臨床雑誌内科 104巻2号 (2009年8月)

造血幹細胞移植の多様性に迫る 質の高い治癒を目指したアプローチ

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わが国では年間4000例を超える移植が施行され、非血縁者間骨髄移植から臍帯血移植へシフトがみられる。非血縁者間ドナー検索では、HLA-C抗原のKIRリガンドとの適合も重要である。非血縁者間移植においては、末梢血幹細胞移植が導入される見込みである。G-CSFよりも簡便・安全に末梢血幹細胞採取できる方法が、開発中である。臍帯血幹細胞の体外増幅や複数臍帯血移植など、新しい移植法が導入されている。予後良好群の急性骨髄性白血病では、FLT3遺伝子などさまざまな分子マーカーの変化により、治療を層別化する試みがある。imatinib出現後も、Ph陽性急性リンパ性白血病においては、とくに40歳以下の場合は、同種移植の施行が推奨される。

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2005年に慢性GVHDの診断基準が提案されたのに伴い、急性GVHD、慢性GVHDの定義も大きく改訂された。この改訂では、近年のGVHDの病態に関する研究から明らかにされた病態理解や、臨床研究から明らかになった臨床病像、予後が大きく反映されている。この改訂を受けて、わが国においてもGVHDの診療ガイドラインが改訂された(造血細胞移植ガイドラインGVHD:日本造血細胞移植学会、http://www.jshct.com/)。本稿では、急性GVHD、慢性GVHDの病態生理と診断について概説する。

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最近の造血幹細胞移植の増加は、移植技術の普及と移植適応の拡大にある。ミニ移植の導入により、高齢者、臓器障害をもつ症例、非寛解症例にも同種移植が可能となり、臍帯血移植やHLAミスマッチ移植により、病気進行を待たず、患者側のタイミングで移植することも可能となった。自家移植においては多発性骨髄腫で増加し、同種移植においては悪性リンパ腫、骨髄異形成症候群で増加している。今後は、拡大した移植適応を適切に評価することが必要であろう。

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自己末梢血幹細胞移植は、急性白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫などに対する治療法として確立している。十分量の末梢血幹細胞を採取することが、移植後の速やかな造血回復を得るために必要である。従来、化学療法後の造血回復期に顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)を併用して末梢血幹細胞を採取してきたが、今後CXCR4阻害薬による末梢血動員増強が期待される。悪性リンパ腫に対する自己末梢血幹細胞移植は、抗CD20抗体臨床応用後の臨床的な根拠が必要である。自己免疫疾患に対する自己末梢血幹細胞移植は、全身性硬化症などで有望な成績が得られつつある。

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同種造血幹細胞移植数は、臍帯血移植の成人への導入などにより、年々増加傾向にある。骨髄移植は確立された移植法であるが、ドナーコーディネート期間など解決不可能な問題がある。臍帯血移植は迅速な供給や、ドナー負担がないなどメリットが多いが、生着不全、日和見感染など解決すべき問題も多く、発展途上にある。同種末梢血幹細胞移植は、血縁者間で骨髄移植と同等の生存率が示された。しかし、急性・慢性ともにGVHDが多い傾向が報告された。本邦では非血縁者間の末梢血幹細胞移植は現在準備中であるが、海外においては血縁者間と同等の成績も報告されている。

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HLA不適合血縁者は、まれなHLA型を有するレシピエントに対する重要なドナー候補である。ドナーとのHLA-A,-B,-DRの不適合が1抗原のみであれば、非血縁者間骨髄移植に匹敵する成績を期待できる。不適合抗原が複数存在する場合には、移植片対宿主病(GVHD)の克服が課題となるが、最近、前処置への抗体医薬品の導入や免疫抑制の強化などの手法により、移植成績の向上が得られる可能性が報告されている。

