臨床雑誌内科 104巻3号 (2009年9月)

骨粗鬆症診療の進歩 骨折の予防と克服をめざして

骨粗鬆症診療のガイドライン 折茂 肇
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骨粗鬆症の診断は、骨量測定や骨X線写真による骨評価を指標として設定されたわが国における骨粗鬆症診断基準を用いて行う。骨粗鬆症の治療は、わが国において設定された薬物治療開始基準を用いて行う。各種治療薬の有用性をevidenceのレベル、有害作用の有無から総合的に評価し、推奨のグレードを設定した。

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骨格系は、間葉系細胞より分化した軟骨・骨芽細胞により形成される。骨化には、内軟骨骨化と膜性骨化がある。骨は皮質骨と海綿骨からなり、支持組織、Ca・Pの貯蔵庫の役割をもつ。骨代謝は多くのホルモン、成長因子、サイトカイン、力学的負荷、神経系などにより厳密に調節されている。骨は骨吸収を担う破骨細胞と骨形成を担う骨芽細胞により、絶えず再構築(リモデリング)されている。このバランスが崩れると(uncoupling)、骨の形態や機能を正常に維持できなくなる。骨強度を維持するためには、細胞外基質蛋白、石灰化も重要である。骨代謝回転の指標として骨代謝マーカーがあり、日常臨床で利用可能である。

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骨粗鬆症の有病率と有病者数:骨粗鬆症の有病率は腰椎L2-4で男性3.4%、女性19.2%、大腿骨頸部で男性12.4%、女性26.5%であった。骨粗鬆症の発生率:腰椎骨密度で診断した骨粗鬆症の発生率は、1年間に約0.6%、女性では2.3%であった。骨粗鬆症による骨折の発生率:全国規模の調査結果から、2007年の大腿骨頸部骨折罹患者数は148,100人(男31,300人、女116,800人)と推計された。一方、10年間の脊椎椎体骨折の累積発生率は60歳代男性で5.1%、女性で14%、70歳代男性で10.8%、女性で22.2%であった。わが国の骨粗鬆症の頻度は、白人よりも少なく、アフリカ系アメリカ人よりも多いが、骨量減少の度合いは白人よりもゆるやかである。日本人の大腿骨頸部骨折発生率は白人と比較すると低いが、脊椎椎体骨折は米国人より高い。

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骨粗鬆症は、骨が脆弱化して骨折をきたしやすくなる病態である。骨折をきたしていない例では基本的に無症状である。脊椎骨折では、身長低下、後彎変形、さらに重症の場合、脊髄、脊髄神経根を圧迫し、痛みやしびれ、さらには歩行障害などの症状をきたす。大腿骨近位部(頸部)骨折は、脊椎骨折に次いで多い。この骨折は歩行不能となり、歩行、移動能力の回復を目指した治療を行うが、高齢で多くの疾患を有している例や、高度認知症例、筋力、バランス機能の低下例では、歩行能力は受傷前のレベルまで回復しない例も多い。骨粗鬆症患者に対して骨折治療はもちろんのこと、骨折ハイリスク者をスクリーニングし早期に介入して骨折予防を行っていくことが重要である。

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WHOの骨折リスク評価ツール(FRAX)の目的は、臨床的危険因子から個人の今後10年間の骨折確率(%)を求め、治療介入の必要な骨折高リスク者を判別することである。危険因子は、年齢、性、大腿骨頸部骨密度(骨密度がない場合はBMI)、既存骨折、両親の大腿骨近位部骨折歴、喫煙、飲酒、ステロイド薬使用、関節リウマチ、続発性骨粗鬆症である。日本では、大腿骨近位部骨折確率より骨粗鬆症性骨折確率を目安にするのが、より有効であると考えられる。米国、英国のガイドラインでは、FRAXによる治療介入の閾値は医療経済に基づいて算出された。わが国でも、治療介入の閾値が検討されている。

