皮膚科の臨床 60巻11号 (2018年10月)

  • 文献概要を表示

30歳代,男性。約10日前から左足関節痛が出現し,近医で痛風として治療された。その後,四肢に浸潤を触れる紫斑,関節腫脹,関節痛による歩行困難,心窩部違和感を認め,当院を紹介受診し,即日入院となった。皮膚生検でIgA血管炎と診断した。入院時,腹部超音波検査で小腸の部分的な腸管壁肥厚を散在性に認め,内視鏡検査で十二指腸粘膜のびらんを認めた。プレドニゾロン30mg/日の内服を開始し,紫斑,関節症状は改善したが,激しい腹痛,嘔吐が出現した。腹痛増強時の超音波検査では,小腸に広範囲な壁肥厚を認めた。ステロイドパルス療法を施行し,腹部症状は直ちに改善した。IgA血管炎の腹部症状の経過をみるうえで,腹部超音波検査は非常に有用であった。

  • 文献概要を表示

72歳,女性。20年前に掌蹠膿疱症を発症した。9日前から両アキレス腱部に疼痛と腫脹があり,下肢に紫斑が増加したため,当科を紹介受診した。初診時,足底に膿疱が多数みられた。両下腿には紫斑や血疱の集まった病変がみられた。生検と血液検査を行いIgA血管炎と診断した。蛋白尿と便潜血が陽性であった。プレドニゾロン30mg/日の内服を開始し皮疹は改善したが,蛋白尿が増加したため腎臓内科に転科し,紫斑病性腎炎と診断された。ステロイドパルス療法2クール施行後にシクロスポリン80mg/日内服を追加し,症状や検査所見は改善した。過去の報告と自験例の経験から,掌蹠膿疱症に合併したIgA血管炎は重症化しやすいことが示唆された。

  • 文献概要を表示

62歳,男性。59歳時に一過性脳虚血発作,60歳時に小脳梗塞の既往がある。抗血小板薬,抗凝固薬内服中である。1年3カ月前から両側下腿に小潰瘍が生じ,徐々に増大・融合し,疼痛と足先の冷感が増強した。抗菌薬点滴・高圧酸素療法に効果なく,当科を紹介受診した。血清学的にループスアンチコアグラント陽性,抗核抗体陰性であった。潰瘍部の病理組織所見で,真皮深層の中動脈にフィブリン様物質の沈着を伴う肥厚や再疎通を伴う血栓がみられた。血管炎は認めなかった。臨床経過,組織所見,臨床検査所見から原発性抗リン脂質抗体症候群と診断した。プロスタグランジン点滴とプレドニゾロン内服で軽快した。難治性下腿潰瘍をみた際には,抗リン脂質抗体症候群も鑑別する必要があると考えた。

  • 文献概要を表示

54歳,女性。2000年から全身性エリテマトーデス(SLE),ループス腎炎にて加療中であった。2017年3月,SLEの病勢悪化に伴って多形滲出性紅斑様の皮疹が手指や手掌を含めた四肢・体幹に急激に出現した。皮膚生検にて,皮下脂肪組織の中血管レベルに壊死性血管炎像を認めた。全身性血管炎関連マーカーは陰性であった。以上よりChapel Hill分類2012で提唱されたループス血管炎と診断した。SLEと血管炎との関連を検討した過去の報告では,自験例と同様にループス血管炎の多くが皮膚血管炎であった。また中血管レベルの血管炎はまれであること,手指や手掌の紅斑はループス血管炎に特徴的な皮膚症状である可能性があることなどがわかった。

  • 文献概要を表示

57歳,女性。結腸癌に対する化学療法中,好中球減少に対してペグフィルグラスチムの投与を開始した。3回目の投与から14日後に四肢に浸潤を触れる数mm大の紫斑が出現した。病理組織学的にleukocytoclastic vasculitisの所見を認めた。紫斑は一旦消退したが,再投与により再燃したため,ペグフィルグラスチムによる皮膚血管炎と診断した。顆粒球コロニー刺激因子製剤による皮膚血管炎の出現はまれである。ペグフィルグラスチムの投与中に皮膚血管炎を認めた場合,投与中止を検討する必要がある。

