臨床眼科 45巻11号 (1991年10月)

特集 眼科基本診療—私はこうしている

巻頭言

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はじめに

 この特集は,眼科診療の基本について,それぞれの分野の得意な人達がそのコツなども含めて書いてくれることになっている。基本的な診療技術に習熟することは,よい診療をするための絶対的な条件であることはいうまでもない。診療を行うには,技術だけではなく,広い知織に基づいた考え方の他に,診療の倫理が必要である。前者は,いわゆる経験といわれているものの一部をなすものであるが,しかし,単なる経験だけではなく合理的な考え方が大切だと思う。また,いかなる医療を行う場合も医療の倫理が基礎になければならない。

 この特集の巻頭では,細かい話は抜きにして倫理と考え方について少し述べた後で,私は最近片眼白内障手術を受けたので,患者としての体験を述べて,皆さんの参考に供したいと思う。

診断に必要な基本技術

スリットランプの使い方 坪井 俊児
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 スリットランプの使い方についてはいくつもの教科書がある。そこではスリットランプの種類や構造,各種観察法,特殊な使い方について詳しく解説されている。しかし,日常臨床でこれらを試そうとしてもまごつくばかりであり時間もかかってしまう。要点は異常所見を短時間に能率よくとらえていくことである。そのためには一定の順序とリズムが必要で,いたずらに時間をかけても患者が苦痛なだけであり,場合によっては光障害の可能性もある。ここでは現在筆者が行っている方法を記載して参考に供したい。

三面鏡の使い方 弓田 彰
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Goldmann型三面鏡の種類と構造

 Goldmann型三面鏡には,接眼部の大きさにより,大,中,小の3種類がある。被検者の瞼裂の大きさにより使い分けるが,小型のものは鏡の部分も小さくなり,像が見にくいので通常は一番大きなものを用いる。

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 自動視野計(以下AP)の普及に伴い,ゴールドマン視野計(以下GP)は利用頻度が低下している。GPは検者の技量により計測される視野に大きい違いがあり,異なる施設間での視野の結果を単純に比較できない。またAPの閾値測定のように視野の客観的な比較が出来ず緑内障の視野のわずかな改善悪化を評価することも不可能である。

 しかしながら被検者が下記の場合は非常に有用である。

眼圧の測り方 松元 俊
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器具およびキャリブレーション

 ゴールドマン圧平式眼圧計(アプラネーション・トノメーター)を用いる。圧平プリズム(アプラネーション・チップ)の接触面を清拭し,プリズム横の目盛の0°または180°をプリズム支持枠の白線に一致させてセットする(図1)。加圧ドラムの目盛を−0.1gに合わせると圧平腕は検者側に傾き,+0.1gに合わせると患者側に傾くことを確認する.次に附属の加圧検定器を眼圧計右上部の丸い穴に差込む。加圧検定器の重りを中央より右側の線の位置で固定し,2gの力を与えながら,加圧ドラムを回して1.9gおよび2.1gのところで圧平腕が同様に自然に前後に動くことを確認する。さらに,加圧検定器の重りの位置をずらして6gの位置でもチェックする(図2)。(1gの目盛が眼圧測定時の10mmHgに相当する。)このチェックに合格しない場合はこの眼圧計は用いない。

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各画像と方式の特徴と比較

 眼科の超音波検査に用いられる画像化の方式はA,B,C,D,Mモードと多様であるが日常診療には眼軸計測用のAモードと断層像を得るためのBモードがよく用いられている。RF信号とコンピュータによるデータ処理を組合せた精密な膜厚計測,顕微鏡法,ドップラー法,三次元表示法も実用の域に近づいている。

 眼軸計測用のAモードは単一探触子のものが多いが配列型探触子でBモード併用で測定を容易にした機種(Optiscan 2HOI,Sanei)もある。いずれもある条件を満たしたデータの自動保持機能があり使いよい。眼軸長計測を基礎にした正視化に要する人工レンズのパワー決定法にはSRK式やその変法も多いが,白内障の種類によらず水晶体中の音波の伝搬速度に一定値を用いていることはあまり考慮されていない。軟性白内障と核白内障にはSRK式で求めた値に0.5Dを加えあるいは減じた値を用いる方が実際に近いという考えも出されている(Massin,1990)。

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 眼底撮影のポイントは器械の扱いによるものよりも,患者の扱い方で写真の良し悪しが決まってしまうものであると言っても過言ではない。そしてもうひとつ大切なことは,ファインダーを通しての見え具合を会得することである。これは話を聞いたり,本や説明書を見たりするよりも,自分自身で体得するものである。この項では器械の扱いは他書に任せ,私の日常行っている撮影方法を紹介する。

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 1960年,AlvisとNovotnyによって開発された蛍光眼底撮影は,現在では広く普及し,眼底疾患の診断や治療方針をたてる上で,必須の検査になっている。原理は,フルオレスセインを上腕静脈から注入し,眼底を青色光で照らし,血柱から蛍光を発生させ,この蛍光を撮影するものである。最近では,赤外蛍光眼底撮影や蛍光眼底造影像の画像処理もなされるようになり,さらに進歩しつつある。しかし,撮影の基本は同じであるため,撮影の手技と撮影に必要な知識について解説する。

眼瞼疾患の所見の取り方 八子 恵子
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眼瞼翻転法のポイント

 眼瞼疾患の診断にその翻転は極めて重要な操作である。時にこの初歩的な操作が困難なことがあるが,次のポイントに留意して行うとよい。

 1.利き手は使わない。

 感染症の多い眼瞼の観察により両手が一度に汚染されるのを防ぐ意味である。

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結膜所見

 結膜を見るとき,それがred eyeであれば,まず念頭にあるのは,EKCではないだろうか。そのためすべてがEKCとの鑑別になってしまうところがある。EKCを恐れるあまり結膜の充血については余りかかわりたくないと言うのが本音ではあるが,結膜充血に毛様充血が合併している時もあるので,自信のない症例を鑑別するには,やはり細隙灯顕微鏡の所見は必要である。勿論,手持ちスリットランプでもよいが,いずれも最後にフルオレセイン染色をするのが,手早く見落としなく見るときには賢い方法と信じている。フルオレセイン染色は,単に角膜疾患の合併を見落とさないためだけではなく,結膜の乳頭所見を診るときも浮き出るように良く瞬時にみられる,など便利である。

