臨床皮膚科 69巻5号 (2015年4月)

増刊号特集 最近のトピックス2015 Clinical Dermatology 2015

1.最近話題の皮膚疾患

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「メラニン生成を抑え,しみ,そばかすを防ぐ効果を有する」新規医薬部外品有効成分として厚生労働省の認可を取得したロドデノール(Rhododenol:RD)は多くの美白化粧品に使用され,19,000人を超える脱色素斑例が生じたことが確認されている.この「RD誘発性脱色素斑」について,医療者(皮膚科医)と患者向けに正しい情報を提供し,診断と治療方法を早急に確立するために日本皮膚科学会は「RD含有化粧品の安全性に関する特別委員会(委員長:松永佳世子)」を自主回収後速やかに設置した.特別委員会は患者のためのFAQ,医療者(皮膚科医)向けの診療の手引きを作成し,一次,二次全国疫学調査を施行し,患者および医療者に役立つ情報を提供する活動を継続している.2013年7月4日の自主回収より1年6か月経過した現在,症例の多くは色素再生が進み回復しつつあるが,いまだ改善が進まない症例もみられる.本稿ではその概要を述べる.

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酢酸リュープロレリン製剤は,その副作用として注射部位の肉芽腫形成がしばしば報告されている.臨床像は,発赤と皮下結節が主で,ときに潰瘍を伴う.病理組織学的所見では,大小の空胞を含む巨細胞がみられることが特徴である.3か月徐放性製剤による報告例が多く,近年では主剤や基剤の濃度が高いことに加えてマイクロカプセルの形態であることが,肉芽腫形成に影響しているとされている.さらに,筋肉注射が適用される欧米と比較し,皮下注射が適用される本邦の報告数が多いことから,注射の深さも関与しているとされ,適切な投与方法の選択が重要である.

皮膚粗鬆症 宇谷 厚志
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本疾患は単なる老化ではなく,臓器機能不全である腎不全,心不全,肺不全などの疾患と同じく「皮膚機能不全」として認識すべきであるとの発想から提唱された.この名称は「骨粗鬆症」からのヒントを得たもので,老化,ステロイド長期内服などさまざまな理由で骨が脆くなるように,皮膚も老化などの理由で「物理的に脆くなり,場合によっては非常に重篤になる」事実を的確にわかりやすく示している.本疾患概念には,軽症である萎縮,老人性紫斑,多数の裂傷,治癒遅延を示す創傷,そして重症である深在性解離性血腫とそれに伴う組織壊死までが含まれる.本稿では,臨床像と病理を紹介する.このような症状に対して皮膚科医は,皮膚の老化(生理的な現象)であることから関心は薄いと考えられる.しかし,美容・老化に興味をもつ医師以外にも注意を喚起することは,超高齢化をむかえ本疾患患者が増加する事態に備えるという意味で重要なことと思われる.

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Transient neonatal zinc deficiency(TNZD)は,近年,原因遺伝子が判明した遺伝性亜鉛欠乏症である.母親のSLC30A2遺伝子変異によって,乳腺細胞の亜鉛トランスポーターZnT2に機能障害が生じると,乳汁中への亜鉛分泌量が低下し,低亜鉛母乳となる.この母乳による哺育中,児は低亜鉛血症をきたし,亜鉛欠乏症状を呈するが,離乳開始後に症状が改善,治癒する.すなわち,TNZDの発症は母親の遺伝子変異に依存しており,発症者本人の遺伝子変異と無関係であるという点で,臨床遺伝学的に特異な疾患である.過去に低亜鉛母乳による後天性亜鉛欠乏症と診断された症例の中には,TNZDが含まれていた可能性がある.本疾患の認知度を向上させ,さらなる症例の蓄積と詳細な解析が必要である.

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悪性黒色腫のがん遺伝子の視点から見た病型分類と分子標的薬,主にMAPキナーゼ系阻害剤による治療の新しい展開と今後の展望について述べた.病型により遺伝子変異の部位や頻度に差異があり,悪性黒色腫は分子生物学的には単一の疾患ではないことが理解され,今後の治療においても個別化が必要となると考えられる.BRAF阻害剤のベムラフェニブとダブラフェニブ,MEK阻害剤のトラメチニブが米国FDAで承認され,進行期悪性黒色腫においてかつてない劇的な効果をもたらすことが可能となったが,それとともに有害事象や薬剤耐性の発現などさまざまな問題も生じている.BRAFとMEK阻害剤2剤併用により,効果増強と有害事象の軽減が確認されており,問題解決への糸口は掴んでいる.今後さらに有効で安全な治療法の確立のためには,耐性機序・副作用出現機序の解明と対策,より効果的な薬剤の併用法や投与の順番,術後補助療法の確立など,多くの課題を克服していかなければならない.

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われわれ皮膚科医が日々の診療において最も多く遭遇する皮膚疾患は湿疹であるが,その病態の本質は外界物質による一次刺激性接触皮膚炎(irritant contact dermatitis:ICD)であると考えられている.近年の自然免疫学研究の飛躍的な進歩に伴い,皮膚疾患の中で最も基本的な自然免疫応答であるICDの病態解明も急速に進みつつあるが,一方で,長らくその病因が不明であった亜鉛欠乏に伴う皮膚炎(腸性肢端皮膚炎)の本態がICDであることが最近明らかになった.世界で約20億人存在するといわれる亜鉛欠乏者をICDが起こりやすい人々の一群としてとらえることによって,あるいはICDを腸性肢端皮膚炎のプロトタイプとしてとらえることによって,ICDの好発部位やその原因物質の種類・頻度といった臨床的病態を考えるうえでの新たな視点がもたらされ,ICDの今まで見えなかった臨床像が浮かび上がってくる.本稿では,ICDと亜鉛欠乏との関連を中心に概説する.

多剤耐性菌ができる機序 山﨑 修
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メシチリン耐性黄色ブドウ球菌,ペニシリン耐性肺炎球菌,バンコマイシン耐性腸球菌などのグラム陽性菌から,多剤耐性緑膿菌,薬剤耐性Acinetobacterなどのグラム陰性菌までの多種の耐性菌が増加し,世界的な脅威となっている.細菌の耐性メカニズムは抗菌薬の不活化,作用点の変異,細胞外への排出,細胞外膜透過性の低下などがある.耐性菌は感受性菌と同様の病原性であるが,有効な抗菌薬がないことで,感染症を重篤化させてしまう.治療法が限定されており,伝播を防ぐために標準予防策の徹底化とともに,耐性菌へのさらなる理解と抗菌薬の適正使用が重要となる.

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限局性皮膚アミロイドーシスで沈着してみられるアミロイドは,アポトーシスに陥った表皮角化細胞のケラチン蛋白に由来すると考えられている.しかし,一般的にアミロイド線維はβ-シート構造であるのに対し,ケラチンはα-ヘリックス構造を有する.一方,ガレクチン-7は,表皮角化細胞においてアポトーシスに関連して強く発現され,豊富なβ-シート構造を包含する14kDaの蛋白である.われわれは病変部より抽出したアミロイド蛋白中にガレクチン-7が豊富に存在することを確認した.さらに試験管内において,トリプシン処理したガレクチン-7はケラチンと異なり,酸性条件下でアミロイド線維を形成した.皮膚に沈着しているアミロイドは主に表皮角化細胞のアポトーシスに関連して発現するガレクチン-7に由来すると考えられる.