  • 文献概要を表示

82歳,男性。数カ月前から顔面を除く全身に,自覚症状に乏しい皮疹が出現した。ステロイド外用剤は無効であった。小腸潰瘍と腹膜炎のため開腹手術を受け,術後に当科を受診した。診察時,前胸部,頸部,四肢に10mm大までの丘疹が約30個散在していた。丘疹は中央が黄白色調に陥凹し,紅暈を伴っていた。病理所見で表皮は萎縮性で,真皮に膠原線維の変性,網状層の血管の血栓形成を認めた。当科受診2日後,腸管穿孔で再度開腹手術を受けた。術中所見では腸管穿孔と,空腸漿膜側に多発性の壊死巣を認めた。再手術後11日で敗血症のため永眠した。本疾患は皮疹が軽微であっても生命予後に大きく関わるため,皮膚科診療にあたり留意する必要がある。

  • 文献概要を表示

30歳,男性。5カ月前より両下肢に強い瘙痒を伴う,浸潤を触れる径3cm前後の紫紅色斑と紅褐色斑が多発していた。生検像では,真皮全層の血管壁および内腔にフィブリンの析出,血管壁および周囲に好酸球の著明な浸潤を認めた。末梢血好酸球数は3210/μl,MPO/PR3-ANCAは陰性であった。喘息,内臓病変はなかった。プレドニゾロン30mg/日開始で改善したが,減量中強い瘙痒が再燃したため,シクロスポリン100mg/日を併用した。1年7カ月後現在で,プレドニゾロン5mg/日のみで経過良好である。過去の報告から,再発性皮膚好酸球性血管炎はプレドニゾロン減量により比較的容易に再発する特徴があり,シクロスポリン併用は補助療法となりうると考えた。

  • 文献概要を表示

18歳,女性。夏に夜行バスでテーマパークへ遊びに行った際,両下腿に,靴下で圧迫された部位を避けて,点状の紫斑を伴う紅斑が出現した。初診時は,IgA血管炎を疑いステロイド内服を行い軽快した。翌年9月に同じテーマパークへ行ったときに,再び両下腿に紅斑,紫斑が出現した。皮膚生検では真皮血管周囲の単核球浸潤,血管壁の軽度肥厚を認めた。ステロイド外用による治療で皮疹は1週間で消退した。高温の環境下で長時間歩いた後に発症し,かつ速やかに改善したことよりexercise induced vasculitisと診断した。米国のテーマパークでの発症は珍しくないが,本邦では初めての報告である。

巻頭言

  • 文献概要を表示

世のなかには,社会人になっても資格をとるための受験があります。皮膚科医になったら,皮膚科専門医試験がもっとも大きな資格試験だと思います。

  • 文献概要を表示

現病歴 1カ月前よりダイエットを開始し,1カ月で5,6kg減量した。2週間前に項部から腰部にかけて,前胸部に小水疱,漿液性丘疹,紅斑が出現した。近医を受診し,接触皮膚炎の疑いでフェキソフェナジン塩酸塩錠60mg 2T/日,ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステルクリーム外用で加療したが,徐々に皮疹が拡大した。1週間前にカポジ水痘様発疹症を疑いファムシクロビル250mg 3T/日の内服を開始したが皮疹が拡大し,精査加療のため当科を紹介受診した。