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 角膜潰瘍はさまざまな原因によりボーマン膜を越えて角膜が欠損した状態であり,中央部の潰瘍は一般に感染症としては細菌,真菌,ウイルス,原虫などによって起こるものが多いが,中には栄養障害性潰瘍もある。周辺部潰瘍は非感染性の免疫系の自己障害として起こるものが多い。最初に患者さんに接した場合にそのいずれのものかは典型例を除いては分からない場合が多い。しかし早期に確実な治療を施さないと限局した小さなものでも重篤な潰瘍に移行するので注意を要する。その意味で組織を採取し,その組織に細菌,真菌検査や細胞診断を行い,原因をつきとめることは治療方針決定の意味で重要なプライマリケアーのひとつである。

角膜所見のとり方 藤島 浩
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大きさ

 角膜の大きさは直径11.5mm〜12.0mmであるが,測定に関しては細隙灯のマイクロメーター(接眼レンズにゲージが入ったもの)で,簡単に測定可能である。

瞳孔異常の見方 向野 和雄
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1.瞳孔構造と薬理

 瞳孔は虹彩によって形作られるカメラのシボリのようなもので,ほぼ円形を呈し,その大きさは明るさ,調節の有無,年齢,精神状況などでいろいろと変化するものである。その大きさを規定するものは瞳孔括約筋(アセチルコリンによる副交感神経支配,一部交感神経抑制支配ありという),瞳孔散大筋(ノルアドレナリンによる交感神経支配,一部副交感神経抑制支配あり),さらに近年瞳孔括約筋のタキキニン(サブスタンスP,ノイロキニンAなど三叉神経由来のもの)支配により縮瞳を来すことなどが知られている。

ぶどう膜炎の隅角所見 木村 良造
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 ぶどう膜炎では隅角検査が必要不可欠である。なぜなら,(i)虹彩根部および虹彩周辺部,毛様体帯,線維柱帯の観察は隅角検査以外によっては不可能である,(ii)毛様体の病変がしばしば毛様体帯に波及し,しかもその毛様体帯の病変だけが唯一の所見という症例も時に見られる,(iii)隅角検査により時に毛様突起の病変も観察可能である,等の理由による。角膜が透明で,前房の混濁が著明でない限り,隅角検査は常に可能である。

 以下にぶどう膜炎による隅角の変化について順を追って解説する。

硝子体混濁の鑑別 高橋 正孝
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 硝子体混濁を鑑別することになるきっかけは,患者が飛蚊症を訴える時,倒像鏡で偶然見た場合,細隙灯の前眼部検査で疑いが持たれた時,ある疾患に合併する硝子体混濁を確認したい時などである。共通して大切なことは次の点である。

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 白内障による視力障害は通常,慢性的に起こり,その程度はさまざまである。また白内障患者では羞明,単眼複視,近視化なども訴えるのでそれも参考にする。白内障で,患者が急激な視力低下を主訴に来院することも時にあるが,これは片眼性で気がついてなかった,あるいは膨潤白内障などの場合である。各検査では以下のことに注意する。

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 胎生学的には,隅角組織はpars iridicaとpars ciliaris retinaeとの間に中胚葉から形成される。胎生第6か月で前房は線維柱帯組織の前縁に達し,その後さらに角膜組織と虹彩組織の分割がすすみ,出生時には前房は線維柱帯組織の後縁まで広がり成人の隅角に近い様相を呈するにいたる。この発育過程が十分に完了していない場合には,隅角底(anterior chamber angle recess)は十分に広く,かつ深く開いていない。そして虹彩角膜櫛状靱帯(pectinate ligament,虹彩突起)の遺残が多数みられ,虹彩根部は高位挿入(high insertion)の様相を示し隅角形成不全の所見を示すことになる。すなわち,これらの所見に対する解釈としては,中胚葉発育不全による,虹彩の角強膜からの不完全分割を原因とみなす分割説(anterior chamber deavage theory)が最も有力である。

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 眼底の細隙灯顕微鏡法では検眼鏡によって得られた所見を立体的に捉えることができ,一見して光学切片のみで診断出来るものが多く,深さの正確な判定,検眼鏡では見えない光学的不連続帯の認定が可能で,診断や治療方針の決定,予後の判定に役立つ重要な検査法である。多少煩わしさもあるが,ルーチンの検査法として行うことを心がけ大いに活用すべきである。

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 網膜血管病変を A.閉塞性病変 B.代謝異常によるもの C.血管瘤および血管性腫瘍 D.滲出性病変を伴うもの E.全身疾患関連のものF.その他に分けて考える。

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 網膜最周辺部の網膜裂孔及び網膜変性巣の発見を目的とした場合,双眼倒像眼鏡と強膜圧迫子による眼底検査が必須である。この方法では網膜最周辺部が,立体的に,また強膜圧迫子による触診により動的に観察出来,他の方法では発見が困難な微細な網膜硝子体癒着も発見可能である。網膜剥離眼では,網膜裂孔が発見できても,鋸状縁から毛様体扁平部までの詳細な観察を行い,存在する全ての病巣を把握しなければ良好な治療結果は得られない。以下,この手技について述べる。

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 網膜・硝子体出血を来す疾患には多くの疾患が挙げられるが,たとえ大量の硝子体出血のために患眼の眼底所見の把握が行えないような症例であっても綿密な診察によりその大部分の疾患は診断が可能である。

