小児科 59巻12号 (2018年11月)

特集 小児医療における診断・治療の進歩2018

Ⅰ.診断技術

1.着床前診断 中岡 義晴
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着床前診断(preimplantation genetic diagnosis:PGD)には,生殖医学と遺伝医学の高度な知識と技術が必要となる.その実施は日本産科婦人科学会(日産婦)により厳しく管理され,開始後15年間で承認された約600件の4分の3は均衡型染色体構造異常に起因する習慣流産,4分の1は遺伝性疾患に関する症例である.近年の生殖補助医療の進歩に加え,新たな遺伝学的検査手法の開発により,PGDの解析精度は高まり,適応範囲も広がってきている.PGDは出生前診断による人工妊娠中絶や染色体異常による流産を回避するための唯一の方法である一方,臨床成績や倫理問題など解決すべき課題も多い.

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先天性疾患の診断において,一定の限界を伴うものの,網羅的ゲノム解析は有用である.先天性疾患の診断は常に挑戦的な側面を有し,臨床医の能力が問われる.先天性疾患における正確な診断は,適切な健康管理につながり得る.検査を行うにあたり適切な検査プラットフォームを選択する必要がある.検査によって得られる情報は膨大であるため,そこから正確な診断を導き出す必要があり,バイオインフォマティクスなどを熟知する必要がある.網羅的解析は優れた検査だが,クライエントにとって予期せぬ結果を返す可能性があるため検査前より十分な遺伝カウンセリングを行う必要がある.

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質量分析は菌種名の同定に用いる新しい解析方法である.質量分析を利用できる施設では,同定結果が出るまでの時間が1日以上短縮し,より正確な同定結果が提供される.より正確で速い同定検査となるため,的確な抗菌薬への変更や,コンタミネーションの早期の判断が可能となる.また,感染症診療の適正化は治療期間や入院期間の短縮にも寄与する.導入時のコストは必要となるが,ランニングコストなど抑制される医療費も多く,医療経済面から総合的に評価することが必要である.現在は薬剤感受性の評価はできないが,新しい試みも始まっている.

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造血器腫瘍の分子遺伝学的な病態についての知識が深まるにつれ,その臨床的な意義も明らかとなり,正確な診断や治療方針を決めるにあたって分子遺伝学的な診断を行うことが必須になっている.本稿では,小児の造血器腫瘍として頻度の高い,急性リンパ性白血病・リンパ腫・急性骨髄性白血病・慢性骨髄性白血病・若年性骨髄単球性白血病を中心に,分子遺伝学的異常の意義とその検出法,結果の解釈について概説する.造血器腫瘍の分子遺伝学的特性に基づいたprecision medicine(個別化医療)により,さらに治療成績が改善し,合併症の少ない状態での長期生存率が達成されることが期待されている.

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18FFDG PET検査は,悪性リンパ腫や神経芽腫などの悪性腫瘍および高安動脈炎などの炎症性疾患において,病変の局在や活動性の診断に有用であることが明らかになり,現在早期胃がんを除くすべての悪性腫瘍の病期診断,再発・転移診断と,大型血管炎(高安動脈炎,巨細胞性動脈炎)の病変の局在および活動性診断に対して,保険適用を有している.これらの疾患に加え18FFDG PET検査は,不明熱の診断や若年性特発性関節炎の炎症部位の同定にも有用であり,今後さらなる適用拡大が望まれる.

6.神経芽腫の遺伝子検査 家原 知子
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神経芽腫は予後良好腫瘍から,遠隔転移をきたし致死的経過をとる予後不良な腫瘍まで多岐にわたる小児がんである.この不均一性は,染色体の不安定性や,特定の遺伝子発現によるとされている.とくにMYCN増幅と腫瘍細胞のDNA量の指標であるploidy,11番染色体長腕の異常が予後に強く相関するとされ,リスク因子として利用されている.したがって,これらの因子を治療前に判定することが重要である.また,近年治療の評価方法として,画像診断,従来の腫瘍マーカーのみでなく,骨髄中の微小残存腫瘍の存在が注目されている.各種遺伝子ターゲットを用いた微小残存腫瘍の評価と予後との関連性は今後明らかになってくると思われる.