臨床講義

日本人のメラノーマの特性 宇原 久
  • 文献概要を表示

転移をおこしたメラノーマ(悪性黒色腫)患者の治療は限られていたが,米国では2011年から,日本では2014年から新薬が続々と登場し始め,メラノーマの治療が大きく変わってきている1)~3)。これまでの殺細胞性抗癌剤(中心的な薬剤はダカルバジン)による1年生存率は35%,2年生存率は10数%だったが,最新の治験参加者(比較的状態の良い症例が参加している)の長期フォローのデータでは3~5年生存率が30~40%に達している。新薬は主に癌細胞に対する免疫学的攻撃を復活させる抗体薬(免疫チェックポイント阻害薬)と遺伝子変異によって異常に活性化した細胞増殖に関連する分子を抑える低分子量分子標的薬からなる。一方,公開されているエビデンスのほとんどは白人のメラノーマ患者[紫外線関連の悪性黒子型(lentigo maligna melanoma,以下LMM)や表在拡大型(superficial spreading melanoma,以下SSM)]を対象にした治験によるものである。日本人に多い末端黒子型(acral lentiginous melanoma,以下ALM)や粘膜型は,LMMやSSMと,新薬の適応や効果発現に差がある可能性がある。本稿では日本人に多いメラノーマの特性について解説し,欧米から報告されているエビデンスをどの程度日本人患者に当てはめられるのか,という点について考えてみる。

  • 文献概要を表示

61歳,男性。左前頭部に10×8cm大の潰瘍形成を伴う腫瘤があり,生検で高分化型有棘細胞癌と診断した。全身CTにて転移所見はなかった。頭部MRIで腫瘍は骨表面に接していたが患者は頭蓋骨の全層切除は希望せず,1cmマージンで骨膜を含めて切除した。しかし腫瘍底部に骨膜浸潤があり頭蓋骨と癒着していたため,外板表面の剝離を追加し創面を人工真皮で被覆した。真皮様組織の形成は概ね良好で,分層植皮術を施行した後,放射線治療を計50Gy施行した。術後2年の現在,再発や転移の所見はない。自験例において,骨膜の剝離は腫瘍細胞の残存リスクの低減と人工真皮の生着促進,骨強度の維持に有用であったと考えた。

  • 文献概要を表示

第117回日本皮膚科学会総会は2018年5月31日から4日間,広島県広島市にて開催された。近年の日本皮膚科学会総会は横浜と京都で交互に開催されていたが,昨年の仙台に引き続き,この2都市以外での開催であった。メイン会場のリーガロイヤルホテル広島は広島のもっとも賑やかな町に位置し,さらに会期中は広島を代表する夏祭りである「とうかさん大祭」の期間に重なっていたため,大変な賑わいを見せていた。広島のシンボルである原爆ドームにも近く,学会の空き時間に徒歩で見学に行ける距離であった。サブ会場の広島県立総合体育館・NTTクレドホールとは地下歩道でそれぞれつながっており,会期中は大変気候に恵まれて日中は夏のような日差しであったが,移動には大変ありがたかった。

ちょっと一息 医局ラウンジ

第10回 日本医科大学
  • 文献概要を表示

日本医科大学皮膚科の魅力は,佐伯教授のご指導とお人柄です。医局見学の先生方から,あんなに丁寧に説明してくれる教授に感銘を受けた……と感想をいただきます。またアトピー性皮膚炎・乾癬,美容皮膚科,アレルギー,皮膚外科など多岐にわたって専門外来が充実しており,幅広い教育を受けることができます。子育て中の女性医師を含めた色々な立場の医局員の働き方について皆で考えたり,国内外留学や大学院進学などの進路相談にも,教授が積極的に乗ってくださったり,皆でより良い医局にできるよう協力しています。

Dr.斎田の皮膚科診断講座

Dr.斎田の皮膚科診断講座(22) 斎田 俊明
  • 文献概要を表示

症例情報 50歳代,女性。最近,右膝蓋部にシコリがあるのに気づいた。表面常色の径1cmの皮下結節で,境界明瞭に弾性硬に触知した。皮膚と下床のいずれにも可動性であった。全摘生検された検体の組織所見を図1~4に示す。

  • 文献概要を表示

28歳,女性。1カ月前よりダイエットを開始し,5,6kg減量した。2週間前から体幹に小水疱,漿液性丘疹,紅斑を認めた。近医にて接触皮膚炎が疑われ抗アレルギー薬内服,ステロイド外用で加療を開始したが,徐々に皮疹が拡大した。1週間前にカポジ水痘様発疹症が疑われ,抗ウイルス薬内服を開始したが皮疹が拡大し,当科を紹介受診した。尿中,血中ケトン体の上昇を認め,色素性痒疹の診断でミノサイクリン塩酸塩内服を開始し,約2週間で色素沈着を残して消退した。病理所見では表皮内水疱を形成し,炎症細胞浸潤が著明であったことから,海綿状態が著しいために水疱を形成したと考えた。