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 重症の未熟児網膜症(retinopathy of prematu-rity,ROP)とは,一般に厚生省新分類でのⅠ型3期中期以上または中間型やⅡ型ROPと考えるのが妥当である。その病期を的確に診断することは,治療の必要性や適切な時期を決定する上で,非常に重要である。ROPの診療方法については,すでに市川1)が,本誌小児眼科診療マニュアルで述べており,重複する点もあるが,重症度判定のポイントを具体的に詳しく述べる。

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 眼底の隆起性病変を疑う場合,鑑別するべき疾患は患者の年齢で大きく異なる。又,諸検査が十分行えるか否かで検査手順を検討する必要がある。

 

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 視神経乳頭の腫脹(disc swelling)は,いろいろな病態で認められる。また,乳頭が先天的に隆起(disc elevation)していて,検眼鏡的に腫脹したように見える場合もある。基本的には,頭蓋内圧亢進に基づくうっ血乳頭(papilledema)と先天異常である偽性うっ血乳頭(pseudopapil—ledema)そして視神経乳頭部の局所的病変に基づくグループの3つに分けると理解しやすい(表1)。

 このうち乳頭炎(前部視神経炎)や前部虚血性神経症といった日常比較的よく遭遇する乳頭の局所的病変に基づく乳頭腫脹の場合,急性視力障害,つまり中心視力の低下や視野欠損,および同側瞳孔の直接対光反応の減弱を認めるのが原則で,日常臨床でうっ血乳頭との鑑別が問題となることは,まずない。一方,うっ血乳頭は,検眼鏡的に完成された段階でも,黄斑部が二次的に障害(黄斑浮腫,脈絡膜皺襞形成,網膜下新生血管膜からの黄斑出血等)されない限り中心視力の低下はなく,また,盲点の拡大を除いて視野欠損は認められない(図1)。したがって,日常最も問題となってくるのは,偽性うっ血乳頭との鑑別である。

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視神経乳頭陥凹観察のポイント

 視神経乳頭陥凹の大きさ,深さ,および色調を観察しなければならない。

 1)乳頭陥凹の大きさ:乳頭の全方向へ陥凹が拡大する場合もあるが,多くの緑内障,特にその早期から中期にかけては,上下から耳側にかけての拡大が特徴である。その拡大のしかたには,乳頭底部から辺縁部にかけてなだらかな広がりをする皿状陥凹(socerization)(図1,a)と,辺縁部が急に切れこんで狭くなるnotching(図1,b)とがある。

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 眼球突出を主訴とする患者の頻度は眼科でみられる他の疾患に比べ少数である。また外見から眼球突出の病態を肉眼的に直視できないうえに,眼球が突出しているようにみえてもみかけの眼球突出もある。よって眼科の外来だけでは簡単に診断がつきにくく,CT, MRI, X-rayなどにたよることが多いことも特徴といえる。以下,眼科外来ですべき処置を述べる。

斜視鑑別のポイント 上原 雅美
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 斜視とは,両眼の視線が一点に集中しないで1眼が目標からずれ,うまく両眼視していない状態で,眼位異常とともに種々の程度の両眼視の異常や弱視を伴っている。

 外見上,斜視のように見えても正位のことがあるが,正位のように見えても斜視のこともある。また,間歇性,周期性に斜視が出現することもある。中には,いくつかの異常が合併していることも少なくない。

幼少児の眼所見のとり方 東 範行
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 小児ことに乳幼児の疾患は,一般に本人の自覚症状や病識に乏しい一方で,重篤で変化の速いものも多い。したがって早期に発見し,早急に詳しい検査を行い,またこれを頻回に繰り返さなければならないことがしばしばある。しかし大部分の乳幼児は検査に対して非協力的であり,十分な所見が得られないことが多い。自覚的検査はもちろん他覚的検査においても,まず恐怖感を植えつけず,検査に対して慣れるようにすることが重要である。ここでは主に外来における検査の手順と一般的な注意について始めに述べ,個々の検査のポイントについても述べる。

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 眼球運動障害は,複視,動揺視,眼精疲労などさまざまな主訴で来院するが,特に器械を使用せずとも,丁寧な問診と視診でかなりの程度まで病名を推定できる。これにフローチャート(次頁)に示す検査を加えれば,ほとんどの症例で詳しい病名までは診断できなくとも,どのレベルのどのような障害であるかを決定することは容易である。

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 休息してなおるものを生理的な眼疲労といい,いつまでも続くものを病的な眼精疲労という。眼精疲労とは対象をよくみようとして努力する時に経験される苦痛または異和感である(亀井)。今までに多くの分類がされているが最近では身体因の解明できるものを症候性眼精疲労とし,心因によるものを本態性眼精疲労としている。医療機関を回り歩くいわゆるprofessional patientといわれる症例には後者が多い。両者は明確に区別されるものではなく混り合って頑固な症状を呈することが多い。この点に留意しながら検査方針をたてる必要がある。そのためには問診が最も重要であるが,詳しくは後述する。

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 詐盲の扱いは,日常臨床で避けて通れないやっかいな仕事のひとつである。詐盲(詐病)は「自分の望む結果を得るために,病気の存在,重症度,原因について故意に欺くこと」で,その目的は大まかにいって,兵役や服役などの義務から逃れること,経済的補償を得ることの2つがある。

 詐盲の診断には,他の疾患のようにマニュアルがあるわけでも,王道があるわけでもない。また,詐盲が本人の人格に全面的責任がある場合もあるが,現代社会の病理を反映していると考えられる場合も少なくない。検査する例は,自分なりの診断技術を用意しておくことは必要であるが,実際に詐盲者を扱う場合,冷静,客観,洞察,毅然,時に共感を持って臨み,最終的には全人格をかけた闘いであることを覚悟せねばなるまい。

