medicina 29巻9号 (1992年9月)

今月の主題 肝硬変から肝細胞癌へ—臨床医の正しい診療のために

Editorial

C型肝炎ウイルスと肝細胞癌 小林 健一
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 C型肝炎ウイルス(HCV)が米国カイロン社のHoughton博士らの研究陣によって核酸の形で発見されてから早3年が経過した.この間,シータス社のMullius博士らが開発したPolymerase Chain Reaction(PCR)法の急速な普及と相俟って,いまだ粒子の姿でとらえられていないとはいえ,HCVの研究は飛躍的な展開を遂げた.

 以下,教室および金沢大学がん研究所生物物理部との共同研究の成績を中心に,HCVと肝細胞癌(以下,肝癌と略)との関連について述べる.

肝硬変診断の定石とPitfall

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ポイント

1)肝硬変では種々の程度の肝細胞機能障害と門脈圧亢進症状が認められ,代償性肝硬変から非代償性に移行すると,黄疸,腹水,消化管出血,精神神経症状などの肝不全症状が出現する.

2)成因別ではB型およびC型肝炎ウイルスによるものが70%以上を占め,次いでアルコール性の頻度が高い.

3)慢性肝炎との鑑別では,脾腫,食道・胃静脈瘤,腹水などの門脈圧亢進所見が有用であり,肝機能検査では,アルブミン,コリンエステラーゼ,プロトロンビン時間,総胆汁酸,ICGなどを重視する必要がある.

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ポイント

1)肝硬変をきたす各種の成因と,その成因による病態と経過を熟知すること.

2)成因を知るためには,要を得た問診にて生活歴・病歴(家族歴,既往歴,現病歴)を聴取することが大切である.

3)自・他覚症を十分把握するためには,各自・他覚症の入念な診察が必要であり,同時にその診察法に関する技術の習得も大切である.

4)問診と診察で得られた事項の総合的な組み合わせによって,診断が可能となる.

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ポイント

1)慢性肝疾患の患者でGOT/GPTが1.0以上,ChEが0.6以下,血小板数10万未満のときは肝硬変の存在が強く示唆される.

2)血液生化学的所見のみによる肝硬変の正診率は約80%であるが,腹部超音波所見を加味すると90%まで向上する.

3)肝硬変のなかには臨床検査所見のみでは診断し得ない症例が10%内外存在し,確定診断には腹腔鏡検査や肝生検が必要である.

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ポイント

1)肝自体の所見

 ①右葉萎縮,代償性左葉腫大,尾状葉腫大.②再生結節による表面凹凸.③低エコー結節,全体として低エコーの粗い実質像.④肝内血管の不整狭小化.

2)間接的所見

 ①腹水.②脾腫.③遠肝性門脈側副血行路.

3)完成された肝硬変の診断はUSで可能だが,肝硬変と慢性肝炎の鑑別は困難.

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ポイント

1)肝硬変症の診断は,日常外来で行い得る検査の組み合わせで大半はひろいあげ可能である.

2)肝硬変の予後の改善には,合併症の把握のための定期検査,および的を射た自・他覚所見の評価が肝要である.

3)自覚症状のない代償性肝硬変では,いたずらに安静を強要せず,なるべく生活制限を加えないことがquality of lifeの面からも重要である.

4)軽度の肝不全症状は,外来でもコントロール可能なこともあるが,初発時は入院加療が原則である.

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ポイント

1)肝硬変の臨床的特徴は,肝の機能低下徴候と門脈圧亢進症状に集約される.

2)肝硬変の診断は予後,治療,合併症対策のうえで重要である.

3)肝硬変は臨床症状により代償性,非代償性に分類されるが,代償性肝硬変には早期や静止期の肝硬変も含まれ,診断が困難な場合がある.

4)門脈圧亢進症状は肝硬変に特徴的な所見ではあるが,明らかでない場合もある.

5)腹腔鏡,肝生検で確定診断される肝硬変も多い.

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ポイント

1)肝硬変症の合併症対策の向上により,代償期として管理する機会が増えた.

2)不顕性肝性脳症は,肝硬変症経過中に生じる潜在性の肝性脳症状態を意味し,昏睡度分類の0度ないしI度に相当する.

3)臨床上,正常な精神神経状態であるが,記号追跡試験などの鋭敏な試験を行えば神経機能の異常が認められる状態である.