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IgG4関連疾患は高IgG4血症と罹患臓器へのIgG4陽性形質細胞の浸潤を特徴とする全身性の疾患である.IgG4関連疾患に伴う皮膚症状は組織でIgG4陽性形質細胞浸潤を高度に認める以外に特徴が少なく診断が難しい.われわれは全身性形質細胞増多症と形質細胞浸潤の目立つ皮膚の慢性炎症組織像におけるIgG4陽性形質細胞の浸潤の程度を検討した.その浸潤の程度がIgG4関連疾患包括診断基準を満たしたのは全身性形質細胞増多症4例中1例のみで関連は低いと考えた.また,IgG4陽性形質細胞は形質細胞浸潤の目立つ疾患において高率に認めることがあるため,IgG4関連疾患の皮膚症状であるかどうかについては,皮疹でのIgG4陽性形質細胞の浸潤が高度でも,他臓器病変の合併や免疫学的特徴などとあわせて慎重に診断する必要があると思われた.

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生物学的製剤,とりわけTNF阻害薬によるパラドックス反応は,乾癬,膿疱性乾癬,あるいは掌蹠膿疱症によく似た皮疹の出現が特徴的である.パラドックス反応の機序はまだ不明な点も多いが,TNF阻害により形質細胞様樹状細胞(plasmacytoid dendritic cell:PDC)の活性化が起こり,その結果,産生されるⅠ型インターフェロン(interferon:IFN)による骨髄細胞由来樹状細胞の活性化によって乾癬が増悪/新生すると考えられている.このように,抗体投与によるサイトカインの不均衡が,TNFとtype Ⅰ IFN間のcross-regulationに変化を起こすと推察する.

3.新しい検査法と診断法

発汗機能検査update 西澤 綾
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発汗異常には発汗消失,低下や発汗過多があり,発汗異常をきたす疾患は多岐にわたる.診断には基礎疾患の検索とともに,発汗機能検査による発汗異常領域の他覚的な把握および障害が中枢性か,交感神経節後性かの推定が必要となってくる.発汗機能検査には,定性的発汗測定,定量的発汗測定があり,定性的検査法としてミノール法,定量的では換気カプセル法,定量的軸索反射発汗試験などがある.発汗が起こる様式は,精神性発汗,温熱性発汗,味覚性発汗,脊髄反射性発汗,薬物性発汗の5つに大別できるが,発汗機能検査は発汗異常の症状にあわせ組み合わせて行っていく必要がある.今回はさまざまな検査法についての概説および,新しい検査法である光コヒーレンストモグラフィーについても紹介した.

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天疱瘡・類天疱瘡の標的抗原であるデスモグレインおよびBP180の組み換え蛋白を用いたELISA法は,患者血清中の自己抗体を定量的に測定することができ,診断のみならず病勢評価においても重要な役割を果たしてきた.近年,ELISA法よりも測定範囲が広く,迅速に検査できるCLEIA法が開発され,天疱瘡・類天疱瘡における自己抗体価の測定は,今後ELISA法からCLEIA法への移行が進むと考えられる.同じ抗原を用いていても,マイクロカップに固層化させたELISA法と,磁性粒子上に共有結合させたCLEIA法では測定値が異なり,移行時には抗体価の変動に注意が必要である.ただしわれわれの施設での検討では,ELISA法とCLEIA法で陽性陰性の判定が異なる検体は少なく,CLEIA法による抗体価は,同一症例の経過における病勢評価にはELISA法と同等に使用できると考えられた.

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脱毛症でも病理組織診断は病態の把握に重要な意味をもつ.脱毛症の病理学的解釈においては炎症の性状,部位など一般の皮膚疾患の病理診断で必要とされる「質的」な診断所見に加えて,成長期毛と休止期毛の割合,毛包のミニチュア化の程度といった「量的」な所見が大変重要になる.広く診断に用いられる縦断切片では,大きな標本でも含まれる毛包数は限られ,量的な診断には適さない.4mmパンチ生検は侵襲も少なく,採取された標本を横断して得られる切片には理論的に標本に含まれるすべての毛包が含まれる.人種ごとの正常の標準値も報告されているので解釈も容易である.また,標本を漏斗部,峡部,毛球上部,毛球部のレベルに分けることで炎症の局在などを知ることも可能である.ただし,表皮真皮境界部の炎症所見の診断は困難であり縦断切片と横断切片を組合わせた系統的病理診断が望まれる.

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小児の掌蹠色素細胞母斑の特徴は,皮溝平行パターンと皮丘の規則的な点状色素沈着の組み合わせであるさや豆パターン(peas-in-a-pod pattern),二本線・点亜型の皮溝平行パターンである.病変の中央には,灰青色の色素沈着や紅色の拡張した皮丘が観察されることがある.また,経時的に観察するとしばしば消退傾向を示す症例があり,消退の過程ではダーモスコピー所見が不明瞭になる.そのため小児の掌蹠色素性病変には,ダーモスコピーを用いた診断アルゴリズムが適用しづらい場合がある.不要な生検を回避し,また自信を持って色素細胞母斑と診断するためにも,小児掌蹠色素性病変のダーモスコピー所見の特徴を知っておくことは有用である.

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足底母斑の多くは境界母斑であり,ダーモスコピーで皮溝平行パターンを示す.しかし,やや稀ながら,複合母斑や真皮内母斑があり,青い皮丘平行パターン〔blue parallel ridge pattern(PRP)〕を呈するため,注意を要する.一般に多くの母斑は,特に境界部の母斑細胞において,年とともにメラニン色素が減少する.そのため,小児期には黒や茶色の母斑だったものが青灰色の色調へと変わることが多い.真皮内母斑細胞は思春期以降に徐々に隆起することが知られており,顔面では半球状(Miescher型母斑),頭頸部では乳頭腫状(Unna型母斑)に変化することがある.足底では頻度は少ないものの,複合型や真皮型の母斑で軽度の隆起がみられる.小児期の複合型足底母斑では濃褐色の皮溝平行パターン(parallel furrow pattern:PFP)が目立つが,成人になるとPFPが消退し青灰色のPRPが目立ち,しかも隆起する.メラノーマとの鑑別点は,柔らかく,皮丘部の青灰色調が均一なことである.

4.皮膚疾患治療のポイント

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過酸化ベンゾイル(benzoyl peroxide:BPO)は,海外では1960年代から使用されていた古くからある標準治療薬で,欧米の痤瘡治療ガイドラインでは重要な位置を占めている.その主たる作用は抗菌作用であるが,従来の抗菌薬とは異なり薬剤耐性菌を生じないことが特徴である.欧米では特に薬剤耐性Propionibacterium acnesの増加が大きな問題となっており,痤瘡の長期維持療法として使用することが推奨されている.日本でもBPOの有効性と安全性を確認する臨床試験が行われ,さらに1年間の長期使用試験も行われた.クリンダマイシンとの合剤についても3か月間の臨床試験が報告されている.その良好な結果をもとに承認申請がなされ,2014年末に承認され,2015年4月から処方可能となった.これにより,日本の痤瘡治療が海外のレベルに一歩近づいた.急性期の治療だけでなく,炎症性皮疹予防のために維持療法として定着することが望まれる.

