胃と腸 42巻5号 (2007年4月)

特集 消化管の拡大内視鏡観察2007

序説

消化管拡大内視鏡の進歩 工藤 進英
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拡大内視鏡と拡大観察の時代の夜明け

 わが国での消化器拡大内視鏡の開発は1960年代後半の町田製作所やオリンパス社の機器に端を発する1).大腸拡大内視鏡は1975年に多田ら2)によるCF-HB-Mや1977年には小林ら3)のFCS-MLが報告され,1980年代に入るとCF-UHMが開発された.しかしその時代にはIIcを中心とした表面型早期癌の診断学が確立されておらず,これらの拡大内視鏡は通常の検査には不向きであったため,電子スコープの時代になるまで拡大内視鏡の開発はいったん中止状態となった.

総論 1. 拡大内視鏡の歴史

拡大内視鏡の歴史 田尻 久雄
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要旨 拡大内視鏡は実体顕微鏡の研究を基礎的背景として開発が進められた.1967年に消化器内視鏡を用いて胃粘膜を拡大観察するという目的で初めて拡大ファイバースコープが作製され,胃を対象にその後1977年ごろまで開発が続いた.最初の拡大大腸ファイバースコープは1975年に報告された.臨床的に大腸粘膜の拡大観察が注目されるようになったのは,1990年代に電子スコープが広く普及したことに加えて,微小癌や平坦・陥凹型早期癌が多く診断され,かつ治療されるようになってきたことによる.一方,近年,様々な進歩により胃の拡大観察も比較的容易になった.2000年から上部消化管汎用内視鏡と同じサイズと操作性を有し,最大倍率において十分な分解能と観察深度を有するスコープが開発され一般に使用できるようになった.食道,中・下咽頭領域の拡大観察については,特にnarrow band imaging(NBI)の併用により飛躍的に進歩している.

総論 2. 最新の内視鏡機器の解説

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要旨 2006年5月,NBIを搭載した次世代内視鏡システムとしてEVIS LUCERA SPECTRUMを発表した.NBIは粘膜表層の微細血管構築像のコントラストを観察光の分光特性を最適化設計することにより向上させる光学的画像強調機能である.したがって,信号処理や画像処理による従来の画像強調とは,そのコンセプトにおいて大きく異なる.本論文では,NBIの原理,および特徴を,信号処理による画像強調との比較を交えながら解説する.

2) フジノン株式会社 藤田 寛
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要旨 フジノン(株)にて開発した最新の拡大内視鏡および画像処理機能について概説する.拡大内視鏡は,小型高画素スーパーCCDハニカムを採用した電動光学式であり,高画質な最大135倍(19インチモニタ上)の拡大像を提供することが可能である.さらに,操作性や拡大観察時の術者の負担を軽減する付加機能も紹介する.画像処理機能は,千葉大学と共同開発した分光内視鏡FICE(FUJI Intelligent Color Enhancement)を紹介する.本機能は,被写体の分光情報に着目した,内視鏡では全く新しい画像処理機能であり,分光内視鏡の考え方とその原理を概説する.

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要旨 一般的に拡大観察には,(1)通常拡大観察(約80倍)と(2)超・拡大観察(約450倍~1,100倍)がある.咽頭・食道の扁平上皮領域の拡大観察においては,(1)の通常拡大観察(約80倍)では上皮の乳頭内ループ状血管(intra-epithelial papillary capillary loop;IPCL)が観察される.通常光では毛細血管ループそのものが観察され,それがNBIでは褐色に強調される.(2)の超・拡大観察(endocytoscopy,プロトタイプ)では細胞観察が可能である.メチレンブルー染色により扁平上皮の細胞と細胞核が観察される.さらに二重染色(クリスタルバイオレット+メチレンブルー)を行うことにより,HE染色に匹敵する画像も描出される.これらの正常所見の理解は,内視鏡的異型度診断〔「4.拡大内視鏡による分類 1」食道(1)」に後述〕の基本となるので,併せてご理解されたい.

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要旨 100万~135万画素の拡大電子内視鏡(EG-490ZW,EG-590ZW,FTS社製)を用いた胃の拡大観察所見と,組織構築との関連を示した.拡大内視鏡像における胃粘膜の4大要素とは,腺窩上皮とそれに覆われた間質による微小突起(papilla),胃小窩(gastric pit),毛細血管・集合細静脈,腺窩上皮細胞層である.これらの要素に注意すれば,拡大観察と組織構築の関連が推定可能である.しかし拡大観察でみられる毛細血管などの微小血管構造は,切除標本をホルマリン固定した後では観察できない.そこで,内視鏡的切除で得られた切除組織を半固定し水浸下で拡大内視鏡観察を行う方法が役に立つであろう.

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要旨 粘膜表面の微細構造に関して小腸が他の消化管(食道・胃・大腸)と決定的に違うのは,小腸には“絨毛”と呼ばれる高さが0.5mm前後の突起が密に存在していることである.そのために腸腺の開口部(腺窩)は隠されてしまい,それを拡大内視鏡で観察することができない.したがって腺開口の形・配列を基にして作り出される“pit pattern”を,小腸の拡大内視鏡で観察することはできない.それが観察できるとすれば,絨毛が極めて高度に萎縮した場合か絨毛構造を形成しない病変が出現した場合に限られる.小腸の拡大内視鏡においては,個々の“絨毛の外形”のバリエーションを正確に把握することが最も重要である.

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要旨 ピオクタニン染色による拡大内視鏡所見には“pitの所見”と“pit以外の所見”の2つがあり,それぞれが組織所見を反映し,癌の診断に大きな役割を果たしている.すなわち,前者は腺管の異型度を反映し,後者は腺管周囲の間質の状況を反映している.“pitの所見”としてはpit形態の複雑さが対応腺管の異型度の指標となり,複雑な形態のpitほど対応腺管の異型度は高くなる.しかし,pit形態だけではSM massive癌の十分な診断指標にはなりえない.工藤班におけるVI高度不整の定義の中には“pitの所見”とともに,“pit以外の所見”として“pitの輪郭不明瞭”,“stromal areaの染色性低下・消失”の2つの所見があり,これらの所見は癌浸潤に連動する組織浅層の間質変化を反映することで,SM浸潤度を反映し,SM massive癌の総合的な診断に寄与すると考えられた.