肝硬変の重症度のとらえ方 柴田 実
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ポイント

1)肝硬変の重症度は病因,身体所見,病態,肝機能検査,画像検査,合併症などを総合して経時的にとらえる.

2)GOT,GPT,γ-グロブリン,ZTTなどの一般肝機能検査は重症度と無関係であり,凝固機能,蛋白合成能やICG,アミノ酸Fisher比などの肝予備能を反映する検査項目が重要である.

3)Child-Pugh分類(Pugh score)は,簡便性,経済性,信頼性に優れた最も有用な重症度判定基準である.Pugh scoreが9以上に上昇した場合の長期予後は極めて不良である.

肝硬変でみられる病態とその治療の定石

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ポイント

1)肝硬変に対する生活指導と薬物療法の目的は,代償期の状態をなるべく長く維持させることにある.

2)肝硬変の病態は患者により大きな違いがあるため,個々の患者について病態を把握することが大切である.

3)生活指導にあたっては,患者の職業や社会的立場を考慮して過度の規制にならないように心がけると同時に,定期的検査と診察により合併症の予防,ことに肝細胞癌の早期発見に努める.

4)薬物療法にあたっては,肝障害をきたしやすい薬物を避けると同時に,肝障害による薬物の排泄遅延や,低蛋白血症に伴う薬物の効果の増強にも注意を払う必要がある.

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ポイント

1)腹水の成因,病態生理の理解は治療を助ける.

2)病態に応じた治療の選択が重要である.

3)安静臥床・食塩摂取制限は治療の基本である.

4)低アルブミン血症にはアルブミンの補給を行う.

5)利尿薬の乱用を避け,作用の緩やかなものから始める(第一選択:抗アルドステロン薬,第二選択:ループ利尿薬).

6)腎機能異常は治療に対する反応性を左右する.

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ポイント

1)肝腎症候群は肝硬変に主にみられる機能的な急性腎不全と定義されるが,時に器質的な腎不全(尿細管壊死)に移行する.

臨床症状は腎前性急性腎不全と類似するが,中心静脈圧は正常範囲内にある.

2)肝硬変時の腎の機能的異常として,以上のほか水・電解質異常,酸塩基平衡をみることが多い.

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ポイント

1)特に非代償性肝硬変の病態においては,二次性アルドステロン症に基づくナトリウムおよび水分の貯留や,電解質異常をきたし,臨床上問題となる.

2)肝硬変には,性ホルモンの異常に基づく女性化乳房・男性性腺機能低下がしばしばみられる.

3)肝硬変には耐糖能異常が極めて高頻度に合併する.多くの場合にはインスリン分泌能は比較的保たれ,インスリン抵抗性がその主たる機序と思われるが,薬物治療が必要な場合にはインスリン投与を原則とする.

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ポイント

1)肝硬変では,しばしば低酸素血症を認める.病態生理学的原因は個々の症例により異なるが,換気血流比不均等,肺内外の動静脈シャント,拡散障害が関与すると考えられる.

2)肝硬変の非代償期には胸水貯留をきたすことがある.通常,右側で黄色透明の漏出液を呈し,大部分腹水貯留に伴い出現する.

3)稀ではあるが,肝硬変に肺高血圧を合併することが知られる.発生機序に関していくつかの説があるが,原因はいまだ明らかでない.

4)肝硬変では循環器系の異常として,循環血液量の増加,門脈大循環シャント,血管拡張性物質の不活化による血中での増加などにより,心拍出量増大,末梢血管抵抗減少といういわゆるhyperdynamicstateがみられる.

肝硬変でみられる血液異常 金山 正明
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ポイント

1)肝硬変患者の血液異常には血球成分の変化と血液凝固線溶系の異常がある.

2)血球成分の変化:主として門脈系循環障害による脾腫に伴う脾機能亢進のための破壊や脾内プールの増大による.

 ①赤血球系:軽度の貧血(正〜大球性),赤血球寿命の短縮.

 ②白血球系:白血球減少.

 ③血小板系:血小板数減少.

3)血液凝固線溶系の異常:主として肝における凝固因子,線溶因子,凝固線溶阻止因子の産生低下による.

 ①凝固因子:プロトロンビン時間延長,ヘパプラスチンテストの低下,トロンボテストの低下,II,V,VII,IX,X各因子の低下.

 ②凝固阻止因子:アンチトロンビンIIIの減少,プロテインCの減少.

 ③線溶関連因子:プラスミノーゲン,α2-プラスミンインヒビターの減少.

