皮膚科の臨床 60巻10号 (2018年9月)

特集 乾癬治療の達人を目指す

総説

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筆者が大学を卒業したのは1973年であるが,その頃の乾癬治療は,ステロイド外用剤,紫外線療法の変法としてのゲッケルマン療法,そして,重症例に対するメトトレキサート内服のみであった。外用PUVA療法が,故水野信行教授により,臨床応用に向かって試みられていた頃の話である。

2.乾癬と疫学 唐川 大 , 朝比奈 昭彦
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世界全体での乾癬患者の割合は数%で,白人に多く,アジア人では少ない傾向がある。乾癬に占める乾癬性関節炎の割合は,以前の報告では数%とされていたが,最近ではより多いことが示唆されている。本稿では,乾癬の疫学について最新の報告をもとに解説するとともに,その遺伝的側面についても概説する。

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皮膚疾患の治療において外用療法は基本的に安全性が高く,また直接病変部に薬剤を到達させるという点において,もっとも効率的な治療法であることは論を俟たない。全身療法や光線療法など数多くの治療選択肢がある乾癬治療においても,外用療法は第一選択の治療法であり,また全身療法や光線療法が適応となる場合にも,併用療法として行われている。1960年代から乾癬治療の主流はステロイド外用療法であったが,長期外用による皮膚萎縮などの副作用が問題視されていた。その後1990年代に入り,活性型ビタミンD3外用薬の登場により,乾癬の外用療法は大きな転機を迎えることとなる。すなわち,より乾癬治療に特異性が高い活性型ビタミンD3外用薬が,とりわけ継続使用に際しては強く推奨されることとなった。

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乾癬の治療には,大きく分けて外用療法,光線療法,内服療法,生物学的製剤があげられるが,外用療法ではステロイドと活性型ビタミンD3の配合剤が,内服療法にはアプレミラスト(オテズラ®)が,生物学的製剤では抗IL-23p19製剤が登場し,多様化が進んでいる。現時点でも,開発,治験段階の乾癬治療薬が多数あり,さらに多様化が進むものと思われる。このような状況において,治療法をきちんと整理し,それぞれの患者にあった治療法を選択することが,今後皮膚科医にさらに求められているであろう。本稿では,現在使用できる内服療法について整理していきたい。

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2010年が,わが国での乾癬に対する生物学的製剤治療の幕開けの年となった。以後合計7種類の生物学的製剤が乾癬に対して承認されている。ところで,生物学的製剤と一口に言っても,実はそれはかなり幅広い概念である。生物学的製剤とは,化学的に合成された化合物とは異なり,生物が作る物質(主に蛋白質)を医薬品として利用したものである。したがって,見解には多少の幅があるものの,広い意味では,予防接種に用いられるワクチン製剤,インスリンなどのホルモン製剤,血液の凝固因子製剤,免疫グロブリン製剤,インターフェロン製剤,G-CSF製剤,抗体製剤が生物学的製剤の概念に含まれる。しかし,わが国における乾癬治療に限定すると,生物学的製剤は事実上抗体製剤を意味することになる。抗体製剤の大きな特徴のひとつは,化合物として作られた薬剤とは異なり,特定の標的以外には反応しないことであり,そのため標的とした分子のみの働きを抑制することが可能な点である。そして,抗体製剤には通常,ただ1種類の抗体産生細胞(B細胞)から作られた抗体のコピーで同一の分子構造をもつモノクローナル抗体が用いられる。また,抗体製剤は化合物として合成される通常の薬剤と異なり,経口投与ができず(蛋白質であるため消化されてしまう),投与経路が静脈注射または皮下注射になる。抗体製剤の一般名の命名法には一定の規則があり,一般名をみればどのような構造の抗体で,どのような作用を目的としているか大雑把にわかるようになっている(表1)。乾癬,悪性黒色腫,アトピー性皮膚炎,蕁麻疹を含めた皮膚科領域のみならず,さまざまな領域で抗体医薬品が使用されていることから,この規則は是非とも理解しておきたい。