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移植前処置の目的は、抗腫瘍効果と免疫抑制効果を得ることである。前処置を強めれば臓器障害による治療関連死亡率(TRM)が高まり、弱めれば再発率が増加する。移植前処置の選択は、患者背景や病勢、全身状態などを考慮して総合的に判断する。標準的な骨髄破壊的前処置のレジメンは、CY/TBIとBU/CYである。非血縁者間骨髄移植や臍帯血移植など拒絶が問題となるケースでは、TBIを含めた前処置がよく用いられる。近年、前処置の強度を弱めたミニ移植の開発により、高齢者や臓器障害の強い症例にも同種移植の適応が広がり、さらに前処置は多様化して選択がむずかしくなっている。本邦では大規模なデータベースの整備が進みつつあり、既存の前処置の評価をもとに、さらなる移植成績の向上が期待される。

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造血幹細胞移植に伴う移植関連毒性にはさまざまなものがあるが、そのうち移植前処置に直接起因する毒性を、前処置関連毒性(RRT)と呼ぶ。移植前処置では、一般的に化学療法より強い毒性が出る。これは、造血幹細胞のサポートがあり骨髄抑制を無視することができるため、骨髄抑制以外の通常の化学療法では認められない毒性が用量規定毒性(DLT)となるためである。移植前処置による重篤な臓器障害に対する有効な治療法はほとんどないため、移植前に各臓器の予備能を評価し、危険因子を避け、適切な前処置の選択や予防対策を行うことが重要である。

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造血幹細胞移植後早期は、敗血症の頻度が高く重症化しやすいため、発熱性好中球減少症(FN)時の血液培養や適切な抗菌薬選択による経験的治療が、その予後を左右する。世界的にキノロン系薬による予防投与が頻用されている一方で、耐性菌が増加しており、各施設における耐性菌の状況把握が必要である。各抗菌薬のpharmacokinetics/pharmacodynamics(PK/PD)に基づく合理的な適正使用によって、さらなる耐性菌の発生を抑制し、効果的な治療が可能となる。

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造血幹細胞移植患者で問題となる頻度の高い真菌感染症は、カンジダ症とアスペルギルス症である。侵襲性アスペルギルス症は、確定診断が困難であり、いったん発症した場合の予後は不良である。そのため、胸部CTやガラクトマンナン抗原検査を用いた早期診断が重要である。抗真菌治療を開始する場合には、予防投与、経験的治療、標的治療などの目的にあった抗真菌薬を、エビデンスに基づいて選択する必要がある。侵襲性アスペルギルス症の標的治療は、voriconazoleが第一選択薬であり、代替治療としてliposomal amphotericin Bが使用される。

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造血幹細胞移植後に問題となるウイルス感染症は、多岐にわたる。サイトメガロウイルス(CMV)感染症はpre-emptive therapyにより一定の予防効果が認められたが、難治例もあり、特異的T細胞の測定や投与などの新しい試みがはじまっている。HHV-6ウイルスは移植後の多くの合併症に関与していることが指摘されつつあるが、いまだに詳細な機序は明らかではなく、治療法も確立していない。とくに脳炎は、致死的合併症として問題視されている。造血幹細胞移植後の出血性膀胱炎では、アデノウイルスやBKウイルスなどが原因ウイルスとなりうる。アデノウイルスは全身に播種し致死的な経過をたどりうる。BKウイルスは1~2ヵ月内に治癒することが多いがQOLを損なう傾向にある。これらに対しribavirin、vidarabine、cidofovirなどの新たな抗ウイルス薬が試されている。

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造血幹細胞移植の成功率を高めるうえで、移植片対宿主病(GVHD)の予防と治療は重要である。GVHDの標準予防法は、カルシニューリン阻害薬(CI)+methotrexateである。CI血中濃度の適切な管理により、GVHDの予防効果は向上する。GVHDの標準治療は、ステロイド全身投与である。標準治療に反応しない難治性GVHDへの治療選択肢は限られることから、海外で有効性が示されている治療法を国内に導入するための基盤整備が望まれる。