  • 文献概要を表示

28歳,男性。1カ月前から右足の有痛性紅斑を自覚,徐々に両下腿に拡大した。初診時,両下腿に胡桃大までの淡紅色で浸潤のある有痛性紅斑・皮下硬結が多発していた。皮膚生検の病理所見では脂肪組織の小葉隔壁から小葉内にかけての炎症細胞浸潤と線維化がみられた。生検組織および喀痰の抗酸菌培養,PCRは陰性であったが,血液検査でクォンティフェロン®が高値陽性であった。Bazin硬結性紅斑と診断し,リファンピシン,イソニアジド,エタンブトールの3剤併用療法が奏効した。自験例のように活動性結核病変が確認できない場合でも,クォンティフェロン®が陽性であれば結核菌感染症が示唆されるため,多剤併用療法を行うべきと考えた。

  • 文献概要を表示

2歳,女児。熱性痙攣の既往がある。約4カ月前より家族が左下顎部の拇指頭大の褐色色素斑に気づき,同部位に紅斑の出現・消退を繰り返すとのことで受診した。皮疹の性状と経過より固定薬疹の可能性を考えた。ジアゼパム坐剤のas isおよびジアゼパム散の皮疹部貼布試験で紅斑の出現を認め,ジアゼパム坐剤による固定薬疹と診断した。また発熱時に家族がジアゼパム坐剤を使用し,左下顎部と同様の紅斑が両側大腿部にも出現し,固定薬疹の多発化と考えられた。ジアゼパム坐剤による固定薬疹の報告はまれであるが,発作を繰り返すことにより多発化する可能性があり,早期診断が必要と考えられた。

  • 文献概要を表示

47歳,女性。左乳癌の術後補助化学療法として,ドセタキセル(DTX)を5クール目投与20日後に,両上眼瞼に瘙痒を伴う浮腫性紅斑を生じた。病理組織学的には,表皮内に多数の個細胞壊死があり,基底層には液状変性を認めた。真皮浅層の血管周囲性にリンパ球を主体とする炎症細胞が浸潤し,また,真皮内にムチンの沈着を認めた。皮疹は自然軽快したが,6クール目投与40日後に再燃し,再度自然軽快した。自験例は,DTXによる薬疹と考えたが,皮膚筋炎の初期症状としても矛盾していなかった。皮膚筋炎の他の症状,合併症を発症しないか,慎重に経過観察する必要がある。

  • 文献概要を表示

74歳,男性。脊髄損傷後両下肢麻痺がある。尿路感染症,敗血症性ショックで入院し,麻痺のある右足背から静脈を確保しドパミン塩酸塩の点滴が行われた。血管外漏出が疑われ抜針したが,皮膚の虚血性変化が進行した。約1カ月後,全身状態の回復を待ってデブリードマンを行ったが,壊死は下床の骨や腱まで及び,下肢切断を余儀なくされた。ドパミン塩酸塩を使用する際,麻痺側や下肢,皮下脂肪が疎である部位などでの静脈確保は避けるべきである。また血管外漏出が疑われた際に,局所のフェントラミンメシル酸塩皮下注射や2%ニトログリセリン外用など,できる限り早期の処置がなされるか否かは,予後を大きく左右する。

  • 文献概要を表示

28歳,女性。2013年8月頃にシェーバーによる毛剃り後に,両下腿に瘙痒を伴う皮疹が出現した。初診時,ほぼ全身にびらんや鱗屑を伴う紅斑を多数散在して認め,両側下腿に多数の弛緩性水疱を認めた。病理組織学的所見と蛍光抗体法,免疫ブロット法の結果および抗デスモグレイン1抗体の上昇から,落葉状天疱瘡と診断した。若年成人の発症はまれと思われた。また,シェーバーによる毛剃りおよび紫外線照射が非典型的な下腿に初発する落葉状天疱瘡の発症誘因と考えた。