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通常の低分子医薬品は,化学反応によって合成,製造されるもので,異なる製薬メーカーによっても,まったく同じ手法で再現が可能な製法を経て製造される。そのため,後発医薬品(ジェネリック医薬品)は,新薬(既承認医薬品)とまったく同じ効果が期待でき,同じ用量・用法で,同じ効能・効果を表示することができる。一方,生物学的製剤(バイオ医薬品)では,遺伝子組換え技術や細胞培養技術を駆使して,細菌などの生きた細胞のなかで,これらの細胞がもつ蛋白質合成能力を利用して医薬品を製造する。微生物を利用した医薬品の製造過程であるため,環境の影響を受けやすく,ロット間で医薬品の効果に差が生じる場合もある。さらに先行バイオ医薬品の製造に関する情報は限られており,同じアミノ酸配列をもっているというだけでは,低分子医薬品のようにまったく同じ製剤を製造することは不可能である。そのため,臨床試験により有効性,安全性について先行医薬品と同質,同等であることを示す必要がある。このような後発のバイオ医薬品をバイオシミラーとよんでいる。

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結核感染の既往がある,または疑われる場合には再活性化のリスクが高いため,生物学的製剤開始3週間前よりイソニアジド200~300mg/日を6~9カ月間内服する。B型肝炎の既往がある場合,生物学的製剤の使用によって肝炎が再燃し重症化することがあるため,約3カ月ごとにHBV-DNAの定量を行う。

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1975年,外用PUVAは,名古屋市立大学皮膚科教授水野信行先生らによって,世界に先駆けて,本邦でスタートした。その効果は,当時の治療としては群を抜き,画期的な治療であったと思われる。PUVAにおけるいくつかの問題を解決するため,乾癬皮疹に対して,複数の波長を照射し,その効果と紅斑反応から311~313nmの優位性が明らかとなり,極めて幅の狭い波長特性をもった光線療法(紫外線療法)が開発されるに至った。光線療法を最適化するには,過剰な紅斑反応を抑えながらも,治療効果を高める必要があり,それが,一般診療で用いやすい治療方法につながっていく。

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白血球系細胞吸着除去療法とは,医療器素材のなかに血液を通過させることにより,白血球系の細胞を吸着させ,取り除く治療のひとつである。白血球除去療法には遠心分離法,繊維フィルター分離法,ビーズ吸着分離法の3種類がある。

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乾癬の病態形成に主要な役割を果たすと考えられている細胞やサイトカインと,それらの抗体である生物学的製剤の関係を図1に示す1)~3)。すでに国内で販売されている薬剤は赤色のカタカナで,現在開発中の薬剤は青色の英語で表記した。従来,乾癬はTh1細胞優位の皮膚疾患として捉えられていたが,Th17細胞が重要な働きをしていることが近年明らかとなった。ナイーブT細胞はIL-12の作用でTh1細胞に,IL-23の作用でTh17細胞に分化することが知られている。真皮樹状細胞であるTIP-DCは,Th17細胞の増殖維持に必要なIL-23を産生し,またTNFαはTIP-DC自身の持続活性化にも関与している。Th17細胞はIL-17や,表皮細胞増殖に関与するIL-22を産生し,これらが乾癬の病態形成に深く関わると考えられている。以上より,最近乾癬治療に用いられるようになった生物学的製剤が標的とするTNFα,IL-23,IL-17などのサイトカインが,乾癬の病態において重要な役割を果たしていることが理解される。

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皮膚の慢性炎症性疾患である乾癬では,関節や爪に症状がみられることがあり,特に爪症状は生涯を通して90%近くの患者で認められると推計されている1)。一方で,皮膚や関節の症状を伴わず,爪のみに症状がみられる爪乾癬の割合は乾癬全体の5~10%とされており2),そのような爪乾癬の診断と治療を的確に行うためには,爪の解剖生理と爪乾癬の臨床および病理組織の特徴をよく理解しておく必要がある。