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造血幹細胞移植における移植後早期の合併症として、口腔粘膜障害は非常に頻度が高い。移植前処置の大量化学療法・全身放射線照射により口内炎を発症し、移植後の免疫抑制に使用されるmethotrexate(MTX)によって、広範囲で重篤な口内炎になることもある。口腔内は約500種類、100億の常在菌が生息する環境下である。高度な好中球減少状態である造血幹細胞移植後早期では、容易に感染病原体の進入経路となり、その結果、重症な合併症の一つとなる。口腔粘膜障害を予防するために、口腔ケアを5 stepに分けてその方法について説明する。

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造血幹細胞移植後は、ウイルス疹、薬疹、急性移植片対宿主病(GVHD)、慢性GVHD、生着症候群、治療関連毒性、腫瘍細胞の皮膚浸潤(再発)が出現しうる。水痘・帯状疱疹ウイルス感染症では、臨床症状が非典型的であり、初期診断の遅れが致命的になることもある。薬疹は常に急性GVHDとの鑑別が困難であり、皮膚生検での両者の鑑別は不可能である。慢性GVHDには扁平苔癬型、強皮症型がある。GVHDと腫瘍細胞の皮膚浸潤が鑑別にあがる場合には、皮膚生検にて確定診断をすべきである。

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造血幹細胞移植後に発生する消化管合併症に対し、内視鏡検査が施行されることは少なくないが、その主たる目的は肉眼的診断ではなく、得られた生検標本による病理組織学的診断にあった。文献学的には、その診断は直腸や十二指腸に限定した生検標本で十分との論調もみられるが、これにはいくつかの問題点が潜んでいる。本稿では、造血幹細胞移植症例に行う内視鏡検査における肉眼的診断の重要性につき、自験例をもとに紹介する。また、近年注目を集めているカプセル内視鏡検査が、造血幹細胞移植の分野で果たすべき役割についても言及する。

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造血幹細胞移植後の神経合併症は多岐にわたり、一般に予後不良である。中枢神経系の障害の頻度は約10%で、感染症、PRES、脳血管障害の三つが主原因である。human herpesvirus 6による辺縁系脳炎は意識障害、けいれん、記銘力低下が特徴で、臍帯血による幹細胞移植での頻度が高い。PRESは移植全体の約3%で発症し、高血圧が初発症状であり、PRESを発症した場合はGVHD合併症の頻度が高く、生命予後は不良である。末梢神経系でも、免疫学的機序により多彩な合併症を呈する。

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造血幹細胞移植における呼吸器合併症は、感染性と非感染性に大別され、移植後の免役能の回復過程により病像が大きく異なる。びまん性肺胞出血は、早期に発症し予後不良となりやすいが、最近、活性型第VIIa因子製剤の効果が報告されている。peri-engraftment respiratory distress syndrome(PERDS)は、骨髄生着時の免疫反応により肺水腫や胸水を認めるもので、治療反応性は良好である。特発性肺炎症候群は、予後不良の合併症だが、最近TNF-α阻害薬の有用性が注目されている。閉塞性細気管支炎は、慢性GVHDの関与する晩期合併症で、定期的な肺機能検査や呼気CTでのmosaic appearanceが診断に有用で、治療にはステロイドや免疫抑制薬のほか、マクロライド長期療法や吸入ステロイドも試みられている。BOOPは、比較的まれな合併症で発症時期も一定せず診断が困難なこともあるが、ステロイドが奏効しやすい。

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造血幹細胞移植後の眼合併症は、ドライアイの頻度がもっとも高い。GVHDによるドライアイ発症前の眼瞼結膜偽膜に注意する。GVHDによるドライアイ軽症例の急速進行に注意する。内科との緊密な連携により、全身免疫抑制薬の増減を把握する。まれであるが重症例の角膜混濁、穿孔に注意する。全身局所副腎皮質ステロイドの影響による白内障、緑内障に注意する。眼GVHDの病態に、病的線維芽細胞が積極的に関与する可能性がある。病的線維芽細胞とT細胞とのinteractionにより、病態が増幅する。眼GVHD発症予防、早期診断と局所免疫抑制薬や局所抗線維化療法の必要性を示す。