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痤瘡瘢痕の分類はいまだ確立されていない.われわれは,直径2mmまでの陥凹した小さな萎縮性瘢痕をmini-scarとする分類法を作成した.痤瘡瘢痕は,mini-scarであっても痤瘡患者のQOLに大きな影響を与える.痤瘡瘢痕は不可逆性の変化であるため,痤瘡瘢痕を予防することは重要である.Mini-scarを含む痤瘡瘢痕を予防するには,炎症性皮疹に対する抗菌薬と面皰に有効なアダパレンの併用による早期の積極的な治療と,症状軽快後のアダパレンによる維持療法が重要である.2014年末に承認のされた過酸化ベンゾイルは維持療法にも使用できる炎症性皮疹に対する薬剤であり,痤瘡瘢痕の予防にも有用である.さらに,早期の受療行動と長期の医療機関での治療は,瘢痕を予防することを示唆するデータもあり,医療機関での治療を,広く啓発することも重要と考える.

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手足症候群は薬剤による有害事象の一種である.手掌・足底の皮膚知覚過敏から始まるため,手掌・足底発赤知覚不全症候群とも呼ばれる.フッ化ピリミジン系の抗がん薬や分子標的薬であるマルチキナーゼ阻害薬の治療経過中に高率に発症する.症状は機械的刺激が加わりやすい場所や荷重部位に出現するため,歩行の際に足に加わる外力を可能な限り最小化し,自覚症状や皮膚症状を悪化させない・緩和させることは理に適っている.靴型装具の作製は選択肢の1つになりうる.適切な足底装具の使用により荷重部に集中する足底圧を分散することで症状は緩和される.褥瘡の予防のために体圧分散寝具が開発され効果を発揮しているが,その考えを手足症候群の足病変の予防や治療に応用したものである.フットケア装具を用いた予防や治療を行うことにより,疼痛が緩和され必要な治療が継続できれば,がんの予後そのものの改善にもつながると期待できる.

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注射抗がん剤の血管外漏出による組織障害はときに深刻な潰瘍・壊死を引き起こすため,発生時には皮膚科医の介入を伴う迅速かつ的確な対応が求められる.起壊死性抗がん剤の中で特にアントラサイクリン系薬剤は少量の漏出であっても強い組織障害性を示し,その漏出対策にはよりいっそうの配慮を要する.デクスラゾキサン(サビーン®)は,アントラサイクリンの血管外漏出に対する治療薬として,海外に続いて2014年1月に本邦においても承認された.漏出発生後は可及的速やかに,遅くとも6時間以内の静注開始が必要で,3日間連日投与する.組織壊死を抑止する高い治療効果が示されている一方で,悪心や発熱,骨髄抑制などの副作用が一定の頻度で認められるため,実際の取扱いにあたっては適用となる症例の選別が必要となる.発生時に迅速に対応するためにも,デクスラゾキサンの適用基準を明確に取り決めたマニュアルを事前に整備しておくことが望ましい.

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2014年9月,本邦においてステロイド外用薬と活性型ビタミンD3外用薬の配合外用薬が発売され,乾癬治療の新しい選択肢が増えた.海外ではすでに10年以上も前から臨床使用経験があるが,本邦でも承認になり,今後適切な使用方法や症例について,さらには高カルシウム血症を含めた長期使用の忍容性が検討されなければならない.国内外の臨床試験の結果から,配合外用薬の効果は,非常に速やかであり,最大の効果は4〜8週間後に得られる.乾癬の至適外用薬として配合外用薬を用いることで,外用療法が適しているかどうかも判断できる可能性があり,次の治療をどのように選択するべきかについても,新たなロジックを与えるだろう.本稿では国内外の臨床試験データを紹介するとともに,治療の実際や,予想されるポジショニングについて概説を行う.

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弾性ストッキングによる圧迫療法は静脈疾患やリンパ浮腫の治療や予防として行われ,使用目的に応じて適切なタイプやサイズ,圧迫圧,伸び硬度のストッキングを選択する.長さによってハイソックス,ストッキング,パンティストッキングに分類されるが,通常は着脱しやすいハイソックスタイプを第一選択とする.圧迫圧は下肢静脈瘤で皮膚炎がない場合は20〜30mmHg,うっ滞性皮膚炎を伴う場合は30〜40mmHg圧のストッキングを使用する.リンパ浮腫では30〜40mmHg以上の圧迫圧のストッキングを理学療法後の患肢の状態を維持する目的で使用する.無症状の下肢静脈瘤に対して進行予防の目的で弾性ストッキングは着用させない.適切なストッキングを選択しないと着用困難であったり合併症を生じるため,弾性ストッキングコンダクターの資格を持つコメディカルと協力しながら適切な圧迫療法を行う必要がある.

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創傷治療における外用剤や創傷被覆材の進歩は著しいものがあり,創傷を早くきれいに治すことは医療関係者に浸透してきている.最近では「早くきれいに」に加えて「痛みに配慮した創傷治療」が求められている.海外では処置時の痛みを減少させるための方法論について提言がなされている.本邦でも痛みに配慮した創傷治療に注目が集まっている.創傷痛の分類を理解し,患者を適切に評価しながら創傷痛に対処すべきである.痛みに配慮した創傷被覆材としては,ソフトシリコンを用いた被覆材が創傷への固着ならびに創傷周囲への正常皮膚への損傷を軽減することが知られている.

スミスリン® ローション 和田 康夫
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スミスリン®ローションは,2014年に保険適用となった新規の疥癬治療外用薬である.海外では疥癬治療第一選択薬としてペルメトリンクリームが使用されていた.日本での有効な疥癬治療薬はイベルメクチン錠があったが,妊産婦や幼児に使えないという欠点があった.わが国でも,妊産婦や幼児に使えるペルメトリンのような有効な外用剤が望まれていた.そのようななか,疥癬治療薬としてペルメトリンではなくスミスリン®での開発が行われた.スミスリン®は,動物実験の毒性試験からペルメトリンより安全性が高いと考えられ,疥癬に対する効果も同等と推測されたためである.臨床試験を経て,世界に先駆けて,疥癬治療薬として保険適用となった.イベルメクチン錠,スミスリン®ローションの登場により,疥癬治療を多面的に行うことができるようになった.

皮膚外科手術ランキング 前川 武雄
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皮膚外科手術の範囲を明確に示す定義はない.実際には形成外科,婦人科,泌尿器科,血管外科など他の診療科とオーバーラップする手術も多く,厳密に線引きをすることは難しい.各施設において,マンパワーの問題,指導医の技術,他科との関係性などによって規定されており,皮膚科がどこまで行うのかは施設によって異なる.皮膚外科手術を修練するうえで,最初から難しい手術を行えるはずはなく,ある程度の段階を持って修練することが必要となる.その客観的な指標として,当科では皮膚外科手術の難易度を8つのランクに分けた皮膚外科手術ランキングを実践しており,1つの目安として紹介する.