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乾癬性関節炎(psoriatic arthritis,以下PsA)の歴史は古く,1818年にAlibertらによってすでに尋常性乾癬(psoriasis vulgaris,以下Pso)と関節炎の関係が記述されている。Psoの患者のなかで関節炎を発症する率は報告によって7~42%とさまざまであるが1),最近のわれわれの報告2)によれば,その発症率は最大20%にのぼり,Psoで治療を受けている患者のうち,診断に至っていない関節炎をもつものが少なからぬ数であることが想定される。PsAの診断がわずか6カ月遅れることにより,骨びらんの発症率は4.6倍に上昇し,drug freeの寛解を達成する可能性が0.4倍に低下するという報告3)があり,早期診断の重要性は言わずもがなであろう。

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膿疱性乾癬は,発熱と膿疱を主症状とする膿疱症で,皮膚疾患のなかで指定難病のひとつである。膿疱性乾癬は,病変の範囲や全身症状によって限局型と汎発型に分類される(表1)1)。一般的に膿疱性乾癬とよばれるものは汎発性膿疱性乾癬(generalized pustular psoriasis)とされるvon Zumbusch型である2)。欧米では膿疱性乾癬のひとつとして掌蹠膿疱症も含まれているが,本邦では掌蹠膿疱症は膿疱性乾癬とは異なる独立した皮膚疾患として考えられている。膿疱性乾癬は,小児の膿疱性乾癬や疱疹状膿痂疹が含まれるが,circinate annular formは含まれない2)。膿疱性乾癬は本邦では約2000例の登録患者数が存在する。病名に「乾癬」という名称が含まれ,乾癬の一亜型とされるが,乾癬を前駆症状として有する患者と乾癬を前駆症状としない患者が存在する。発症年齢は幼児から高齢者まで分布するが,乾癬の先行のない群ではそのピークは10歳以下に認められる。

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掌蹠膿疱症の多くは,外用療法や光線療法など皮膚炎の治療では治らない。それは,本邦の掌蹠膿疱症の約3/4が,歯科領域や扁桃,副鼻腔炎などの病巣感染による,Andrewsら1)が提唱したタイプだからである(図1)。加えて,喫煙,自己免疫性甲状腺炎,糖尿病など,症例ごとに複数の発症契機が複合的に関わっている。また,10~40%2)3)に掌蹠膿疱症性骨関節炎を伴い,皮膚症状と同様の発症契機が関与していると推測される。

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乾癬は近年,単なる皮膚疾患ではなく,ひとつの自己炎症性疾患と考えられている。重症例では動脈硬化や心筋梗塞発症につながる1)可能性があり,注意が必要である。そこで本稿では,皮疹の治療とともに重要な項目である,患者の治療アドヒアランス向上の対策について述べる。

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女性の乾癬患者の約3/4は,40歳以前に乾癬を発症することから1),治療経過中に妊娠,出産を迎える可能性が高い。乾癬治療薬のなかには催奇形性や胎児毒性を有することが知られている薬剤もあり,これらが体内に残存している時期に妊娠を迎えることを回避しなければならない。本稿においては,そのために知っておいたほうがよいと思われる事項について,これまでの報告を中心にまとめた。なかでも,2018年7月,シクロスポリンの添付文書の改訂が行われ,投与禁忌対象から妊婦または妊娠している可能性のある婦人が外れたことは,妊婦の治療選択を考えるうえで重要なことと思われる。

