発行日 2009年9月1日
Published Date 2009/9/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00974.2009320188
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突然、言葉が出なくなった83歳女性症例について検討した。Antithrombin(AT)III:65.7%、thrombin-AT III complex(TAT):60.0ng/ml以上、D-dimer:12.1μg/mlであった。頭部MRIで梗塞を多発性に認めたが、心電図は洞調律で硬化性変化は乏しく、不安定プラークや有意狭窄はみられなかった。抗凝固療法により失語症状は数日で消失した。悪性腫瘍の検索を行ったところ、腫瘍マーカー(CA19-9、CA125、CEA)は高値を示し、腹部エコーで膵と肝に占拠性病変を認めた。腹部CTでは辺縁が不整に造影される占拠性病変の他に、肝内には多数の転移と考えられる病変がみられた。進行膵癌と診断し、抗凝固療法を継続した。TAT、D-dimerはAT III活性の低下とともに再び高値を示すようになった。脳MRIは新たな梗塞巣を多数示した。第90病日に消化管出血で永眠した。原因不明の血栓・塞栓症を診察した際には、Trousseau症候群を念頭に置く必要があると思われた。
©Nankodo Co., Ltd., 2009