皮膚科の臨床 58巻7号 (2016年6月)

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Transient reactive papulotranslucent acrokeratoderma(TRPA)は、両手を水に浸すと数分で浸水部に疼痛を伴う白色浸軟や丘疹が出現し、浸水中止後数十分で元に戻るという特徴的な臨床病態を示す疾患である。診断方法は、両手をバケツの水に浸し症状を誘発させる「手部浸水試験(Hand-in-the-bucket-sign)」によってなされる。本邦での報告例は少ないが、認知度が低い疾患であるために、皮膚科を受診しても診断されていない症例が存在する可能性がある。今回、思春期女性に発症し、Hand-in-the-bucket-signが認められたTRPAの典型例を経験したので、文献的考察を加えて報告した。症例は14歳で、3年前から手を水に浸すと手掌・指腹が浸軟しやすいことを自覚していた。近医で水性蕁麻疹などを疑われ加療されたが改善せず、当科受診した。TRPAを疑い、手部浸水試験を行ったところ陽性を示し、皮膚生検の所見もTRPAに合致した。

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78歳女。当科受診の6ヵ月前、鼠径部と肛囲に小水疱、鱗屑を伴う紅斑が出現し、そう痒感を伴った。近医受診し、鏡検でカンジダ陽性であったため抗真菌薬の外用が行われたが、紅斑は改善しなかった。臨床所見から増殖性天疱瘡の併発を疑われ、アルクロメタゾンプロピオン酸エステル(アルメタ)軟膏を処方されたが、皮疹は拡大し、当科に紹介された。紅斑部の皮膚生検で表皮基底層直上に棘融解と裂隙形成を認め、裂隙底部には一層の基底細胞に覆われた真皮乳頭が突出し、絨毛状を呈していた。棘融解細胞は緩やかに結合しており、dilapidated brick wall状の外観を呈していた。また、真皮浅層の血管が拡張し、血管周囲に炎症細胞浸潤が認められた。これらの所見から、Hailey-Hailey病と診断し、デキサメタゾン・脱脂大豆乾留タール(グリメサゾン)軟膏と亜鉛華軟膏の外用を行ったところ、紅斑は3週間で消失した。その2ヵ月後、カンジダ感染の合併によって紅斑が再度出現したため、アモロルフィン(ペキロン)クリームを併用したが皮疹は改善せず、イトラコナゾールの内服によって改善した。

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71歳女。26歳時から左足内側部に点状の陥凹病変があり、徐々に拡大した。35歳時に近医でステロイドと抗真菌薬の外用、69歳時にワセリンと抗菌薬の外用が行われたが、いずれも奏効せず、同部にそう痒感と知覚過敏が出現したため当科受診した。左足内側部辺縁に鱗屑を伴う境界明瞭で軽度陥凹する33×20mm大の平坦な淡紅色斑を認め、さらに左手母指球部と左足第1趾基部にも同様の皮疹を認めた。左足内側部の皮膚生検で皮疹辺縁部から病変部にかけて角層の階段状菲薄化と顆粒細胞層の減少を認め、左第1趾基部の生検でも同様の所見を認めたことからCircumscribed palmar or plantar hypokeratosisと診断した。治療は、左手母指球部の病変に対しては液体窒素療法を3回行い、病変は消失した。左足内側部の病変には液体窒素療法を11回行い、4回目施行後に島状の正常角化皮膚が出現し、その後も正常皮膚が拡大し続けた。全摘生検を行った左第1趾基部の病変は、9ヵ月後の現在まで再発を認めていない。

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67歳女。当科受診の2ヵ月前、大腿に強いそう痒感を伴う紅色丘疹が出現した。複数の医療機関で抗アレルギー薬内服やステロイド外用などにより加療されたが改善せず、当科に紹介された。初診時、両側大腿に褐色斑と紅色丘疹が多発・散在しており、一部に糜爛・痂皮付着を認めた。褐色斑部の皮膚生検で表皮内にcornoid lamellaと思われる栓状角質増殖を認めた。紅色丘疹部の生検では、表皮に糜爛を認め、真皮浅層の小血管周囲に炎症性細胞浸潤を認めた。これらの所見から、Eruptive pruritic papular porokeratosisと診断し、治療は初め抗アレルギー薬内服+ステロイド外用+液体窒素療法を行ったが改善せず、エトレチナート内服を行ったところ、皮疹は徐々に退色・平坦化し、そう痒も軽減した。