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乾癬における生活習慣の指導において,患者が疾患に対して抱いている認識に加えて,生活状況,嗜好,職業,人格,感情などの情報を評価することが重要である。また重症の乾癬では,肥満や喫煙が関連して全身性炎症となり,さまざまな合併症が引き起こされる乾癬マーチ(psoriatic march)1)とよばれる病態がおきる(図1)2)。医療者側からは疾患における基本的な知見を患者に説明し,患者希望に応じた治療目標と具体的な治療方法を伝える一方で,重症化予防につながる生活習慣へのアドバイスが重要である。乾癬が日常生活に及ぼす影響についてのアンケートで,① 家事が増えた(36%),② 感染するのかを尋ねられる(24%),③ 公共の場でじろじろみられる(22%),④ プールでじろじろみられたり,居心地が悪いと感じた(17%),⑤ 乾癬が肌だけでなく生活全般に影響することを理解されない(14%),などの回答があり,就労での影響では55%で何らかの影響があると答えている3)。このように乾癬による疾病負担は大きく,長期にわたる。日本の乾癬の罹患者数は人口の約0.3%にあたる43万人にのぼるといわれ,近年,受診患者数は増加の一途をたどっている。男女比では欧米が1:1に対して日本では約2:1であり,発症年代では男性は30歳代,女性では10歳代と50歳代に多い。乾癬の発症は遺伝的素因とともにメタボリック症候群(以下MetS)との関連が指摘されている。内蔵脂肪の蓄積に加えて高血糖,脂質異常,高血圧のうち2つ以上を合併するMetSを念頭に置いた生活習慣の改善への取り組みが必要となる。乾癬治療のパラダイムシフトとよばれる大きな変革の時を迎えているなかでも,生活の変化が乾癬の病勢に大いに影響を与えることを経験する。いくつかの事例から考えていきたい。

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WHOが発表した「世界乾癬レポート2016」の序文の書き出しを以下に記す。「乾癬は明らかな病因あるいは根治治療のない慢性尋常性の非伝染性皮膚疾患である。この疾患が人々の生活に及ぼす悪影響は計り知れない。乾癬はあらゆる年齢の,また全ての国の人々に影響を及ぼす。各国で報告された乾癬の有病率は0.09%から11.43%におよび,乾癬は世界中で少なくとも1億人の患者がいる深刻な世界的規模の問題となっている。乾癬は予測不可能な症状の経過,多数の外的誘因,および関節炎,循環器疾患,メタボリック症候群,炎症性腸疾患,うつ病などの重大な併存症を有する。2014年,加盟国は世界保健総会決議において乾癬を重篤な非伝染性疾患として認識した」1)と記載されている。

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72歳,女性。7年前より体幹に軽度の瘙痒を伴う環状紅斑の出没を繰り返していた。初診時,前胸部,腹部,股部に落屑性環状紅斑が多発していた。病理組織像で,過角化,表皮突起の棍棒状の肥厚,顆粒層消失,角層内の微小膿瘍など乾癬の所見を示したことから,再発性環状紅斑様乾癬と診断した。ステロイド・ビタミンD3配合剤の外用のみで皮疹はコントロール可能であった。再発性環状紅斑様乾癬は,膿疱性乾癬(汎発型)診療ガイドライン上,汎発性膿疱性乾癬からは除外されているが,病理組織学的所見やIL36RN遺伝子変異の報告などからは,尋常性乾癬と膿疱性乾癬の両方にまたがる病型と考えられる。

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69歳,男性。成人T細胞白血病の既往があり,1年半前に非血縁間骨髄移植を受けた。5カ月前から高血圧にアムロジピンベシル酸塩を開始し,1カ月前から体幹・四肢に,ステロイド外用に反応不良な,大豆大から胡桃大までの軽度鱗屑を付す淡紅色斑が散在性に出現し,次第に増数した。病理組織学的には,軽度の乾癬様表皮肥厚とMunro微小膿瘍を認め,真皮浅層の血管周囲ではリンパ球中心の炎症細胞浸潤に少数の好酸球を混じていた。薬剤性乾癬を疑い,アムロジピンベシル酸塩を中止したところ皮疹は消退した。乾癬様の皮疹で降圧薬を内服している場合には,薬剤性乾癬の可能性を考え,皮膚生検や薬剤の中止変更を検討することが重要と考えた。

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現病歴 4年前より全身の皮疹が出現し,他院で尋常性乾癬と診断され外用加療されたが通院を中断していた。4カ月前よりRaynaud症状と上肢末梢側の皮膚硬化が出現したため,東京医科大学八王子医療センター(以下当院)皮膚科を受診した。