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要旨 内視鏡的ないし外科的に切除された標本を,ホルマリン固定後に塩酸消化法にて単離してpit patternに対応する腺管の三次元構築を検討した.I型pit patternに対応する正常腺管は,表面平滑な試験管状であり分枝や結節は認めなかった.II型pit patternに対応する過形成腺管は,腺頸部で広く腺底部で細くなるような逆三角形や,腺底部から裂開するような分枝状であるが表面平滑で結節は認めなかった.IIIL型pit patternに対応する腫瘍腺管は,逆三角形ないし舌状であり,表面はI型やII型の対応腺管に比し粗ぞうで,小結節や切れ込みを伴う腺管も認めた.IIIs型pit patternに対応する腫瘍腺管は,表面はI型やII型の対応腺管に比しやや粗であるが分枝や結節のない単一な腺管で,腺底部(粘膜筋板に接する位置)で先細りし屈曲していた.IV型pit patternに対応する腫瘍腺管は,ここに提示した分枝を伴う長く伸びた腺口形態を反映して,結節を多く伴う表面粗ぞうな腺管であった.V型pit patternに対応する腺管は,統一性を欠く様々な構造を呈する,“奇怪な”形態の腺管の集合から成っていた.

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要旨 咽頭・食道の扁平上皮領域において平坦な“ヨード不染”あるいは“NBI brown spot”を呈する小病変に対して,治療(EMR/ESD)を行うか,はたまた経過観察を行うか,を内視鏡的に判断することは臨床上不可欠である.現在,治療前の段階で,拡大内視鏡や超・拡大内視鏡による内視鏡的異型度診断(endoscopic diagnosis of tissue atypia;EA)が可能となりつつある.扁平上皮領域における通常の拡大内視鏡観察(約80倍)においては,微小血管パターン(IPCLパターン分類)を指標として治療適応を決定している.IPCLパターン分類は,組織の構造異型を反映していると考えられ,IPCL type IIIは経過観察とし,IPCL type IV,VはEMR/ESDによる治療へと進んでいる.一方,将来への展望として,超・拡大内視鏡(endocytoscopy)(プロトタイプ)(450~1,100倍)による,細胞や核の観察がある.これは,細胞異型をも捉えることができるもので,ECA(endocytoscopic diagnosis of tissue atypia)として5段階評価を行っている.ECA-3はフォローアップとして,ECA-4,5はEMR/ESDによる治療を行っている.現段階では,切除標本において最終的な病理診断を仰ぎ,治療前の内視鏡的異型度診断を病理組織像と対比検討していくことが重要であると考えている.

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要旨 食道病変の微細血管分類は,血管形態から病理組織像を推定し,良悪性鑑別診断と深達度診断を可能にした分類である.微細血管パターンは大きく4つに分類される.type1は細く直線的な乳頭内血管が観察されるもので異型の乏しい上皮,type2は乳頭内血管の伸長や血管径の拡張はあるが,構造が保たれるもので炎症性変化でみられる.type3は配列が不揃いで口径不同な糸くず状や潰れた赤丸状血管で,m1・m2癌に特徴的な血管である.type4は乳頭から逸脱した多重状(ML),不整樹枝状(IB),網状(R)の血管でm2以深癌で出現する.type4血管で囲まれたavascular area(AVA)およびSSIV(surrounded area with stretched irregular vessels)の大きさから深達度診断が可能で,AVAを形成しないtype4R血管から成るnon-AVAは低分化型癌でみられる.

2) 胃 (1)pit pattern 分類 榊 信廣
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要旨 胃粘膜表面を拡大観察すると胃腺口(胃小窩)と被蓋上皮で形成された pit pattern が観察される.拡大内視鏡観察された胃粘膜の pit pattern は点と線で構成され,萎縮性胃炎の影響や粘膜の破壊と再生によって様々な形態を示す.1970年代に拡大ファイバースコープを用いて pit pattern を観察した筆者らは,胃小窩の形状から A(点状陥凹),B(短線状),C(縞状),D(顆粒状)に複合型 AB, BC, CD を加えた胃粘膜微細模様の拡大内視鏡分類を作った.一方,C と D に不整模様(i)の亜分類を加えて癌病変を表現した.2000年代の電子内視鏡の時代になって,胃粘膜の pit pattern を分類する多くの試みが始まっているが,筆者らの ABCD 分類はその基本となると考える.

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要旨 微小血管と粘膜微細模様の異常を認識することで表在性胃腫瘍のより正確な内視鏡診断が可能であり,real time の optical biopsy が可能となってきた.表面陥凹型胃癌の異常微小血管は網目状(network)pattern と縮緬状(corkscrew)pattern に大別でき,各々分化型腺癌と低分化型腺癌にほぼ対応することから,癌存在診断と同時に組織型予測ができる.表面平坦型胃癌や隆起・陥凹型胃癌の辺縁平坦部では粘膜構造内異常血管(intrastractural irregular vessel ; ISIV)がみられる.ISIV は類円形もしくは乳頭状粘膜模様(構造)に内包されるように存在し,口径不同・拡張・形状不均一といった異常形態を呈する微小血管である.表面隆起型胃癌では異常な微小血管は必ずしも出現しないが,粘膜模様の消失・不整化した局面に網目状の異常血管や辺縁部に ISIV がみられる.このように,胃癌肉眼型に応じた系統的な微小血管異常を念頭に置くことで,より正確な胃癌拡大内視鏡診断が可能となる.

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要旨 pit pattern は I,II,IIIs,IIIL,IV,V型の6型に分類され,病理組織や癌の深達度診断とよく相関することより,診断や治療方針決定に有用である.I型は正常粘膜である.II型は大型の星芒状 pit で,過形成性ポリープである.IIIs は小型の類円形 pit で,陥凹型病変に特徴的な pattern である.IIIL は線状の細長い pit で,隆起型や表面隆起型の腺腫に最も多く認められ,IV型は分枝を伴うもの,脳回転状や絨毛状のものを指し,管状絨毛状腺腫や絨毛状腺腫に多い.厚生労働省の班会議において V型 pit pattern の亜分類が改訂された.VN 型 pit pattern および VI 高度不整を sm massive 癌の指標と仮定した場合,高い正診率が得られた.

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要旨 われわれの用いている拡大内視鏡分類は以下のごとくである.活動期粘膜は (1) サンゴ礁状粘膜(coral reef-like appearance),(2) 微小な上皮欠損(minute defects of epithelia ; MDE),(3) 小黄色斑(small yellowish spots ; SYS)に分類され,緩解期粘膜は,(4) 小腸絨毛様粘膜(villous-like appearance),(5) 規則的な腺管配列(regularly arranged crypt opening),とに分類される.特に,微小な上皮欠損と小腸絨毛様粘膜の鑑別は通常内視鏡のみでは困難であり,拡大内視鏡観察が必要である.

総論 5. 拡大観察のコツ

1) 咽頭 蓮池 典明 , 小野 裕之
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要旨 近年,中下咽頭領域の早期診断・治療が注目されている.従来は、進行癌で発見されることが多く,予後の悪い癌種とされていたが,消化器内視鏡診断技術の進歩,高悪性度群の整理により,早期診断が可能となりつつある.今後は,機能温存を目指した,さらなる診断学の進歩が期待されている.本稿では,それらの診断技術の重要な1つである拡大内視鏡診断のコツについて,解説する.