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骨粗鬆症を診断して治療する最終目的は、骨折の予防である。骨粗鬆症の診断は、胸椎・腰椎X線撮影を施行すると同時に骨密度定量を行う。脆弱性骨折がない場合には、骨密度値より骨粗鬆症(YAM値の70%未満)あるいは骨量減少(YAMの70%以上~80%未満)を診断する。閉経後比較的早期の女性では、骨折リスクを評価して骨密度定量を行う。最終的には、続発性骨粗鬆症を除外して原発性骨粗鬆症を診断する。この診断基準は必ずしも治療開始の基準ではないので、実際に薬物治療を開始する際には骨粗鬆症の予防と治療ガイドラインに準拠して行うのが一般的である。

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骨粗鬆症診断のための標準的な測定法は、腰椎と大腿骨近位部の二重エネルギーX線吸収法(DXA)である。腰椎DXAは閉経後の骨量減少や薬物治療に対する感度が高く、大腿骨近位部DXAは大腿骨近位部骨折のリスク評価に優れる。一方、末梢骨の骨量測定は簡便であり、骨粗鬆症のスクリーニングに適している。定量的CT法(QCT)は海綿骨と皮質骨を分けた測定が可能であるが、DXAと比べて普及度が低いため臨床的なデータを参照しにくいのが欠点である。

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骨代謝マーカーには、骨吸収マーカーと骨形成マーカーがあり、骨粗鬆症の病態診断、治療方針の決定、治療の効果判定に役立つ。治療の脱落防止にも期待されている。骨粗鬆症の診断には、マーカーの測定が健康保険で認められていない。測定の価値があるのは、(1)治療開始の判断に迷う場合、(2)本格的な骨吸収抑制薬を使うかどうかの判断、(3)患者に治療の必要性を理解させる場合である。マーカー測定により、治療の有効性を明らかにできるのは骨吸収抑制薬である。骨吸収抑制剤による治療効果が、骨代謝マーカーの抑制で明らかにできない場合は、日内変動や食事の影響、さらに骨折発生などを考える。

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加齢に伴い原発性骨粗鬆症は増加するが、他の骨量減少をきたす疾患の罹患率も上昇する。Cushing症候群・原発性副甲状腺機能亢進症・慢性腎臓病・関節リウマチなど、骨代謝に直接影響を与える基礎疾患の鑑別は必須である。前立腺癌・多発性骨髄腫などの増殖性疾患も、易骨折性につながる。合併症のみならず、治療薬の骨代謝への影響も考慮すべきである。基礎疾患に対して早期に介入することで、骨折予防を行うことが重要である。

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骨粗鬆症は多因子疾患である。遺伝要因と生活習慣が発症に影響する。エストロゲン欠乏と加齢がもっとも重要な要因である。エストロゲン欠乏によりサイトカイン、B細胞、T細胞などの関与を介して骨吸収が促進される。加齢に伴い、骨芽細胞機能そのものの低下、身体活動性の低下、成長ホルモンの分泌低下などを介して、骨形成の低下をきたす。加齢に伴い、腎機能低下、ビタミンD摂取不足、Ca摂取不足などを介して、血中Ca低下から二次性副甲状腺機能亢進をきたし、骨吸収が促進される。

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合成糖質コルチコイド(ステロイド薬)による骨代謝異常症、すなわちステロイド骨粗鬆症は、ステロイド薬投与による最多の副作用で、約25%を占める。ステロイド薬はコルチゾールと同様、糖質コルチコイド受容体に結合して核内へ移行し薬理作用を発揮すると同時に、GRE領域を有する遺伝子の転写を介して副作用を生ずる。その結果、ステロイド薬は骨芽細胞を抑制し、破骨細胞を活性化することにより、骨密度と骨微細構造を減衰して骨代謝異常、すなわち骨粗鬆化を促進し、高い脆弱性骨折率を招く。したがって、ステロイド骨粗鬆症は的確な管理と予防が必要である。ビスホスホネート製剤は、ステロイド骨粗鬆症における骨密度と骨微細構造を改善して骨折発生率を抑制する。ステロイド薬を3ヵ月以上使用する症例、とくに高齢者や脆弱性骨折既往例では、一次予防も推奨される。