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乾癬に対する生物学的製剤の投与にあたっては,重篤な感染症の発症に留意する必要がある。このうちB型肝炎ウイルス(HBV)は,ウイルスの再活性化が生じ,劇症肝炎や肝不全などに至った場合,生命を脅かす可能性があることから,特に注意が必要である。われわれは乾癬性関節炎に対するインフリキシマブの投与4年目に発症したHBVの再活性化症例を経験した。自験例は,リウマチ疾患におけるHBVの再活性化ではリスク因子と解釈しうる要素を複数有していた。自験例のように,HBVの再活性化のリスクが高い症例については,再活性化がいつ生じるのかという点は予見できず,継続的な監視が必要と考えられた。

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63歳,男性。前医にて膿疱性乾癬の診断で内服PUVA療法,シクロスポリン内服などで加療されるもコントロール不良であり,2011年9月よりインフリキシマブ投与が開始された。しかし二次無効で中止となり,2012年5月アダリムマブを投与開始し,皮疹は軽快した。同年7月より当科に転院し,継続治療となった。投与開始後7カ月目にKL-6が上昇し,間質性肺炎を発症したためアダリムマブを中止した。間質性肺炎は経過観察のみで軽快した。皮疹はナローバンドUVB療法で加療したが,コントロール不良のため2016年6月からセクキヌマブ投与を開始した。以後皮疹は速やかに軽快し,間質性肺炎の増悪もなかった。セクキヌマブは乾癬の他生物学的製剤に比べ,間質性肺炎の報告は少ない。

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46歳,女性。15歳時に尋常性乾癬を発症し,ステロイド外用,ビタミンD3外用,光線療法で加療されていた。43歳時に左眼充血,霧視,疼痛を自覚し,眼科受診で乾癬性ぶどう膜炎と診断された。また,同時期より腹部に膿疱を伴うようになり,皮膚生検の結果,膿疱性乾癬と診断した。眼病変に対してはステロイド局所療法を中心に加療していたが,治療に難渋し,再発を繰り返していた。インフリキシマブを開始後,眼病変の著明な改善とともに皮膚症状も改善した。生物学的製剤が普及した現在,再発性,難治性の乾癬性ぶどう膜炎に対して生物学的製剤の担う役割はますます大きくなると考えられ,皮膚科医と眼科医の適切な連携が望まれる。

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55歳,女性。1995年に掌蹠膿疱症と診断された。2008年より関節痛と脊椎炎が生じ,当院膠原病・リウマチ内科にて血清反応陰性関節炎に準じて加療されていた。2015年3月よりゴリムマブの投与を開始し2回投与後,四肢に紅斑が出現,3回投与後拡大したため,当科を受診した。体幹・四肢に鱗屑を伴う紅斑が散在し,生検組織からゴリムマブによる乾癬様皮疹と診断した。投与中止後,抗アレルギー薬,ステロイド外用剤,全身ナローバンドUVB療法で皮疹は改善し,その後再燃はない。本来乾癬の治療薬である抗TNFα抗体製剤だが,まれに副作用として乾癬様皮疹が出現することがあり,paradoxical reactionとよばれている。ゴリムマブ投与により乾癬様皮疹を生じた症例報告は少ないため,報告した。

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数カ月前に突発性難聴になった。自分が病気になって知りたいと思ったことは,その疾患がなぜおこったか,治療法は何か,とともに,疾患の経過についての見通しであった。特に慢性疾患の診療においては,病態,治療法,経過の見通しとともに,治療の目標とゴールに関する説明が大切だと思う。マラソンは,どの道を通って何キロ走ればゴールがあるかがわかっているから走るのであり,どこまで走れば良いかわからない状況では,多くの人がゴールに到達する前に走るのを止めてしまうであろう。

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現病歴 2017年4月より腸管型Behçet病で当院消化器内科に入院し,ステロイドパルス療法やステロイド内服,アダリムマブなどで加療されていた。Behçet病治療開始前である約3カ月前に,両足底に暗紫色結節が生じた。Behçet病治療中に増数し,圧痛を伴うようになったため,当科を受診した。

