胃と腸 42巻6号 (2007年5月)

今月の主題 Helicobacter pyloriと胃癌

序説

Helicobacter pyloriと胃癌 渡辺 英伸
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はじめに

 古くより,胃癌の発生に胃炎が密接に関連していることはわかっていた1).そして,活動性慢性胃炎は低分化型腺癌(びまん型癌,未分化型癌)の発生母地となり,萎縮性胃炎および腸上皮化生は高分化型腺癌(腸型癌,分化型癌)の発生母地となることも唱えられていた.1983年,WarrenとMarshallによって発見されたHelicobacter pylori(Hp)が活動性慢性胃炎から腸上皮化生まで一連の変化のほとんどに関与することがわかってから2),"胃炎と胃癌"という研究課題は"Hpと胃癌"という研究課題へ変わってきた.さらに拍車をかけたのがWHO/IARCによる"Hpは胃癌のGroup 1 definite carcinogenである"という認定である.その根拠となったのが後向き研究による疫学的研究成果であった3)

 その後,1998年,Huangらによるmeta-analysisで,胃癌におけるHp感染者のodds比は解析した全研究で1.92,cohort studyで2.24,case-control studyで1.81と高く,Hpが胃癌発生の危険因子であることがいっそう明瞭となってきた4).2000年,Yamagataらの前向き試験では(40歳以上で胃切除歴や胃癌の既往歴がない症例),男性の胃癌発生odds比が2.59で,女性のそれは0.99であったことから,Hpは男性の胃癌発生に有意に相関すると報告した5).1997年,Uemuraらの除菌介入試験では(早期胃癌の内視鏡的治療後に発生する異時性二次癌の発生率を検討.平均観察24か月),除菌群(65例)に二次癌発生がなかったが,非除菌群(67例)ではそれが6例であった.Hpが胃発癌の高危険因子であることがさらに一段と強調されてきた6)

 それでは,Hpがどのような遺伝子学的・免疫学的・生化学的変化を誘導して,胃癌を発生させるのであろうか.スナネズミの実験から得られたHpと胃癌の関係はどのようなことを示唆したのであろうか.さらに,ヒトでHp感染を受けた胃粘膜のうち,どのような肉眼形態や組織所見を有するものが胃癌の高危険度群であろうか.Hpが胃小窩上皮に付着して,胃上皮細胞に種々の変化を与え,癌が形成されるまでの"Correaの胃癌発生仮説"は本当にそのまま受け入れられるのであろうか.

主題

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要旨 Helicobacter pylori(Hp)が胃癌の原因であることについて,疫学研究での知見に加え,動物実験や分子生物学的な研究の知見が加わったことから,この関係は確実である.Hpは胃癌のリスクを20~40倍にする.今後もデータの集積が必要であるが,成人での除菌の効果は胃癌のリスクを1/3にする程度である.除菌に成功しても感染したことのない人に比べ10倍程度リスクが高いことになる.Hpの主な感染時期は小児期である.有効な胃癌予防対策として,小児に接触する機会のある感染者を除菌して,小児への感染をブロックすることを検討すべきである.

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要旨 1979年から2006年までの28年間に外科的切除され当施設に登録された胃癌14,608病変(11,908症例)を対象として,胃癌病理組織像の時代的変遷について検討した.さらに最大径10mm以下の小胃癌480症例524病変を対象に,Helicobacter pylori(H.pylori)陽性率と組織所見について検討を加えた.胃癌頻度は若年者優位に減少し,相対的な低分化型優位癌の減少と分化型優位癌の増加傾向とを認めた.また分化型癌の中でも腸型形質優位癌の相対的な増加傾向を認めた.癌部および周囲粘膜におけるH.pylori陽性率は,分化型優位癌と低分化型優位癌との間に有意差を認めなかった(56.4%vs57.5%).腸型形質優位癌は胃型形質優位癌と比較して,周囲粘膜の腸上皮化生程度が高度でありH.pylori陽性率が低率であった.また腸型形質優位癌の癌組織内部には高率に腸上皮化生成分が混在した.粘液形質により発生母地が異なる一方,H.pylori感染は分化型と低分化型の双方の組織発生に関わっている可能性が示唆された.