  • 文献概要を表示

67歳,男性。全身の浮腫性紅斑,緊満性水疱,軟口蓋のびらんを認め入院した。ステロイド全身投与と免疫グロブリン大量静注療法を併用するも,咽頭痛と唾液の飲み込みにくさが出現した。喉頭鏡にて喉頭浮腫を認め,緊急気管切開を要した。抗BP180抗体(ELISA)は2310U/mlと高値であった。病理組織学的所見では表皮下水疱を認め,1M食塩水で処理したsplit skinによる蛍光抗体間接法ではIgGが表皮側に陽性であった。表皮抽出液を用いた免疫ブロット法ではIgGが230kDaの蛋白(BP230)に陽性であった。BP180のC末端のリコンビナント蛋白を用いた免疫ブロット法ではIgGがごく弱く陽性であった。口腔粘膜疹がみられる例では,自験例のような重篤な喉頭粘膜疹を合併する可能性があることを念頭に置き,診療にあたる必要がある。

  • 文献概要を表示

66歳,男性。約6カ月前から頭部に瘙痒を伴う皮疹が出現した。近医を受診し,ステロイド外用で治療したが改善しなかった。右後頭部に瘙痒を伴う5cm大のやや隆起した紅斑局面があり,病理組織では,表皮に軽度の好酸球浸潤,真皮以下にびまん性に好酸球主体の炎症細胞浸潤,膠原線維間にflame figureを認めた。以上よりWells症候群と診断した。ステロイド内服・外用にて治療を開始し,紅斑局面は消退,再燃なく経過している。Wells症候群は,感染症や虫刺症などを契機に,主に四肢に瘙痒を伴う浮腫性紅斑や丘疹,水疱などを形成する。頭皮に生じた症例はまれで,渉猟し得た限りでは,本邦・海外あわせて5例の報告がなされていた。

  • 文献概要を表示

23歳,男性。四肢の虫刺症を契機に中心臍窩性丘疹に発展拡大し,痒疹様になった。病理組織学的に中央の表皮欠損部への膠原線維排泄を認め,acquired reactive perforating collagenosis(ARPC)に近い病変と考えた。抗ヒスタミン薬内服,ステロイド軟膏外用に抵抗性である。ARPCは糖尿病,慢性腎不全,透析中の症例の合併が多いが,近年国内外で虫刺症を契機に発症する報告が4例ある。自験例を加えた5例中4例は基礎疾患を有しない20歳代である以外は,臨床所見,病理組織学的に通常のARPCとの相違点はない。自験例と同様の病理組織所見が虫刺症から痒疹への移行期にみられる可能性が考えられ,今後のARPCの発症機序の解明に期待する。

  • 文献概要を表示

57歳,女性。約1年前から両側鼻唇溝に軽度の瘙痒を伴う皮下結節が出現し,徐々に増数した。患者は15年前と10年前に計3回,鼻唇溝と眉間部分に皺治療目的にてアクリルハイドロジェルを皮下注射しており,初診時,注射部位に一致して数珠状に連なる境界明瞭な皮下結節を触知した。組織学的には,真皮浅層から横紋筋間質までの広範囲に透光性ないし好酸性の異物と周囲の異物肉芽腫を認めた。治療は全身麻酔下にすべての結節を摘出した。この異物肉芽腫は施術約10年後に発症した合併症と考えたが,fillerの注入治療を行う際には,長期間にわたる経過観察と患者に対する適切な情報提供が必要と考えた。

  • 文献概要を表示

76歳,男性。右外眼角部の不整形黒色斑を主訴に当科を受診した。ダーモスコピーではatypical pseudonetworkに類似した所見もみられたが,毛包部では黄色調の毛包角栓と周囲のpseudonetworkの間に灰白色の輪状構造がみられた。病理組織像では表皮基底層を中心に,異型角化細胞の増殖と表皮内のメラニン沈着がみられた。以上の所見よりpigmented solar keratosisと診断した。自験例のダーモスコピー所見でみられた灰白色輪状構造は,近年報告されたpigmented solar keratosisに特徴的とされる所見であり,文献的考察を加え報告した。

