塞隅角緑内障の治療にアルゴン・レーザー虹彩切開術(以下LI)が広く行われ,その有効性が確かめられている。観血的手術に比較しても簡便で合併症の少ない方法であると考えられ,今や観血的手術をみる機会も少ない。また狭隅角眼に予防的にLIを施行することも多い。しかし,合併症の少ないと考えられていたLIであったが,1988年にSchwartzら1)により,LI後に生じた水庖性角膜症が報告されて以来,世界各国で報告が相次いだ2,3)。しかしながら,本邦ではLI後の水庖性角膜症の報告は,筆者らの知る限りまだなかった。最近筆者らはLI後に生じた水庖性角膜症症例を相次いで経験したので若干の考察を加えて報告する。

眼科の控室

病状説明
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 外来の初診で診察がすむと,次に来るのが病気の説明です。

 どうでもよい疾患なら別に問題はないのですが,大事なのが,網膜剥離や緑内障など,放置すれば失明する可能性が大きい病気の場合です。

 病気の名を告げることはもちろん必要ですが,是非強調していただきたいのが,病気の予後のことです。

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 小切開創白内障手術後の角膜形状変化を,角膜形状解析装置を用いて検討した。対象は切開創幅5mmのインフィニティー(∞)縫合群21眼と,同じく切開創幅5mmの無縫合群20眼である。

 ∞縫合群では,術後早期(1週)に切開創に相当する45°−135°方向にsteep化(角膜屈折力の増加)が生じ,その後垂直方向の強いflat化(角膜屈折力の減少)と水平方向の強いsteep化が生じた。この原因は,縫合による直乱視化と考えられた。無縫合群では,術直後に90°方向最周辺部のflat化が生じたが,その他の部位には大きな変化はみられなかった。術後中長期においては,90°方向最周辺部のflat化を代償する形で,角膜全体の軽微な倒乱視化が生じた。無縫合群におけるこれらの変化は,∞縫合群に比べて小さく,角膜形状は早期に安定する傾向にあった。

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 筆者らは,糖尿病黄斑症の経過中,後極部での部分的な後部硝子体剥離が生じるとともに黄斑浮腫が急速に軽減した53歳男性の糖尿病網膜症症例を経験した。本症例はまもなく左眼に硝子体出血と牽引性網膜剥離を併発し,再度の視力低下をきたしたため,硝子体手術を行った。術中,肥厚した後部硝子体膜は中心窩に強固に癒着しており,これを切除し完全な後部硝子体剥離を作成した。術後は網膜症そのものも鎮静化し,現在まで黄斑浮腫の再発をみていない。この症例の経過から,硝子体手術による完全な後部硝子体剥離の作成は黄斑浮腫に対する積極的治療法となる可能性が示唆された。

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 右眼の羞明,充血,眼脂,疼痛を主訴に来院した酒皶性角膜炎の1例を経験した。症例は26歳,男性。近医で3年前より角膜炎として治療を受けていた。受診時の視力は右0.15(矯正不能),左1.0(矯正不能)。両眼瞼縁の発赤,結膜充血,輪部血管の拡張,パンヌス形成,びまん性表層角膜炎がみられた。右眼角膜には下方に限局性の混濁と後部円錐角膜様の菲薄化,白色の浸潤巣がみられた。鼻尖部皮膚に毛細血管の拡張,紅斑があり,皮膚科的に酒皶と診断された。局所からの細菌培養は陰性であった。オフロキサシン点眼,および同軟膏の投与,塩化リゾチーム点眼,ミノサイクリンの内服などで角膜所見は約1か月で軽快し,その後現在まで3年間,再発を認めていない。

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 ステロイド(局所)離脱が困難であったヘルペス性角膜ぶどう膜炎の1例を報告した。症例は60歳の男性で,右眼充血,疼痛を自覚し,当科を受診した。前眼部所見として毛様充血,角膜実質の浮腫とデスメ膜皺襞,また高度な虹彩炎を認めた。既往,および臨床所見よりヘルペス性角膜ぶどう膜炎と診断し,アシクロビル眼軟膏とステロイドの局所および全身投与により病変は治癒したが,ステロイド(局所)中止により,再燃を繰り返した。ヘルペス発症1年半後,グロブリン製剤と低濃度のステロイド点眼併用投与によりステロイド離脱に成功した。実質型ヘルペスおよびヘルペス性角膜ぶどう膜炎に対する全身および局所的ステロイド療法は初回投与としてできるだけ低濃度のステロイドを投与すべきであり,またステロイド点眼は漸減しながら2,3か月を目処に中止することが重要であると考えられた。ウイルス抗原の早期除去にはグロブリン製剤の併用投与が有効であると示唆された。