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小児循環器領域における心臓超音波検査の最近の進歩は,大きく2つに分類できる.その1つである三次元超音波法は,心構造の三次元的形態評価と,心室の正確な容量評価を可能とした.またもう1つの進歩として,二次元超音波法のスペックルトラッキングにより任意の部位の心筋伸縮の計測が可能となった.左室駆出率よりも優れた心機能評価が可能であり,複雑心奇形の心室壁にも対応できる.また流体力学を用いた,新しい心機能評価法も開発されている.本稿では,これらの最近の進歩について解説し,心臓超音波検査法の利点と今後の発展の方向性を理解していただくのが目的である.

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小児や先天性心疾患に対するペースメーカ,植込み型除細動器や両心室ペースメーカといった植込み型ペーシング機器の需要は増加傾向にある.一方,リードのトラブルや不整脈発症率が多いため,これらのトラブルを早急に発見し介入することが求められてきた.近年,遠隔モニタリングが急速に広まり,リードトラブルや不整脈イベントの早期発見や早期対応に貢献している.

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胎児心臓超音波検査の普及により,出生前診断に基づいた周産期管理が可能となった.超音波機器の進歩により,在胎20週前の時期といえども詳細な観察が可能となってきている.胎児心臓超音波検査の概要を知っておくことは,家族計画のカウンセリングなどの機会のある小児科医には有益と思われる.

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X線写真やX線透視と比較しMDCTは体内臓器を3D情報として詳細な情報を得ることが可能で,臨床において重要な位置を示しているのは言うまでもない.とくに冠動脈造影CTは多くの患者を心臓カテーテル検査の負担から解放した.320列Area Detector CTや192スライスDual-Source CTは息止めを不要とした撮影が可能となり小児領域のCT検査が増えた.その一方でMDCTは多量放射線を使用する技術であり,放射線被ばくの危険を軽視してはいけない.MDCTにおける放射線被ばく,役割と適応,心臓MRIと心臓CTの比較,撮影方法,および,問題点と限界について述べる.

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小児心臓疾患・先天性心疾患症例において心臓MRIの利点は ① 心筋性状・心筋障害がわかること ② 血流速度・血流量・逆流量が測定できること ③ 正確な右室容積が測定できること ④ 被曝がないことである.現在心臓MRIで最もトピックな話題はT1マッピング(T1 mapping)と4Dフローイメージングである.T1 mappingは心筋性状を知るための遅延造影に代わる新たな手法になることは確かだが,撮影シークエンスや正常値等がまだ確立されていない.4Dフローイメージングは大血管の壁ずり応力(wall shear stress)のみならず,心臓のエネルギー損失も推定できる解析ソフトウェアも開発されており,今後の技術的な進歩が期待できる分野である.

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オートプシー・イメージング(Ai)とよばれる死亡時画像診断は社会的に認知されつつあり,本邦では主にCT検査が用いられている.Ai画像には死後の生体恒常性破綻を反映した死後変化や蘇生術後変化といった生体ではみられない所見があり,Ai特有の画像所見を把握することが読影には不可欠である.また,Aiは生前の病態や死因の推定に一定の有用性を備えるが,この限界点についても認識し,生前の情報を勘案して過大評価に至らないよう適切に画像を解釈する必要がある.

Ⅱ.治療技術

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ファーマコゲノミクス検査は,生体内薬物代謝や治療反応性の評価の指標となり,個別化医療に向けて,研究から臨床応用への展開が著しい.しかしながら,小児での臨床利用は浸透が遅い.その背景には小児特有のさまざまな課題がある.小児の発達プロセスにおいて,薬物変換にかかわる主要な臓器の成熟および薬物代謝酵素の遺伝子発現は大きく変化する.エビデンス作成のための臨床研究の難しさの背景として,倫理的な課題や低い疾患発生頻度に起因する臨床研究参加者数の少なさなどがある.エビデンス蓄積とそれに基づくガイドライン,利用しやすい検査システムと標準化,情報管理,利用者の理解などの環境整備により,適正利用と普及による良質な個別化医療の推進が期待される.

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人工内耳は手術によって植え込んだ体内器と,その体内器に通信する体外器(プロセッサ)を用いて音の情報を電気信号に変換して蝸牛神経を刺激する人工聴覚器である.人工内耳は急速に装用者数を増やしており,現在は先天性高度難聴児の療育,教育において大きな柱の一つである.人工内耳装用児の診療においては,人工内耳は小さな声にもよく反応するため一見健聴にみえることもあるが,話した内容をすべて理解したかどうかは別途確認したり,筆談を併用したりといった配慮が必要である.人工内耳装用者がMRI検査,手術,放射線治療などの注意を要する検査,治療を受ける際は人工内耳手術や診療を行う耳鼻咽喉科にコンサルトすることが必要である.