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要旨 食道は管腔が狭く,心拍動や呼吸性移動の影響を強く受ける.安定した状況で短時間に手際よく拡大観察するためには様々なコツがある.先端フードの装着は不可欠であるが,病変に押し付けたまま次の視野に移ったり,病変内で吸引したりするのは禁忌である.拡大率を先に決めたうえで,スコープの位置を細かく調節して焦点を合わせる.まずは中拡大程度で病変全体を観察し,気になる血管変化が捉えられたら,さらに拡大率を上げて観察する.強拡大ではトランペットに軽くタッチして送気し,病変とレンズとの間を取るようにする.病変の大きさの計測には,拡大時に観察される範囲をあらかじめ確認しておく必要がある.唾液を飲み込まないようにすることや規則的に呼吸をするなど,被検者の協力も欠かせない.

3) 胃 仲吉 隆 , 貝瀬 満 , 田尻 久雄
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要旨 拡大内視鏡検査は,微小病変や側方進展範囲診断が困難な症例に有用である.本稿では,筆者らが拡大内視鏡検査を行ううえで日常注意していることを中心に,拡大観察を前提とした通常観察のコツと拡大観察のコツを解説し,拡大観察が有用と考えられた症例を提示する.拡大観察の実際は,通常観察において色調の変化・凹凸の変化を境界のある領域として捉え,同境界を拡大観察で詳細に観察したのち,同領域の血管パターン・表面微細構造を観察し,質的診断を行う.この際,拡大観察に固執してしまい,同時多発癌を見落とすことがないように十分な通常観察も必要である.

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要旨 近年ではズーム式拡大内視鏡の登場により,通常観察から瞬時に拡大観察(80倍)することが容易となり,鮮明な画像が得られるようになった.十二指腸や小腸の拡大観察では絨毛形態の変化に注目することが重要である.そのためには健常人における絨毛形態を理解することが不可欠である.ことに絨毛の萎縮や消失,胃型上皮化生の出現に注目すべきと考えられる.さらに NBI(narrow band imaging ; 狭帯域光観察)の導入により従来からの粘膜表面構造に加え粘膜表層の毛細血管を明瞭に観察することが可能となり,新たな知見の集積が期待される.

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要旨 日常臨床の場で拡大内視鏡観察・撮影を良好な条件下で行うための手順と良い写真撮影を行う工夫および色素の使い分けなどについて症例の提示も含めて解説をした.すなわち,まず病変の洗浄から始まり,通常観察では病変全体像や病変周囲健常粘膜の性状の把握が大切である.次に行う色素観察では腺管開口部内に色素液を貯留させて腺管の開口部形態(pit pattern)を診断するコントラスト法(IIIL 型や IV型 pit pattern を示す隆起型や表面隆起型病変の腫瘍か非腫瘍かの質的診断に最適)と腺管開口部は染色されず不染部として描出され,この不染部の形態を観察し pit pattern 診断を行う染色法(コントラスト法で観察が困難な IIIs 型や V型 pit pattern を明瞭に描出させることができる)の使い分けが大切である.染色法(クリスタルバイオレット染色下)の拡大観察では,特に通常・色素(インジゴカルミン撒布)内視鏡観察にて SM 深部浸潤癌を疑う部分(領域性)の正確な pit pattern 診断がその病変の治療方針決定に重要となるため,その領域性全体の pit pattern を把握できる弱~中拡大像をよく観察・撮影し,内視鏡像・実体顕微鏡像・病理組織像との一対一対応ができるような内視鏡観察・撮影をするためのコツについて解説をした.

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要旨 これまで咽頭領域の癌は,自覚症状を伴う進行癌で発見されることがほとんどであり,消化器内視鏡医にとっても,咽頭領域は他科領域という認識から十分な観察をしてこなかった領域である.最近になり,咽頭領域の癌の高危険度群が明らかになったことに加え narrow band imaging(NBI)による拡大観察がこの領域の表在性の癌の発見に有用であることが報告され,消化器内視鏡医が咽頭領域を観察するようになったことで咽頭領域の表在癌が多く報告されるようになった.咽頭領域の表在癌の内視鏡的特徴は,食道癌と同様,不規則に蛇行・延長する微細血管構造の密な増生と領域性を有する病変部の色調変化である.一方,NBI 拡大観察という新しい診断法の出現で癌との鑑別が必要な病変も多数見つかるようになり,その鑑別診断も整理する必要性が出てきた.例えば,乳頭腫,炎症性変化および錯角化などの非腫瘍性の病変では,腫瘍性病変と比較すると明らかに異なった pattern を示す.本稿では,現時点でわかっている咽頭領域の良悪性病変の鑑別診断を整理し,今後の診療に役立つことを期待したい.

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要旨 従来,通常観察とヨード染色による食道内視鏡検査で早期食道癌の拾い上げ診断が行われてきた.近年,拡大内視鏡の普及により食道疾患の質的診断にも応用されている.食道疾患を拡大観察することにより良悪性の鑑別も可能になってきた.ヨード染色で初めて発見される平坦な不染部,逆流性食道炎に伴う食道胃接合部領域の隆起性変化,Barrett 食道における粘膜面の変化の診断などが対象となる.治療が難しいとされる食道癌も内視鏡的治療の進歩により大きく変化している.ゆえに,食道疾患の良悪性を鑑別しての早期診断は臨床上,極めて重要である.

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要旨 食道表在癌では,病変の肉眼所見と深達度,深達度と脈管侵襲・リンパ節転移頻度の間に密接な関係がある.深達度診断の目標は,(1) 局所治療の適応である T1a-EP~T1a-LPM 癌,(2)10% 程度にリンパ節転移を認め,局所治療の相対的適応とされる T1a-MM・SM1癌,(3)30~50% にリンパ節転移を認め,リンパ節郭清を含めた外科治療が標準治療となる SM2~3癌の3群に鑑別することである.内視鏡所見は,深達度が浅いほど凹凸は軽微であり,深達度が深くなるにつれ凹凸が明瞭になる.表在隆起型(0-I型)と表在陥凹型(0-III型)は粘膜下層癌,表面平坦型(0-II型)は粘膜癌の特徴を表現している.表面平坦型(0-II型)の中で0-IIa 型,0-IIb 型の大部分は粘膜癌であるが,0-IIc 型は,T1a-EP~SM3までの症例が含まれる.深達度診断のための観察ポイントは,(1) 病変内および病変周囲の凹凸の程度,(2) 伸展による病変の形態変化,(3) 病変内への縦ひだの入り方,(4) 病変内への畳目模様(輪状ひだ)の入り方,(5) 蠕動による病変の動き,(6) 拡大観察による表層の血管模様,(7) 二重染色の染色所見などである.拡大観察では,微細血管パターンを観察し,配列の乱れや口径不同を示す血管か,あるいは,乳頭から逸脱した多重状,不整樹枝状,網状の血管変化がみられるか,また,T1a-LPM 以深の癌では,肥厚した血管に乏しい領域(avasculararea ; AVA)を取り囲む変化がみられ,AVA の大きさからも深達度が分類されている.粘膜面に変化を及ぼす病変であれば,内視鏡で診断することが可能であるが,正常構造を破壊しない浸潤や表面を再生上皮が覆う場合,あるいは,表面の浅い癌と連続性がない浸潤部分を有する癌の場合は診断困難である.