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移植期間中には、身体症状がきつくなるにつれて心理的つらさも増す。患者の不安にはスタッフ側から察しをつけて繰り返し説明することや、自己コントロール感喪失には患者自身の治療参加意識を促すなどの働きかけが必要である。移植体験者からの情報、ストレス対処法を事前に伝えるpatient educationも有用である。移植期間中に合併する精神疾患としては、低活動型せん妄の増加が指摘されている。移植後の心理社会的問題としては、身体機能関連QOLの低下、再発への不安を抱えながらの社会復帰の困難さが浮き彫りになる。患者が"移植後の自分"という新しいアイデンティティを築いていくには、家族、職場をはじめ周囲の理解度が大きな鍵となる。

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造血幹細胞移植後の精子形成機能障害対策としての、治療前精子凍結保存ついて概説した。精子は撹拌密度勾配法にて濃縮し、液体窒素浸漬法で凍結した。最近6年3ヵ月間の来院患者は294例で、初診時年齢は20歳代および30歳代が82.7%を占めた。未婚者が73.5%で、原疾患は精巣腫瘍がもっとも多かった。血液・造血器疾患では、前治療が62.7%になされていた。動物実験でGnRH analogueおよびテストステロンなどに、精子形成障害に対する抑制作用があることが示された。

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悪性腫瘍に対する治療の発展と向上は、生命予後の改善をもたらし、疾患を克服できた患者は、その後の生活のquality of life(QOL)を求めるようになりつつある。化学療法および放射線療法は、正常な生殖細胞に対しては不可逆性の細胞障害を生じ、生殖能力や生殖臓器が産生している内分泌環境を退行、ないしは破壊にいたる結果となることが少なくない。その結果、女性は無排卵、無月経症、ホルモン欠落症状、腟閉鎖などの多様な症状を呈することも少なくない。挙児を希望する女性に対して、生殖細胞保存も多様なプランが用意されつつある。

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GVHD(移植片対宿主病)の予防法、ならびに発症時の一次治療については、すでに標準的治療法が確立している。二次治療が必要となる患者の予後は不良であり、至適な二次治療の方法も確立していない。二次治療として、わが国ではステロイドパルス療法や抗ヒト胸腺グロブリンが用いられてきたが、まとまった報告はない。現在、諸外国ではミコフェノール酸モフェチル、rapamycinならびにその誘導体、抗サイトカイン療法薬、各種モノクローナル抗体、免疫細胞療法などの治療研究が行われ、一定の効果をあげている。わが国でも遺伝子治療の治験がはじまろうとしている。

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臨床医が日常臨床から得られた「思いつき」をエビデンスにしていくのが、臨床試験である。個人の経験を一般論にするには客観的な証明が必要であり、そのハードルは実はかなり高い。造血幹細胞移植の領域では、対象患者が少ないこと、血液臨床医が日々多忙であること、医療の進歩の速度が速いことなど、臨床試験の実施に対する阻害要素は枚挙にいとまがないが、世はEBM(evidence based medicine)のご時世、いつまでも経験論だけに頼るわけにもいかない。「方法論を知れば、百戦危うからず」といくかどうかはわからないが、まずは臨床試験の方法論を知るべきであろう。最近の新しい考え方として、ベイズ統計学に基づいたadaptive designという手法も登場しており、これらはまだ発展途上であるが、これまでの臨床試験方法論の問題点を解決する救世主になる可能性もある。

