臨床眼科 48巻2号 (1994年2月)

連載 走査電顕でみる眼組織……What is This?・8

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脈絡膜毛細血管の割断面の走査電顕写真。内皮細胞に無数の小孔(フェネストレーション)が観察される。フェネストレーションのある有窓領域は管腔に向かってやや隆起したひだ(太矢印)によって仕切られている。フェネストレーションの大きさと間隔はほぼ一定である。細矢印は指状の微絨毛を示す。樹脂冷凍割断。ニホンザル。 ×50,000

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 近年,アトピー性皮膚炎の患者数の増加につれて,これに伴う網膜剥離の報告が増加傾向にある。本症の特徴として第一に,裂孔不明例の割合が高いことが挙げられるが,このなかにはIijimaら1)および松本ら2)が報告しているような毛様体皺襞部裂孔を有する症例がかなりの数で存在していると推定される。最近筆者らは,この毛様体皺襞部裂孔を明瞭に観察することができたアトピー性皮膚炎に伴う網膜剥離の1例を経験したので報告する。

連載 眼の組織・病理アトラス・88

眼窩嚢腫を伴った小眼球 猪俣 孟
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 出生時すでに正常より小さい眼球を小眼球mi—crophthalmosという。小眼球の多くは胎生裂(眼杯裂) embryonal fissureの閉鎖不全によるものでcolobomatous microphthalmosという。その他に,稀に胎生裂閉鎖不全によらない純性小眼球nanophthalmosがある。胎生裂閉鎖不全による小眼球は眼窩内嚢腫を伴うことがあり,これを眼窩嚢腫を伴った小眼球microphthalmos withorbital cystという。

 胎生期の眼球は眼球内容の発育増大に伴って,眼球内圧の上昇が加わって眼球壁が伸展し成長する。胎生裂縁では眼杯内板は外板より早く発育するので,眼杯内板は軽度に外反している。なんらかの原因で胎生裂に閉鎖障害が生じ,同時に内板の分化が進みすぎていると両端の網膜が融合しない。そのために眼球内圧が上昇しないので,眼球は発育せずに小眼球にとどまり,しかも閉鎖不全の部位から眼球内容,特に外反した内板が眼球壁の外に膨隆して嚢腫を形成する。嚢腫は大きくなると眼瞼を内側から圧迫して小眼球は隠れてしまう。この場合,新生物と誤診されることもある(図1)。小眼球は潜伏眼球cryptophthalmosのこともある。

連載 今月の話題

ライム病 新藤 裕実子 , 大野 重昭
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 ライム病は,スピロヘータによる新しい感染症であり,媒介種であるマダニの刺咬後,特徴的な慢性遊走性紅斑の出現を持って発症し,心臓・神経・眼などを侵す全身性疾患である。診断は疫学的背景,臨床経過,血清学的方法によって総合的に判断され,治療は抗生物質が有効である。ライム病は多彩な眼症状を示すことからわれわれ眼科医にとっても重要な疾患である。特に原因不明の炎症性眼疾患にはライム病が潜んでいる可能性がある。原因不明の炎症性眼疾患の治療はステロイドが中心となるが,ライム病では,こうしたステロイドのみの投与は適切な抗生物質の投与を遅らせるばかりか,治療に抵抗性を示す原因にもなりうるため注意が必要である。

連載 眼科手術のテクニック—私はこうしている・62

網膜下液排液の方法(2) 松村 美代
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 排液部位の選択

 選択の基準は,①網膜下液が多いところ,②裂孔から遠いところ,③バックリング材料の下になるところ,④長後毛様動脈が走行する3時と9時は避ける,⑤渦静脈の強膜内走行部を避ける,の5点を頭に入れて選ぶ。④⑤は必須条件なので自然に排液の部位は各直筋の間ということになる。①②③はやむを得ない場合は条件からはずさざるをえないこともあるが,その場合には手技に工夫を要する。