異物不明の穿孔性眼外傷 高橋 正孝
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 穿孔外傷では異物が眼内に飛入したか否か不明の場合が多い。穿孔外傷が判然としなくても患者が異物の眼球侵入を訴えることがある。いずれの場合も慎重かつ迅速な対応が大切である。

 眼内異物が疑われると,直ちにX線検査,CTスキャンを考えがちであるが,基本的な眼科領域の検査が優先するのは当然のことである。高度な検査をより効果的に行う意味からも眼科外来の一般検査は重要である。何よりも,眼内異物検索に唯一決定的な検査方法というものはないということを銘記すべきである。

Special Lecture

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めまぐるしく変わった手術適応

 眼内レンズ手術の適応はめまぐるしく書き替えられてきた。いつの時代にもその適応の基準には十分な根拠があり,その時点では手術を受ける患者にとって最も安全と考えられる適応が提唱されてきた。もちろん絶対的な適応の制限というものはなく,それぞれの時代に,その時代の適応の基準を越えて手術が行われた。それぞれの術者にそれぞれの主張があり,術者は自己の良心に従って手術を行うはずであるから,たとえそれが不幸な結果に終わってもその責任はそれぞれの術者がとればよいことである。

 しかし,一般的に示される手術の適応基準は平均的な知識と技能を持った術者が行う手術における適応と考えてよいであろう。

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 我々臨床の現場では手術日に手術を予定して患者が都合よく来院するばかりではなく,随時手術を必要とする患者が来院する。

 私は親父の遺訓で急患は24時間いつでも受け入れることにしているからしばしば時間外に手術をすることとなる。

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 最近,医学雑誌の巻頭言や医療問題の講演会でしばしば「インフォームド・コンセント」なるテーマが選ばれる。それほど現在の,そして今後の医療に重要な関わりをもつということであろう。しかし,それらの内容はどうしても建前論が多くなり,我々が日常的に悩んでいることについて,どれだけの指針になるか難しいところである。

 第2次大戦後の我が国は,医療制度の面においても,米国の風潮に大きく影響されてきた。その最大の問題は,患者と医師の間の心理的交流における東西格差の大きさである。

治療に必要な基本技術

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眼鏡処方の適応

 小児の屈折分布は低年齢ほど遠視の割合が多く,乳児期にはおおむね遠視であるが,通常はその後の眼軸長の発達に伴って正視化にむかう。しかし生理的範囲をこえた遠視は小児の視覚にさまざまな影響をおよぼす。すなわち6歳までの視覚発達期では,屈折異常性弱視や不同視性弱視を生じたり,調節性内斜視の原因となることがある。また6歳以上の学童では学習障害の原因になりやすい。これらのことから考えられる小児の遠視矯正の目的は次の通りである。

 1)正常な視力発達を促し弱視を予防する

麻痺性斜視への対処法 三村 治
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 眼科外来で麻痺性斜視をみたとき,まず原因を検索することが優先する。同時に保存的治療を開始すること自体は差し支えないが,充分な検査を怠ると,脳動脈瘤破裂などでは不幸な転帰をとることすらあるので,注意が肝要である。

眼瞼内反症の手術法の選択 中村 泰久
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 日常診療でよくみかける内反症は,加齢性のものと乳幼児にみられるもので,瘢痕性あるいは痙攣性のものは比較的稀である。上下眼瞼ともに発症するが,下眼瞼のほうがその頻度は高い。したがって,本稿では加齢性下眼瞼内反症と,乳幼児下眼瞼内反症についてとりあげ,私が現在基本的に用いている手術法を解説する。

眼瞼小腫瘍の切除縫合法 松元 俊
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用意する器具

 消毒及び麻酔に用いるもの以外に,以下のものが必要である。挟瞼器,角板,替え刃メス(円刃),眼科用鑷子(有鈎及び無鈎),持針器,眼科用剪刀。腫瘍が小さく出血が少ない時には挟瞼器の代りに角板を用いて眼球を保護する。円刃刀は良く切れて刃先の小さめのものが使いやすい。持針器はマイクロ用ではなく,バラッケの持針器の様にやや大きめのしっかりしたものが良い。剪刀は糸を切るために用いる。

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 「眼瞼の内反症」と「睫毛乱生」とは似たような疾患であるが別なものであり,睫毛に注目すると表1のように整理して考えることもできる。また,一般に睫毛乱生と鑑別すべき疾患としては,①眼瞼の内反症,②眼瞼皮膚弛緩症,③種々の疾患による瞼縁の変形がある。さらにわが国では,眼瞼の内反症を眼瞼内反症と睫毛内反症に分けて考える(広瀬)のが普通である。

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 生後すぐ,生後1週間前後から,1か月以内に眼脂がみられ持続し,片眼に多く,眼脂の割に結膜所見が軽い,結膜炎の治療でも眼脂が減らないといった経過,症状で受診する新生児にしばしば遭遇する。涙嚢部指圧で排膿をみることもあり,涙嚢洗浄で逆流があれば先天性鼻涙管閉塞の診断がつく。産科,小児科で結膜炎と診断され,点眼薬の投与を受けている例も多く,正しい診断,治療を受けていないことがある。そこで本症の診断,治療についてのべる。

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 ほとんどすべての涙道閉塞は,次に述べるprobing (涙道ブジー),DSI (Direct Silicone Intubation),DCRで再建することができるが,これらを単独にあるいは組み合わせて手術を行う。

春季カタル治療のコツ 田川 義継
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 春季カタルは,眼科領域の代表的なアレルギー性疾患で,IgE mediatedの即時型アレルギー反応が主な病態形成に関与している。花粉症に代表されるアレルギー性結膜炎とは異なり,上眼瞼結膜や輪部結膜に巨大乳頭形成や隆起性病変を示すことでわかるように結膜組織の増殖性病変を伴うのが特徴である.充血,掻痒感,異物感などのアレルギー性結膜炎に伴う症状と共に巨大乳頭などの増殖性病変が問題となり,眼瞼腫脹や巨大乳頭による角膜潰瘍が合併症として出現することがあり,本症の経過観察および治療を行ううえで注意が必要である。臨床的には,眼瞼型と輪部型(眼球型)にわけられるが,両者の混合型も多い。