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従来,皮膚病変が中心の成人T細胞白血病/リンパ腫(adult T-cell leukemia/lymphoma:ATLL)と菌状息肉症を主とした皮膚T細胞リンパ腫の治療は,光線療法や外用療法を中心とした局所治療と化学療法を主とした全身療法に大きく分かれていた.一方,抗腫瘍治療という視点で近年の状況を概観すると,2001年にトラスツズマブ(乳癌),リツキシマブ(悪性リンパ腫),イマチニブ(慢性骨髄性白血病,消化管間質腫瘍)が国内で相次いで承認されたが,これらの薬剤はそれぞれHER2,CD20,Bcr-Abl/c-Kitを分子標的として腫瘍細胞に作用するように設計された「分子標的薬」という範疇の新規抗悪性腫瘍薬である.これらを皮切りに,さまざまな悪性新生物に対してさまざまな分子標的の薬剤が登場し現在も精力的に開発が進められている.皮膚リンパ腫の分野においても,ここ数年でヒストン脱アセチル化酵素阻害薬であるボリノスタットが主に菌状息肉症・Sézary症候群に対して,ヒト化抗CCR4抗体製剤であるモガムリズマブがATLLや末梢性T細胞リンパ腫に対して使用可能となり,徐々に治療の選択肢が増えつつある.本稿では今後を含めて開発が進みつつある複数の薬剤を紹介し,将来的な治療の展望について述べる.

血管肉腫の新規化学療法 藤澤 章弘
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血管肉腫は軟部悪性腫瘍の1〜2%を占めるまれな軟部肉腫であるが,高齢者の頭部に好発することから,皮膚科医が知っておくべき悪性腫瘍の1つである.血管肉腫に対する治療として手術と放射線,IL-2療法などの併用が行われてきたが,有効といえる化学療法がなかったため,切除困難例や転移例では予後不良な経過をとることが一般的であった.しかし,近年血管肉腫に高い奏効率を示すタキサン系抗癌剤が登場したことで治療が変わりつつある.現在,日本ではweekly paclitaxel療法が保険適応となり,軟部悪性腫瘍に対する初めての分子標的治療薬としてパゾパニブも承認された.またドキソルビシンやソラフェニブなど他の癌腫で使用されている抗癌剤が血管肉腫に奏効する報告も増えつつあり,治療の選択肢が増えてきている.血管肉腫の治療に化学療法は必須であり,これらの新規化学療法により,予後の改善が期待されている.

5.皮膚科医のための臨床トピックス

セルライト 尾見 徳弥 , 沼野 香世子
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セルライトは肥満とは異なり,主に女性皮膚の体表に現れる皮膚の凸凹の変化で,臨床的な形状では‘orange peel appearance’として知られている.臨床像や病態生理的観点からも,セルライトと肥満は異なっている.疫学的には女性や白色人種に多く,また過度の炭水化物摂取制限なども要因として挙げられている.ホルモンのアンバランス,加齢変化,アルコールの過度の摂取なども関連すると考えられている.セルライトの病態生理学的な形成に関しては,末梢の循環不全,代謝不全に伴って脂肪組織内に線維化が生じ,線維化により脂肪組織の代謝不全が亢進して脂肪組織が変性をきたすとともに周囲組織も線維化した状態と考えられ,脂肪細胞や血管内皮細胞でアポトーシス所見もみられる.セルライトの治療においても,単純なマッサージや近赤外線レーザーの照射などでは大きな効果はみられず,radio frequencyやmicrowaveの波長など深部への影響が必要とされる.

脂腺母斑の遺伝子変異 多田 弥生
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脂腺母斑とは脂腺の異常増生に加えて,表皮,真皮,毛包,汗腺などの構成成分にも異常を伴う母斑で,数%の頻度で二次性腫瘍の合併をみる.一方,Schimmelpenning(シンメルペニング)症候群とは脂腺母斑に中枢神経症状を伴うなど,より重篤な症状を呈する症候群である.このたび,これらの原因遺伝子がHRASKRASであることが明らかになった.脂腺母斑65人の患者病変部では,62人でHRAS遺伝子に変異があり,3人でKRAS遺伝子に変異があった.さらに,2人のSchimmelpenning症候群患者でも同様なHRASKRAS変異があった.脂腺母斑病変部培養ケラチノサイトを用いての機能検討では,RAS変異により,機能的に細胞増殖活性を獲得している可能性が示唆された.今回の研究成果は,病態解明に加えて,脂腺母斑やSchimmelpenning症候群の治療につながることが期待される.

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本邦では乾癬患者の5〜10%で関節症状を伴う.その関節症状は急速に進行することがあり,変形が高度になると不可逆的である.乾癬性関節炎の診断にclassification criteria for psoriatic arthritis(CASPAR)分類基準が広く用いられている.乾癬性関節炎の早期の発見には問診票を用いたpsoriatic arthritis screening and evaluation(PACE)などが有用とされる.関節リウマチと類似する末梢関節炎を示すことがあるが,付着部炎,指趾炎,脊椎炎と仙腸関節炎は本症に特徴的である.現時点で汎用されている重症度分類は存在しないが,皮膚症状と関節症状を併せて評価するcomposite psoriatic disease activity index(CPDAI)が疾患活動性を反映するとして注目を浴びている.治療にはGRAPPA提唱のアルゴリズムが有用である.関節リウマチと異なりメトトレキサート単独では必ずしも有効でないことに留意が必要である.

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500台以上の行動計を使い,12,000人の睡眠障害患者の診察経験から,アトピー性皮膚炎の不眠が最も深刻であるとの結論に達した.アトピー性皮膚炎のかゆみと不眠の治療は困難で難治例が多い.免疫抑制剤のシクロスポリンが難治例のかゆみと不眠に有効であることが判明した.

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水痘帯状疱疹ウイルス(varicella zoster virus:VZV)は初感染で水痘を引き起こした後,神経節に潜伏感染するが,加齢などに伴い再活性化して帯状疱疹を発症する.帯状疱疹の発症抑制には,VZV特異的細胞性免疫が重要であろうと考えられてきたが,免疫がどの程度低下すると帯状疱疹を発症するのか? 液性免疫も予防に関わっているのか? などについてはよくわかっていなかった.近年,小豆島で50歳以上の住民を対象に帯状疱疹と免疫との関係を明らかにするための大規模疫学研究を行った.その結果,細胞性免疫の指標であるVZV特異的皮内反応が,帯状疱疹発症,重症化,帯状疱疹後神経痛(postherpetic neuralgia:PHN)のリスクと逆相関すること,一方,VZV特異的抗体価と帯状疱疹発症,重症度,PHNとの間には相関が認められないことが明らかになった.