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先天的な皮膚の症状(母斑)に加えて,神経系など他の臓器にも病変がある疾患群を総称して,母斑症あるいは,神経皮膚症候群とよぶ.神経系と皮膚に症状が認められるのは,ヒトの形成過程において,中枢神経系と皮膚はともに外胚葉から発生するためである.母斑症に含まれる主な疾患として,神経線維腫症1型,結節性硬化症,Noonan症候群,Sturge-Weber症候群,先天性巨大色素性母斑・神経皮膚黒色症などが挙げられる.それぞれの疾患に特徴的な,皮膚・神経,その他の症状の把握が診断に重要である.近年,原因となる遺伝子変異やそれに伴う病態の解明が進み,各疾患の標的分子に対する疾患特異的治療が開発されつつある.

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重症新生児仮死に対する新生児低体温療法は,全国的に施行可能な施設も増加しNICUにおける標準治療となっている.新生児低体温療法は,出産した施設,新生児搬送を行い実際に治療を行うNICU,退院後の発達フォローアップ,など入院前から退院後までさまざまなことに注意が必要である.また,新生児低体温療法の適応基準を拡大するための臨床研究や,臍帯血幹細胞移植を含めた再生医療など新たなアプローチも始まっている.

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双胎間輸血症候群(TTTS)は予後不良であり,予後の改善が望まれていた.妊娠26週未満の重症TTTSに対する胎児鏡下胎盤吻合血管レーザー凝固術(FLP)による効果(生存率の上昇と神経学的異常の頻度の低下)および安全性が示されたため,現在は第1選択治療となった.胎児鏡下に胎盤吻合血管を凝固して,両児間の血液移行を遮断する根治治療といえる.また,その他にも一絨毛膜双胎特有の重症な疾患があり,近年ではFLPの適応が拡大された.今後は,FLP後の児の長期予後に関する検討とフォローアップ体制の確立が望まれる.

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胎児疾患の診断率向上とともにさまざまな胎児治療法が研究されている.胎児治療は母体を通して胎児を治療する方法である.内科的治療である経胎盤的薬物治療は頻脈性および徐脈性不整脈,先天性副腎過形成などが対象となる.外科的治療は,超音波ガイド下で胎児胸水や下部尿路閉鎖に対するシャント術,無心体双胎のラジオ波焼灼術が行われている.胎児鏡手術は双胎間輸血症候群や先天性横隔膜ヘルニア,開腹し子宮を切開する開腹直視下手術は脊髄髄膜瘤などが対象となる.

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Fallot四徴症は先天性心疾患の約5~10%を占め,チアノーゼ型心疾患のなかで最も頻度が高い.多くは2歳ごろまでに心内修復術を終えることが多いが,右室流出路の形態や形成術の術式により肺動脈・右室流出路の狭窄と肺動脈弁閉鎖不全が残存することが多い.長期的には体の成長や慢性的な右室容量負荷・圧負荷により右室機能が低下したり,心室頻拍などの致死性不整脈を引き起こすことが問題になっている.心内修復術後の残存異常に対して外科的に肺動脈弁置換術や弁付き導管の置換術が行われることが多い.最近では,欧米では経カテーテル的に肺動脈弁を留置する手技が普及してきている.

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小児補助人工心臓は小児重症心不全症例に必要不可欠な治療手段の一つである.欧米ではEXCOR®空気圧駆動式補助人工心臓が使用されてきた.本邦においては比較的体格の大きな症例に国立循環器病研究センター型空気圧駆動式補助人工心臓が使用されてきたが,2012年よりEXCOR®の医師主導の臨床研究が施行され,その成果により臨床使用が可能となった.植込み型補助人工心臓においては,Jarvik2000®,HeartWare®といった小型の補助人工心臓であれば小児症例に使用できる可能性がある.小児用の植込み型補助人工心臓の開発が進行しつつあるが,その臨床使用が希求される.

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小児の重症心不全の非薬物治療として,両心室ペーシングを含む多点ペーシングによる心臓再同期療法がある.心臓の電気的・機械的収縮拡張の同期不全がある場合に適応となり,至適ペーシング部位の選択とペーシングのタイミングの設定をしたうえで,βブロッカーや冠動脈拡張薬などの抗心不全薬物療法をうまく組み合わせると心移植を回避できるような治療効果を示すことも可能な治療法である.小児においては,まだ大規模臨床試験はなく多数の臨床報告によるエビデンスしかないが,この治療により正常以上の収縮まで改善するsuper-responderの報告もあり同期不全をともなう重症心不全例に対して試みるべき治療法の一つであると考える.