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要旨 発癌母地として重要視される Barrett 粘膜・食道内の特殊腸上皮化生(specialized intestinal metaplasia ; SIM)の内視鏡診断における NBI(narrow band imaging)拡大観察の有用性について検討した.58例の Barrett 粘膜・食道211か所の NBI 拡大内視鏡像と組織像とを対比検討した.微細粘膜模様(fine mucosal pattern ; FMP)・毛細血管像(capillary pattern ; CP)を,それぞれ4種類(FMP-1~4,CP-I~IV)に分類した.各 FMP,CP において SIM 存在率および SIM 診断の accuracy,odds ratio について検討した結果,最も高値を示したのは,FMP-4(cerebriform)と CP-IV(ivy-like or DNA-spiral-like)であった.CP-IV は FMP-4に比し,いずれの検討においても,より高い値を示した.統計学的解析では,FMP のみより FMP+CP による SIM 診断のほうが,有意にその精度が高かった.明瞭に CP を描出しえる NBI 拡大内視鏡は,より的確な SIM の拾い上げに有用であることが示唆された.

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要旨 欧米では食道癌の過半数は Barrett 食道癌だが大部分が進行癌であるため,その初期像は明らかにされていない.本稿では自験例をもとに,Barrett 表在癌の拡大内視鏡所見を解説した.Barrett 食道を拡大観察する際に注目すべきは表面構造と血管構造である.表面構造の観察には通常観察のみならずインジゴカルミン撒布や酢酸撒布が有用である.表面構造は pit と villi に大別され,癌部では pit や villi の高密度化,不整化,融合所見が認められる.血管構造の観察には NBI が有用であり,走行異常,血管長の伸張,口径不同,不整分岐,network pattern の有無が鑑別のポイントとなる.

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要旨 H. pylori 非感染胃体部粘膜拡大像は集合細静脈,真性毛細血管のネットワーク,ピンホール状 pit から形成されている(B-0型).感染粘膜では集合細静脈は見えず,毛細血管のネットワークと円形の pit から成る B-1型,白濁した pit と胃小溝から成る B-2型,開大した白濁 pit と周囲の微小血管から成る B-3型,さらに萎縮が進展すると管状・うろこ状の A-1型となり,腸上皮化生が高率に発生する粘膜では絨毛状・顆粒状となる A-2型に分類された.この分類を A-B 分類とした.この構造変化は腺開口部(pit)の変化を反映している.すなわち炎症を伴うと小円形の腺開口部から開大した腺開口部・胃小溝へと変化し,萎縮が高度となると胃小溝は連続して管状・うろこ状の粘膜となり,さらに腸上皮化生を合併すると連続した胃小溝はさらに深い溝となって絨毛状・顆粒状と変化する.

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要旨 胃潰瘍性病変の良悪性鑑別には潰瘍の形や潰瘍辺縁部の表面構造の観察が重要だが,時に鑑別困難なことも多かった.一方,拡大内視鏡を用いると両者の鑑別診断に有用な多くの情報が得られる.拡大観察時のポイントは血管構造と表面構造である.血管構造では口径不同,走行不整が重要な観察項目であり,表面構造では pit pattern および villi pattern の観察が重要である.本稿では具体例を挙げ,潰瘍性病変の拡大内視鏡所見と良悪性鑑別のコツに関して述べた.

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要旨 隆起型早期胃癌36例,胃腺腫34例,腺腫内癌14例に対し,NBI 併用拡大内視鏡を施行し,表面血管,表面構造について検討した.血管パターンは網目,楕円,不規則血管,表面構造は敷石状構造,管状構造,小型敷石状構造,大小不同敷石構造に渦巻血管を伴うものに分けられた.隆起型早期胃癌の高分化腺癌では網目血管36%,敷石状構造50%,管状構造6% にみられ,敷石状構造に代表される表面構造が主体であった.胃腺腫では敷石状構造38%,管状構造29% であり,網目血管を示すものは21% であった.腺腫内癌では網目血管36%,敷石状構造50% であったが 副所見も含めると79% に網目構造がみられた.腺腫内癌の術前診断に NBI 併用拡大観察を施行し,網目血管の所見が有用であると考えられた.

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要旨 拡大内視鏡で観察される平坦・陥凹型早期胃癌の胃粘膜微細模様(fine gastric mucosal pattern ; FGMP)は緻密化や大型化を呈する不規則な D pattern が主体を成し,これに模様がほとんど観察されない N pattern を伴うこともある.N pattern は癌のみに観察され,腺腫との鑑別に有用である.また,拡大観察で初めて観察される病変部の微細不規則血管も癌で高頻度(97.5%)に観察される所見であり,出現頻度は低い(14.8%)が癌に特異的に観察される通常観察でも観察可能な悪性新生血管とともに良・悪性鑑別診断に有用な拡大内視鏡所見である.

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要旨 胃癌はその組織型により発育進展の様相や生物学的悪性度が異なるため,検査や治療法の選択を行ううえで組織型診断は非常に重要である.組織型診断を行ううえで,通常内視鏡観察による肉眼型や色調が重要だが,通常内視鏡観察のみでは組織型の判断を誤ることもある.ズーム式拡大内視鏡や NBI が開発され,微細な表面構造や血管構造の観察が可能となった.表面構造と微細血管パターンの変化は,腫瘍・非腫瘍の鑑別や腫瘍の進展範囲診断に加え,組織型診断の一助となる.高~中分化型腺癌では,表面構造として密に増生した pit pattern や絨毛様構造を呈し,微細血管パターンとして network を形成する口径不同,走行不整な血管増生を認める.分化度が悪くなるに従い構造の不整が増し network は崩れてくる.一方,低分化型腺癌では,表面構造は無構造を呈し,微細血管パターンは network を形成せず細かく縮れた異常血管が増生する.ただし,拡大内視鏡による所見は,肉眼型や表面びらんの有無により異なるため,通常内視鏡診断を含めた総合的診断が重要となる.