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ヒトの皮膚色を決めるのに最も重要なのはメラニンである.このメラニン合成に関わる遺伝子は200以上知られているが,民族間あるいは民族内における皮膚色の多様性に寄与している遺伝子については未知の点が多い.日本人は国際的には比較的均一の集団とされているが,日本人の中にあっても皮膚色には明らかな個体差が認められ,古来より「色の白いは七難隠す」として色白を珍重してきた経緯がある.そこでわれわれは,日本人皮膚色の個体差を決定している遺伝学的因子(美白遺伝子)を明らかにすることを試みた.その結果,眼皮膚白皮症(oculocutaneous albinism:OCA)原因遺伝子のOCA2のA481TアリルとH615Rアリルが日本人皮膚色に大きく関わっていることがわかった.

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フィラグリンは皮膚バリア機能に重要な役割を果たす蛋白であり,フィラグリン遺伝子の異常とアトピー性皮膚炎の有病率には相関関係がある.実際,フィラグリン遺伝子に異常があるflaky tailマウスではアトピー性皮膚炎症状が自然発症する.近年,われわれはフィラグリン蛋白の発現を促進することでアトピー性皮膚炎の症状を改善させる化合物を見出した.今後,バリア機能回復に着目したアトピー性皮膚炎新規治療法の開発が期待される.

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NPO法人東京乾癬の会では,乾癬患者が医療現場でどのように考えているかを医療関係者に知ってもらうことを目的としてアンケート調査を行い,会員172名から回答を得た.その結果,病院の変更理由に関する設問では,「乾癬が軽快しない」61.5%,「良い医師の情報」31.4%であった.主治医との信頼関係に必要なことは,「病気や治療の説明」91.3%,「新しい情報」62.8%であった.治療満足度は,「満足している」15.1%であった.「乾癬が治らない」と説明された患者では,「ショックを受けた」57.5%,「治療意欲を失った」が29.2%であった.このように多くの患者はより良い治療を望み,疾患や新治療法の説明や情報を欲している.また,「乾癬は治らない」と不用意に説明することは,患者に精神的苦痛を与えるとともに,治療意欲を低下させることが判明した.

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2017年度より日本専門医機構による専門医研修が開始される.研修基幹施設は2016年3月までにプログラム認定基準に合致する研修プログラムを策定し,専攻医を募集することとなる.これまでの学会専門医は更新時に徐々に機構専門医へ移行してゆく.2016年までに皮膚科専門医研修を始めた医師はこれまでどおり,学会専門医を取得したうえで,更新時に機構専門医へ移行する.2014年12月に機構専門医としての更新の要件が日本専門医機構から提示された.この機構基準を満たすため,皮膚科領域の更新単位の設定をいかにするか現在鋭意検討中である.皮膚科医全員に関わる大きな改革がなされるので,専門医,非専門医を問わず常に情報に耳を傾けていただきたい.

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わが国は世界でも例を見ない少子高齢化社会に突入した.高齢化は今後も進み2025年団塊世代の総後期高齢者入りとともに,医療・介護需要のピークを迎える.今後,社会保障費(特に医療費)の増大は必至で,社会保障制度(年金・医療・介護・福祉・次世代支援等)の持続性に対する不安は国民共通のものとなりつつある.政府も自民党福田政権下での「社会保障国民会議」を皮切りに「社会保障と税の一体改革」「社会保障改革国民会議」等を通じ,社会保障制度の基盤強化に向け改革を進めているところである.日本血液製剤機構での私の業務は「医療機関の方々に対する付加価値の高い情報提供サービスの一環として,わかりやすく医療行政を解説することにより当機構の価値を高める」ことにある.その趣旨に従い,本稿では,少子高齢化の中,わが国の社会保障制度,なかでも医療をいかに守るかの国家としてのプランと手段等を臨床現場で活躍する医師に俯瞰的に解説する.

Derm.2015

Lewandowskyの皮疹 清水 晶
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 有名であるがなかなか出会えない症例というのはあると思う.ヒト乳頭腫ウイルス(human papillomavirus:HPV)に興味がある私にとっては疣贅状表皮発育異常症(epidermodysplasia verruciformis:EV)(Lewandowsky-Lutz)がそれである.HPVの研究はこの疾患の研究で大きく進歩してきた.当科でも過去に1例経験しているが,残念ながら当時の自分には縁がなかった.学会などで「Lewandowskyの皮疹は…,」と話す先生をうらやましく思っていた.いつか巡り合うに違いないと信じ文献を集め,HPVタイピングの腕を磨いてきた.そのなかで,免疫不全を伴う多発性疣贅鑑別のすばらしいアルゴリズムが発表されているのに気付いた(Leiding JW, Holland SM:J Allergy Clin Immunol 130:1030, 2012).

 今年初めに当科石川治教授から「先生にぜひに見せたい症例がある」と言われ,患者さんにお会いしすぐにこれはと思った.これまで見たことのないような多発性疣贅があり,30歳前半であるが肛門癌,そして骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndromes:MDS)も合併していた.疣贅は癜風様ではなくEVではないが,類似の疾患に違いないと思った(当然ここでも「Lewandowskyの皮疹は…,」という議論が行われた).採血を行い,免疫グロブリン正常,単球ゼロ…,などの所見を前述のアルゴリズムに当てはめていくと,転写因子GATA2の異常に違いないと思われた.GATA2変異例はリンパ浮腫を伴うことが多い.たまたま足の疣贅を撮った写真で浮腫を確認しさらに確信を深めた.その後は一直線で,GATA2遺伝子変異を確認し診断に至った.新規のスプライスサイト変異でありmRNAの確認が必要で,弘前大学の中野創先生をはじめスタッフの皆様に大変お世話になった.GATA2遺伝子変異は皮膚科領域からの報告は少なく,遺伝的にMDSを生じることから血液内科からの報告がほとんどである.今後は皮膚科医としてこの遺伝子変異で疣贅が多発するメカニズムを明らかにし,医学的根拠に基づいた治療をしたい.

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 話をしたり,聞いたりするときに心掛けていることがあります.話をするときには,“自分の話を相手に聞いていただいている”という気持ちで話します.相手がしゃべっているときには“自分にお話をしていただいている”という謙虚な気持ちで臨みます.と書くと,とってもかっこよく聞こえますが,実際には私はそのような聖人君子ではなく,常に反省の毎日です.すぐさま,自分の言いたいことだけ身勝手にしゃべってしまうことのほうが多いです.よく,医療講演などを頼まれますが,本当は自分の知識や経験を聞いていただかなくてはならないのですが,自分勝手な自慢話の披露になっていることもしばしばあります.そんなときも,終わったとたんに我に返って,「ごせいちょうありがとうございました」と締めくくります.このごせいちょうですが,講演会などでは最後のスライドにしばしば出てきます.しかし,広辞苑を紐解くと,清聴と静聴の2つの漢字があります.その意味は,それぞれ,「他人が自分の話などを聴いてくれることを敬っていう語」,「しずかにきくこと ご  願います」と解説されています.私は,いつも前者の漢字を使っています.またまた,自慢話に終始してしまいました.反省!