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要旨 大阪府立成人病センターで1980~1984年度および20年隔てた2000~2004年度に切除された単発早期胃癌症例の全割標本を臨床病理学的に比較検討した.H.pyloriの有無についても全割HE標本およびギムザ染色標本を用いた鏡検法で検索した.2000~2004年度群では1980~1984年度群に比較して,男性・60歳以上が増加し,肉眼型は隆起型,組織型は高分化腺癌が増加し,逆に潰瘍や潰瘍瘢痕を伴う陥凹型・中分化腺癌・印環細胞癌の減少を認めた.H.pyloriは両群ともに年齢・組織型にかかわらず高率に認められ,組織学的にH.pylori陰性例には萎縮性胃炎が高度な例も多く偽陰性例が含まれる可能性が示唆された.病理組織学的にみた早期胃癌の時代的変遷は日本人の高齢化とH.pylori陽性者年代別分布の変遷によっていると考えられた.

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要旨 H.pylori感染に起因する組織学的胃炎の自然経過は,活動性胃炎が前庭部から胃体部へと拡がり,幽門腺のみでなく胃底腺が傷害される結果として胃粘膜萎縮の進展,すなわち胃粘膜の老化が促されると同時に腸上皮化生も出現するものと推測される.この進展速度には大きな個人差があり,同じ感染者でも種々の背景胃粘膜が形成される.すなわち,欧米にみられる前庭部優勢胃炎は胃癌のリスクは小さいが,萎縮性変化が軽度ないしは中等度であっても活動性胃炎が胃体部大彎に及んでいるものは未分化型胃癌の高危険群であり,萎縮が進展し腸上皮化生を伴う高度な胃粘膜萎縮と胃体部優勢胃炎を同時に有するものは分化型胃癌の高危険群となることが示唆される.

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要旨 鳥肌胃炎の内視鏡的所見の特徴として小結節状隆起が前庭部から胃角部を中心にほぼ均等に分布し,隆起の中心に陥凹した白色斑点が認められた.また,鳥肌胃炎に合併した胃癌の特徴はH.pylori陽性の胃体部に発生する未分化型胃癌であった.鳥肌胃炎を診断した際には,胃体部を特に注意深く内視鏡観察することが重要であり,胃癌予防のためには早期の除菌治療が望ましいと考えられた.

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要旨 胃体部の皺襞肥大は胃X線検査や内視鏡検査時にしばしば観察される.その大多数は,Helicobacter pylori(H.pylori)感染に起因する胃体部粘膜の炎症細胞浸潤と腺窩の過形成,低酸症を特徴とする皺襞肥大型胃炎である.H.pyloriの除菌によりこれらの所見の改善と皺襞幅の正常化がみられる.胃癌,特に胃体部の未分化型早期胃癌のリスクは皺襞幅の増加に伴って上昇することから,皺襞肥大型胃炎はH.pylori感染者の中で危険因子であることが示唆される.皺襞肥大型胃炎においてH.pyloriの除菌が胃癌の予防に有効かどうかを今後明らかにする必要がある.

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要旨 一般的には,Helicobacter pylori(Hp)感染により慢性萎縮性胃炎(腸上皮化生)を経て分化型腺癌が発生することが言われている.われわれの以前の研究で,若年者胃癌ではHp感染はあるが腸上皮化生を認めない粘膜から低分化腺癌が発生する発癌経路が示唆された.今回は背景粘膜に注目し腸上皮化生を認めない胃粘膜に発生した胃癌〔IM(-)胃癌〕40例の臨床病理学的特徴とHp感染の関連に関して検討した.IM(-)胃癌は臨床病理学的に,女性にやや多く,胃体部発生が多く,組織型はほとんどが低分化腺癌であるという若年者胃癌に類似した特徴を有していたが,免疫染色によるHp陽性率は62.5%で比較的高率であったが,若年者胃癌のそれ(96%)より低率であった.IM(-)胃癌の中でHp感染陽性群と陰性群では,陰性群で慢性活動性胃炎の程度が軽度である傾向があったが,その他の臨床病理学的因子に差異は認められなかった.Hp感染による慢性萎縮性胃炎(腸上皮化生)を経て癌化する経路以外に,慢性活動性炎症が直接発癌に関与する経路が存在し,特に後者は低分化腺癌の発生経路として重要であると思われる.また,一部ではあるがHp感染や慢性活動性胃炎と無関係に発生するものも存在することが示唆された.今後はHp感染陰性胃癌の増加が予想され,これらの癌化の機序に注目する必要がある.