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小児科専門医・専門施設を受診する必要性が高い細菌感染症(化膿性髄膜炎、菌血症、肺炎、急性喉頭蓋炎、骨髄炎・化膿性関節炎、尿路感染症、感染性腸炎)に限って概説した。小児期の細菌感染症の頻度・重症度・入院の必要性は、年齢を、0~3ヵ月、3~36ヵ月、それ以後の3群に分けて判断するのが、一つのコツである。低年齢群であるほど、重症細菌感染症の頻度が高い。いずれの細菌感染症もおのおのの疾患を疑うことからはじまるが、中でも、早期に発見しただちに専門病院への紹介が必要な重大疾患は、化膿性髄膜炎、急性喉頭蓋炎、骨髄炎・化膿性関節炎である。病初期(発熱してまもなく)に異常所見が少なくても、急激に症状が悪化する場合がある。状態の変化があれば再受診する旨を伝えておくとよい。細菌感染症の診断には、一般的に白血球数、CRPが診断に有用であるが、菌血症でCRPが上昇していない症例や、化膿性髄膜炎で白血球数の上昇していない症例がありうることに注意する必要がある。適切な部位から培養検体(血液培養、尿培養、便培養など)を採取してから、抗菌薬を投与するのが基本である。培養を採取せず抗菌薬を投与したために、化膿性髄膜炎などの重大疾患を、起炎菌不明のまま治療しなければならない場合がある。

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狭義の舌痛症患者16名を対象に、口腔カンジダ症に対する効果が確認されている抗真菌薬を投与し、その効果を検討した。抗真菌薬は第一選択としてitraconazoleを、第二選択としてmiconazoleを用い、16例中13例にitraconazoleを投与し、残り3例はmiconazoleを使用した。抗真菌薬の投与により、13例で舌の痛み(VAS値)の有意な低下がみられた。16例中13例において抗真菌薬投与後のカンジダ培養検査を行った結果、抗真菌薬投与前には8例でカンジダ菌が検出されたが、投与後にはこの8例中6例でカンジダ菌は消失していた。また、培養同様13例でカンジダマンナン抗原値の変化を検討した結果、投与後には11例でマンナン抗原値の有意な低下を認めた。

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88歳女。汎発性帯状疱疹にて前医入院時に白血球増多がみられ、精査目的に当科紹介入院となった。検査所見はWBC 49600/μl(Seg 8.0%・Lym 86.0%・Mono 2.0%・Eos 2.0%・異型リンパ球2.0%)、RBC 348万/μl、Hb 9.9g/dl、Ht 31.8%、Plt 12.9万/μl、Ret 1.9%、AST 24IU/l、ALT 14IU/l、LDH 293IU/l、CRP 0.12mg/dlで、画像検査では軽度の脾腫以外に異常はなかった。生化学検査は異常なく、抗HTLV-1抗体は陰性で、末梢血塗抹標本では小型でN/Cの高い、核小体をもたないリンパ球が多数認められ、腫瘍細胞はCD2、3、4、5、7、25陽性で、骨髄穿刺検査では87.5%がリンパ球で占められていた。以上より、T-cell prolymphocytic leukemia(T-PLL)、small cell variantと診断した。PHA添加培養での染色体分析検査では、41,XX,add(1)(p11),der(7)t(1;7)(p13;q32),-8,i(8)(q10),-11,-13,-13,inv(14)(q11;q32),-17,-18,-21,-22,+mar1,+mar2,+mar3[9]/46,XX[12]の異常を認めた。退院の後、外来で経過観察していたが、徐々に白血球増多が進行し、病勢が進行したためfludarabineを投与した。しかし、効果は一過性で、その後も病勢は増悪し、再びfludarabineを投与したところ、白血球数は減少したが、grade 3の好中球減少、血小板減少が出現し、原因不明の間質性肺炎も併発した。その後、左中大脳動脈領域の大梗塞が出現し、永眠された。

