特集 眼科基本診療—私はこうしている
緊急処置の実際
白内障手術後患者の眼圧が下がらない
田中 康裕
1
1和歌山赤十字病院眼科
pp.188
発行日 1991年10月30日
Published Date 1991/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410900928
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術前合併症がなく,手術が問題なく終了した場合に,術後高眼圧を示すのは稀である。しかしヒーロン®の抜去不十分の時に術後早期に眼圧が高くなることがある。術当日あるいは翌日に眼痛,頭痛,嘔吐を訴え,角膜のビマン性の浮腫を認める。眼圧が20〜30mmHgであれば鎮痛剤とダイアモックス®250mg(Ⅰ〜Ⅲ錠)の投与で様子を見る。眼圧が30mmHg以上か,20〜30mmHgでも眼痛などの症状が激しければグリセオール®を点滴静注する。年齢60歳以下で循環器系に問題がなければグリセオール®500ml,60歳以上か循環器系に問題があれば200mlを指示する。点滴終了後再度眼圧を測定し,眼圧が20mmHg未満であればそのままに,20mmHg以上であればグリセオール®の点滴の追加か,ダイアモックス®の内服あるいは静注を行う。これらの処置で,2〜3日で正常眼圧に戻る場合がほとんどである。最近の白内障手術機器は吸引がリニアなものが多く吸引する際に充分フットペダルを踏み込まないとレンズ後側のヒーロン®が残存することが多いようだ。
後嚢破損,硝子体脱出等がありヒーロン®を充分吸引出来なかった時も同様である。何かの原因でヒーロン®を抜去しなかった時は緑内障発作のような非常な高眼圧を示すことがある。グリセオール®やダイアモックス®ではあまり効果が見られず,投与しても眼痛,頭痛,角膜浮腫は軽減しない。
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