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治療開始前の骨粗鬆症患者の食生活研究からCa 800mg/day以上の摂取、ビタミンDの栄養状態の良好な患者ほど、骨代謝亢進が抑制され、骨密度(体重・年齢補正)が高いことが明らかとなった。CaとビタミンDの効果は相加的であった。良好なCaとビタミンD量を摂取するには、牛乳は毎日200ml/day以上、加えてチーズ、ヨーグルト、豆腐など大豆製品、緑黄色野菜、魚類を同年代の人に比べ、多く食べる(週あたり1.5倍)習慣をもっていただきたい。ビタミンDは、魚を摂取する(週3回以上)ほか、日照も大切で、筋力保持のためにも屋外での活動を勧めたい。これらの食生活は、他の生活習慣病予防も期待できる。

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身体機能低下が著しくない在宅生活者には、ウォーキングや開眼片足立ちなどの運動プログラムを継続実行することで、骨密度の増強と転倒の減少の一挙両得を望むことが可能であり、骨粗鬆症患者の生活指導にそれらを取り入れることは有用と考えられる。一方、転倒リスクは低いので、ヒッププロテクターの適応はない。対照的に、介護施設高齢者は高い転倒リスクを有するので、転倒事故による外傷の軽症化のために、ヒッププロテクターの活用が有用と考えられる。

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骨粗鬆症は単一の疾患概念として理解するよりも、「易骨折状態」という病態として把握するべきものという認識が広まりつつある。現在の骨粗鬆症診療上の問題は、誰を治療するべきか?ということである。骨粗鬆症と診断されたから治療するのか?どのくらいの骨折リスクなら易骨折状態と判定されるのか?易骨折状態と判定されたから治療するのか?治療するとしたらどのような視点で薬剤を選ぶべきなのか?等々、さまざまな問題が検討されている。最近の骨粗鬆症治療の考え方の要点は、以下の通りである。i)骨粗鬆症の治療の目的は骨折予防である。そのために骨密度のみにとらわれることなく治療対象を選択する。ii)治療にあたっては骨折リスクの評価が大切である。よく知られた骨折危険因子(飲酒、喫煙、大腿骨近位部骨折の家族歴など)を確認する。iii)骨折リスクおよび患者の全体像に即した治療薬を選択する。iv)続発性骨粗鬆症のうち、とくにステロイド性骨粗鬆症は骨折リスクが高いので、既報のガイドラインに従って対応する。

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側鎖に窒素原子を含むalendronateとrisedronateは、代表的な骨吸収抑制薬であり、ステロイド性を含むさまざまな骨粗鬆症の標準的治療薬である。alendronateは、10年までの長期投与の安全性と有効性が示されている。minodronic acidは、日本人ではじめて骨折予防効果が証明され、同等以上の効果が期待される。側鎖に窒素をもたないetidronateは、石灰化抑制作用が強く、骨吸収抑制効果は弱い。窒素含有製剤は、メバロン酸代謝経路のファルネシルピロリン酸合成酵素を阻害する結果、破骨細胞の機能抑制とアポトーシスをもたらす。有害事象は少なく、消化器症状は内服方法の遵守により防止できる。まれに腎機能障害や顎骨壊死がある。今後、月1回経口製剤、さらには静注製剤により、治療継続率の著明な改善が期待される。

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エストロゲン受容体を介して作用する物質は、骨代謝以外にさまざまな生理作用をもつ。エストロゲン製剤の効果と副作用の出現は、投与量と投与ルートによって異なる。エストロゲン製剤とSERMを適切に選択することで、より効果的な閉経後女性の健康管理が可能である。

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ビタミンD欠乏は高頻度で、米国では介護施設入所者の半数以上、わが国でも70歳以上の半数以上を占める。ビタミンD製剤はメタ解析でも椎体骨折の予防効果とともに、高用量(700~800IU/day)では転倒予防に有益との成績が示されている。日本オリジナルのビタミンK製剤は、理論的にも骨折抑制に効果を示す可能性があり、比較的小規模な検討ではあるが実証されている。今後はより大規模な検討で、骨折予防効果の検証が期待される。