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77歳女。左膝関節症、骨粗鬆症、陳旧性ラクナ梗塞、陳旧性肺結核にて近医通院中、発熱が出現し、抗生物質等を処方されるも効果なく、その後左股関節~腰部の疼痛が生じ起立・歩行困難となった。入院時、意識レベルJCSI-2で、項部硬直・ケルニッヒ徴候・尿閉を認め、独力での起立保持は不能であった。検査所見は尿ケトン陽性以外に異常はなく、脳波の基礎律動は6~7Hzのθ波で、間欠的にδ波が全般性に出現し、髄液検査では単核球優位の細胞数増加と蛋白増加、糖低値を認めた。経過・理学所見・髄液所見より、亜急性髄膜炎と診断した。臨床症状は次第に悪化し、意識レベルの更なる低下や四肢にミオクローヌスの出現を認めるようになった。血清および髄液のアスペルギルス、カンジダ、クリプトコッカスの抗原は陰性であったが、偽陰性である可能性を考え、髄液の(1→3)-β-D-glucan値を測定したところ600pg/mlを上回る異常値を示し、真菌性髄膜炎と診断した。第12病日よりvoriconazole点滴を開始したところ、第16病日には微熱とミオクローヌスは消失し、第20病日には意識障害もなくなり、脳波も正常化した。第23病日には髄液(1→3)-β-D-glucan値は正常化し、第30病日には独歩可能となり、第41病日に退院した。

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40歳女。妊娠6週から妊娠悪阻による食思不振が出現し、妊娠10週2日から臥床がちとなり、その後呼名に反応しなくなったため救急搬送された。来院時の意識レベルはGCS 5(E3V1M1)で、低Na血症と低血糖を認めた。ブドウ糖液静注にて意識レベルはある程度改善し、重症妊娠悪阻と診断された。補液によりNaは軽度改善したが、その後再度低下傾向を認めたため当科転科となった。転科時の検査成績では白血球増多、好酸球減少、小球性低色素性貧血を認め、血清Naは131mEq/lであった。Dexamethasone投与下の内分泌学的検査では、基礎値では副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、コルチゾール、LH、FSHが低値であり、下垂体4者負荷試験ではACTH、コルチゾール、LH、FSHの低反応、TSHの過剰反応を認め、迅速ACTH負荷試験ではコルチゾールが低反応、アルドステロンは正常反応を示した。頭部MRIでは下垂体前葉は著明萎縮し、トルコ鞍内はempty sellaの所見を示した。副腎不全を強く疑いhydrocortisoneを6時間ごとに静注したところ、意識レベルは著明に改善した。以後はhydrocortisoneを経口投与し、摂食状況や活動性の改善に応じて漸減した。甲状腺ホルモンについてはlevothyroxine投与を開始した。出産直前にはhydrocortisone、levothyroxineを増量し、帝王切開にて分娩後は両薬剤共に漸減した。なお、産後2ヵ月目に月経があり、以後規則的に発来している。

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61歳男。検診目的に胃内視鏡検査を受け胃癌を指摘され、当院紹介入院となった。胃X線で体下部大彎に28×24mmの隆起性病変を認め、前庭部から体部には径3~5mmの小さな隆起が多発していた。内視鏡では胃体部大彎に隆起性病変を認め、早期胃癌(O'-IIa)と診断した。体部から前庭部には小さな粘膜下腫瘍が多発しており、これらは超音波内視鏡で第3層内に多発する低エコー腫瘤として認められ、びまん性胃粘膜下異所腺と考えられた。以上から、びまん性胃粘膜下異所腺に早期胃癌を合併したものと考え、癌部の内視鏡的粘膜下層剥離術を施行した。病理組織所見は28×28mmのO-IIa型の胃癌で、高分化型腺癌であった。深達度はMで、ly0、v0、水平、垂直段端は陰性であった。粘膜下層には1層の上皮で覆われた嚢胞が多発しており、嚢胞上皮に異型は認めなかった。現在経過観察中であるが、再発や異時多発などは認めていない。

基本情報

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臨床雑誌内科
104巻2号 (2009年8月)
電子版ISSN:2432-9452 印刷版ISSN:0022-1961 南江堂

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