臨床講義

非症候性遺伝性縮毛症の病態 下村 裕
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毛包は皮膚付属器の1つであり,成長期(anagen;毛髪が産生されて伸びる時期)→退行期(catagen;毛髪の産生が止まり毛包が退縮する時期)→休止期(telogen;毛包の下端が表皮にもっとも近づき,容易な刺激で毛髪が抜ける時期)から構成される毛周期を一生涯にわたって営むという特徴をもつ1)。成長期には,立毛筋が付着するバルジ(毛隆起部)に局在する毛包上皮幹細胞から盛んに娘細胞が毛母に供給される。そして,毛乳頭細胞から刺激を受けた毛母細胞が増殖し,毛髪および毛髪を取り囲む毛包の各細胞層へと分化していく(図1)2)3)。頭髪が1日に0.3~0.5mmものスピードで伸びることからも,毛母細胞がいかに活発に細胞分裂を繰り返しているかが想像できる。頭髪の成長期は2~6年なので,頭髪は1m程度(だいたい腰の高さ)まで伸びることができると計算される。なお,日本人の頭部毛包の毛球部は軽度曲がっているため,完全な直毛よりは若干ではあるがwavyな毛質を示す傾向がある。

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過日編集部よりだしぬけにメールが来た。本増大号は乾癬特集であるという。増大号は本欄も3倍に拡大されるため乾癬を取り上げてはいかが? との担当Kさんの粋な計らいである。なるほど,筆者は乾癬に興味を持ち,日本乾癬学会の末席を汚す人間であるので,ならば乾癬患者指導のコツでも……などと書き始めると思ったのであれば大間違いである。本稿は有益な記載を一切排し,無益な駄文に徹してこそ存在価値が出るのであり,うっかり最新治療の話なんぞ逆立ちしても書くことはできぬ。

ちょっと一息 医局ラウンジ

第9回 信州大学
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経験豊富な指導医と,次世代のリーダーとして期待できる若手が揃うバランスのよさが魅力です。元気な高齢者が多い長野県で,地域医療を担うオールマイティな皮膚科医の育成に力を入れています。また,統括医長,外来医長,病棟医長をいずれも女性が務めており,一人ひとりの個性を尊重したキャリア形成のサポート体制も十分です。

Dr.斎田の皮膚科診断講座

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症例情報 82歳,男性。20~30年前から顔面,頸部に黒褐色病変が多発してきた。1年ほど前に右耳前部に生じた病変が最近やや急速に増大,隆起し,出血するようになった。脳血栓にてワルファリンカリウム内服中。初診時,右耳前部に25×17×5mmの黒色結節が認められ(図1:*印),表面の大部分はびらんし,易出血性で,上方部には黒褐色斑を伴っていた(図1:矢印)。この結節のダーモスコピー像を図2-a, bに示す。また,結節下方の#印を付した病変のダーモスコピー像を図3に示す。

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69歳,女性。40歳鯛鍋,55歳イクラの醤油漬け,60歳生タラコ,67歳サンマの刺身をそれぞれ摂取5~7時間後に,全身蕁麻疹,唾液量増加,嘔吐,下痢などが出現した。激しい腹痛はなかった。2回目のエピソードでは意識消失,血圧低下を伴いショック状態となった。IgE 468IU/ml,特異的IgE(クラス)イクラ・タラコ0,アニサキス5,回虫2。プリック・プリックテスト:魚介類ではすべて陰性,アニサキス粗抗原++,非加熱+++,加熱++。アニサキスによるアナフィラキシーと診断した。海中を回遊する魚およびスルメイカ,タラコ・イクラなどの魚卵にはアニサキスが寄生する可能性がある。しかし,マグロに関しては筋肉内寄生がほとんどないことから,マグロ(メジマグロを除く)および甲殻類,貝類,海藻類,養殖水産物,川の上流に棲息する淡水魚は摂取可能と考えた。