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51歳男。当科受診の2年前、陰茎に淡紅色結節が出現し、疼痛を伴った。他院でステロイド外用を約1年間施行されたが軽快しないため当科に紹介された。陰茎背側面のやや左側に10×5mm大の境界明瞭な淡紅色扁平結節を認め、病変の中央は白色調を呈し萎縮しており、辺縁は軽度隆起し、鱗屑と角化を伴っていた。血算・生化学検査値に異常はなく、臨床所見から扁平苔癬や円板状エリテマトーデスを疑って全切除術を施行した。切除標本の病理組織所見は、結節の辺縁部に一致して不全角化を伴う柱状の過角化(cornoid lamella)があり、その直下の表皮では顆粒層が消失し、有棘細胞の配列が乱れていた。真皮上層にはリンパ球を主体とする炎症細胞浸潤を認め、局面の中央部では表皮が不規則に肥厚していた。これらの所見から、陰茎に生じた汗孔角化症の単発例と診断した。

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近年、汗孔角化症の病巣部にアミロイド沈着を伴う症例の報告が多数みられるようになった。そこで今回、当科で過去10年間に汗孔角化症と確定診断した10例についてアミロイド沈着の有無を病理組織学的に検討した。結果、アミロイド沈着は6例(60%)に認められた。この6例の臨床病型は、表在播種型が2例、日光表在播種型2例、Mibelli型2例であり、アミロイド沈着例が特定の病型に多発する傾向はみられなかった。アミロイドの沈着部位は、cornoid lamella直下から環状病巣内側の真皮乳頭層と上層であり、6例とも34βE12染色陽性であったことから、アミロイドはケラチノサイト由来であると考えられた。また、6例の病理組織所見からアミロイド沈着の機序として、cornoid lamella直下の異常角化細胞のアポトーシスに対し何らかの反応が生じてアミロイドが産生され、病巣が遠心性に拡大するにつれて病巣の内側にアミロイドが残存していく可能性が推測された。

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95歳男。受診前日から体幹・四肢に紅色丘疹が多発し来院した。初診時、体幹・四肢に左右対称性に細かい紅色丘疹が散在していたほか、上胸部に2~4cm大で中心に白色角化物を有する黒色結節が多発していた。紅色丘疹は中毒疹と診断し、数日で自然軽快した。その後、黒色結節の皮膚生検を行い、Hyperkeratosis lenticularis perstans(HLP)と診断した。HLPについて文献的検討を行ったところ、国内ではこれまで本例を含めて90例の報告があり、性別は男性62例、女性28例と男性が多かった。発症年齢は30~50歳代が多く、本例の95歳は最高齢であった。皮疹の分布は足背84例、手背63例と四肢末端部が多く、次いで下腿48例、前腕18例、大腿8例の順であり、稀な部位として掌蹠、耳介、顔面、背部が各々1~3例報告されていたが、胸部はこれまで報告がなく、本例が初めてであった。

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67歳女。Palmoplantar Psoriasis(以下PP)は手掌・足底のみに限局し、エトレチナート20mg/日の内服が著効した。内服終了後はマキサカルシトール軟膏、尿素クリーム、10%サリチル酸ワセリンを主体に外用し、良好な経過が得られた。重症度スコア(Palmoplantar Pustular Psoriasis Area and Severity Index)とQOLスコア(Palmar Plantar Quality-of-Life Index)による評価を初診時から最終観察時まで行い、経時的変化について分析したところ、両スコアともPPの病勢をよく反映しており、また両スコアの間に相関が認められた。