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2005年にわが国にも心房中隔欠損に対してAMPLATZERTM心房中隔閉塞栓が導入されカテーテルによる低侵襲な治療が幼児から高齢者までの幅広い年齢で可能になった.さらに2016年にはOcclutech Figulla® FlexⅡ心房中隔閉塞栓が市販され,特徴の異なる現在2種類のデバイスが使用できる.一方,カテーテル治療に適応する心房中隔欠損(二次孔型)の形態は全体の70~80%といわれており,カテーテル治療を選択するか,手術を選択するかを判断するうえで経食道心エコーによる詳細な形態診断が重要である.経皮的心房中隔欠損閉鎖術は経皮的動脈管開存閉鎖術と同様に関連学会が定める施設基準,術者基準があり専門の教育プログラムの修了が施行するうえでの条件になっている.わが国では2005年の開始から2018年5月まで累計約10,000件を超え,北海道から沖縄県まで約60施設が認定されている.最近では外科的手術数を超え全国的に普及している.合併症として損傷(エロージョン)が14例,脱落が25例報告されているが,デバイスに関連する死亡例の報告はない.

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iPS細胞は,生物化学的基礎研究のデバイスとしても,難治性疾患・希少疾患の病態解析や創薬研究のデバイスとしても今非常に注目が集まっている.これまでの動物モデルや,細胞モデルでの研究と比較して,ヒト細胞を,さらに標的臓器そのものの細胞に分化させて行う創薬研究は,より患者の病態に近い状態でのハイスループットスクリーニングが可能となる.将来的には,患者由来のiPS細胞を用いてより個別性の高い薬剤治療法の開発や難治疾患の病態解明が期待されている.

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Duchenne型筋ジストロフィーを対象にさまざまな作用機序を有する化合物を用いた臨床開発が活発に行われているが,そのなかでもアンチセンス核酸を用いてスプライシングの過程で特定のエクソンを読まないようにすることでout-of-frame型変異をin-frame型に誘導するエクソンスキッピング治療,ナンセンス変異をリードスルーするように誘導する薬剤を投与することによって,本来の終止コドンまでタンパクの合成が行われ機能する全長タンパクの合成を期待するリードスルー治療は活発に臨床開発が行われており,一部欧米で条件付き承認を得ている薬剤も存在している.

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Niemann-Pick病C型(Niemann-Pick disease type C:NP-C)はライソゾーム内の遊離コレステロールや糖脂質ガングリオシドが過剰に蓄積することによって生じる先天代謝異常症である.臨床症状は発症時期により多彩であり,症状も内臓症状(肝脾腫,肺病変など)と神経症状,精神症状と多様である.グルコシルセラミド合成酵素阻害薬であるミグルスタットが神経症状の改善や安定化に有効であることが明らかになり,2012年から本邦でも治療薬として承認された.最大限の治療効果を得るためには早期診断治療が重要であり,NP-C患者の多くは小児期に発症することから,小児科医の果たす役割は大きい.

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代謝性疾患に対する肝移植は,徐々に浸透しつつあるが,いまだ十分に確立していない領域や,未開拓な領域も存在する.18歳未満における代謝性疾患に対する生体肝移植累積数は,Wilson病が最も多く,ついでオルニチントランスカルバミラーゼ欠損症,メチルマロン酸血症が多い.小児における最近の傾向として,Wilson病が減少し,尿素サイクル異常症に対する肝移植が増加している.疾患ごとに期待される効果が異なり,肝外臓器の異常を伴うことも多いため,適応の判断が難しい場面にしばしば遭遇する.また,生体肝移植ドナーの選定においては,潜在的な異常を有している可能性があるため,注意しなければならない.

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キメラ抗原受容体(CAR)は,腫瘍関連抗原と特異的に結合する合成T細胞受容体の総称である.CARを発現させた遺伝子改変T細胞は,高感度,高特異度,HLA非拘束性に抗腫瘍効果を発揮する.CD19特異的CAR-T細胞は,再発・治療抵抗性B前駆細胞型急性リンパ性白血病の70~90%に完全寛解をもたらすことから,米国・欧州では薬事承認されている.一方,他の造血器腫瘍に対するCAR-T細胞療法はいまだ研究開発段階にある.筆者らのグループは,骨髄系腫瘍に高発現するGM-CSF受容体を標的とするCAR-T細胞の開発を進めており,2020年の治験開始を計画している.