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71歳,女性。1カ月前より四肢に浸潤性紅斑,小結節,水疱が出現した。生検にて白血球破砕性血管炎と血管壁への免疫複合体の沈着を認めた。臨床所見,病理所見より持久性隆起性紅斑と診断した。ジアフェニルスルホン(レクチゾール®)を内服後,皮疹は消失した。本症は種々の合併症が知られており,自験例でも皮疹に先行して間質性肺炎の既往症を有していた。本症を疑った際は,注意深い問診と全身精査が必要である。

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48歳,女性。11カ月前より,外陰部に有痛性の潰瘍が出没するようになった。数日前にも症状が再燃したため,当科を受診した。初診時,外陰部に有痛性の潰瘍,下口唇粘膜にびらんを認めた。単純ヘルペスとして加療され上皮化したが,その後も陰部潰瘍を繰り返した。初診3カ月後の再診時に拇指・臀部に紅斑および紅褐色斑がみられたため,固定薬疹を疑った。薬歴の確認を再度行い,トスフロキサシントシル酸塩,メフェナム酸,PL配合顆粒の頓用が判明した。パッチテスト・誘発テストでメフェナム酸,トスフロキサシントシル酸塩による固定薬疹と診断した。固定薬疹で初期には粘膜疹のみを呈する場合があり,注意が必要であると考えた。

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67歳,女性。1カ月前より無症候性の紅斑が全身に多発し,増悪傾向のため当科を受診した。受診時には体幹・四肢に爪甲大までの類円形紅斑が多発しており,辺縁は堤防状を呈し浸潤を触れた。皮膚生検にて,真皮の膠原線維の変性やムチンの沈着,周囲に柵状に組織球浸潤を認め,病理所見より環状肉芽腫と診断した。血液検査では随時血糖値382mg/dl,HbA1c 9.4%と明らかな糖尿病の所見を示した。ステロイド外用治療のみでは改善はなく,その後糖尿病の治療を開始したところ,HbA1cの低下に伴い皮疹の浸潤は軽減し,紅斑の色調も退色傾向にある。汎発性環状肉芽腫をみたら,初診時のみでなく経過フォロー中も積極的にHbA1cや糖負荷試験などの検査を行い,糖尿病合併のスクリーニングに努めることが望まれる。

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39歳,女性。10年前より自覚する右腋窩の皮下腫瘤を主訴に前医を受診した。生検にて乳腺過誤腫が考えられ,当科を紹介受診した。右腋窩に11×19cm大で弾性軟の皮下腫瘤があり,CTでは通常乳腺との連続性はなかった。全切除の病理組織で腫瘍は境界明瞭で,線維性間質内に乳管や小葉構造が散在し,細胞の異型はなかった。合併切除した腫瘍直上の脂肪組織にも乳管や小葉構造が存在し,右腋窩に生じた副乳過誤腫と診断した。副乳過誤腫はわれわれが調べ得た限りでは,自験例も含めてこれまで5例の報告のみであった。極めてまれな症例を経験したため,報告する。

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32歳,女性。20歳頃に両手掌に点状陥凹が出現した。32歳時,下顎の疼痛のため当院歯科口腔外科を受診し,頭部CTで多発性顎骨囊胞を認めたため,基底細胞母斑症候群(Gorlin症候群,BCNS)を疑われ当科に併診となった。前頭部の9mm大の黒色蝋様光沢性小結節,両眼開離,広い鼻梁,下顎突出など特徴的な顔貌を呈し,両手掌に点状陥凹を認めた。小結節の病理組織学的診断は基底細胞癌であり,以上よりBCNSと診断した。以後8年間の経過中に頭部に5カ所,顔面に2カ所,腹部に1カ所の計8カ所の黒色結節が新生し,組織学的にすべて基底細胞癌と診断した。BCNSでは非露光部を含め全身各所に基底細胞癌の新生を繰り返すため,注意深く経過を追う必要がある。