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65歳男。3年前から頭部・体幹・四肢に紅斑や紅色局面があった。2週間前から手足の一部の指趾関節が腫脹し、疼痛を伴い増悪してきたため受診した。一部の指の爪に点状陥凹や爪甲剥離を認め、手足指以外の関節に腫脹や疼痛は認めなかった。頭部・腰臀部・四肢伸側などに鱗屑を付着した紅斑や紅色局面を認め、Psoriasis area and severity indexは7.7であった。X線検査で有意な所見は認めず、CRPが陽性、リウマトイド因子が陰性であったことから関節症性乾癬と診断した。生物学的製剤による治療の適応と考えられたが、費用の点から拒否されたため、メトトレキサート4mg/週内服とステロイド軟膏外用で治療した。結果、3ヵ月後には指の関節炎は略治し、乾癬の皮疹も減少した。

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66歳男。関節症性乾癬に対して2ヵ月前にアダリムマブ投与が開始された。2回目投与の7日後に発熱と咳嗽が出現し、体動困難となった。近医で肺炎と診断され、同院に入院したが、翌日に呼吸状態がさらに増悪し、当院に搬送された。高解像度CTで瀰漫性のすりガラス陰影を認め、間質性肺炎の急性増悪と診断した。ステロイドパルス療法、ミニパルス療法を施行し、その後プレドニゾロン内服を開始した。結果、呼吸状態は徐々に改善し、初診後6ヵ月の現在まで症状の再燃は認めていない。本例はアダリムマブ導入時のスクリーニング検査で胸部X線上異常陰影を認めており、間質性肺炎の早期発見のために胸部CTなども行うべきであったと思われた。

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63歳男。顔面・体幹の紅色局面を主訴に受診した。治療は当初、尋常性乾癬の診断でステロイドと活性型ビタミンD3の外用を行ったが、皮疹は急激に増悪し、島嶼状の正常皮膚を残して紅皮症化した。両膝には毛孔性角化性丘疹を認め、手掌・足全体に角質増殖と亀裂を認めた。特徴的な臨床所見と生検の結果から毛孔性紅色粃糠疹と診断した。治療は初めNB-UVBによる光線療法を行ったが、無効であった。次にエトレチナートの内服を約1ヵ月間行い、掌蹠の角化性病変・亀裂の改善には有効であったが、紅皮症は持続したため、シクロスポリン150mg分1(食前2.5mg/kg)の投与を開始した。結果、約1週間で皮疹は改善傾向を示し、以後、100~120mg/日の投与を1年3ヵ月間継続したところ、皮疹はほぼ消退した。

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71歳女。当科受診の2ヵ月前、頭部に落屑性紅斑が出現し、徐々に全身に拡大した。前医受診後、精査加療目的で当科に紹介された。初診時、頭頸部を含む全身に落屑性紅斑があり、紅皮症を呈していた。体幹部では鱗屑を付着しており、一部に正常皮膚が島嶼状に残存していた。両下肢は魚鱗癬様で、大型の鱗屑と亀裂がみられ、掌蹠は過角化を呈していた。左大腿部の皮膚生検で毛孔角栓を認め、中心部に正常角化、辺縁に不全角化がみられた。これらの所見から、毛孔性紅色粃糠疹と診断し、ステロイド外用、エトレチナート内服、紫外線治療などを行い、皮疹は約2ヵ月で軽快した。

最終講義

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水疱性類天疱瘡の治療法は一般に全身ステロイド療法や免疫抑制剤による治療が行われる。当院では、これらの治療に抵抗性を示す症例に対して2011年11月から免疫グロブリン大量静注療法を施行している。今回、2015年4月までに施行した4例の診療録をもとに、その効果を調査した。評価項目は「Pemphigus Disease Area Index(PDAI)」「抗BP180抗体価」「好酸球数」とした。調査の結果、PDAIと好酸球数は全例で改善、抗BP180抗体価は3例で改善しており、4例とも有害事象は認めなかった。代表例1例を提示した。