3)出血傾向:非代償期の肝硬変患者ではしばしば出血傾向がみられる.その成因の主体は血小板減少,凝固因子産生障害によるが,線溶亢進も関与する.

4)肝硬変に合併したDIC:肝硬変患者の凝固線溶系検査所見は,DIC症候群と類似するため鑑別が困難であることが多いが,肝硬変に合併したDICの診断や治療の指標には,血管内凝固の直接指標であるトロンビン-アンチトロンビンIII複合体が有用である.

肝硬変と感染症 北原 光夫
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ポイント

1)肝硬変の感染症は菌血症の出現と個体の防御機能の低下による.

2)細菌感染症の中で特異的なものは細菌性腹膜炎である.

3)全身状態低下による結核症の発症を忘れてはならない.

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ポイント

1)胃食道静脈瘤,胃十二指腸潰瘍,conges-tive gastropathy・胃炎が主な出血病変であるが,直腸静脈瘤など異所性静脈瘤にも注意を要する.

2)静脈瘤出血に対しては,バルーンタンポナーデ,内視鏡的硬化療法,手術療法が行われるが,門脈血行動態と,原疾患の肝機能障害の程度を念頭に置いて治療計画をたてる.

3)胃十二指腸潰瘍,粘膜病変の治療は,H2受容体拮抗剤,プロトンポンプインヒビター,制酸剤などの攻撃因子抑制剤に加えて,肝硬変に伴う粘膜防御因子の低下,特に粘膜血流低下を改善させる薬剤を併用する.

4)出血により誘発される肝不全の予防・治療対策も同時に行う.

肝性脳症の予防と治療 与芝 真
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ポイント

1)肝性脳症には,アンモニアを主因とするものとそれ以外の物質を主因とするものがあり,肝硬変では両者が混在する.

2)これまでの多くの薬剤療法は高アンモニア対策であるので,アンモニアを主因とする症例では有効だが,そうでない症例(特に末期肝硬変)では限界がある.

肝硬変でみられる栄養障害 渡辺 明治
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ポイント

1)間接カロリーメーターによる栄養評価.

2)低蛋白栄養障害の背景に末梢インスリン抵抗と高グルカゴン血症.

3)食事(輸液)による熱産生量からみた栄養治療.

4)潜在性脳症例に肝不全用経口栄養剤.

5)肝硬変に合併する肝細胞癌と栄養.

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ポイント

1)肝硬変では,血清アルブミンの低下,肝血流の減少,肝臓での薬物代謝能の低下によって,投与薬物のクリアランスが低下し,血中濃度が上昇する.

2)低アルブミン血症,門脈-大循環のシャント形成,腎機能低下,および脳症の既往歴を認める肝硬変のほかに,非代償性肝硬変としての自・他覚的所見を認める症例に対しては,投与薬物の減量が必要である.

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ポイント

1)肝機能障害(肝硬変)を有する患者の消化器一般外科手術における術前肝予備能および手術リスクの評価について述べた.

2)従来のChild分類にプロトロンビン時間,総コレステロール,コリンエステラーゼ,ヘパプラスチンテスト,ICG負荷試験などを加味して,総合的に肝機能を評価する.

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ポイント

 1)肝細胞癌の疫学

 2)肝細胞癌の原因

 3)ウイルス肝炎と肝細胞癌

  i)B型肝炎

  ii)C型肝炎

 4)日本住血吸虫症と肝細胞癌

 5)肝の先天性代謝異常と肝細胞癌

 6)自己免疫性肝炎,ルポイド肝炎,原発性胆汁性肝硬変症と肝細胞癌

 7)かび毒と肝細胞癌

 8)トロトラストと肝細胞癌

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ポイント

1)癌の症状はほとんどなく,それによって病変の有無,進行を判断するのは難しい.明らかな症状は末期のものである.

2)肝外転移で最も多いのは肺であり,次いで骨,リンパ節,腹膜である.

3)Paraneoplastic syndromeで多いものは低血糖,赤血球増多症,高コレステロール血症,高カルシウム血症である.

4)死因で最も多いのは癌死であり,次いで肝不全,消化管出血である.

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ポイント

1)肝細胞癌と紛らわしい結節性病変の質的診断には,超音波検査,CT,MRI,核医学検査,血管造影検査などを組み合わせた総合画像診断が有用である.

2)最終診断には腫瘍生検による病理診断が必要である.

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ポイント

1)肝細胞癌の診断に用いられている腫瘍マーカーとしては,α-フェトプロテイン(AFP)とPIVKA IIが代表的なものである.