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結膜下注射の目的

 一般に結膜下注射をよく使いるのは,白内障などの内眼手術後の炎症が強いとき,消炎目的でステロイドを用いたり,匐行性角膜潰瘍の治療のために抗生物質を用いたりすることが多い。これは結膜下注射によって比較的簡便にかつ確実に局所の薬剤濃度を高く維持できるからである。

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 いわゆるドライアイという状態は,涙液の量または質の変化により角結膜に障害を起こしている状態である。その中でも最も多いのが角結膜上皮の乾燥による障害であると考えられる。

 ドライアイの治療に関しては,点眼,手術による涙点閉鎖が現在まで主な治療法であったが,最近では湿度を上げることにより涙液の蒸発を抑制し角結膜上皮を保護するためのドライアイ眼鏡や,手術によらない涙点閉鎖の方法などが使用可能となっている。以下に,ドライアイクリニックで実際に行っている治療指針について述べる。

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 アデノウイルスによる流行性角結膜炎(EKC)は,潜伏期が5〜12日もあるので,感染経路を明らかにするのは困難である。発症前に眼圧検査をしたり,潜伏期に白内障手術を行ったりして,院内感染を引き起こすことがある。

角膜縫合の注意とコツ 宮田 和典
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 一言に角膜縫合といっても全層角膜移植術,表層角膜移植術,keratoepithelioplasty,epikerato-phaliaあるいは白内障など多種多様の術式が含まれる。ここでは全層角膜移植術に代表される垂直切開と白内障手術に代表されるステップ切開(4面切開)の縫合の基本的手技について簡単に述べる。

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 コンタクトレンズ(CL)処方の最終目標は,1)良い視力を得る,2)装用感が良い,3)眼の健康を損なわないことであるが,これらの点を満足させるためにはよいデザインのCLを,正しく処方し最良のフィッティングを得ることが必要である。つまり,CLは過剰に眼瞼,角膜を刺激することなく,レンズの力はできるだけ広く角膜上に分散し,瞬目により角膜上をスムースに移動し,涙液交換が適度に行われていなければならない。

 最近は,ガス透過性HCL (RGP)が処方されることが多くなり,レンズデザインやその処方法について,従来のハードCL (PMMA)とは多少異なった理論も展開されている。例えば,RGPはPMMAよりも角膜上でたわみやすく,時には固着が発生する性質があるため,レンズサイズを大きくしフラットにして上眼瞼でレンズを保持する方法が勧められることもある(アピカルアライメント法)。また,RGPでは,PMMAよりも酸素供給不足による角膜障害やそれに伴う諸症状が少ないため,PMMA処方時に必要とされるデザインや処方の正確さがやや軽視される傾向にある。しかし,RGPでも視力,装用感,健康を満足させるためには,適切なレンズデザインと処方が必要であることにはかわりなく,むしろPMMAではみられなかった注意すべき点もいくつかある。基本的には,長年の経験と実績があるPMMAのデザインと処方(アピカルクリアランス法)を参考にして良いと考える。

硝子体手術の適応疾患 松村 美代
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 硝子体手術は“病的硝子体を取り除く”というもともとの目的のみならず,現代では“必要に応じて眼球内スペースのどこでも対象としうる手術”となっている。適応は大きく拡大したが,なぜ硝子体手術が必要なのかをおおまかに分けると次のようになり,手術の緊急性と合わせて考える必要がある。

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原因の検索

 大量硝子体出血といっても,その病態は一律ではない。まず,その原因を追及する。この場合,前歴や発病時の症状および他眼の所見が重要な資料となる。

 硝子体出血の発現以前から診ていた例では,一般に原因がはっきりしている。出血後に受診しても,既往歴や以前の医療機関の病歴などから,原因がわかることがある。

水晶体脱臼の治療方針 杉田 元太郎
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 水晶体脱臼の原因には1.外傷性,2.先天性(Marfan症候群,Homocystin尿症,Weil-Mar-chesani症候群),3.特発性などがある。前房内脱臼(図1)や高度亜脱臼(図2)は簡単に診断がつくが,軽度亜脱臼では充分散瞳しないと見逃すことがある。

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1.鑑別診断

 ぶどう膜炎の鑑別診断は通常1回の診療からではできない。すなわち,眼科的な臨床所見だけからではなく,全身所見,全身検査所見ならびに臨床所見の推移を十分把握して行うことが大切だからである。以下,著者が行っているポイントを述べてみる。

 

黄斑部出血の治療方針 湯沢 美都子
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新生血管黄斑症

 本症は黄斑部網膜下脈絡膜新生血管板の発生する疾患の総称である。本症の治療方針は疾患の種類,新生血管の位置と大きさと活動性および視力により,レーザー光凝固を行うべきかどうかを決める。

 原則として高度近視によるものにはレーザー光凝固は行わない。これは本症の出血はまもなく吸収すること、血管板は大型にならず自然退縮傾向が強いためである。また,神経上皮下出血が主体であるため,出血下の血管板を光凝固する場合には出血に吸収された光エネルギーが熱エネルギーに変換され,周囲の神経上皮に伝播され,上方の神経線維の障害を生じる可能性がある。また高度近視眼では光凝固を行うと凝固部近縁の正常網膜にも萎縮が生じ,それが拡大するいわゆるatro-phic creepを生ずることも知られている。

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 糖尿病性網膜症の病型分類については,これまで幾つかの分類法が提唱されてきている。しかし臨床的に具体的な治療方針を決めるにあたっては,必ずしも適切ではない分類法もある。従って,ここでは一般臨床において利用し易い病型分類をとりあげ,それらの治療方針について述べることとする。