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本邦におけるイチジクアレルギーの報告は少なく、発症機序や原因抗原などについて不明な点が多い。海外の報告では、ほぼ全例が「ベンジャミン」または「花粉類」「ラテックス」との交差反応に基づいて発症したとされている。今回、イチジク摂取後に全身性膨疹や眼周囲・口唇の浮腫などが出現し、プリックテストでイチジクアレルギーと診断したが、「ベンジャミン」「花粉類」「ラテックス」のいずれとも交差反応が認められなかった症例を経験したので、文献的考察を加えて報告した。海外の報告数に比べて国内の報告は極めて少ないことから、日本人にはイチジクアレルギーを発症しにくい何らかの要因が潜在している可能性もあると考えられた。

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54歳女。肺腺癌に対してエルロチニブ150mg/日の内服開始2ヵ月後に点状紫斑が全身に出現した。エルロチニブを50mg/日に減量されたが皮疹の改善に乏しく、当科に紹介された。当初血管炎を疑ったが、皮膚生検でleukocytoclastic vasculitisを示唆する所見はなく、表皮細胞の変性や、真皮上層の毛細血管の腫大と血管壁の膨化、赤血球の漏出などを認めた。治療として、デキサメタゾンとオロパタジン塩酸塩の内服およびstrongestクラスのステロイド外用を行ったが改善はみられず、エルロチニブを中止することで改善した。

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65歳女。1ヵ月ほど前から両上腕の皮疹を自覚し受診した。初診時現症として、両上腕伸側に表面平滑で軽度陥凹した8mm大までの光沢性扁平白色局面が散在しており、白色局面周囲には軽度硬化を伴う淡紅褐色局面が広範囲に存在した。臨床検査で抗一本鎖DNA抗体の高値を認めた。皮疹の病理組織学的検査では、表皮が軽度萎縮・平坦化しており、液状変性は認めず、真皮中層から下層にかけて膠原線維の膨化・増生を認め、皮膚付属器が萎縮し、真皮上層の小血管周囲に軽度のリンパ球浸潤を認めた。これらの所見から、斑状強皮症と診断し、ステロイド外用を行ったところ、皮疹は消退傾向を示し、抗一本鎖DNA抗体価は低下した。

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42歳女。初診の約2年前に下口唇に色素斑が出現し、さらに右母指爪甲に黒色の色素線状が出現した。色素斑が徐々に濃くなってきたため受診し、皮膚生検の所見と臨床経過からLaugier-Hunziker-Baran症候群と診断した。アスコルビン酸/パントテン酸カルシウム配合錠(シナール)の内服を開始し、色素斑の一部は軽快したが、患者の来院が不定期となり、経過観察のみ行っていたところ、初診の9年後に色素斑の治療を希望して再診した。色素斑は数が増加しており、また頬粘膜や歯肉にも多数新生していた。シナールの内服を再開するとともに、トラネキサム酸の内服、ハイドロキノン含有軟膏の外用を行ったが、改善はみられなかった。そこでQ-Switchedルビーレーザーによる治療を行った。下口唇の色素斑の一部をスポットサイズ5mm、出力3.0J/cm2で1回照射したところ、色素斑はほぼ消失し、3ヵ月後の現在まで再燃は認めていない。

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症例1は83歳女で、右腋窩のそう痒感・結節を主訴に受診した。右腋窩中央部に20×15mm大で扁平に軽度隆起した不整形黒褐色結節を認めた。生検の病理所見は、表皮連続性に毛芽細胞様細胞で構成された腫瘍胞巣を認め、基底細胞癌(BCC)の表在型と診断した。症例2は70歳男で、左腋窩のそう痒感・結節を主訴に受診した。同部に5×8mm大の隆起した黒色結節を認めた。病理所見は表皮連続性に毛芽細胞様細胞が充実性の結節を形成しており、BCCの充実型と診断した。症例3は83歳男で、左腋窩の黒色結節を主訴に受診した。同部に20×18mm大の辺縁不整で扁平隆起した褐色結節を認めた。病理所見は表皮連続性に毛芽細胞様細胞が結節状に増生しており、BCCの充実型と診断した。

