Derm.2015
無名の皮膚科医
中島 英貴
1
1高知大学医学部皮膚科学
pp.160
発行日 2015年4月10日
Published Date 2015/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412204434
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いきなり,何を言い出すのかと驚かれると思いますが,私の好きな作家である渡辺京二の最新刊『無名の人生』(文春新書)から拝借しました.人間の大事は,「どんな異性に出会ったか,どんな仲間とメシを食ってきたか,これに尽くされる」という文章が非常に印象的です.私は,10代のときに深刻なニヒリズムに陥り,何者にもなろうとしない青年だったのですが,そのときにこの文章を読んでいれば,「無名の人生の中にこそ生きる喜びがある」ともっと早く目が覚めたかもしれません.
私は,同じ医局で妻と出会ってから人生をやっと楽しめるようになり,素晴らしい師匠,先輩,同僚,後輩に囲まれて社会性を身につけることができました.今考えると,高知という辺境の地だからこそ自分の身の丈にあった居場所を見つけることができたと思います.師匠からは「患者のために自分の持てる知識と技術をすべて使わなければいけない」と教えられ,無我夢中でやってきましたが,年齢とともに少しずつ気力が衰えているようです.凡人の診療に退屈さは避け難いのでしょうが,医局への義理人情はまだ人一倍ありますので,滅私奉公(先の師匠の好きなフレーズです)を続けていきます.
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