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要旨 Updated Sydney systemに準じ,担癌胃粘膜が総合的に慢性炎症(0または1+),活動性(0),萎縮(0),腸上皮化生(0または1+),HP(0)であるものを"HP陰性・非萎縮性胃粘膜"発生癌と定義し,それ以外の"HP陽性・萎縮性胃粘膜"発生癌との比較検討から,通常型胃癌の特性と組織発生の再評価を試みた.ESDで得られた分化型腺癌87例のうち,"HP陰性・非萎縮性胃粘膜"発生と考えられたのはわずか1例(1.1%)であった.外科手術標本では445例中15例(3.4%)が該当した.ESD症例で"HP陽性・萎縮性胃粘膜"発生分化型腺癌の背景粘膜における,慢性炎症,萎縮,腸上皮化生の各項目の平均値はいずれも1.6ポイント前後であり,分化型腺癌は"慢性炎症性で萎縮しつつある粘膜"に発生するものが多いことが示唆された.上記に加え,これまで収集した"HP陰性・非萎縮性胃粘膜"発生癌は,分化型腺癌7例(41~82歳,平均67.0歳),未分化型癌14例(41~82歳,平均62.5歳)で,胃底腺粘膜に発生し胃型形質を発現するものが多い傾向がみられた.しかし,腸上皮化生のほとんどない"HP陰性・非萎縮性胃粘膜"に発生する癌においても"癌の腸型化"が確実に生じており,特に未分化型癌では癌細胞の腸型化は癌の進展に伴う変化であることが再認識された.このことはホメオボックス遺伝子CDX2由来蛋白の発現をみることでより明らかになった.

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要旨 Helicobacter pylori陰性胃癌は全胃癌の約1%を占めるまれな病態である.若年のみならず高齢者にも発生し,比較的女性に多く認められる.肉眼型では平坦陥凹型であることが特徴で,組織学的にはdiffuse typeが相対的に多い.除菌後胃粘膜に生じる胃癌も同様に平坦陥凹型病変として捉えられることが多いが,性別は通常の癌と比較して差を認めず,組織型は陰性癌とは対照的にintestinal typeがほとんどである.除菌治療後早期において,隆起型早期胃癌のうち約1/3は平坦化し指摘困難となる.組織学的には腫瘍表層に異型性の乏しい再生上皮がみられることがあり,この現象が内視鏡診断を困難にしている一因と考えられる.

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要旨 胃癌はH.pylori感染に伴う慢性炎症を背景として発生する疾患群の1つであり,胃癌の最も重要な危険因子がH.pylori感染である.H.pylori除菌に伴う組織学的な胃炎の改善や胃内環境の変化によって,除菌が胃癌の発育進展および胃癌の形態になんらかの影響を及ぼす可能性がある.全国の多施設による後ろ向き調査と単独施設でのマッチング対照を用いた比較試験により,除菌後に発見された胃癌とH.pylori感染下で発見された胃癌の形態,組織型,深達度等を比較検討した.除菌後胃癌において,H.pylori感染胃癌と比べ腫瘍サイズが小さい傾向が示された.他の肉眼形態,組織型,深達度等については差を認めなかった.H.pylori除菌が胃癌の形態に与える影響については今後のさらなる検討が必要である.

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要旨 残胃癌の発症には残胃の環境因子が影響している.残胃癌を残胃1次癌と残胃2次癌に分けて検討した.初回手術から残胃癌手術までの介在期間は残胃2次癌が残胃1次癌より有意に短期間であった.しかし,残胃癌の発症年齢や背景胃粘膜に差は認められないことから,残胃癌発症には十二指腸液の逆流による影響よりも,残胃癌発症時の背景胃粘膜,その一因としてHelicobacter pylori(H.pylori)感染が推定された.H.pylori感染が認められていない残胃においても残胃癌は発症しており,残胃におけるH.pylori除菌治療の有用性についてはさらなる検討が必要である.残胃においても背景胃粘膜が前癌状態になる以前にH.pyloriを除菌することが重要であると考えられた.