2)健康診断やドックの際のスクリーニングには役立たないが,肝細胞癌高危険度群を対象に,定期的に腫瘍マーカー(特にAFP)を測定してゆくことにより早期発見が期待できる.

3)AFP糖鎖が癌化に際して変化することが分かってきており,特にレンズマメ・レクチン,インゲンマメ・レクチンとの結合性変化を肝細胞癌の早期診断に利用する試みがなされている.

4)AFP陰性肝細胞癌の補助的診断としてPIVKA IIが有用である.

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ポイント

1)肝細胞癌の早期発見の画像診断としては超音波検査が最適である.

2)肝細胞癌の早期診断のためには慢性肝障害者に対し3ヵ月ごとに定期的超音波検査を行うことが重要である.

3)肝細胞癌の画像診断による確定診断は腫瘍径1.0〜1.5cmでは50%,1.6〜2cmでは68%に可能であった.

4)腫瘍径2cm以下の肝細胞癌の確定診断には,映像下穿刺による組織生検が必要である.

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ポイント

1)肝細胞癌と肝癌類似病変との鑑別診断は,画像診断法によってかなり可能となってはきたが,1cm以下の小結節では超音波誘導下生検を施行しても,約1/4の症例では確診は得られず,厳重な経過観察をすべきである.

2)肝癌の肉眼形態が発育形式を反映しており,治療法の選択には画像診断による癌腫の形態の詳細な把握が必要である.

3)局在診断,進展度診断には通常のUS,CTに加えて,炭酸ガスUS,CT angiographyなどが有用で,MRIなどによる主要血管と腫瘤との立体的な位置関係の把握も重要である.

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ポイント

1)肝細胞癌の早期診断には慢性肝障害の経過観察が重要であり,定期検査の検査間隔は原則として3ヵ月である.

2)定期検査としては超音波検査と腫瘍マーカー(AFP,PIVKA II)を3ヵ月ごとに施行し,症例により他の検査法を加えたり,検査間隔を調節する.

3)精密検査には,外来で可能なX線CT,MRIと,入院が必要な血管造影と超音波映像下組織生検がある.

4)画像診断の進歩により肝内の小腫瘤病変の検出は飛躍的に向上したが,確定診断には組織診断の役割が大きい.

5)各種検査で確診所見が得られなくても,腫瘤の大きさが15mmを越える症例や,経過で腫瘤が明らかに増大する症例は肝細胞癌に準じて対処すべきである.

肝細胞癌の治療はどこまで可能か

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ポイント

1)超音波穿刺術の改良と,エタノールの迅速な蛋白凝固作用を利用し,わが国で開発された肝細胞癌の治療法1)である.

2)外科的切除など他の治療法と比較して侵襲も少なく,良好な予後が得られ,小肝細胞癌に対して第一に選択すべき治療法といえる.

3)TAEなど他の治療法との併用により,適応の拡大が期待できるなど,肝細胞癌の治療体系に重要な役割を果たすものと考えられる.

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ポイント

1)TAEは,肝切除やエタノール局注に比し治療適応が広いが,完全壊死が得にくく,治療の反復が必要である.

2)早期の高分化型肝癌には効かない.

3)治療経過中に,治療効果が減弱し,腫瘍の急増大を示すことがある.

4)肝癌治療に際しては,集学的治療の有力な一手段としてとらえるべきである.

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ポイント

1)門脈本幹に腫瘍塞栓のある例や,肝外転移のある例などに対して行われる.

2)臨床第II相試験では奏効率10%以上はcisplatinのみであり,全例PR以下.

3)確実な治療効果を有する抗癌剤はなく,標準的な化学療法も確立されていない.

4)奏効例では有効と判定された抗癌剤の投与を続けるが,非奏効例では無効とされた抗癌剤の投与を最小限度にとどめる.

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ポイント

1)CTL療法は,担癌患者自身の末梢リンパ球に,癌細胞を特異的に認識して破壊するcytotoxic T lymphocytes(CTL)をin vitroで活性化し,元の患者に戻すことを繰り返し行うことによって腫瘍を退縮させる治療法である.

2)肝細胞癌症例においてもCTL療法が有効であり,この療法は患者のQOLを重視した優れた治療法として開発されつつある.

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ポイント

1)肝細胞癌に対する肝切除は,十分な肝予備能をもっ患者を選択することができるようになってから安全になった.

