今月の主題 肝硬変から肝細胞癌へ—臨床医の正しい診療のために
肝硬変でみられる病態とその治療の定石
肝硬変でみられる血液異常
金山 正明
1
1平塚共済病院・消化器科
pp.1587-1589
発行日 1992年9月10日
Published Date 1992/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402901669
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ポイント
1)肝硬変患者の血液異常には血球成分の変化と血液凝固線溶系の異常がある.
2)血球成分の変化:主として門脈系循環障害による脾腫に伴う脾機能亢進のための破壊や脾内プールの増大による.
①赤血球系:軽度の貧血(正〜大球性),赤血球寿命の短縮.
②白血球系:白血球減少.
③血小板系:血小板数減少.
3)血液凝固線溶系の異常:主として肝における凝固因子,線溶因子,凝固線溶阻止因子の産生低下による.
①凝固因子:プロトロンビン時間延長,ヘパプラスチンテストの低下,トロンボテストの低下,II,V,VII,IX,X各因子の低下.
②凝固阻止因子:アンチトロンビンIIIの減少,プロテインCの減少.
③線溶関連因子:プラスミノーゲン,α2-プラスミンインヒビターの減少.
3)出血傾向:非代償期の肝硬変患者ではしばしば出血傾向がみられる.その成因の主体は血小板減少,凝固因子産生障害によるが,線溶亢進も関与する.
4)肝硬変に合併したDIC:肝硬変患者の凝固線溶系検査所見は,DIC症候群と類似するため鑑別が困難であることが多いが,肝硬変に合併したDICの診断や治療の指標には,血管内凝固の直接指標であるトロンビン-アンチトロンビンIII複合体が有用である.
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