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 1986年〜1990年の5年間に硝子体手術を施行した増殖糖尿病網膜症のうち,1年間以上経過観察可能であった55症例62眼の長期視力予後を生命表法を用いて検討した。対象を手術適応により,1群:3か月以上硝子体出血の消退しないもの(黄斑外牽引性剥離を含む),2群:黄斑剥離のあるものと2つに分けて解析した。視力生存率は,1群では術後18か月以降は67.5%,2群では術後12か月以降は31.8%となり,差を認めた(P<0.05)。視力表にて2段階以上の術後視力の改善は,1,2群合わせて51.6%であり,2群間に有意差を認めた(P<0.05)。術後緩徐に視力が低下した症例もみられ,増殖糖尿病網膜症の視力予後判定には,継続した長期にわたる経過観察が必要であると考えられた。

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 線維柱帯切除術では術後の過剰濾過が生じやすく,この結果,低眼圧,浅前房および脈絡膜剥離などが術後早期合併症として好発する。筆者らは術後早期の眼圧やこれらの合併症の発症と,眼圧コントロールから見た手術成績予後との関連をretrospectiveに多変量解析の手法を用いて検討した。

 対象は1989年までの約4年間に,東大病院で原発開放隅角緑内障に対して第1回目の手術を受けた58例78眼で,術後5—fluorouracil (5—FU)使用例に限った。

 方法として,共変量を用いた生存時間解析としてCox比例ハザードモデルを用いた。説明変数は,手術後1週目の平均眼圧,2週目の平均眼圧,5—FUの使用総量,前房形成不全の有無,脈絡膜剥離の有無,年齢,性別とした。変数選択はstepwise法によった。今回の解析では,眼圧コントロール不良と判断した時点をもって生命表のfailure timeと定義した。

 解析の結果,比例ハザード因子として2週目の眼圧のみが選択され(p<0.01),他の因子は有意とはならなかった。2週目の眼圧が低いほど,眼圧コントロールを指標とした手術予後は良いことが今回の調査から示された。

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 術後5—フルオロウラシルを使用した線維柱帯切除術後に濾過胞が消失,あるいは限局して眼圧再上昇をきたした25例25眼に対し,マイトマイシンCを併用した濾過胞再建術を施行した。対象の術前眼圧は20〜35mmHg (23.8±4.3)であった。18眼(72%)の症例で無治療で眼圧が20mmHg以下となり,最終眼圧は11.6±4.4mmHgであった。残る7眼のうち5眼は点眼療法により眼圧コントロールが得られた。生命表法解析を行った結果,術後1,6,12か月の無治療での眼圧コントロール率はそれぞれ88.0±6.5,72.0±9.0,72.0±9.0%であった。術後合併症は角膜上皮障害1眼,結膜創離開1眼,前房形成不全3眼,脈絡膜剥離3眼であった。

 マイトマイシンC併用濾過胞再建術は新たな結膜切開を加えることなく良好な術後成績が得られることから,有用な術式と考えられた。

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 白内障を合併した緑内障症例53例66眼に対し,白内障と緑内障同時手術および白内障単独手術を施行し術後長期経過をKaplan-Meier生命表分析により検討した。線維柱帯切開術併用群(13眼)における眼圧コントロールの生存率は0.55±0.16(4年),線維柱帯切除術併用群(19眼)では0.73±0.10(4年)となり両群間に有意差を認めなかった。白内障単独手術群(34眼)の生存率は,開放隅角群(17眼)で0.58±0.16(2年),閉塞隅角群(17眼)で0.94±0.06(2年)と閉塞隅角群に有意に良好であった(P<0.05)。線維柱帯切除術併用群における濾過胞の生存率は,0.31±0.12(2年)であり濾過胞が消失しても眼圧コントロールが良好な症例を認めた。