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要旨 われわれは,微小血管構築像を指標とした早期分化型胃癌の境界診断における拡大内視鏡の有用性を報告してきた.その後,narrow band imaging(NBI)など新しい手法が開発され,新しい知見が集積されてきた.本論文では,拡大内視鏡による境界診断の臨床応用例を呈示し,新しい臨床応用について論述する.要約すると,現在までに報告した知見に加えて,境界診断における新しい応用は,(1) 副病変の発見,(2) 白色光拡大観察での境界診断困難例に対する NBI 併用拡大観察による粘膜微小血管構築像や粘膜表面微細構造の有用性,(3) 生検でのみ存在診断が可能な早期胃癌(occult cancer)の診断であった.特に,Uedo らが報告した NBI でのみ観察可能な light blue crest は,境界診断への新しい有用な指標と考えられた.

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要旨 近年,通常観察用スコープと同等の操作性・CCD を有する拡大電子内視鏡が開発され,上部消化管領域でも拡大内視鏡が普及しつつある.拡大内視鏡の胃癌に対する質的診断,境界診断の有用性は多数報告されているが,深達度診断に関してはいまだ一定の見解は得られていない.そこで今回,胃癌の拡大内視鏡所見と深達度の関係を組織型別に検討した.分化型癌の場合,小さな顆粒構造を示す small regular pattern では M 癌が多く,構造が破壊された lack of visible structure では SM 癌が多かった.また微小血管所見では,拡張した不整な血管像がみられた場合は SM 癌が多かった.これらの組み合わせにより,深達度診断の一助となる可能性が示唆された.

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要旨 十二指腸における拡大内視鏡観察は最近では容易に可能となった.しかしながらその臨床的有用性はいまだに確立されていない.現時点で考えられる拡大観察の意義として以下のものが挙げられる.(1) 腫瘍(上皮性・非上皮性腫瘍)と非腫瘍の鑑別,(2) 腫瘍性病変 : 良悪性の鑑別(腺腫と癌の鑑別)や質的診断,(3) ESD など内視鏡治療を視野に入れた診断,(4) 十二指腸潰瘍 : Helicobacter pylori 感染との関連性からの病態解明と治療指針への応用,(5) びまん性炎症性疾患 : 十二指腸炎や Crohn 病などの病態解明.今後はより臨床的有用性にポイントを絞った多くの知見を集積することが急務である.

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要旨 近年,narrow band imaging(NBI)併用拡大内視鏡の開発によって,消化管粘膜の微小表面構造および微小血管の観察が可能となった.Vater 乳頭部の腺腫と腺癌の鑑別において粘膜表面の無構造域や屈曲,拡張,口径不同を伴う異常血管の出現が腺癌に多く認められた.特に異常血管の存在を腺癌と定義した場合の Vater 乳頭部腺癌を検出する感度,特異度は内視鏡下生検で50%,100%,NBI 併用拡大内視鏡で83.4%,100% であった.NBI 併用拡大内視鏡は生検では診断困難な腺腫内癌を検出しうる可能性がある.

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要旨 従来観察が困難であった小腸も,最近のダブルバルーン式小腸内視鏡(以下 DBE)やカプセル内視鏡(以下 CE)の開発により,ルーチン検査において全小腸の観察が可能となった.しかし,深部小腸に挿入可能な内視鏡では,現在市販モデルで光学式拡大機能を有したものはなく,拡大機能を有した大腸内視鏡の流用や,電子ズーム機能,水浸観察などの工夫を用いる必要がある.小腸粘膜の最大の特徴は,その絨毛構造と発達したリンパ装置である.これらはそれぞれ消化吸収と免疫という小腸の大きな2つの機能を担っている.この2つは,小腸を内視鏡検査する際に重要な観察ポイントである.特に小腸粘膜の拡大観察では,こうした絨毛の浮腫,充血,萎縮,欠損等の所見と,Peyer 板との位置関係,リンパ濾胞の腫大,増生等に注意して観察を進めていく.これらの所見により,腫瘍性病変における癌部と非癌部,炎症性疾患における descrete ulcer か否かの鑑別や,絨毛萎縮を特徴とする Celiac 病やアミロイドーシス,GVHD,小腸移植片拒絶反応などの疾患の診断が可能となる.

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要旨 大腸拡大内視鏡診断(pit pattern 診断)は,病変の質的診断(腫瘍・非腫瘍性の鑑別)において非常に有用である.大腸206病変を対象とした prospective study の結果から,質的診断における正診率は,通常観察・色素観察・拡大内視鏡観察それぞれにおいて84.0% ・89.3% ・95.6% であり,通常観察に拡大観察を加えることで,5~10% の質的診断能の上乗せ効果が見込まれる.また,retrospective な解析から,拡大内視鏡の導入により,非腫瘍性病変に対する内視鏡摘除件数は約1/4に抑えられる可能性があり,医療経済効果も十分に期待できる.

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要旨 拡大内視鏡による大腸腫瘍の腺管開口部の形態観察1)2)は,腫瘍表層部の組織性状を反映していると考えられ,術前診断に極めて重要な手段と考えられる3)4).腺口形態を拡大観察すると,同じ III型でも腺管形態から様々な組織異型度を呈していることが診断される.すなわち I型と併存するものや辺縁部で過形成を来し,開口部が拡大しているもの,密在するものまで多種多様である.また III型に V型が一定の領域をもって存在し,異型が高くなっている病変も散見される.このような腺管開口部を見た際に,病理組織学的にどのような組織性状を診断するか,症例呈示を行い概説する.

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要旨 hyperplastic polyp(HYP)と serrated adenoma(SA),tubular adenoma は内視鏡治療の有無を判断する意味で鑑別診断が重要である.HYP の拡大観察は鶴田・工藤分類では II型 pit pattern を呈し tubular adenoma との鑑別は容易である.SA は HYP 類似の serrated hyper(SH)と,絨毛状構造から成る serrated villous(SV)とに分けられ pit pattern は IIIH 型 pit,IVH 型 pit に分類される.両者とも腺管開口部に "鋸の歯" のようなギザギザを認めることが特徴である.

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要旨 形態的に多彩な病変群である側方発育型腫瘍(laterally spreading tumor ; LST)の表面構造は,形態学的亜分類ごとに特徴が存在し,それぞれの臨床病理学的特徴が反映されていると考えられる.一方,拡大観察による表面構造の観察のみでは診断が及ばない病変も存在する.このような生物学的特徴を考慮したうえで,正確な質的および深達度診断を行い,慎重な治療選択を行うべきである.