  • 文献概要を表示

62歳,男性。2009年に臀部有棘細胞癌に対し,原発巣全摘術を施行した。その後,両鼠経リンパ節および左骨盤内リンパ節郭清術を施行し,両鼠経リンパ節に転移を認めた。術後2年目に骨盤内リンパ節転移が生じ,放射線療法,FP療法(シスプラチン+フルオロウラシル)を4クール施行した。術後3年5カ月目に骨盤内リンパ節転移再発と仙骨への浸潤を認めたため,CA療法(シスプラチン+ドキソルビシン塩酸塩)を施行した。その2カ月後に汎血球減少を認めたため,骨髄穿刺を施行し,造血細胞3系統の異型と,5番と7番染色体に欠失を認め,治療関連骨髄異形成症候群と診断した。皮膚癌治療においても,白金製剤による骨髄異形成症候群の発症の可能性を念頭に置くべきである。

  • 文献概要を表示

69歳,男性。2年前から左膝に結節があり増大した。初診時,左膝に11×10×5mm大,黒褐色調,一部紅色調に隆起する結節を認めた。病理組織学的に,表皮と連続した基底細胞様細胞で構成される腫瘍胞巣があり,基底細胞癌と診断した。腫瘍胞巣に囲まれて,陰影細胞のみからなる島嶼状の集塊があり,近傍には石灰沈着がみられた。陰影細胞を伴った基底細胞癌(BCCMD)と診断した。本邦におけるBCCMDの報告は,調べた限りなかった。

  • 文献概要を表示

63歳,男性。免疫組織化学的検索により診断し得た乳頭状腎細胞癌の皮膚転移例である。初診時,後頭部に4×3cm大,扁平台状に隆起する環状で弾性硬の淡紅色腫瘤がみられた。病理組織所見では,真皮浅層から皮下組織にかけて核の大小不同や分裂像を有し,好酸性の豊富な細胞質をもつ腫瘍細胞が孤立性あるいは胞巣を形成して増殖し,それらの細胞は表皮真皮境界部にも浸潤していた。腫瘍細胞はPAX8,CD10,vimentin,CK7陽性で,自験例を腎細胞癌の皮膚転移と診断した。自験例は,腎細胞癌の既往があるも,頭部腫瘤は特徴的な腎細胞癌の皮膚転移の臨床像を示さず,病理組織でも皮膚原発腫瘍との鑑別が問題となった。しかし免疫染色を施行し,腎細胞癌皮膚転移と診断し得た。パネル化した抗体の組み合わせによる免疫染色は,転移性腎細胞癌の組織診断に有用である。

  • 文献概要を表示

51歳,男性,spindle cell/pleomorphic lipomaの1例。4,5年前に項部右側の皮下腫瘤を自覚し,増大してきたため当科を受診した。腫瘤は25mm大で弾性軟であった。超音波では,境界明瞭で内部が不均一な低エコー領域を示した。病理組織学的には,境界明瞭な充実性腫瘤で,大部分は脂肪細胞,紡錘形細胞,膠原線維の増生からなり,肥満細胞も多数混じていた。一部では濃染性で大型核を有する腫瘍細胞やfloret-like giant cellがみられ,粘液腫状であった。紡錘形細胞とfloret-like giant cellはいずれもCD34陽性で,S100とEMAは陰性であった。本症は予後良好であるが,組織学的に悪性と誤認する可能性があり,熟知すべき疾患と考えた。