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50歳,女性。額部に黄色,暗青色皮下結節を多数,黄色皮下結節を他部位に認めた。病理組織学的所見で暗青色結節はeruptive vellus hair cyst,黄色結節はsteatocystomaと診断した。頭部,顔面発症のsteatocystoma multiplex 36例の検討では ① pachyonychia congenita型,② 青年発症型,③ 老年発症型の症例数は約1:5:4,発症年齢は ① 10歳代,② 20歳代,③ 60~70歳代,①②③ の順で男性の占める割合,家族内発症が多い。発症部位は ① 頭部,② と ③ は顔面が多いが ② は顔面以外の発症も多い。Eruptive vellus hair cystとsteatocystomaは同一スペクトラム上の囊腫とされ,36例中8例で合併していた。治療は内容圧出が簡便かつ美容的に満足しうる治療法と考える。

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68歳,男性。2年前より左背部に皮下腫瘤が出現し,徐々に拡大した。超音波検査で10cm大の皮下囊胞と内部に充実性部分を認め,MRI検査で囊胞部はT1,T2強調画像ともに高信号,結節部分は低信号を呈した。全摘術を行ったところ,皮膚と連続性のない単房性囊胞状構造で,囊胞壁に複数の結節を認めた。腫瘍はporoid cellとcuticular cellで構成されていた。Poroid neoplasmsのなかでも特にその形態が画像に反映されやすいporoid hidradenoma,solid-cystic typeは,画像検査の有用性が高いと考えられる。

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78歳,男性。腸管型Behçet病で加療中であった。約3カ月前に出現した両足底の結節が増数したため,当科を受診した。両足底に小豆大までの暗紫色結節が多数みられ,手掌にも暗紫色斑が多発していた。生検にて真皮に紡錘形細胞からなる結節病変を認めた。紡錘形細胞間には裂隙形成を認め,内部には赤血球が充満していた。免疫染色では増生している紡錘形細胞はCD31,CD34陽性であり,LNA-1は紡錘形細胞核内で陽性であった。抗HIV抗体は陰性で,Behçet病加療以前から病変を認めていたことから,古典型Kaposi肉腫と診断した。Behçet病の治療による免疫抑制がKaposi肉腫の増悪に関与していると思われた。

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現病歴 交通事故により頸椎捻挫を受傷し,近医でロキソプロフェンナトリウム(ロキソニン®錠),エペリゾン塩酸塩(ミオナール®錠),イソプロピルアンチピリン・アセトアミノフェン・アリルイソプロピルアセチル尿素・無水カフェイン配合剤(SG配合顆粒)を処方された。昼食後に3剤すべてを内服したところ,約15分後より悪心・嘔吐,全身の潮紅および呼吸苦が出現し,ドクターカーで救急搬送された。車内で血圧低下と気道狭窄をきたし,アナフィラキシーショックとして,アドレナリンの筋注を受けた。搬送先でd-クロルフェニラミンマレイン酸塩5mg,ファモチジン20mgおよびメチルプレドニゾロン125mgを点滴投与されて症状は軽快した。翌日,原因精査のため当科を紹介受診した。

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現病歴 玄関でつまずいて左下腿を打撲し,擦過傷を受傷した。入浴後,いつものように妻から創傷処置を受けていたところ,皮膚の痒みと紅潮が出現し,一過性に意識を消失した。救急要請され,ドクターカー接触時の血圧は69/39mmHg,意識レベルはGCS 14点(E4V4M6)であった。アナフィラキシーショックとして加療された後,原因精査のため当科を受診した。

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現病歴 2006年頃より右鼻根部に紅色結節が出現した。他院で皮膚生検されたところ,有棘細胞癌と診断され,加療目的に当科を紹介受診した。

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現病歴 2カ月前より左前腕に皮疹が出現し,近医でステロイド外用剤を処方され,一旦軽快したが再び同部位に同様の皮疹が再燃し,同剤で改善しないため,当科を受診した。

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基本情報

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皮膚科の臨床
60巻10号 (2018年9月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:0018-1404 金原出版

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