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要旨 隆起型早期大腸癌は表面構造を保ったまま深部浸潤することも多いため,表面型と比較して深達度診断に悩む症例も少なくない.したがって,病変表層の腺管構築を観察する拡大内視鏡による pit pattern 診断は表面型に比べてより慎重に行う必要がある.今回,われわれが報告してきた VI型細分類を用いて肉眼型別に隆起型早期大腸癌の pit pattern と深達度診断の関係を検討し,その結果をもとに1,000μm 以上の深達度診断能を検討した.(1) Isp,Is ともに,V型以外,VI型,VN 型になるにつれ1,000μm 以上の病変が明らかに増加し,輪郭明瞭な VI型と輪郭不明瞭な VI型の間に有意差を認めた.(2) Isp の全体正診率は93.3%,1,000μm 以上の診断能は感度83.3%,特異度100%,Is の全体正診率は89.9%,1,000μm 以上の診断能は感度79.2%,特異度95.6% であった.Isp,Is ともに特異度が高く,深達度を浅読みする傾向がみられた.

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要旨 表面型早期大腸癌における拡大内視鏡診断の意義を明らかにするために,(1) 拡大内視鏡診断能の隆起型病変との比較検討,(2) SM 深部浸潤を反映する通常内視鏡所見(8因子)との比較検討を行った.早期大腸癌における拡大内視鏡を用いた深達度診断は,隆起型よりも表面型において優れた正診が得られた.また,多変量解析にて,拡大内視鏡診断 VI(invasive pattern) : Odds 比209.79)と通常内視鏡所見の緊満感(Odds 比8.61)が SM 深部浸潤と相関する独立因子として抽出された.以上から,表面型早期大腸癌に対する拡大内視鏡による深達度診断は有用であり,これを普及することが,適格な治療に結びつくものと考える.

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要旨 大きい大腸腫瘍の内視鏡切除の治療選択として,病変内の悪性度の高い部位から計画的に切除を行う計画的分割切除がある.拡大内視鏡で V型 pit pattern と診断された161病変のうち,1,000μm 以深の SM 癌は68.6% が VI 高度不整または VN 型 pit pattern であった.2cm 以上の腺腫を伴う早期大腸癌50病変の検討で,癌部に一致して V型 pit pattern が判定できたのは,32病変(64%)であった.拡大内視鏡は,pit pattern の違いから病変全体の悪性度の違いを診断し,悪性度が高い部位より計画的に内視鏡切除するのに有用であると考えられる.また,内視鏡形態上では顆粒型の LST が mono-focal invasion の病変が比較的多いため,結節部や陥凹部に注意しながら,計画的に分割切除を行うのによい適応と思われる.さらに,EMR 後の遺残再発病変の検討で,再発病変の平均径6.8mm で IIa 型が多く,拡大内視鏡で観察することで,その病変の辺縁の境界や再発の状態が明瞭となるため,的確な治療につながると考えられる.

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要旨 拡大内視鏡による微細構造の観察は,潰瘍性大腸炎の組織学的活動性の評価および再燃の予測に有用である.特に,通常観察で Matts' grade2相当の微細な変化のみの病変における活動性評価には,拡大観察が極めて有用であり,微小な上皮欠損を認めるものでは活動期病変,小腸絨毛様の粘膜を認めるものでは,緩解期病変と診断することができる.また,治療後の効果判定においても,上記の拡大内視鏡所見を目安とすることで,緩解維持期間の予測が可能である.さらに潰瘍性大腸炎合併 dysplasia の診断にも拡大内視鏡を応用する試みがなされており,今後,炎症性腸疾患のサーベイランスにおける,拡大観察の有用性が明らかになっていくであろう.

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要旨 colitic cancer と dysplasia における pit pattern の特徴をまとめると,colitic cancer において認められる pit pattern は VI型が大半(80% 以上)を占めた.dysplasia では異型度(LGD,HGD)に関係なく,すべての病変に IV型(100%)を認め,IIIL 型と VI型は同率(約42%)に認められた.また,dysplasia の多く(75%)は IIIL 型,IV型,VI型など異なる pit pattern が混在していた.今回の検討では,colitic cancer,dysplasia に I型や II型の pit pattern は認めなかった.また,UC 関連性腫瘍(dysplasia,colitic cancer)と散発性腫瘍(腺腫,癌)の鑑別に関しては,炎症をベースにした UC 関連性腫瘍と散発性腫瘍とでは同じ IIIL 型,IV型,VI型腫瘍性 pit pattern でも微妙に異なり,UC 関連性腫瘍では pit 間の開大や pit 分布の不規則さが目立つ所見を呈する.しかし,両病変の pit pattern が全く鑑別できない場合も往々にしてあり,今後,症例のさらなる集積・検討が必要と考えられる.

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要旨 潰瘍性大腸炎(UC)の長期経過例では,dysplasia や colitic cancer が発生する危険性が高まることから,大腸内視鏡による定期的なサーベイランスが必要である.通常内視鏡観察では,限局した隆起や領域のある発赤,粘膜の凹凸不整などに着目することが早期発見に有効である.色素内視鏡観察により異常所見を認めた場合は,拡大内視鏡による pit pattern の評価を行う.当院では13例の dysplasia と5例の colitic cancer に拡大内視鏡診断を行ったが,IIIL 型や IV型の腫瘍性 pit pattern を認める場合が多かった.UC に伴う炎症性変化や sporadic adenoma との鑑別診断についてはさらなる検討が必要であるが,拡大内視鏡観察は dysplasia や colitic cancer の質的診断に有力な情報をもたらし,効率的な target biopsy を可能にする検査法として活用されている.

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要旨 最近の内視鏡機器の進歩により大腸腫瘍を拡大観察すると微細表面構造とともに微小血管も観察することができる.腫瘍表面の血管は正常粘膜表面に観察される毛細血管網よりも太く,その観察は拡大内視鏡を用いれば容易であり,良性から悪性に移行するに従って口径不同を呈し,屈曲蛇行し,不規則な走行をする形状不均一な血管が認められる.このうち,特に太く,長く,屈曲蛇行し,スムースな口径不同を有する血管を long irregular vessel(LIV)と命名し,その臨床的意義を検討すると,LIV 所見を有する sm 癌は有しない sm 癌に比べリンパ節転移予知因子と有意な相関があり,リンパ節転移の可能性のある,より悪性度の高い癌を示していることが判明した.LIV がどのように見えるかについて解説したが,今後大腸でも血管所見に注目して観察を行うことが重要と考えられる.