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 何度かテレビに出たことがある.当然だが医療関係の番組ではない.「アタックチャンス!」の決めゼリフでおなじみの『パネルクイズ アタック25』がそれである.学生のとき,そして皮膚科医になってからの計2回出場した.そのほかにも出場歴はあるがここでは省略しておく.クイズ番組では,「尋常性痤瘡→ニキビ」「雀卵斑→そばかす」「パッチテスト」といった皮膚科に関連した問題も普通に出題されているし,他ジャンルでもこのような正式名称を一般名で答えさせる問題は多い.「国連教育科学文化機関→ユネスコ」や「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約→ワシントン条約」などである.ただユネスコやワシントン条約は既に一般的な用語のため正式名称など知らなくても困ることはない.では実際の診療ではどうだろうか.患者さんに「伝染性膿痂疹ですね」と言うよりは「とびひですね」と言ったほうがはるかに理解が得られるだろうし,「黄色ブドウ球菌や連鎖球菌が原因です」に比べれば「バイ菌が悪さしちゃいましたね」のほうがはるかにわかりやすい.「水虫」「たこ」「いぼ」に至ってはもはや言うまでもなかろう.

 実を言うとあの『クイズミリオネア』にも出場権を獲得していた.しかしどうしても都合がつかず辞退した.収録日が平日だったからだ.12年前の自分に「ミリオネアに出るから休み下さい」と教授に言う勇気はとてもなかった.今だったら教授をテレホンメンバーに入れてでも出場しているだろうが(おいおい),その頃の自分にそんなずる賢い考えは微塵もなかった.若かったといえばそれまでだが,教授にこれをうまく説明できてさえいればと今でも思う.あのみのもんたとフジテレビのスタジオで「ファイナルアンサー」と叫んで睨み合っていたかもしれなかっただけに……(笑)

皮膚科医と樹医 金子 栄
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 近年,さまざまな医者がいるものである.かく言う私も庭木のローレルにルビー(ロウ)カイガラムシがついたので,どうしたものかと思っていたところ,新聞広告の通信教育講座に樹医研修講座があるのが目につき,勢いで申し込んだ.樹医は上級職である樹木医と異なり,実習がなく主に月1回の課題提出ですみ,最後に修了試験を受け,約1年で取得できた.晴れて,ダブルドクターとなったわけであるが,それから2年,いまだ1本の樹も助けていない.くだんのローレルについたルビーカイガラムシは,激しく寄生しているところを剪定し,冬季にイオウ剤で消毒したものの,葉っぱが六十ハップのにおいになり枯れて,しばらくカレーに使用できなかった.しかし,まだローレルは元気なので,これが生きながらえれば初の治療例となるかもしれない.

 樹木の世界では,病気になった樹は主に他へ病原体を伝播しないように伐採されることがほとんどである.有名なのがマツノザイセンチュウに侵された松,いわゆる松食い虫にやられて枯れた松である.他の仲間のために,自らの命を終わらせるのであるが,幸いなことに樹は恨み言を言わない.稲佐の浜にある弁天の松も数年前に枯れた.この浜は神在月(出雲では10月をこう呼ぶ)に神様がお越しになられる当地出雲では有名な浜である.大切なお宮の松なので,地方ニュースになり,松食い虫によるものか,はたまた,黄砂からの化学物質で枯れたのかと憶測が飛んだが,樹木医の診断の結果は老衰であった.診断がつくこと自体がすばらしく,その診断もどこに禍根を残すことのないもので安堵した.ともすれば,樹木は生命が長いため,永遠に続くものと思われがちであり,それは昨今の医療の発展により人においても同様なことがうかがえる.日々の診療では,「痛い」や「かゆい」などと言われ治らないのは医者が悪いと恨み言を言われることがある.樹医を勉強して思うことは診断を正しく伝え,いずれは迎えるそのときに恨み言なく仲間のためを考えることが,地球に生きるものとしての使命であり,そうでなければ現状の地球の資源を消費するに値しないのではということである.

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 大阪万博から今年で45年になる.当時何回も通っていろいろと21世紀を想像する少年だった.「僕が大人になる頃には,腕時計型の電子頭脳があって,情報の記憶や計算などは瞬時にできるので,歴史年表なんて覚えなくてもいいし,そろばん塾に行くのは時間の無駄だ」なぞと言って,親に叱られたりしていた.その頃の期待よりは随分遅かったが,MSDOSで動くパソコンのデータベースに医事課からの患者情報を代入して,写真台帳を入力すると,スライドフィルムの枠に貼る患者情報シールを印刷できるようにしたり,入院台帳や手術台帳などはデータベース化して,今では30年分のデータを検索でき,医局で保存している入院サマリーや手術所見,組織診断のコピーに辿り着くことができる.

 その後システムも進歩して,2001年からは,臨床写真はすべてデジタル化し写真データベースも作成して,WINDOWS2000やXPのパソコンで「外部ネットには繋がない医局内ネットワーク」を組み,医局で行う短時間の準備で,カンファレンス室のスクリーンに必要な写真をサーバーから瞬時に映し出すことができるようになった.しかし,とても便利だったXPは昨年4月に終了となり,2001年にVisualBasic6で作った当科専用の写真整理アプリも,WINDOWS7のパソコンではうまく動作せず,偶然にサーバーが壊れたために,WIN7パソコンをサーバーとして導入したのだが,WIN7とXPのパソコンが混在するネット環境では,XPパソコンがうまく繋がらず業務ができなくなった.

チーム医療 中西 健史
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 厚生労働省ではチーム医療推進方策検討ワーキンググループを結成し,2010年10月4日の第1回ミーティングを皮切りに,先日行われた2014年9月29日の第14回まで,定期的にこの問題について討論がなされている.

 われわれ皮膚科医もこの流れに組み込まれて,チームの一員として働かなくてはならないことがある.当面,皮膚科が関連する主な分野は褥瘡対策チームであろう.構成メンバーは医師,薬剤師,看護師,管理栄養士,理学療法士等であり,定期的に会議を開催することが一般的と思われる.ただ,これはどちらかというと診療報酬との関連もあり「やらなければいけないこと」に属するような雰囲気もある.

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 金沢大学皮膚科に入局して十数年,全身性強皮症をはじめとして,皮膚筋炎,全身性エリテマトーデスなど,膠原病の症例を数多く経験してきました.膠原病は難しい,と耳にすることがあります.確かに膠原病では多彩な皮膚症状が出現し,判断に迷うことも少なくありません.苦手意識のある先生方もおられると思いますが,皮膚科医は膠原病診療において大いに役立つと考えます.私が日々の診療のなかで感じている,膠原病診療における皮膚科医の役割について考えてみました.

 1つめは,皮膚科医が積極的に診断,治療に関わるべき膠原病の存在です.筋症状のない,あるいは乏しいclinically amyopathic dermatomyositisはその代表例です.特に急速進行型間質性肺炎を高率に合併し,予後不良な抗MDA5抗体は皮膚症状で発症することが多く,最初に皮膚科を受診することが珍しくありません.また,抗TIF1抗体の一部は顕著な皮膚症状のみのことがあり,このような症例は皮膚科医が診断すべき(あるいは皮膚科医でないと診断できない)疾患です.また,限局性(全身性ではなく)強皮症も正確な診断・フォローに皮膚科医の力は欠かせません.全身性強皮症に合併する難治性の指尖潰瘍も皮膚科医の出番です.