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 濾過手術は,結膜下への房水流出路を新設するものであるが,流出量は手術的にコントロールし難いため,適切な流出量を維持していくためには,術直後からの注意深い管理が重要である。濾過胞の瘢痕閉塞による眼圧再上昇もさることながら,過剰の漏出による低眼圧,浅前房もまた,やっかいな事態である。トラベクレクトミーを選択することで,前房再成遅延は少なくはなったが,それでも必ず経験する併発症であり,その対策について概論する。

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 網膜剥離に対する手術療法には通常のscleral buckling (SB法)に加え,硝子体手術,pneumatic retinopexy (ガス注入法)があり,術式の選択に迷うことが少なくない。現在のところ明確な選択基準はなく,それぞれの術者の得意とする術式によって基準が左右されている。しかし,網膜剥離治療の基本はSB法であり,SB法の治癒率が悪いか,SB法が術後の視機能に悪影響を及ぼすと考えられる場合にのみ他の方法が選択される。本項では我々の教室の基本方針について述べる。

網膜下液排出のコツ 田中 住美
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 強膜切開法で排液する場合の注意点を場所の選定・手技の2点について述べる。

レーザー光凝固のコツ 西村 哲哉
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 レーザーを用いた眼底疾患の光凝固法とその要点について述べる。

 眼底の光凝固を行うには,細隙灯顕微鏡を用いた眼底観察に十分習熟する必要がある。すなわち,ゴールドマン三面鏡や後極部用コンタクトレンズ,パンファンドスコープ,90Dレンズ等を用いて,眼底のどの部も自由に観察できなければならない。表1にそれぞれのレンズの特徴を示した。

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交感性眼炎とは

 交感性眼炎とは一眼の穿孔性眼傷,または内眼手術後に約2週間から3か月を経て発症するぶどう膜炎であり,その炎症所見は原田病に類似する。原因として外傷や手術(特に硝子体手術)を契機とし自己のメラノサイトを障害する自己免疫機序が考えられている。眼所見では前眼部に豚脂様角膜後面沈着物等の肉芽腫性変化を示し,眼底では視神経乳頭の発赤,腫脹を認め,後極部の限局性漿液網膜剥離が認められる。また蛍光眼底造影所見では乳頭およびその周囲より蛍光色素の漏出,剥離部に一致した多発性の脈絡膜から網膜下への色素の漏出が認められる。そして炎症後期にはDalen-Fuchs斑が出現する。眼外症状としては頭痛,皮膚白斑,脱毛,難聴等の症状を伴うことがある。全身検査所見では髄液中のリンパ球の増加,リンパ球のHLA抗原検索によりDR4やDRW53を確認することは診断補助として役立っ。

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 ポスナーシュロスマン症候群(glaucomatocy-clitic crisis)は1948年にPosnerとSchlossmanにより報告された,軽度の眼内炎症を伴う再発性の開放隅角緑内障である。

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 緑内障の病型は多岐にわたり,一概に治療方針を決定することは出来ないが,使用される薬剤の副作用を充分に理解することが治療の基本となることは言うまでもない。ここでは現在一般的に用いられている緑内障治療薬の副作用について述べ,緑内障治療の基本である原発開放隅角緑内障に対する薬物療法の進めかたを記す。

緑内障手術の治療方針 山岸 和矢
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 緑内障の手術療法の決定には,緑内障の診断,手術時期の決定,術式の選択が重要であるが,なかなか難しい。例えば緑内障発作では短時間に診断を確定し,手術方法を決定せねばならない。一方,慢性の緑内障は十分な経過観察により診断を確定し,その上で術式を選択できるが,手術時期の決定は患者への十分な説明と同意(インフォームド・コンセント)が最優先されよう。日常の臨床で私が行っている緑内障手術療法の治療方針を以下に紹介する。

緑内障のレーザー治療 弓田 彰
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 原発閉塞隅角緑内障に対するレーザー虹彩切開術,原発開放隅角緑内障に対するレーザートラベクロプラスティー,難治性緑内障に対する経強膜毛様体光凝固術の3つが主なものである。レーザー治療に先立ち,緑内障の病型診断が正しく行われていなければならないのは,言うまでもない。

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高血圧

 眼科手術の対象は高齢者が大半で,低レニン性の本態性高血圧が多い。術前の血圧はよくコントロールしておく必要がある。当科では,術前検査で異常を認めた場合と高齢者の場合には内科医に紹介し,全身状態をチェックしていただいている。適当な降圧を行うことによって,安静時血圧を正常化させるのみならず,ストレスに対する血圧の急激な変動を抑制することも可能である。術当日も原則として処方を変更せず,内服を継続させる。

緊急処置の実際

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 両眼同時に視力障害をきたすことは比較的稀であり,両眼性の疾患でも通常は左右いずれかの視力障害が先行する。ここでは外傷を除き,主に数時間以内に生じる著しい片眼の視力障害について記す。

 急激な視力障害の原因となる部位は角膜から黄斑部,更に視神経から視交叉に至る全ての領域にあり,正確な矯正視力を測定した上で,角膜から順次中枢に向かって検索を進める。ただし,両眼性の疾患でも視力障害に左右差がある場合,片眼のみの症状を訴えることがあるので,健眼の検索も怠ってはならない。以下,組織別に視力障害の原因とその救急処置について記す。

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 視野障害の原因となる組織は,網膜から視中枢に至るまでの領域で,その他にも心因性の視野狭窄が見られる。この内,網膜および視交叉に至るまでの視神経障害は,通常片眼性の視野障害の原因となり,視交叉から中枢側の障害は両側性である。これらの疾患は他の神経障害を合併することが多く,視力,視野検査の他に眼球運動,瞳孔反応などの神経学的な検索を必要とする。また,細隙灯顕微鏡検査,眼圧,眼底検査など一般的な検索の他,救急でできる範囲でCFF,螢光眼底撮影,ERG,VEP,色覚検査,レントゲン撮影,CT,MRI,血液一般検査などが行えるとよい。