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現在臨床で用いられている主な骨粗鬆症治療薬は、骨吸収抑制薬である。PTHはすでに諸外国で用いられている唯一の骨形成促進薬であるが、連日皮下注射を必要とする。また骨吸収抑制薬との同時併用では、効果を失う。strontium ranelateは、骨形成促進・骨吸収抑制作用を併せ持つユニークな薬剤で、海外ではすでに認可されている。作用機序には不明な点が多い。近年、特定の分子を標的とした薬剤が次々に開発されており、破骨細胞分化誘導因子RANKLを標的としたヒト抗RANKL中和抗体(denosumab)や、骨形成の負の制御因子sclerostinに対する中和抗体、内因性PTH分泌を増加させることにより骨形成を促進するCa感知受容体アンタゴニスト(calcilytics)などがある。

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経皮的椎体形成術について方法、適応決定、治療効果、問題点を中心に概説する。経皮的椎体形成術とは、骨セメントを使用した椎体圧迫骨折に対する新しい治療法である。治療適応決定や手技を行うにあたっては、画像診断が重要である。本治療法は画像ガイド下の低侵襲治療であり、合併症リスクは低く安全性は高い。治療後早期から劇的な除痛効果が得られることが多く、長期成績もよい。椎体圧迫骨折後の早期離床が可能となることから高齢者に起こりやすい筋力低下や骨粗鬆症の進行、うつ、痴呆等の発症リスクを下げることが期待できる。骨粗鬆症そのものの治療ではないため、治療後の新規骨折を予防するためには、薬物療法や理学療法が大切である。

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大腿骨近位部骨折は、頸部骨折と転子部骨折に分類される。頸部骨折、転子部骨折のいずれも、原則的に手術的治療の適応となる。頸部骨折は、非転位型であれば骨接合術が、転位型であれば人工物置換術が適応となる。転子部骨折は、骨接合術の適応となる。適切な治療が行われたにもかかわらず、機能予後(歩行能力)の低下をきたし、さらにADL障害やQOL悪化を惹起することがある。大腿骨近位部骨折は、生命予後をも悪化させる骨折である。その治療にはおのずと限界があるため、骨粗鬆症治療を中心とした予防医学の重要性を再認識する必要がある。

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ビスホスホネート(BP)製剤の長期投与患者において、抜歯などの歯科治療を契機として、顎骨壊死が発症することがある。多くは注射薬によるものであるが、頻度は低いものの、経口薬でも生じることがある。わが国においても症例数は増加しており、欧米に比べて経口薬の比率が高い傾向にある。BP製剤の投与に際しては、口腔内診査を行うとともに、口腔内清掃に対する患者教育を十分に行う。抜歯などの歯科治療に際しては、BP処方医と歯科医が綿密な情報交換を行うことが予防上重要である。顎骨壊死に対する有効な治療法はいまだ確立されていないが、BP処方医と連携のうえ可能であれば休薬し、保存的療法を行うことが推奨されている。

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骨粗鬆症の発症は骨密度と骨質により規定され、骨密度の50%以上は遺伝的素因によって規定される。筆者らを含む複数のグループは、LRP5遺伝子に存在するアミノ酸変異を伴う遺伝子多型(A1330V)が骨密度、骨折さらには骨粗鬆症の発症を規定することを報告し、その重要性を明らかにしてきた。近年では、DNAチップを用いたゲノムワイド相関解析により骨粗鬆症感受性遺伝子多型が明らかにされているが、その一つにLRP5遺伝子A1330V多型が含まれていた。ゲノムレベルでの骨粗鬆症原因遺伝子の同定は、テクノロジーの進歩に伴い急速に発展しており、骨粗鬆症の新規診断マーカーや新規治療標的の同定へと発展する可能性を有している。

骨質とは何か? 斎藤 充
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骨粗鬆症は骨量および骨質の低下により骨強度が低下した状態である。生活習慣病は、骨密度に依存しない骨折リスクの増大をもたらすことから、骨質を低下させる要因と考えられている。骨コラーゲンの分子間に形成される架橋が、骨質因子であることが明らかとなった。骨コラーゲン架橋の異常を惹起する原因は以下であり、骨折リスクを高める。(1)動物硬化や心血管イベントのリスク因子である血中のホモシステイン高値や、その代謝に関わる葉酸還元酵素(MTHFR)の遺伝子多型、酸化ストレスの増大、(2)糖化の亢進。血中ホモシステイン測定、血中・尿中のペントシジン測定は、骨質低下を反映する骨折予測マーカーとなるエビデンスが集積されてきた。