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 ひょんなことから周術期の皮膚傷害の臨床研究を始めた.臨床研究といっても研究費があるわけでもなく,まあ自由研究である.一般病院であり患者さんの臨床像・検査所見という目の前の限られた事実からどのように現象をとらえるかということになる.数年かけてやっと自分が疑問に思っていた現象の一端をとらえることができた.手術に伴う大事な合併症であり広く外科系の先生方に読んでいただきたいことから深く考えずに英語論文にしようということになった.といっても大学院を卒業して一般病院勤務が長くなった今,ここ数年日本語の症例報告を書いた程度である.まとめはじめたものの,①エクセルが使いこなせない,②統計処理の知識・ツールなし,③英語がひどい,などたくさんのハードルがたちはだかった.やればやるほど自分の力のなさにうちひしがれ,どんどん自信がなくなっていく.恩師である宮地良樹先生の言葉「publish or perish」を胸になんとか投稿まで漕ぎ着けたが,現時点では数誌にrejectされてという厳しい現実をかみしめている.私の自由研究はいつ合格点をもらえるのか,夏休みの宿題をまだだせずにびくびくしている子供のような気分である.大学の偉い先生から見たら単純な研究かもしれないが一般病院の勤務医でしかできない,勤務医だからできた臨床研究であると自負している.あきらめず近いうちに日の目をみる? ことを信じているが,acceptされて英文雑誌に掲載されたら掲載料が3,000ドルかかるということにあとから気が付いた.「publish or perish」ですが,地方公立病院の勤務医にとって3,000ドル自腹はきびしい.どうやって払おうかとacceptされてもいないのに悩みながら,今日もあわただしい外来をこなし小さな努力を続けている.

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 2014年夏,ついに免疫療法である抗PD-1抗体ニボルマブがメラノーマに対して承認された.ダカルバジン以来,40年ぶりの新薬である.抗CTLA-4抗体イピリムマブが日本で承認されるのも時間の問題であろう.両者とも免疫に感受性の高いメラノーマで初めて効果を立証したが,なんと肺癌や消化器癌などにも有効だという.科学誌『Science』は,2013年の科学界で最も大きなブレークスルーとして,癌免疫療法を選んだ.

 メラノーマを私の専門と決めてから,これまで実に多くの患者さんをお見送りしてきた.それぞれの方との間に忘れられない思い出がある.Kさんもそうである.大学院生時代のラボでは,患者さんのリンパ球から癌抗原特異的キラーT細胞を誘導する研究をしていた.Kさんにも採血をお願いしたところ,仕事柄屈強な腕をまくり,病気を治す研究のためなら,どんどん使ってください,と言ってくれた.でも,この実験がうまくいっても,患者さんに使えるところまで行くにはまだ何年もかかるのですよ,と言うと,いいよ,同じ病気の人の役に立つなら,と笑っておられた.それから,化学療法で入院するたび,外来でお会いするたびに,「先生の免疫療法はまだですか?」と明るい笑顔で冗談っぽく私に聞いてこられるのが挨拶となった.そして私は,すいません,まだなんですよ,と答えるのだった.いよいよ最期のとき,Kさんは細くなってしまった手で,驚くほど強く私の手を握ってくれた.「先生の免疫療法はまだですか?」という声が聞こえた気がした.

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 前職である久留米大学皮膚科での18年間は安元慎一郎先生,Aurelian先生のご指導の下,ヘルペスウイルスの魅力にどっぷりと浸かった有意義な時間でした.開業医として勤務する現在も,その多彩な臨床像への興味は尽きません.

 さてご承知のとおり,人を宿主とするヒトヘルペスウイルスは8種類ですが,ヘルペスウイルスの宿主域は広く無脊椎動物から脊椎動物までその種類は約350種に及ぶとされます.わが国でもコイヘルペスウイルス病の流行は社会的な問題となりました.またペット業界では鼻気管支炎を生じる猫ヘルペスウイルス感染症が知られます.

教える技術 吉田 雄一
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 皮膚科医になってはや20年が経った.思い返してみるとそのうち15年以上は大学病院勤務である.若手医師に接する機会も多く,毎年後輩の指導にあたってきたが,いまだに人にものを教えるのが苦手である.裏を返せば,まだまだ自分が未熟であるということだと思う.

 例えば手術に関しては「今からやってみせるから,よく見てね」(言語化のない教え方),「後ろで見てあげるから,やってみて(ぶっつけ本番)」,「次からは1人でできるよね(教えたつもり)」などという最低の指導も随分やったような気がするし,逆に我慢できずに途中から自分でやってしまうことも多かった.何か良い方法はないかと考え,いろいろな本(コーチングやコミュニケーションスキルなど)を読み漁ったり,指導医養成講習会に参加してみたりした.

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 私は歌舞伎に興味を持っていた時期がありました.歌舞伎では主人公が重い皮膚疾患を起こしているケースが時々みられました.例えば『東海道四谷怪談』のお岩さんの顔は帯状疱疹といわれていますし,『籠釣瓶花街酔醒』の佐野次郎左衛門は天然痘のため痘痕だらけの顔になっています.その病状の誇張表現によって観客を惹きつけるということはもちろんあったでしょうが,それらの皮膚病が庶民にもなじみのあるものであったことも示しているのではないかと思います.

 『病薬道戯競』という江戸時代の主な病気を相撲の番付になぞらえランキングした文献には,皮膚科関連では「疱瘡」や「癰疔」,「胎毒」(乳児湿疹のようです)といった病気が上位に挙がっておりました.この時代からすでに使われている病名もあれば,今では使われなくなった病名もたくさん載っていました.

医局を移ってみたら 藤井 一恭
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 縁があって平成26年4月に岡山から鹿児島に転居しました.同じ西部支部内での大学病院から大学病院への異動で診療科も変わっていないのですが,驚かされることも多くあります.まず同じ皮膚疾患でも経過や頻度が異なるように思います.例えばSchönlein-Henoch紫斑病では症状をこじらせてしまう患者さんが多いと思いますし,日光角化症や有棘細胞癌のような紫外線との関連が疑われるような悪性腫瘍や成人T細胞リンパ腫のようなウイルスの保因者に地域性のある疾患だけではなく,皮膚筋炎や強皮症などのような膠原病も頻度が高い印象を受けます.その一方で,これは鹿児島大学病院の立地条件や当院が完全予約制であることが大きく関与していると考えますが,尋常性疣贅や足白癬,帯状疱疹といったいわゆるcommon diseaseを診ることは本当に少なくなりました.大学病院で診なくてはならない疾患と大学病院でなくても治療ができる病気があることは確かなのですが,教育機関としてそれで良いのかとも思います.

 また医局が変わればいろいろな仕組みや,しきたりも異なったものになります.カンファレンスのやり方も違いますし,臨床写真の撮り方や病理所見の読み方も微妙に異なります.使わなくなった(使わないように気をつけている)所見の用語や診断名もあります.初めて聞く検査名が当然のように提出されていたこともありましたし,ほとんど使っていなかった薬が頻繁に使われている一方で,これまで頻用していた薬剤がほとんど処方されていないということもありました.