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 白内障手術における術後角膜乱視の変化を角膜形状解析装置を用いて検討した。対象は水晶体嚢外摘出術(ECCE)を行った11例14眼,水晶体超音波乳化吸引術(PEA)を行った13例13眼の2群で,術式はECCEでは11mm,PEAでは7mmの強角膜切開を行い,9-0 nylon糸による靴紐縫合を行った。角膜形状測定は,術前,術後1週,1か月,3か月に行い,形状解析は半径約0.35mm,1mm,1.5mm,2.5mmの部位に相当する垂直方向,水平方向,45°方向,135°方向の計32か所における屈折力を算出し,術後の変化を検討した。ECCE群では術後1週でほぼ上下対称的なsteep化が認められ,術後3か月においても角膜の形状は安定していなかった。一方,PEA群では術後1週で縫合部に近い部位のsteep化が認められたが,下方角膜の変化は少なく,その後,角膜形状は早期に術前の形状に近づいた。角膜全体の形状変化を定量的に検討できる本方法は,各種白内障手術,角膜屈折矯正手術などの評価に有用な手段であると思われた。

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 びまん性表層角膜炎の重症度を,角膜病変の範囲(area),密度(density)により分類した。範囲の重症度はフルオレセインにより染色された病変部位がない場合A0,角膜の全面積の1/3未満の場合をA1,1/3以上2/3未満の場合をA2,2/3以上の場合をA3とした。また密度の重症度は,フルオレセインによる点状染色がない状態をD0,散在している状態をD1,中等度に存在している状態をD2,点状染色が隣接し密に存在している状態をD3とし,両者を合わせてAD分類とした。次に医師54名を対象とし,資料30症例のスライドを供覧し,各症例の重症度をAD分類によって判定させるアンケートを行った。アンケートの結果,角膜病変の範囲について50%以上の眼科医が同一の判定を下したスライドは30枚中29枚(97%)であった。角膜病変の密度について50%以上の眼科医が同一の判定を下したスライドは30枚中29枚(97%)であり,範囲についての分類の結果とほぼ同様であった。角膜病変の範囲と密度の両者について50%以上の眼科医が同一の判定を下したスライドは30枚中20枚(67%)であった。本分類は,びまん性表層角膜炎の臨床経過の把握や薬剤の効果判定などに有用であると考えられる。

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 連続装用のコンタクトレンズ(CL)と終日装用CLとでは,睡眠という厳しい状況要素の有無に差があり,単なる時間的延長との認識には問題がある。CL非使用の平均22歳の女子10名の右眼にディスポーザブルソフトCLを装用し,角膜厚,曲率半径について睡眠による影響を観察した。対照としてその左眼を用いた。対照眼の睡眠による平均2.9%の肥厚に対して,CL装用眼は9.5%の肥厚で有意の差を示した。角膜曲率半径は対照眼では睡眠により有意に扁平化を示したが,CL装用眼は0.06mmと対照と同じ変動幅であったが,有意差はなかった。SCLの連続装用処方における長期眼合併症が危惧される。

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 走査型レーザー検眼鏡(SLO)を用いて,通常よりも少ない量の螢光剤を用いて螢光眼底造影を行った。その結果,正常者および眼底疾患をもつ患者のいずれの場合も通常の1/5である2mg/kgの螢光色素量で臨床上有用な所見が得られた。これによる検査時の光量は,従来の螢光眼底造影の1/100以下であり,嘔吐などの副作用は一切なかった。以上より,この方法は,被検眼に対する曝露光量が少なく,副作用の少ない安全な検査法であると結論される。