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72歳女。6年前に外陰部の皮疹、3年前に左腋窩の皮疹を自覚し、近医で外用薬を処方されたが改善せず、当科に紹介された。外陰部に8.5×3cm大の角化を伴う境界明瞭な紅色局面を認め、左腋窩に3×2cm大の境界ほぼ明瞭な紅色局面を認めた。病理組織学的検査により両部位とも乳房外Paget病と診断し、両部位ともセンチネルリンパ節生検と腫瘍全摘術を施行した。摘出標本のCEA染色、GCDFP-15染色、PAS Alcian Blue染色、S-100染色において両部位は同様の染色パターンを示し、これは乳房外Paget病の発症機序における"多中心起源説"を支持する所見と考えられた。

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62歳女。当科受診の半年前に左前腕の皮下結節を自覚した。1ヵ月前から疼痛・痺れの症状を認めるようになり、前医受診した。皮膚表面に隆起や色調変化はなく、皮下との可動性が不良な5mm大の結節を触れた。超音波検査で皮下に境界明瞭な低エコー領域、周囲にカラードップラーで血管像を認められ、動静脈奇形の疑いで腫瘍切除術を施行されたが、病理組織所見からepithelioid hemangioendothelioma(以下EH)が疑われ、当科に紹介された。切除標本の病理組織所見は、中型血管様構造内に充実性腫瘤を認め、腫瘍細胞は、くびれのある卵円形の核と淡好酸性の胞体をもち、周囲にスリット状の毛細血管を伴って増生し、免疫染色でCD31、CD34、Factor VIIIが陽性であった。これらの所見から、EHと確定診断した。組織学的に腫瘍の残存はなかったが、再発のリスクを考慮し、前医での手術創部から水平方向に1cm離して筋膜を含め追加切除を行った。術後1年の現在まで再発・転移は認めていない。

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症例1は64歳女で、乳癌検診の触診で右鎖骨下の皮下腫瘤を指摘された。症例2は55歳女で、右側胸部の皮下腫瘤を自覚し、近医受診したところ乳癌が疑われた。症例3は47歳女で、当科受診の1年半前から右乳輪部の結節を自覚し、徐々に増大した。乳癌検診のマンモグラフィでカテゴリー4(悪性の疑い)と診断され、当科に紹介された。3例ともマンモグラフィや超音波検査では乳癌との鑑別が困難で、針生検により顆粒細胞腫と診断した。針生検での病理組織所見は、いずれも好酸性顆粒状の細胞質をもつ類円形の腫瘍細胞巣が、症例1と2では皮下脂肪組織内、症例3では真皮内に存在した。

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67歳男。フィリピンへ渡航し帰国した1週間後に39℃台の発熱と水様便、咳嗽が出現した。近医と当院内科で数種の内服薬を処方され、皮疹が出現したため薬疹の疑いで当科に紹介された。顔面を含むほぼ全身に浮腫性紅斑を認め、一部にtarget lesionを認めた。皮膚生検では、表皮真皮境界部に空胞変性を認めたほか、毛包漏斗部と有棘層上層に壊死した角化細胞と、2核の壊死細胞を認めた。臨床検査で麻疹IgMの高値を認め、咽頭ぬぐい液PCR法で麻疹ウイルスB3型が陽性を示したことから麻疹と診断した。皮膚生検で認められた「毛包漏斗部の2核の壊死細胞」は麻疹の所見として矛盾がなく、薬疹と鑑別するうえで重要な所見であると考えられた。

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87歳女。8月に右頬部の紅斑を自覚した。12月から紅斑の一部に糜爛を生じ、軽快と増悪を繰り返していた。1月に紅斑の一部が隆起し、結節を形成し増大したため受診した。右頬部に20×15mm大の紅斑を認め、紅斑の下方に隣接して表面平滑な結節(20×18×7mm)を認めた。結節部の生検を行ったところ、同一標本内に日光角化症と肉芽腫性炎症が併存する組織像であった。Ziehl-Neelsen染色で赤紫に染色される菌を認め、この菌はDNA-DNA hybridization法でM.chelonaeと同定された。治療は、紅斑と結節を含めて一塊に全摘した後、クラリスロマイシン、レボフロキサシン水和物、リファンピシンの内服を行い、治療終了から10ヵ月経過した現在まで再燃は認めていない。