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要旨 われわれは1999年より21世紀の内視鏡開発に取り組み,狭帯化 filter を搭載した NBI system を開発した.大腸病変の表面に観察される網目状の茶色い血管 "meshed capillary vessel"(MC vessel)が大腸病変の腫瘍・非腫瘍の鑑別に有用な所見であると報告してきた.目的 : NBI 観察での MC vessel の腫瘍・非腫瘍の鑑別における有用性を検討する.方法 : prospective study.eligibility criteria : colonoscopy を施行した患者.exclusion criteria : polyp(-),invasive cancer,polyp>10mm,他院で biopsy(+),HNPCC,UC,FAP,polyp 未回収患者.病変は MC vessel の有無により MC(+)/(-)に,病理組織結果は腫瘍・非腫瘍に分類した.病理結果を正診とし,MC(+)/(-)と病理結果において腫瘍を腫瘍と診断する accuracy rate 等を解析した.結果 : criteria を満たした92人,150病変を対象とした.NBI 観察にて MC(+)110例,MC(-)40例で,病理結果は腫瘍111例,非腫瘍39例で,accuracy rate :95.3%,sensitivity :96.4%,specificity :92.3% であった.結語 : MC vessel は大腸腫瘍・非腫瘍の鑑別に有用で,NBI は色素を使用せず鑑別ができ,スクリーニングの効率化に寄与すると考えられる.

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要旨 大腸の過形成病変,腺腫,早期癌を対象に,narrow band imaging(NBI)拡大観察による質的診断(組織型,深達度)能について概説した.拡大観察に NBI を併用することで,pit 間の介在粘膜下の微小血管の視認を介して,腫瘍・非腫瘍の鑑別が可能であった.さらに,NBI 拡大観察で描出される腫瘍表層の微小血管構築(不整度や血管径/分布パターン)は腫瘍の異型度や深達度と有意に関連しており,特に SM 深部浸潤癌では不整で太さ/分布パターンの乱れた血管像を呈する病変が多かった.特に,NBI 拡大観察による表層微小血管所見が "高度不整" かつ "混在型" の病変は,全例 SM 浸潤1,000μm 以深浸潤癌であった.以上より,NBI 拡大観察による大腸腫瘍表層の微小血管構築の診断は,その質的診断に有用である.

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要旨 narrow band imaging(NBI)内視鏡は波長を狭帯域化した光源で消化管を観察する特殊光内視鏡検査法であり,ヘモグロビン吸収特性の高い狭帯域の NBI 内視鏡が臨床応用されている.潰瘍性大腸炎において,通常内視鏡と併用しながら NBI 観察を行うと,活動期粘膜では腺口開口部や絨毛状粘膜が明瞭に観察され,緩解期粘膜では血管構築の判定が容易となる.後者において,深部血管が不明瞭な部位では明瞭な部位よりも組織学的に上皮障害や炎症細胞浸潤が高度である.一方,NBI 観察と拡大観察を併用すると,活動期粘膜では腺口開口部と絨毛状粘膜が明確に区別できるのに対して,緩解期粘膜の血管は規則的な蜂巣状血管と不規則血管に大別可能となる.潰瘍性大腸炎に合併する腫瘍性病変では大小不同のある不整絨毛状粘膜が観察される.以上のように,拡大 NBI 観察を行うことにより潰瘍性大腸炎の詳細な病態診断が可能となるので,今後が期待される.

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要旨 endo-cytoscopy system は450倍,1,125倍の拡大能を有する軟性鏡で生体染色することでリアルタイムに粘膜表層の細胞を観察することができる.本稿では食道,胃の endo-cytoscopy system での観察の現状について報告し,さらに現在開発中の一体型 endo-cytoscopy について紹介する.実際の観察では生体染色にメチレンブルーを使用する.正常重層扁平上皮の N/C 比が低く,核の染色性,大きさの同等なのに比べ,癌部では細胞密度の増加,核の染色性,大きさの不揃いな核異型が観察された.胃癌の観察では不規則な腺窩構造,細胞配列の極性の乱れ,核の多形性が観察され良悪性の鑑別に有用であると思われる.

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要旨 酢酸法とは,1.5% 酢酸を病変および周囲粘膜に撒布し,通常観察や拡大観察を行う方法である.粘膜表層が一過性に白色化し,表面パターンが詳細に観察可能となる.非常にシンプルなこの手技は,Barrett 食道のみならず,胃や十二指腸・大腸にも行われるようになっている.われわれは,Barrett 食道や胃粘膜の表面パターンを5つに分類している.Type I : 点状 pit. Type II : slit 状 pit. Type III : 脳回様や絨毛様.Type IV : 不整像.Type V : 破壊像.Type IV と V は癌に多いパターンである.この分類は,生検前診断に有用であると考えられた.また,内視鏡治療時の境界診断にも有用である.NBI との併用することで,表面パターンはより強調される.

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要旨 2002年からの厚生労働省がん研究助成金「大腸癌腫瘍性病変における腺口構造の診断学的意義の解明に関する研究」班(工藤班)を通じて,大腸癌の V型 pit pattern は概念の統一化と細分化がなされた.2004年,明らかな無構造領域を有する pit pattern を VN 型,不整腺管構造を有する pit pattern を VI型とした箱根シンポジウムのコンセンサスが得られた.さらに,pit の内腔狭小,辺縁不整,輪郭不明瞭,stromal area の染色性の低下・消失,scratch sign 等の所見を参考にして VI型高度不整は "既存の pit pattern が破壊,荒廃したもの" と定義された.2001年4月から2006年4月までの当院における sm 癌114病変の pit pattern と粘膜筋板,desmoplastic reaction(DR)の検討により VN 型 pit pattern は全例 sm 深部浸潤癌であり,腫瘍表層部の DR を示している所見と考えられた.また VI 高度不整の所見である内腔狭小や辺縁不整は sm 深部浸潤癌の指標の1つと言える.V型 pit patten の分類により大腸腫瘍の内視鏡診断はよりいっそう簡便になり,大腸 pit pattern 診断は観察から治療方法が直結した診断学になった.

コラム

洗浄のコツ―食道 友利 彰寿
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 食道壁に粘液が付着していると,拡大観察はもちろん通常観察の際にも支障を来す.粘膜面の観察をする上で,粘液の除去は非常に重要である.

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 拡大内視鏡は,拡大率を上げると被写界深度が狭くなるため,焦点が合わせにくくなる.そのためまず弱拡大から観察を行い,必要に応じて強拡大にすることがコツである.

 強拡大で観察する際は,適切な距離を確保する必要がある.そのためには先端フードの使用が必須であるが,フードで病変をこすると,出血し拡大観察ができなくなる.したがって愛護的な操作が必要であると同時に柔らかい先端フード(オリンパス 先端フード MB-162: Fig.1a, b)を選択することが重要である.

 また先端フードは病変を正面視する際にも有用である.

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 粘液を十分洗浄除去し観察することは通常内視鏡検査において病変の存在診断,質的診断や範囲診断などに有用である(Fig.1).また,色素内視鏡検査(Fig.2),拡大内視鏡検査,超音波内視鏡検査(Fig.3)などの精検時においても粘液をよく洗浄することで良好な画像が得られ,より正確な診断に寄与する.

 胃内の洗浄には内視鏡前処置として内視鏡施行前に患者に薬剤を内服してもらう方法と内視鏡施行時に直視下に水洗する方法を併用するとよい.