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小児診療において心雑音は日常茶飯事である。ときに心疾患発見の契機となるが、大部分は無害性で、その特徴を理解すれば精査紹介を節減できる。小児でも胸痛、失神はまれではない。特発性/心因性胸痛、自律神経性失神が大多数を占めるが、心疾患の除外は必須である。脈拍の性状とリズムの異常は、小児でも有用な情報となる場合がある。近年小児においても高血圧は増加傾向にある。大部分は軽症ないし正常高値血圧であるが、明らかな高血圧はまず二次性高血圧除外が原則である。発熱の陰に心疾患あり、川崎病は小児後天性心疾患の首位を占め、診断の遅滞は心後遺症のリスクを増す。また急性心筋炎は、小児診療における地雷疾患の一つである。心内膜炎、血管炎も診断困難な重症疾患である。小児の心疾患はNICUで診断ずみの先天性心疾患(CHD)だけではない。外来やERでも、診断の遅れが危急的事態を招く疾患に遭遇するリスクは常にある。筆者が経験したクリティカルケースを提示し、読者の危機管理に供したい。

診療controversy medical decision makingのために 糖尿病腎症に対する蛋白制限

推進の立場から 小川 大輔 , 槇野 博史
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糖尿病治療において、食事療法はもっとも基本的な治療であり、糖尿病腎症においても血糖・血圧コントロールのみならず腎機能低下を抑制するという観点から重要である。とくに、糖尿病腎症においては塩分およびカリウム摂取の制限に加え、蛋白制限が必要となる。顕性腎症以降の糖尿病性腎症患者に対し、0.8~1.0g/kg/dayの蛋白制限を指導することが妥当と考えられる。

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糖尿病腎症に対する蛋白制限が、本当に有効な治療と位置づけられるかについては、いまだ慎重な見方がある。その理由としては、第一に蛋白制限の有効性に関するエビデンスの不足があげられる。1型糖尿病では、腎機能悪化予防効果が確認されているといわれているが、それぞれの報告は症例数が少なく、かつ観察期間が短いものが多い。最近の1型および2型糖尿病に対するランダム化比較試験(randomized controled trial:RCT)を対象としたメタアナリシスムによると、蛋白制限食は蛋白尿を減少させるが、腎機能には有意な変化を与えなかった。2型糖尿病の顕性腎症患者を対象にした試験自体が少ないこと、さらにわが国における蛋白制限の大規模介入試験の結果も得られていない。実際、糖尿病腎症のどの病期にどれくらい蛋白を制限したらよいのか、患者が長く蛋白制限を続けられるのか、副作用はないのか、などといった解決されていない問題点が残っているのが現状である。

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発熱、関節痛、失見当識を主訴とする30歳女性について検討した。頬部紅斑、非びらん性多関節炎、腎障害、精神障害、血液異常、抗Sm抗体・抗核抗体の陽性を認めた。また、末梢血には破砕赤血球が観察され、ADAMTS13活性は0.5%以下、抗ADAMTS13抗体は8.5 Bethesda U/mlであった。血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)合併全身性エリテマトーデス(SLE)と診断された。パルス療法、血漿交換等によりSLEの活動性は若干低下し、TTPの良好なコントロールが得られた。しかし、血小板数(Plt)は低下したままであった。その後、腹満や嘔気などの腹部症状が出現した。フィブリン分解産物(FDP)は57μg/mlに上昇した。腹部CT・内視鏡で粘膜浮腫、内容液の貯留、管拡張不良等を認め、急性腸間膜虚血症(AMI)の発症と思われた。AMIは、TTP合併SLEの治療に際し、念頭に置くべき重篤な合併症と考えられた。