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 Xanthomonas maltophiliaによる眼内レンズ挿入術後眼内炎の1例を報告した。糖尿病を有する70歳男性で,日帰り手術にて超音波水晶体乳化吸引術および眼内レンズ挿入術を施行後経過良好であったが,術後13日目から前房蓄膿を伴う眼内炎を生じた。抗生物質投与に加え,早期に眼内レンズ摘出術および硝子体切除術を行い,良好な経過を得た。術中に得られた硝子体液,前房水,摘出眼内レンズの培養検査でXanthomonas maltophiliaによる感染が証明された。本菌による眼内レンズ挿入術後眼内炎の報告は過去にない。本菌はグラム陰性菌で,時に日和見感染を起こす弱毒菌であるが,ヒビテン消毒に対し抵抗性を示す。今後高齢者や糖尿病などの全身疾患を合併する易感染性患者の術後眼内炎においては,本菌を含めた弱毒菌眼内炎を考慮する必要がある。

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 YAGレーザーによる前嚢切開を併用した超音波水晶体乳化吸引術(PEA)と眼内レンズ(IOL)挿入術を施行し,著明な眼圧低下が得られたマルケサニ症候群の1例を経験した。症例は40歳女性。初診時左視野狭窄を訴えたが疼痛はなく,眼圧は両眼とも50mmHg以上で,浅前房と狭隅角があったが虹彩前癒着はなかった。散瞳後小球状水晶体,乳頭には緑内障性陥凹を認めた。薬物療法に抵抗したため,両眼にPEAとI0L挿入術を行った。術後両眼とも正常眼圧となり,高度近視も解消され,現在はI0Lの固定も良好である。薬物療法に抵抗する緑内障を合併したマルケサニ症候群に対しては,I0L挿入術を施行しても良いと思われた。

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 THC-YAGレーザーを用いたsclerostomy ab externoを各種緑内障5例5眼に施行した。前房への穿孔は,全例で得られたが,前房の浅い症例では,虹彩が穿孔創に嵌頓し,良好な濾過胞を得られなかった。血管新生緑内障では初期には濾過胞の形成が得られたが早期に消失した。術後眼圧が無治療で20mmHg以下にコントロールされたのは術後6か月で5例中2例,術後12か月で5例中1例であった。また点眼で20mmHg以下にコントロールされたのは,術後12か月で5例中4例であった。また,視機能に影響を与える合併症として,全例に輪部角膜に熱瘢痕を生じ,デスメ膜皺襞を伴う角膜乱視(3.0〜8.5D)が認められたが,術後12か月では0.5〜4.5Dに軽減した。

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 糖尿病網膜症98眼のインドシアニングリーン(ICG)螢光眼底造影所見について,ビデオ赤外眼底カメラおよび高解像度デジタル画像を用いて検討した。ICG螢光眼底造影では,フルオレセイン螢光眼底造影(FAG)で明らかな無血管野,網膜細小血管異常はみなかった。一部の毛細血管瘤,網膜新生血管ではICG螢光漏出がみられ,強い透過性亢進が示唆された。FAGでごま塩状過螢光を示した黄斑部の色素異常部はICG螢光眼底造影では低螢光として観察され,脈絡膜毛細血管の循環障害が示唆された。脈絡膜内ICG螢光漏出が観察された症例もみられた。ICG螢光眼底造影では,FAGでは捉えることができない糖尿病網膜症の脈絡膜血管障害が観察できた。

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 糖尿病網膜症や網膜静脈閉塞症など網膜血管病変のある75眼を対象として,インドシアニングリーン(ICG)を用いた赤外螢光眼底造影を行い,フルオレセインによる螢光眼底造影所見と対比した。その結果,ICGでは,病的な網膜血管からの色素の血管外への透過が,フルオレセインよりも格段に弱く,かつ低頻度であった。新生血管からICGの螢光漏出があったのは91個中14個で,ほとんどが新生血管網の先端部からであった。毛細血管瘤や粟粒血管瘤では,螢光漏出を示す頻度が低く,拡張した網膜主幹静脈からの螢光漏出はなかった。一般的な傾向として,lCGの漏出の程度はフルオレセインよりも弱く,漏出を示すまでには時間を要した。ICG螢光造影で螢光漏出がある場合は,網膜血管壁に強い障害があることを示しており,網膜血管壁の機能障害をフルオレセイン螢光造影とは異なった尺度で評価できると結論される。