2)癌病巣を組織学的レベルで除去できたと考えられた症例の累積5年生存率は49%と比較的良好であった.しかしながら,5年生存例の80%に再発がみられた.

3)肝機能低下の著しい症例が多いこと,切除後残存肝に再発が多いことを考えると,癌の発生母胎である肝硬変を治療すること,すなわち肝移植を将来考慮せざるを得ないであろう.

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ポイント

1)Incidental tumorや肝細胞癌の特殊型であるfibrolamellar typeを除いて,一般的には肝癌に対する肝移植の成績は良好ではない.

2)移植成績が良好でないのは肝癌の移植後再発のためである.

3)本邦では肝切除,TAE,PEITが不可能な肝癌症例で,肝外転移,感染症などの禁忌がない症例が適応となる.

4)社会的適応からは良性胆道疾患,先天性代謝疾患,非ウイルス性肝硬変が優先され,これらの疾患のレシピエントがいない場合に肝癌症例が選択される.

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ポイント

1)肝癌の腹腔内破裂には緊急血管造影および肝動脈塞栓術が有用.

2)食道静脈瘤破裂は,内視鏡的硬化療法にて治療する.肝動脈塞栓術で動脈-門脈短絡を遮断することにより,門脈圧を下げることができる.

3)骨転移には放射線治療が有効.特に,脊髄圧迫症状が生じた場合には緊急治療を要する.

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ポイント

1)肝細胞癌の治療にあたっては,肝動脈造影でA-Pシャント,A-Vシャントの認められる症例,TAE後すぐ再発する症例,微小癌結節が肝全体にみられるびまん型の症例,肝予備能低下のためTAEの施行できない症例などが難治性肝癌として問題になる.

2)このような症例に対し,われわれは新たにUFT経口投与(前投与および後投与)+CDDP肝動注療法を試みた.

3)その結果,いまだ例数は少ないが,A-Pシャント,門脈塞栓のある例でそれらの消失を,TAE後すぐ再発する例で再発までの期間の著しい延長を,びまん型肝癌例でそれら小結節の消失を認めた.

4)UFT経口投与(前投与および後投与)+CDDP肝動注療法は,上記の難治性肝癌では試みるべき一治療法と思われる.

肝細胞癌治療のStrategies 谷川 久一
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ポイント

1)肝細胞癌の特徴を理解して集学的治療が重要.

2)小肝細胞癌の初回PEIT後の経過観察が大切.

3)結節性進行癌のTAE療法にPEITの併用がよい.

4)高度進行癌に皮下埋込み式リザーバーを用いた動注化学療法が効果的である.

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 上野(司会)今月号は肝硬変と肝癌に関する特集を組みました.本号の中には正しい診療のための有益な論文が多数掲載されていることと思いますが,実際の臨床の場では何かと理論どおりにはいかない面も多々あると存じます.そこで,この座談会では日頃から多くの肝疾患の症例を診療されている先生方に,文章には書ききれないような,より実際的なアドバイスを伺えればと考えております.

カラーグラフ 電子内視鏡による大腸疾患の診断・7

薬剤性大腸炎 多田 正大 , 長廻 紘
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 医薬品の本来の目的は,疾病に対する治療効果を図ることであるが,その目的からはずれて生じる副作用は少なくない.特に消化管に生じる副作用の作用機序として,①経口投与された薬剤が消化管粘膜に接触して生じる直接作用,②薬剤の代謝産物が消化管に排泄されて生じる作用,③中枢神経を介して起こる消化管の機能異常とそれに続く器質的障害,④抗生物質投与による菌交代現象による副作用,⑤抗腫瘍剤や抗生物質などによる造血器系への障害によって凝血能が低下して生じる消化管出血,などがあげられる.

 大腸病変の発生機序もいろいろあるが,その結果,腹痛,便秘,下痢といった軽症の副作用から,イレウス,消化管出血,穿孔などの重篤な副作用に至るまでさまざまである.そこで種々の大腸障害のうち,大腸炎として現れる,いわゆる“薬剤性大腸炎”の電子内視鏡像について触れてみたい.

グラフ 内科医のための胸部X-P読影のポイント・13

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症例

 患者 65歳,女性,無職

 家族歴 妹が結核で死亡,孫に1人喘息.約10年間1日10本の喫煙歴があり,4年前に禁煙.

基本情報

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medicina
29巻9号 (1992年9月)
電子版ISSN:1882-1189 印刷版ISSN:0025-7699 医学書院

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