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右側腹部痛を主訴とする59歳女性について検討した。腹部単純X線写真では、上行結腸内側部に沿った、線状の石灰化陰影を認めた。腹部CT検査では、上行結腸を中心とした腸管壁の肥厚と、上行結腸の壁内・壁外の線状の石灰化を認めた。ヘリカルCTでは、上行結腸の腸間膜付着部側に沿って線状の石灰化を認めた。大腸内視鏡検査では、上行結腸中部に浮腫を伴った全周性の高度狭窄を認めた。上行結腸の生検では、粘膜固有層、粘膜下層への膠原線維の沈着を認めた。静脈硬化性腸炎と診断し、絶食、中心静脈栄養(IVH)管理とした。その結果、右側腹部痛は速やかに軽快し、内視鏡・CTとも発赤・浮腫の軽快、狭窄の改善を示した。腸管安静により腸管虚血を相対的に改善できることが示唆された

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頸部リンパ節腫脹を主訴とする54歳女性について検討した。全身CTで両側頸部リンパ節腫大の他、右腎に内部が不均一に造影される腫瘤性病変を認めた。腹部造影MRIも、右腎の腫瘍を示した。頸部リンパ節生検では濾胞性結節を多数認め、L26・CD10・bcl-2陽性、フローサイトメトリーによる細胞表面抗原解析ではt(14;18)(q32;q21)がみられた。悪性リンパ腫(濾胞性リンパ腫、Grade 1)と腎細胞癌の同時発生と考え、右腎摘除術を先行した。周囲リンパ節への転移や断端に腫瘍はみられず、手術は根治術であった。その後、濾胞性リンパ腫の臨床病期は進み、IVBとなり、術後3ヵ月よりR-CHOP療法(リツキシマブ、シクロホスファミド、塩酸ドキソルビシン、硫酸ビンクリスチン、プレドニゾロン)を開始した。6コース終了後のPET-CTに異常集積はなく、術後1年経過現在、悪性リンパ腫、および腎細胞癌の再発はみられない。重複癌症例は増加傾向にあり、悪性腫瘍症例では重複癌も念頭において全身検索を進めていく必要性が示唆された。

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突然、言葉が出なくなった83歳女性症例について検討した。Antithrombin(AT)III:65.7%、thrombin-AT III complex(TAT):60.0ng/ml以上、D-dimer:12.1μg/mlであった。頭部MRIで梗塞を多発性に認めたが、心電図は洞調律で硬化性変化は乏しく、不安定プラークや有意狭窄はみられなかった。抗凝固療法により失語症状は数日で消失した。悪性腫瘍の検索を行ったところ、腫瘍マーカー(CA19-9、CA125、CEA)は高値を示し、腹部エコーで膵と肝に占拠性病変を認めた。腹部CTでは辺縁が不整に造影される占拠性病変の他に、肝内には多数の転移と考えられる病変がみられた。進行膵癌と診断し、抗凝固療法を継続した。TAT、D-dimerはAT III活性の低下とともに再び高値を示すようになった。脳MRIは新たな梗塞巣を多数示した。第90病日に消化管出血で永眠した。原因不明の血栓・塞栓症を診察した際には、Trousseau症候群を念頭に置く必要があると思われた。

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2ヵ月の短期間で急激な増悪変化をきたしたスキルス胃癌の67歳女性症例について検討した。食欲不振、心窩部痛を主訴とした。約2ヵ月前の内視鏡像では、著明な萎縮性胃炎および小彎側一部に粘膜の不整を認めたが、送気による胃の拡張は良好であった。しかし、2ヵ月後の内視鏡像では、胃前庭部の狭窄と浮腫状変化を認めた。送気を行っても胃体中部から前庭部にかけて拡張せず、著明な進展不良を認めた。異常値を認めなかった腫瘍マーカーも、2週間後には異常高値を示した。スキルス胃癌を疑ったが、生検は慢性胃炎のみの所見であった。診断的治療のため開腹術を行ったところ、洗浄による腹水細胞診で胃癌と診断された。なお、患者は慢性C型肝炎に対するpeginterferon alfa-2b/ribavirin(PEG-IFNα-2b/RBV)療法中であった。

基本情報

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臨床雑誌内科
104巻3号 (2009年9月)
電子版ISSN:2432-9452 印刷版ISSN:0022-1961 南江堂

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