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 眼痛は視力障害とともに,患者にとっては重要で苦痛な症状である。中には,高度な視力低下を自覚しながら,眼痛がなかったためにしばらく放置していたという症例に出会うことも珍しくない。眼痛の種類は様々であり,その原因には広範な眼疾患だけでなく他科の疾患も含まれる。また,眼痛の程度とその原因疾患の重篤度とは必ずしも一致しない。激しい眼痛があっても対症療法のみでよいものもあれば,眼痛が他の症状の随伴症状であっても眼科的あるいは他科的に緊急処置を要するものもあり,鑑別診断が重要となる。本稿では眼科救急処置における眼痛に焦点をあてて記載する。

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1.診断にあたって注意する点

 角結膜の薬物腐蝕は労働災害と関係することが多く,化学腐触(chemical burns)とも呼ばれる。化学薬品が眼に飛入した事実と角膜所見とから診断は容易である。酸性の薬物とアルカリ性の薬物とによる場合があるが飛入した薬物の性状と角結膜と接触していた時間とで障害の程度が変わってくる。

 酸としては塩酸,硫酸,硝酸などの実験用薬剤が多い。アルカリとしては苛性ソーダ,苛性カリ,石灰,セメント,アンモニアなどである。

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1.診断にあたって注意する点

 角結膜異物は患者の自覚症状すなわち異物感が強く,細隙灯顕徴鏡でも確認が容易であるため診断するのにそれほど苦労はしない場合が多い。しかしガラス片などが小さく,しかも円蓋部などにある場合は自覚症状も少なく見のがす場合もあるので注意深く,二重転を行うなどして観察することが必要である。また角結膜異物の飛入するような状況では眼内にまで達するような場合もあり特に鉄片や交通外傷時のフロントガラスなどは要注意であり,疑わしい時はX-PやCTなどで眼内異物の検査が必要なこともある。

 飛入する異物としては鉄片が最も多く,次いでガラス片,植物片などが続く。鉄片では常習的に異物が飛入する,石工や旋盤工の職業病とも言える場合があり,自分で除去したり(髪の毛を使う),互いに取ったりすることもある。このような患者の角膜を観察するといくつもの角膜異物の飛入した瘢痕が認められる。

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 ガス透過性ハードレンズ(RGP)の普及につれ緊急処置を要するトラブルは非常に少なくなったが,閉瞼時ハイポキシアによる角膜浮腫を生じる連続装用や,代謝老廃物がCL外に十分排出されないソフトCL (SCL)使用時には,角膜が十分に健康な状態を維持しているとはいえず,日和見感染を起こしやすい環境ともなっているので常に注意が必要である。RGPでは角膜知覚は比較的正常に保たれ異常は疼痛や異物感として早期に自覚され,早期治療が期待でき重篤となるものは少ないが,SCLには眼瞼の刺激から角膜をまもるバンデージ効果があるため異常の自覚が遅れ,治療開始の時期も遅れることがあるので注意を要する。CLによる眼合併症の原因には,眼の生理的環境の変化という背景とレンズデザイン,フィッティング,汚れ,ケア溶液,生活環境等の外的因子もあり,治療に際しては原因を推察することが重要である。幸いCLでは所見からその原因を推察でき早期治療に役立つことも多い。以下,特徴的なトラブルあるいは特に注意を要するものについて述べる。

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 角膜裂傷の手術に際し留意すべき点は多い。まず消毒,感染予防,脱出嵌頓組織の処理,その上で創の正確な縫合および前房形成等である。さらに術後の不正乱視の軽減,瞳孔領の透明維持に配慮できるのが望ましい。

 また外傷であるので全身状態に注意すべきことは言うまでもない。

角膜潰瘍の穿孔時の処置 木村 内子
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①前房形成をはかる

 ②感染に対する対応

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 術前合併症がなく,手術が問題なく終了した場合に,術後高眼圧を示すのは稀である。しかしヒーロン®の抜去不十分の時に術後早期に眼圧が高くなることがある。術当日あるいは翌日に眼痛,頭痛,嘔吐を訴え,角膜のビマン性の浮腫を認める。眼圧が20〜30mmHgであれば鎮痛剤とダイアモックス®250mg(Ⅰ〜Ⅲ錠)の投与で様子を見る。眼圧が30mmHg以上か,20〜30mmHgでも眼痛などの症状が激しければグリセオール®を点滴静注する。年齢60歳以下で循環器系に問題がなければグリセオール®500ml,60歳以上か循環器系に問題があれば200mlを指示する。点滴終了後再度眼圧を測定し,眼圧が20mmHg未満であればそのままに,20mmHg以上であればグリセオール®の点滴の追加か,ダイアモックス®の内服あるいは静注を行う。これらの処置で,2〜3日で正常眼圧に戻る場合がほとんどである。最近の白内障手術機器は吸引がリニアなものが多く吸引する際に充分フットペダルを踏み込まないとレンズ後側のヒーロン®が残存することが多いようだ。

 後嚢破損,硝子体脱出等がありヒーロン®を充分吸引出来なかった時も同様である。何かの原因でヒーロン®を抜去しなかった時は緑内障発作のような非常な高眼圧を示すことがある。グリセオール®やダイアモックス®ではあまり効果が見られず,投与しても眼痛,頭痛,角膜浮腫は軽減しない。

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 術式を現在最も多く用いられている超音波白内障手術あるいは計画的水晶体嚢外摘出術および人工水晶体挿入術(PEA or PECCE+IOL)に限定し,緑内障などの術前合併症のないものとして話を進める。当院では術2日前より術直前まで,日に5回抗生剤とインドメロール®の点眼を行っている。術直前の眼圧降下剤の内服,点滴は行っていない。手術は2%キシロカイン®5mlで顔面神経ブロック,2.5〜3.0m1で球後麻酔を行い,術後2時間でベッド上安静を解除し,摂食およびトイレ歩行を許可している。術中および術後2日間は糖尿病等がなければ副腎皮質ホルモン(ソルメドロール®125mg2回/日)を投与している。術翌日より毎日軟膏(タリビット®,リンデロンA®)点入とミドリンP®の点眼を1回/日行う。術後3日目よりタリビット®およびリンデロンA®の点眼を5回/日行う。