“治せる”皮膚疾患 藤本 篤
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 医師として働きはじめて8年目になる.まだまだ日常診療についての悩みは多く,先輩医師,患者さん,同僚や後輩から学ぶ毎日を送っている.診療の経験を積めば積むほど,患者さんの満足する状態まで治すことが困難な皮膚疾患がとても多いことを実感するようになった.こう言うと身も蓋もないとお叱りを受ける気もするが,多くの皮膚疾患の治療は症状を一時的に和らげているにすぎない.皮膚疾患に限ったことではなく,慢性疾患の治療とはそういうものなのであろう.

 「ときに癒し,しばしば和らげ,つねに慰む」

無名の皮膚科医 中島 英貴
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 いきなり,何を言い出すのかと驚かれると思いますが,私の好きな作家である渡辺京二の最新刊『無名の人生』(文春新書)から拝借しました.人間の大事は,「どんな異性に出会ったか,どんな仲間とメシを食ってきたか,これに尽くされる」という文章が非常に印象的です.私は,10代のときに深刻なニヒリズムに陥り,何者にもなろうとしない青年だったのですが,そのときにこの文章を読んでいれば,「無名の人生の中にこそ生きる喜びがある」ともっと早く目が覚めたかもしれません.

 私は,同じ医局で妻と出会ってから人生をやっと楽しめるようになり,素晴らしい師匠,先輩,同僚,後輩に囲まれて社会性を身につけることができました.今考えると,高知という辺境の地だからこそ自分の身の丈にあった居場所を見つけることができたと思います.師匠からは「患者のために自分の持てる知識と技術をすべて使わなければいけない」と教えられ,無我夢中でやってきましたが,年齢とともに少しずつ気力が衰えているようです.凡人の診療に退屈さは避け難いのでしょうが,医局への義理人情はまだ人一倍ありますので,滅私奉公(先の師匠の好きなフレーズです)を続けていきます.

皮膚病からの告白 室田 浩之
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 診断を導き出せたときは嬉しいが,困難なときは苦しい.皮膚疾患は時に多彩な皮膚病変や誘因の想像できないような表現型を示すほか,経過中に全身症状を伴うこともある.よって皮膚科医は見える症状と見えない症状の双方を診て,互いの関係を考える.そこは皮膚科医としての腕の見せ所である.診察の時点では点と点が線で結びつかない場合もある.その際,患者の経過を注意深く観察し,次の手がかりを追う.

 近年,診断基準の整備が進み,一部の疾患では非専門医でも診断基準に基づいた「診断」が可能になった.診断基準は疾患を見逃さないための基本情報として重要な役割を持つ.ところが,たとえ診断基準を満たしていても「それでいいのか? それだけなのか?」と診断に違和感や疑問を感じる症例に遭遇することがある.治療や検査の根拠について他者から承認されるためには診断基準に基づいた診断も必要だが,診断の際に生じる違和感といった勘を大切にするよう心がけたい.余談だが,「挫折」は承認につながるステップとの見方もあり,大きな挫折も経験すべきだと哲学者の竹田青嗣さんはいう.皮膚疾患の診断において,ある時点の診察では納得のいく診断がつかずに挫折しても,時間経過を経て診察のなかで生まれるヒントが診断につながることもある.物理学者の寺田寅彦さんの言葉にある.「科学者になるには自然を恋人としなければならない.自然はやはりその恋人にのみ真心を打ち明けるものである.」 私は日常診療に当てはめて,皮膚病とじっくり向き合うことで皮膚病のほうから診断を打ち明けてもらえるのではと期待を寄せているのだ.そのために日頃の挫折を大切にし,対峙することを楽しめればよいなと考えている.

皮膚科学の教科書 永井 宏
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 各大学で医学教育のカリキュラムは異なると思うが,神戸大学では4年次に系統講義を含むチュートリアル,5年次にBSL(bed side learning)となっている.BSLは,いわゆるポリクリで,数名ずつが1つの班になって各診療科を1〜2週単位で実習を行う.現在,私が皮膚科の教務担当でもあるため,BSLの外来見学時に各自の教科書を持って臨むよう学生に伝えるのだが,多くの学生はマイナー科の内容が1冊にまとまったような国試対策の本しか持っておらず,皮膚科学の教科書を持っている学生はほとんどいない.なかには系統講義の配布資料をきれいにファイルして教科書代わりにしているという学生もいて,それはそれで悪い話ではないのだが,カラー写真など一切なくとうてい教科書の代わりにはならない.自分が医学生であった頃は,各科1冊ずつは教科書を購入して,講義や実習に臨んだものだが,今はインターネットで何でも情報が手に入る時代であり,タブレットのみを持参してくる学生も見かける.最近の皮膚科学の教科書は鮮明なカラー写真も多く,多色刷りとなり,基礎知識の少ない医学生にとっても非常に理解しやすい内容になっていると思う.新しいBSLの班になるたびに,実習の期間だけでも図書館で皮膚科学の教科書を借りて実習に臨むように指導している.患者さんの皮疹を目の当たりにすることに加えて,総論・各論の内容や臨床写真が充実している教科書にできるだけ多く目を通してもらうことで,皮膚科学の奥深さを少しでも多く感じてほしいと期待している.

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 どのような皮膚疾患の診療においても,患者にわかるように説明することにこだわっている.この理由は,義務や必要性というより,疾患を理解してもらうことに喜びを感じるからである.

 ほとんどの患者は,初診の前に自分なりの診断をしている.そこに藪から棒に正しい診断名を述べても,患者にとっては受け入れにくい.そのため,患者の理解と医師の説明を一致させる努力が必要である.患者が納得しなければ軟膏はチューブから出ないので,そもそも皮膚科の治療には説明は必須である.

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欧文目次

あとがき 宮地 良樹
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 今年も『臨床皮膚科』増刊号をお届けします.毎号,編集委員が情報と叡智を集めて企画を練るのですが,今回は比較的話題が豊富だったためか,編集会議はあまり紛糾しませんでした.ロドデノールのような大きな社会問題,分子標的薬をはじめとする新規治療薬の登場,ダーモスコピーにみられる診断ツールのさらなる深化などが,皮膚科診療により彩りを与え,多様なトピックを提供するようになったからだと思います.そこには,皮膚科学の殻に閉じこもらないで,他科との接点,基礎医学や医用工学への視野の拡大,皮膚科学の社会への発信などを志向するour specialtyの発展と成熟をみることができます.

 私ごとで恐縮ですが,昨年の10月に大学を早期退職し,関係病院長職という異なる分野に飛び込みました.気力・体力の充実しているうちに,新たなチャレンジをしたい,と考えたからです.それとともに,21年間務めた本誌の編集委員も辞することにしました.21年間を振り返ってみると,その内容が狭い皮膚科学worldから脱却して,より広範な「社会の中の皮膚科学」に飛翔した軌跡をつぶさに辿ることができます.それは円熟期を迎えた皮膚科学がまた新たなステップを踏み出したことを示唆しています.

基本情報

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臨床皮膚科
69巻5号 (2015年4月)
電子版ISSN:1882-1324 印刷版ISSN:0021-4973 医学書院

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