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 カールツァイス社製confocal laser scanning ophthalmoscope(CLSO)を用い,網膜神経線維層欠損(RNFLD)の検出について検討した。無赤色光眼底撮影に比較すると,CLSOによるRNFLDの検出の敏感度は88%(30眼/34眼),特異度は76%(13眼/17眼)であった。無赤色光眼底撮影には,眼底カメラ内蔵の螢光造影用干渉フィルターとKodak wrattenフィルタ44Aを使用したが,励起フィルターの違いによる画質の差はなかった。CLSOによるRNFLDの観察は,リアルタイムにモニターに写し出された画像が出力でき,カールツァイス社製CLSOは検眼鏡としての能力が高いと思われた。

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 シェーグレン症候群と確定診断された37例について血清radioallergosorbent test (RAST)による抗原特異的IgE抗体の測定を13種類の抗原について行い,ドライアイとの関連を検討した。RAST陽性であったものは12例(32%)であった。RAST陽性群と陰性群の間には一連のドライアイ検査に有意差はなかったが,ローズベンガル染色スコアをもとにドライアイの重症度別に検討するとRAST陽性率はドライアイが重症になるにしたがって高くなり,逆に涙液クリアランステスト値は低くなった。RAST陽性率はドライアイの重症度と関連している可能性があり,今後シェーグレン症候群をI型アレルギーの関与という視点からも検討する必要があると考えられる。

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 1978年〜1990年に,広島大眼科緑内障外来の再診患者のうち,原発閉塞隅角緑内障(PACG)および原発開放隅角緑内障(POAG)と診断された患者について外来治療費を再診料,検査料,薬剤料に分けて計算した。

 PACGでは,1978年の緑内障外来治療費は患者あたり1年間で28,740円で,そのうち薬剤料はわずか1,260円であった。ところが1981年から交感神経β—遮断薬が使用されるようになると,1985年には外来治療費は88,190円と大幅に増加し,特に薬剤料は42,140円と著明に増加した。POAGも同様で,特に薬剤料は1978年には5,460円であったが,1985年には55,770円と増加した。薬剤料に占めるβ—遮断剤の割合は1985年,1990年とも70%以上であった。緑内障の潜在患者は多く,今後,緑内障治療費の増加が予想され,治療に際してcost-benefitを考慮する必要がある。

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 網膜剥離を伴った乳癌の脈絡膜転移例を報告した。38歳の女性で3年前に右乳癌で非定型右乳房切除術を受けている。右眼上鼻側に脈絡膜腫瘍と胞状網膜剥離を認めた。病変部はフルオレセイン螢光眼底造影では点状過螢光と網膜下螢光貯留を示し,インドシアニングリーン赤外螢光眼底造影では低螢光を示した。脳,肺,縦隔リンパ節にも腫瘍を認め,本症例を乳癌の転移性脈絡膜腫瘍と診断した。治療は全身的には化学療法を施行し,脈絡膜転移巣に対しては光凝固術を施行した。治療後,腫瘍部からの螢光漏出と漿液性網膜剥離は消失し,脈絡膜転移巣はMRIでも消失を認めた。他の転移巣も現在まで13か月の間増悪を認めていない。

Group Discussion

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 過去30回以上続いた当GDは今回で発展解消し,新しく「糖尿病眼科学会」を組織し,'95年3月第1回総会(於東京)を持つことが「学会準備委員会」で提案・可決された。今回の会場は定員390名で,終始立席の参加者が絶えなかった。

眼先天異常 馬嶋 昭生
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1.角膜混濁が軽減したPeters奇形の同胞例

山本有香・他(名古屋市大)

 兄は3歳5か月,妹は1歳で,2例とも出生時に両眼角膜中央部が混濁しているのが発見され,Peters奇形と診断した。角膜水晶体癒着はなく,眼圧も正常で,角膜混濁は徐々に軽減した。合併全身奇形はなく,両親にも異常はなかった。Peters奇形には角膜混濁が軽減する症例もあるので,治療方針の決定には,十分な検討が必要である。稀ではあるが家族内発生例もあり,遺伝相談の重要性を強調した。

基本情報

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臨床眼科
48巻3号 (1994年3月)
電子版ISSN:1882-1308 印刷版ISSN:0370-5579 医学書院

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