 白内障手術が問題なく終った場合は術後,眼痛等を訴える人はあまりいない。特にインドメロール®の術前点眼を始めて以来,術後の鎮痛剤を希望する人は激減した。しかし稀には,白内障手術後早期(2〜3時間)に眼痛,頭痛を訴える場合がある。多くは単純な術後痛であり,鎮痛剤の投与が有効である。

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 手術中の呼吸や血圧の管理は全身麻酔の方がより確実であるが,局部で十分な麻酔がえられ,さらに全麻より術後の全身管理が容易であることから眼科の手術ではほとんどの症例が局所麻酔で行われる。しかしながら手術の対象となる患者の年齢層が他科と比較して高齢者が多く,基礎疾患を合併する確率が高い点では,局麻であっても術後の管理にも十分な注意が必要となる。

 意識レベルの低下は重篤であれば生命の予後に関係してくるので適切な判断と処置が要求される。それには1.患者側がかかえているリスク,2.医者,看護サイドの管理上のリスクにわけると考えやすい。前者では患者の基礎疾患から考えられるリスクであり後者は医師の投薬した内容,用量などから起こりうるリスクをさしている。意識の障害が認められたら以下のチェックを速やかに行う。

術後の感染性眼内炎 金井 清和
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 従来の術後感染性眼内炎は,術後数日中に強い疼痛を伴い,眼瞼腫脹,高度の混合充血,角膜浮腫混濁および前房蓄膿というのが典型的であったが,最近では眼内手術の多数を占める白内障手術の変遷に伴って術後眼内炎の特徴にも変化を生じている。主だった手術の術後感染性眼内炎と対策を述べる。

糖尿病患者の低血糖発作 松村 美代
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 眼科医が糖尿病患者の低血糖発作に遭遇するのは,①外来通院患者がたまたま受診中に起こす発作,②入院中の患者の生活中の発作,③手術前後の血糖コントロールの乱れによるもの,のどれかの場面であろう。①②は同様の処置を行うのでまとめて応急処置として述べる。③は手術により摂食状況がくるうことにストレスが加わっておこる特殊な状況なので別に管理法を述べる。その前に低血糖の症状をよく知っておく必要がある。

閉塞隅角緑内障発作の処置 竹中 康雄
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診断にあたって注意すること

 自覚症状としては周知の通り視力障害,眼痛,頭痛,嘔気,嘔吐などがある。しかし高齢者では眼痛,視力障害を訴えずに脳血管障害,動眼神経麻痺などと誤診される場合が稀ではない。原因不明の食欲不振を起こした老人性痴呆の患者が緑内障発作が原因であったこともある。

 片眼の高眼圧を来し,角膜浮腫が強く発作眼の隅角,前房内の所見がとれないときは表1に従い診断する。

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 網膜動脈閉塞症は眼科領域における重要な救急疾患のひとつである。治療の目標は,可及的速やかに網膜血流を再開させることにある。早期に治療を開始すれば,より高い治療効果が期待できる。

眼球打撲時の検査 田邊 吉彦
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 眼球打撲では眼瞼や眼窩も傷害を受ける。打撲時の検査では当然それらも含まれる。診察はまず問診から始まる。実際は次の視診とほとんど同時に行うが,何時,どのような状況で,どの様な打撲を受けたか,自覚症状(疼痛,視力低下,復視等の有無)はどうか等を聞く。それによって,blow-out fracture(眼窩全面を蔽う様に物体が当った時),視束管骨折(眉毛外上方の打撲),眼内異物等も鑑別範囲に入って来る。視診も問診と同時に行うが眼瞼腫脹,結膜出血,眼球運動障害(眼位異常)等の有無はこれでわかる。以下,視診や症状に応じて更に検査を進める。

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1.紫外線による角膜障害

 波長100〜400nmの紫外線の大部分は角膜で遮断される。紫外線エネルギーの大部分は角膜上皮細胞の核酸に吸収され,DNA障害を惹起し,一部はトリプトファンにも吸収される。上皮細胞の細胞分裂は抑制され,細胞膜機能も障害されるため,細胞は脱落し上皮欠損が生じる。角膜障害の波長特性は260〜290nmにピークをもち,殺菌灯や溶接光等の人工光源から発生する。自然光に含まれる紫外線は大気により遮えぎられるため,より波長の長い300〜400nm領域のものである。従って人工光源によって起こる電気性眼炎の方がスキー等における雪眼炎よりも短い曝露時間で発症する。発症は曝露後30分から24時間で,眼痛,異物感,流涙,羞明,眼瞼痙攣を主訴とする。細隙灯検査にて,結膜充血,びまん性表層性角膜炎角膜浮腫時に虹彩炎をみる。治療は抗生物質眼軟膏の点入と,圧迫眼帯,疼痛には鎮痛剤の内服を処方する。通常24〜48時間後には,角膜上皮細胞はほぼ修復され,疼痛もなくなる。抗生物質と3%コンドロンの点眼で経過観察する。結膜充血,虹彩炎が強い時には1%のアトロピン点眼を追加し,圧迫眼帯をする。上皮再生後にも虹彩炎が続けば,ステロイド点眼を追加する。ベノキシール等の表面麻酔剤は,上皮の再生を遅らせ,感染の危険を招くので,決して処方はしてはならない。

基本情報

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臨床眼科
45巻11号 (1991年10月)
電子版ISSN:1882-1308 印刷版ISSN:0370-5579 医学書院

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