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67歳男。5ヵ月前に左手背の紫紅色斑を主訴に受診し、診断不明でナジフロキサシン軟膏を外用したところ、約1ヵ月で治癒した。今回、風邪に対し処方されたPL顆粒、オフロキサシン(OFLX)、チペピジンヒベンズ酸塩を内服したところ、翌日から左手背と右示指に紅斑と痒みが出現した。いずれかによる固定薬疹と診断し、ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステルクリームを外用したところ、2週間後に色素沈着となり治癒した。皮疹部の左手背と無疹部で3剤のパッチテストを行ったが、いずれも陰性であった。次に内服試験を行ったところ、OFLX内服20分後に左手背と右示指の色素沈着部が紫紅色を呈したため、OFLXによる固定薬疹と診断した。

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62歳女。約2年前から右側頭部の脱毛があり、近医で外用療法や光線療法を受けていたが改善しないため当科に紹介された。同部に血管拡張を伴った淡紅色~黄色調、萎縮性の脱毛斑を認め、両下腿にも紅褐色斑を1つずつ認めた。血液検査、各種画像検査、皮膚生検の結果から、慢性甲状腺炎を伴うサルコイドーシスと診断した。下腿部の皮疹に対してはジフルプレドナート軟膏の外用を行い、頭部の脱毛斑は無治療で経過観察中である。

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56歳男。受診の約3年前、左腋窩に母指頭大の結節が出現し、1年前には手挙大まで増大した。約3ヵ月前に結節の一部が潰瘍化し、軽度の出血を認めるようになった。初診時、結節は8.0×6.5cm大でドーム状に隆起しており、結節の胸側は深く大きく潰瘍化し、黒色の小結節からなる周堤を形成していた。結節の背側は硬く充実性で、表面に大小さまざまな小結節が多発融合し、顆粒状ないし桑実状を呈していた。これらの病変は4つの部分に大別することができ、内訳は、1)胸腹側黒色小結節からなる周堤部、2)背側淡紅色透明な小結節が融合する部分、3)中央部の白色調部分、4)胸側潰瘍部であり、各々の組織像は、1)が充実型の基底細胞癌(BCC)、2)が嚢腫型のBCC、3)がモルフェア型のBCC、4)が腺様型のBCCであった。治療は、腫瘍の辺縁から1~2cmのマージンをとり大胸筋の深さまでの腫瘍切除術を行い、術後3年の現在まで再発・転移は認めていない。

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80歳男。生活歴として熱帯魚を飼育していた。当科受診の約1ヵ月前、右手背に丘疹が出現し、徐々に紅色局面となり疼痛を伴うようになった。近医受診し、ホスホマイシンとミノサイクリン(MINO)を投与されたが軽快しない当科に紹介された。右手背と示指MP関節中枢型に35×30mm大の紅斑を認め、紅斑の中央は径7mm大の結節となっていた。結節部の生検で真皮のほぼ全層にかけて中心部に壊死巣を伴う結節状の細胞浸潤を認めた。組織片を25℃・37℃の条件下で1%小川培地培養したところ、4週間後に25℃でのみ光発色性を有する黄白色のコロニー形成が認められ、DNA-DNA hybridization法でM.marinumと同定された。前医でのMINO 100mg/日投与により軽度改善傾向がみられていたことからMINO投与を継続し、クラリスロマイシン800mg/日の内服と使い捨てカイロによる温熱療法を開始した。結果、9週間後には萎縮性瘢痕となり、12週間後に治療を終了し、終了後4ヵ月の現在まで再燃は認めていない。

基本情報

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皮膚科の臨床
58巻7号 (2016年6月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:0018-1404 金原出版

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