診療controversy medical decision makingのために 糖尿病腎症に対する蛋白制限
慎重な立場から
安孫子 亜津子
1
,
羽田 勝計
1旭川医科大学 内科学講座病態代謝内科学分野
キーワード:
エネルギー摂取量
,
患者コンプライアンス
,
食品中のタンパク質
,
糖尿病性腎症
,
EBM
,
低タンパク食
,
メタアナリシス
,
システマティックレビュー
Keyword:
Energy Intake
,
Diabetic Nephropathies
,
Dietary Proteins
,
Patient Compliance
,
Meta-Analysis as Topic
,
Evidence-Based Medicine
,
Diet, Protein-Restricted
pp.556-559
発行日 2009年9月1日
Published Date 2009/9/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00974.2009305760
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糖尿病腎症に対する蛋白制限が、本当に有効な治療と位置づけられるかについては、いまだ慎重な見方がある。その理由としては、第一に蛋白制限の有効性に関するエビデンスの不足があげられる。1型糖尿病では、腎機能悪化予防効果が確認されているといわれているが、それぞれの報告は症例数が少なく、かつ観察期間が短いものが多い。最近の1型および2型糖尿病に対するランダム化比較試験(randomized controled trial:RCT)を対象としたメタアナリシスムによると、蛋白制限食は蛋白尿を減少させるが、腎機能には有意な変化を与えなかった。2型糖尿病の顕性腎症患者を対象にした試験自体が少ないこと、さらにわが国における蛋白制限の大規模介入試験の結果も得られていない。実際、糖尿病腎症のどの病期にどれくらい蛋白を制限したらよいのか、患者が長く蛋白制限を続けられるのか、副作用はないのか、などといった解決されていない問題点が残っているのが現状である。
©Nankodo Co., Ltd., 2009