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 計画的嚢外摘出術および後房レンズ(PC-IOL)移植術を施行した44眼について前房深度(以下ACD)を術前および術後10か月にわたりAモードエコーグラフィーを用いて測定した。術前に比べ術後1週目にはACDは一度有意に深くなった(危険率p<0.01)が,術後2週目には術前の値にまで浅くなる傾向を示した。しかし術後1か月目以降再び徐々に深くなり,3か月目には術前より平均0.29mm深くなり以後安定した。術後1週目の屈折値を基準とした屈折度の変化はACDが浅くなる2週目には有意に近視化したが,再び深くなって安定する3か月目には1週目の値に近づいた。このACDの変化は眼内でのIOLの前後方向の位置の変化と考えられ,白内障術後の視力安定を規制する要因のひとつに挙げられる。

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 特徴的な泌尿器症状を伴わず,乳頭浮腫にて発見された膀胱褐色細胞腫の1例を報告した。症例は12歳女性で乳頭浮腫による視力低下を主訴に紹介され来院した。眼底からは高血圧性網膜症が疑われたが,当初高血圧はなく,2週間後に高血圧が出現,持続し,高血圧性網膜症と確定診断された。カテコラミンの異常を認め,CTにて膀胱褐色細胞腫の診断がつき,腫瘍摘出を行った。腫瘍摘出2か月後に,眼底所見は消失した。

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 インターフェロン投与患者45例に眼底検査を行い,18例40%に網膜病変を認めた。眼底所見は綿花様白斑が全例にあり,10例は網膜出血を伴っていた。自覚症状は少なく,視力は全例0.7以上であった。眼底病変はインターフェロン投与開始後2週間から5か月で出現し,投与中止後,軽減消失した。高頻度に眼底に病変をきたしたため,インターフェロン投与患者では定期的な眼底検査が必要と考えられた。

眼科の控室

右手と左手
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 医師が手を清潔にしておくことは当然も当然の常識ですが,これが必ずしも励行されているとは限りません。

 電車の中などでよくみかけるのが,45秒に1回,髪の毛を手でかきあげるしぐさです。きれいにリンスした長髪がはらりと垂れてくるのを直す動作は,これが女性の場合,なかなか風情があるものですが,これを診察室で実行されると,いささか困るのです。ご自分では清潔なつもりでしょうが,髪の毛はあまり清潔なものではありません。知らず知らず手を汚すし,周囲にゴミを散らす結果にもなります。診療時間内は,医師は自分の首から上にさわってはいけないのです。

特別講演

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 はじめに

 老人性黄斑変性症senile macular degenerationは,最近では加齢黄斑変性症age-related macular degen—eration (ARMD)と呼ばれ,人口の高齢化とともに増加していることはよく知られている。このage—related macular degenerationという呼び方は,1983年にFerris1)が提唱したものである。ARMDは脈絡膜新生血管choroidal neovascularization (CNV)を伴ったものと,伴わないものに二大別され,前者が老人性円板状黄斑変性症senile disciform macular degeneration (SDMD)である。

 ARMDの分類,あるいは病名については,統一した見解は見られないが,欧米ではARMDをexudative ARMDとnon-exudative ARMDに分類することが多くなってきた。演者2)はARMDを脈絡膜新生血管が関与している円板状型,SDMDへの移行の確率が高い前円板状型,CNVが関与していない萎縮型に分類できることを提案した。これも,Ferrisが1983年ARMDを萎縮型,中間型,新生血管型に分類することを提唱していることとほぼ同様である2)。ここでは,CNVを伴ったARMDであるSDMDを中心に,ARMDの診療の実際について述べてみたい。

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 緒言 筆者らは,4年1か月間に,異管を留置しない自体小静脈移植の上涙道再建術(以下,本法),小静脈移植の結膜涙嚢吻合術での下涙小管阻塞治療(以下,改良のSoll法),また異管留置での涙道阻塞性疾患の治療(以下,挿管法)を行い,3年5か月間の術後観察を通じて,本法と旧来からの術式の代表である改良のSoll法と挿管法との比較分析をした。

基本情報

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臨床眼科
48巻2号 (1994年2月)
電子版ISSN:1882-1308 印刷版ISSN:0370-5579 医学書院

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