  • 文献概要を表示

66歳,男性。糖尿病性腎症で維持透析中である。4カ月前に外傷を契機に左頭頂部の紫斑を自覚した。遠隔転移はなく,放射線治療,ドセタキセルおよびrIL-2で治療を開始した。3コース投与後,間質性肺炎を発症した。ステロイドパルス療法を行い軽快した。病変が残存しており,放射線追加照射とパクリタキセルを投与した。6回投与後,末梢神経障害のため継続困難となりエリブリンに変更した。エリブリンは8回投与しているが,有害事象なく経過している。初診10カ月後の現在,頭部血管肉腫は色素沈着化し,転移は生じていない。エリブリンは,タキサン系薬剤によって間質性肺炎や末梢神経障害を生じた症例においても,安全に使用できる可能性があると思われた。

  • 文献概要を表示

38歳,男性,ゴルフ指導員。初診前年の秋より,食事や運動時に,背部にチクチクとした痛みがあった。初夏には発汗低下,うつ熱のため屋外での仕事に支障をきたし,8月には熱中症に至った。コリン性蕁麻疹の合併はなく,温熱発汗試験で広範囲な無汗,発汗低下がみられた。薬物性発汗試験は陰性であった。病理組織学的に汗腺組織の形態学的異常はなく,炎症細胞はわずかであった。無汗部の汗腺上皮では,アセチルコリン受容体の発現が低下していた。無汗をきたす基礎疾患や自律神経異常はなく,特発性後天性全身性無汗症と診断した。ステロイドパルス療法が奏効し,3クールで発汗が回復した。本症はまれな疾患であるが,早期に診断・治療すべきである。

  • 文献概要を表示

78歳,男性。両下腿脱力感にて数時間正座で過ごした後に搬送された。両下腿に発赤,腫脹,圧痛,水疱を認め,体温39.5°C,WBC 27500/μl,CRP 2.7mg/dl,プロカルシトニン54ng/mlにて両下腿蜂窩織炎と敗血症の診断で抗菌薬を開始した。入院翌日に横紋筋融解症による急性腎不全を発症し,血液透析を導入した。急性腎不全は正座での両下腿圧迫による挫滅症候群が関連していると推察した。プロカルシトニンは,細菌感染以外に横紋筋融解症合併による相乗的な著増と考えた。急性腎不全は一時的な透析で軽快し退院したが,急性腎不全を呈し透析導入に至る蜂窩織炎はまれであり,挫滅症候群を合併した急性腎不全の致死率は40%とされるなか,自験例は救命し得えた貴重な症例と考えた。

憧鉄雑感

  • 文献概要を表示

突きあがるような大きな揺れに覚醒した。2018年9月6日午前3時7分。後に平成30年北海道胆振東部地震と命名された大地震であった。すぐにテレビをつけると大変な震度である。きっと大きな被害が出ているのであろう。天災は誰のせいでもなく,無神論者の筆者は自然の摂理と理解している。幸い,窓外の札幌の風景は乱立するビルにも大きな被害がなさそうであり火災も起こっていない。安堵する間もなく,部屋と街からすべての灯が消えた。“ブラックアウト” の瞬間であった。現代社会において停電は想像を絶する恐怖を齎すものである。無論,ライフラインはどれかが欠けても日常生活に大きく影響するが,停電は通信機器には勿論,ビルでは電気で水を汲み上げるため断水となる。

  • 文献概要を表示

現病歴 数年前から両下腿の色素沈着が出現し,次第に増強してきた。

  • 文献概要を表示

現病歴 前期破水のため,出生後すぐに左臀部にアンピシリン(ビクシリン® S)筋肉注射を施行されていた。初診1日前に左臀部の皮下腫瘤に母親が気づき,近医小児科を受診し,当科を紹介受診した。

  • 文献概要を表示

現病歴 4年前から頭部に鱗屑を伴う紅色局面が出現し,四肢に拡大した。他院で尋常性乾癬と診断され外用薬が処方されていたが,難治であったため,当科を紹介受診した。

--------------------

目次

英文目次

投稿規定

著作財産権譲渡同意書

Information

次号予告

編集後記

基本情報

00181404.60.11.cover.jpg
皮膚科の臨床
60巻11号 (2018年10月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:0018-1404 金原出版

文献閲覧数ランキング(
11月5日~11月11日
)