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がんに対する免疫療法は化学療法,放射線照射,外科的摘出術についで第4の治療として注目されている.小児がんは個体の発生と深くかかわり,免疫原性の高い抗原が脱落もしくは発現せず,自己に近くなることで免疫系からの監視を逃れていると考えられる.このため小児がんに対する免疫療法は自己由来抗原分子に対するCD8+T細胞による免疫応答が必要である.WT1タンパクは多くのがん患者で共通に発現するshared antigenの一つである.われわれは小児がんの特性をふまえWT1タンパクを標的として横紋筋肉腫,難治性造血器腫瘍に対し臨床試験を行い有害事象なく良好な結果を得た.WT1タンパクを標的とした免疫療法は小児がんに対する有望な免疫療法である.

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重粒子線治療(炭素イオン線治療)は線量集中性,殺細胞効果に優れているため切除のできない放射線抵抗性腫瘍に対して有効である.放射線医学総合研究所病院では照射開始時20歳以下の症例は約100例経験がある.切除不能骨肉腫の予後は厳しいが重粒子線治療例は5年生存率42%であり良好であった.今後,X線治療や陽子線治療とのすみわけが必要になっていくと考えられる.

30.食物アレルギー治療最前線 今井 孝成
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食物アレルギーの臨床はこの10年で劇的な変化を遂げてきた.とくに “徹底完全除去” から “必要最小限の除去” という除去食の考え方の変化は,患者らの生活の質を大きく押し上げる効果があった.しかし変わらないのは,診断のゴールドスタンダードは食物経口負荷試験であり,積極的に食物アレルギーを治癒に導く薬剤や一般化された方法はないという点である.経口免疫療法はそのリスクなどから,いまだ標準的な治療としては成熟していない.また必要最小限の除去と経口免疫療法の成果から,最近は食事療法と称して段階的に摂取量を増やす指導も行われることが少なくないが,これにも問題点が少なくない.本稿では食物アレルギー診療の根幹にある食物経口負荷試験を概説したうえで,経口免疫療法や食事療法の効果と課題を示す.

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リツキシマブはB細胞表面に発現する分化抗原CD20に対するモノクローナル抗体で,B細胞の異常に起因する各種病態・疾患に有効とされる.われわれはステロイド抵抗性ネフローゼ症候群を原疾患とした小児腎移植患者に対する治療経験をもとに医師主導治験を実施し,小児期発症難治性ネフローゼ症候群患者に対するリツキシマブの有効性と安全性を証明した.本稿では,リツキシマブが小児期発症難治性ネフローゼ症候群の治療薬として応用されるに至った経緯を紹介するとともに,難治性ネフローゼ症候群とリツキシマブに関する今後の課題について述べる.

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2017年7月,乳児型の脊髄性筋萎縮症(SMA)患者に対する核酸医薬品ヌシネルセンナトリウム(スピンラザ®髄注12mg)が製造販売承認を取得した.これは,「治らない疾患」としてのSMAを「治る」,さらに「発症を予防する」可能性まで示し,大きなbreak throughといえる.SMAの新規治療は,核酸医薬品の髄腔内投与,低分子医薬品の経口投与,そしてウイルスベクターを用いた遺伝子静脈内投与という発展過程を取っている.いずれも国際共同治験として,本邦は欧米と共同歩調を取り,有効性と安全性の評価に貢献してきた.診療現場では,症状の進行停止のみならず,発症予防まで見据えて,SMAの遺伝学的検査による早期診断・早期治療介入が重要になってきた.

最近の外国業績より

消化器 日本医科大学小児科学教室
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目的:原発性硬化性胆管炎(primary sclerosing cholangitis:PSC)は炎症性腸疾患,とくに潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis:UC)を合併することが多い.PSCの診断には胆道造影が必須であり,基本的に内視鏡的胆管膵管造影(endoscopic retrograde cholangiopancreatography:ERCP)を行って診断する.しかしERCPでは膵炎を合併する危険性もあり,磁気共鳴胆管膵管造影検査(magnetic resonance cholangiopancreatography:MRCP)を用いることもあるが小児では解像度が低く,感度は81~86%と十分ではない.また低年齢では鎮静を必要とする.そのため,PSC診断のための非侵襲的なバイオマーカーの開発が求められている.

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小児科
59巻12号 (2018年11月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:0037-4121 金原出版

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