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 粘液が残存したままインジゴカルミンを撒布すると,粘液と色素が混じり,かえって不鮮明な画像になることがある.そのため,色素を撒布する前の粘液除去は,拡大観察を行ううえで重要な作業である.当院ではこの粘液を除去する目的で,前処置として pronase2万単位を患者に服用させている.検査中も Gascon (R)0.5% 溶液,時に直接 pronase 溶液を用いて付着した粘液を洗浄,除去している.病変から粘液を除去した後に0.1% のインジゴカルミン20ml を内視鏡の鉗子チャンネルから直接病変に撒布する1)

 鮮明な色素拡大内視鏡像を得るコツは,病変をよく洗浄し粘液を十分に除去することに尽きる.ただし,直接病変部に強い圧で洗浄液をかけると出血を来すことがあるので注意を要する.

焦点を合わせるコツ―胃 八尾 建史
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 1. まず,頭の焦点を合わせる

 拡大内視鏡で診断するターゲットが何か,どのような所見を判定することを目的とするのか,そしてそれらの所見を捉えるためには,拡大内視鏡のどの程度の分解能が必要かということをよく理解して拡大内視鏡観察を行う,すなわち,まず頭の焦点を合わせることが必要である.

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 小腸における染色法のコツを挙げてみよう.

 (1) 染色法とコントラスト法の原理的相違を熟知しておく.染色法は色素(メチレンブルー)が粘膜内へ吸収される現象を利用したものである.炎症と上皮性腫瘍に存在する吸収上皮細胞は色素の吸収能が低下しているので,染色法の効果が乏しい(Fig.1,2).これらの病変の存在と範囲を,このような染色効果の違いをもとに診断するのが染色法である.これに拡大内視鏡を併用すれば,絨毛の外形も明瞭に把握できる.コントラスト法は色素の溜まり現象を利用して,粘膜面の凹凸を明瞭化させるものである.これによって病変部の境界や絨毛の外形をより確実に診断できる.

洗浄のコツ―大腸 津田 純郎
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 大腸内視鏡検査では,見落としや誤診の原因となる気泡,粘液,便を取り除いて観察することが基本である.もちろん,病変によっては,そのままの状態で所見を診断すべきものもあるが,多くは,洗浄による綺麗な状態での観察・診断が必要である.

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 1. はじめに

 大腸腫瘍に対する拡大観察は,腫瘍・非腫瘍の鑑別,腫瘍の質的診断や深達度診断に有用であるが1)~3),正確な pit pattern 診断を行うためには,より良い条件で観察することが重要である.最新の電子内視鏡は高画素であるため IIIL 型や IV型などの大きな pit は通常観察のみで診断可能なこともあるが,より詳細な pit pattern 診断には,色素法による拡大観察が必須である.特に,インジゴカルミン撒布によるコントラスト法は,その簡便さから,最も広く日常臨床で行われている.

 本稿では,大腸病変に対するインジゴカルミン撒布による拡大観察のコツについて解説する.

染色法のコツ―大腸 山野 泰穂
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 1. はじめに

 通常内視鏡観察では,病変の凹凸や表面微細構造を視覚的に認識することが困難である.その理由は,ヒトの眼による観察は双眼であるために立体視することが可能であるのに対して,内視鏡では単眼による画像にて微細な変化を捉えられず平面的に見えることにある.この現象を補うものが色素内視鏡である.色素内視鏡には,インジゴカルミンに代表されるコントラスト法,クリスタルバイオレット(crystal violet,通称ピオクタニン),メチレンブルーによる染色法,そしてヨードを用いた反応法がある.

 ここでは大腸におけるクリスタルバイオレットによる染色法のコツについて述べる.

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 通常観察において病変を発見した場合,さらに正確な質的診断のために pit pattern 観察を行う.そのためには,まずスコープをスムーズに操作できる状態で維持することが重要である.スコープ先端が病変に接する直前で保持し,焦点を合わせる操作が要求されるためである.

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 1. はじめに

 拡大観察と同時に写真撮影を行っていかなければならないが,撮影した写真の質が悪いとその後の検討が十分にできなくなり,費やした労力がむだになってしまう.ここでの質の良い写真とは,撮影条件(染色状態など)が良いこと,焦点が合っていること,pit 診断可能な十分な拡大率であることなどである.染色や焦点を合わせるコツに関しては他稿で詳述されるので,ここでは普段われわれが気をつけている撮影時のポイントについて解説する.

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 1987年 Bird1)は大腸発癌剤(アゾキシメタン)処理したマウス大腸に,メチレンブルーに濃染する微小病変を実体顕微鏡下に観察し,aberrant crypt foci(以下 ACF)と命名した.この論文の中で,ACF は (1) 肉眼的には正常に見える,(2) 実体顕微鏡下に観察しうるメチレンブルーに濃染する腺管の集まり,(3) 正常腺管より大きい腺管から成る,と定義されている.(4) として,各腺管の pericryptal space が広いこと,が定義の1つに含まれることがある.ACF は,細胞増殖活性の亢進や K-ras 遺伝子変異が高率に認められることから,動物における大腸腺腫,さらには癌の前病変と考えられている.実際に,イヌの ACF を経時的に観察すると,やがて dysplasia が出現し,癌になることが立証されている.

開業医と拡大内視鏡 多田 正大
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 筆者は消化器科を標榜する開業医である.大病院と異なり診療システムは単純であるから,紹介状のない人でも門前払いはしないし,予約のない飛込み患者であっても,朝食を抜いてきておれば診療の隙間を見つけ出して,その日のうちに検査をして差し上げることを基本にしている.近隣の医院からの検査依頼は多いし,口込みで大勢の新患患者が殺到する.お陰で昼休みも満足にとれずに,診療と検査に明け暮れている.

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欧文目次

編集後記 八尾 隆史
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 この分野はこの数年で目覚ましく進歩しており,現在では消化管の拡大観察はもはや必須となりつつある.本特集号では全消化管における拡大観察の歴史から機器の解説,観察像と組織像の関係などの基礎的事項,実際の診断への応用,さらには手技的なコツまで,初歩的なものから応用編まで幅広く網羅されており,消化管の拡大観察のバイブルと言っても過言ではない.

 これまでは腫瘍性病変の性状診断,深達度診断,範囲同定への応用が一般的であった.本特集号で全消化管の部位別あるいは同じ部位でもそれぞれ疾患別の拡大観察の共通点と相違点について多角的視点から学ぶことができ,それにより腫瘍性病変の拡大観察による診断学のさらなる発展に加え,炎症性疾患を含む様々な病変の診断のみならず病態解明への応用にも期待できそうである.

基本情報

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胃と腸
42巻5号 (2007年4月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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