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要旨 未分化型胃癌発生とHpとの関連を考察するため,Hpの胃内分布を胃全摘材料を用い,鏡検および定量的PCRにより検索した.Hp感染は腸上皮化生のない粘膜に広くみられたが,その分布は一様ではなかった.(1) 化生・非化生上皮が混在する部分で菌量は少なく,(2) 腸上皮化生のない領域で菌量は多いが,(3) 腺境界から離れ大彎・胃底部に近づくと非感染領域が混在,菌量が減少し,(4) 腸上皮化生のない大彎・胃底部でもHp感染がない症例がみられた.スキルス癌の初期像と考えられる超微小印環細胞癌の多くが,少量のHp感染を伴う,腸上皮化生のない粘膜を背景としたのに対し,進行した未分化型癌は腸上皮化生が混在し,比較的Hp量の多い領域にみられた.以上を合わせてHp感染域は腺境界・小彎から大彎側へ向かって拡大すると考えられ,多くの未分化型癌は,拡大するHp感染の先進領域で発生している可能性が示唆された.

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要旨 噴門部癌はBarrett腺癌とともに欧米で増加が報告されており,その病態には胃食道逆流症が強く関連し,H.pylori感染の関与は少ないと考えられている.しかし,噴門部癌の定義は必ずしも統一されておらず,H.pylori感染率および背景となる胃粘膜の胃炎様式,胃食道逆流症の頻度や程度などの大きな地域差も考慮する必要があり,H.pylori感染と噴門部癌の関連については未解決の部分が多い.本邦ではBarrett腺癌,噴門部癌いずれも頻度は低く,多数例での検討は困難な状況であるが,われわれの限られた検討では,噴門部癌は通常の非噴門部胃癌と同様,H.pylori感染による高度の胃粘膜萎縮,低酸状態を背景とするものの他に,H.pylori感染によらず胃酸分泌が十分維持されているもの,すなわちBarrett腺癌類似の病態を示すものが存在すると推測された.

早期胃癌研究会

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 2007年2月の早期胃癌研究会は2月21日(水)に日本教育会館一ツ橋ホールで開催された.司会は小野裕之(静岡県立静岡がんセンター内視鏡部)と趙栄済(京都第二赤十字病院消化器科)が担当した.画像診断レクチャーは八巻悟郎(こころとからだの元氣プラザ消化器科)が「食道:食道X線像の基本的な考え方」と題して行った.

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 2007年3月の早期胃癌研究会は3月14日(水)に笹川記念館国際会議場にて開催された.司会は山野泰穂(秋田赤十字病院消化器病センター)と飯石浩康(大阪府立成人病センター消化器内科)が担当した.2例目終了後,2006年早期胃癌研究会最優秀症例の表彰式が行われ,社会保険中央総合病院内科・斉藤聡先生,近藤健司先生による「NSAIDs大腸潰瘍の1例」が表彰され,症例の解説が行われた.

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 大腸癌取扱い規約作成時のエピソードをもう少し続けよう.胃癌の場合と大きく異なる点は,大腸には腺腫という良性腫瘍ならびに様々な腫瘍様病変が存在することである.一般には,これが十把ひとからげにポリープと総称されるため無用な混乱が生じている.肛門ポリープも癌になるのですか,などという愚問が発せられるゆえんであるが,これには医師の不用意な用語の使い方にも責任がある.前癌病変であるだけに,腺腫の分類には特別の注意が必要であるが,異型度分類のところで大いにもめた.もめたと言っても,私1人が大勢に異を唱えたのである.Morsonの弟子として英国流の分類,すなわち腺腫を高度,中等度,軽度異型に分けることを主張した.粘膜内癌という用語の代わりに高度異型腺腫を用いる案である.病理の先生方は胃癌分類に準じて,m癌(粘膜内癌)と腺腫に分け,その腺腫の異型度を高,中,軽の3段階に分けることを提唱された.激しい討論の末,と言っても私が頑強に反対したにすぎないのだが,現在のごとくm癌の名称を認める案で落ち着いたのである.他臓器との整合性を考えればこれでよかったのであるが,m癌の存在のために,最近になって種々の不都合が生じてきていることも事実である.例を挙げると以下のごときものがある.

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要旨 症例は80歳代,女性.汎発性帯状疱疹の基礎疾患検索のため消化管精査が行われた.大腸X線・内視鏡検査にて,回盲弁の開大,回腸終末部から下行結腸まで腸管の短縮,偽憩室・萎縮瘢痕帯形成を認めたため腸結核が疑われた.さらに,横行結腸遠位および下行結腸近位部に腫瘍性病変を認め,横行結腸の一部には陰影欠損も伴っており大腸癌の合併と診断,結腸亜全摘術が施行された.病理学的には,下行結腸の絨毛状病変部は腺腫内癌で粘膜内にとどまっていたが,横行結腸の結節集簇様病変部では漿膜下層へ浸潤する高分化型腺癌であった.背景粘膜は腸結核に矛盾しない所見であった.

学会印象記

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 弘前大学内科学第1講座の棟方昭博教授を会長として,2007年4月19日~21日の3日間,青森市において開催された.会場は,青森市文化会館,ホテル青森,ウェルシティ青森および青森県営スケート場の4会場であった.学会期間中は駅と各会場を結ぶシャトルバスが運行され非常に便利であったが,ポスター会場の青森県営スケート場は郊外にあり移動に時間を要した.天候は21日を除き春らしい気候に恵まれ,北国における春の息吹が清々しく感じられた.

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欧文目次

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 大学附属病院をとりまく医療環境は最近,大きく変わりつつあるが,なかでも最も大きな要因として独立行政法人化,卒後研修の義務化,そしてDPC制度の導入がある.DPC制度は,2003年4月より特定機能病院において開始され,2006年度からは対象が大きく拡大してきている.病院の経営改善が叫ばれる現在,DPC制度は少なくとも現時点では経営を圧迫するものとはなっていない.ただし,大学病院(特定機能病院)の急性期医療への役割分担の期待そしてその方向へ行政指導が強まる中で,病床利用率を維持したままで在院日数縮小を図らざるを得ない状況となっている.そのような意味では,DPC制度の理解と応用が,病院本来の戦略を確立していくうえで重要となる.

 『基礎から読み解くDPC』は,DPC制度を立ち上げのときから,立案・普及に尽力してきた松田晋哉先生が,専門家・指導者の立場で,わかりやすくDPCとは何か,そしてDPCの応用について書かれていたもので,DPCにかかわる医療関係者にとっては必読の書であり,多くの医療関係者に福音をもたらしてくれた名著である.DPCの平成18年度改正に対応して今回,第2版が刊行された.対象病院が大学附属病院より拡大され,DPCのもつ意義も,特定機能病院から急性期医療を中心とする一般病院へと広がり,医療界全体の大きなテーマとなりつつある.

編集後記 芳野 純治
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 本企画はHelicobacter pylori(Hp)と胃癌発生に関して背景胃粘膜の観点から取り上げた.HpはWHO/IARCにより胃癌発生に強く関与するとしてdefinite carcinogen(group1)に定義され,これまでの多くのデータはHpと胃癌との関係を支持している.しかし,Hpの感染より胃癌発生への道筋は現在のところ十分に解明されてはいない.

 胃癌の時代的変遷をみた西倉論文と辻論文は膨大な数の胃癌切除標本を見直し,最近の20~30年の間に生じた胃癌の変化をHpとの関わりから詳述している.胃癌の母地はHp感染により生じた萎縮性胃炎・腸上皮化生を経た分化型胃癌とこれまで考えられていたが,未分化型胃癌の組織発生にも関わっている可能性が多くのデータから示唆された.また,形態的に特徴を有する鳥肌胃炎(鎌田論文)や皺襞肥厚性胃炎(篠村論文)はHpの発見より胃癌との関わりが再評価されるようになった.一方,Hpと関連のない胃癌も極めて少ないが存在し,その特徴が明らかにされている.特に,噴門部胃癌の中にはHp感染との関わりがなく,酸分泌の保たれたBarrett腺癌と同様なものが存在するとしている.

基本情報

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胃と腸
42巻6号 (2007年5月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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