皮膚科の臨床 58巻8号 (2016年7月)

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75歳女。四肢に生じた水疱を主訴とした。10年前から四肢に痒みがあり、前医でステロイド外用剤を処方されたが、1ヵ月前から四肢に水疱を伴うようになった。両側の手関節屈側から前腕、下腿屈側と左足外果に2~15mm大の小水疱と緊満性水疱が孤立性ないし線状に集簇し、一部でその周囲に紅斑を伴っていた。また、両手背、両腋窩、腰から臀部、両膝窩に左右対称性に比較的境界明瞭な淡褐色色素斑が局面を形成していた。水疱部の皮膚生検で表皮真皮境界部と真皮乳頭層から上層に不規則な形状をした多数の裂隙形成を認め、その周囲と膠原線維束間にリンパ球を中心とした炎症性細胞浸潤が見られた。Dylon染色、direct fast scarlet染色はいずれも表皮直下の乳頭層から真皮上層で帯状に陽性であり、裂隙周囲も陽性であった。以上より、水疱形成を伴った斑状アミロイドーシスと診断した。患者が治療を希望せず、経過観察中である。

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59歳女。約1年前より出現した顔面の皮疹を主訴とした。右上口唇に小豆大の紅褐色結節、右頬部と鼻尖部に不整形で紅褐色の扁平結節を認めた。血算、生化学に異常はなく、尿中Bence-Jones蛋白は陰性、血清蛋白免疫電気泳動は正常であった。頭部X線像、心電図、骨髄に異常所見はみられなかった。結節の皮膚生検で真皮浅層から皮下組織までびまん性にエオジンに淡染する無構造物質の沈着を認めた。この無構造物質はdirect fast scarlet染色で橙赤色に染色され、過マンガン酸カリウムで染色性が失われず、沈着物はアミロイドと考えられた。沈着しているアミロイドは免疫組織染色で抗AL(λ)抗体に陽性を示した。皮膚限局性結節性アミロイドーシスと診断し、皮疹が多発していることから外科切除は行わず、ステロイド外用、タクロリムス軟膏外用を試みた。しかし、効果がなく、発症後10年の現在まで前額部や鼻に皮疹の新生が続いている。

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75歳男。顔面の皮疹を主訴とした。1ヵ月前より顔面に痛みや痒みのない紅色の皮疹が出現し、徐々に増数した。特に口周囲と眼周囲、舌両側と舌尖部、鼠径部から大腿内側部に紫斑が散在していた。紫斑部の皮膚生検で真皮上層にcongo red陽性の沈着物を認め、過マンガン酸カリウム処置後もcongo redの染色性を失わなかったことから、紫斑はALアミロイドーシスによるものと考えられた。さらに、血液検査でM蛋白血症を呈したこと、免疫電気泳動法で抗IgA血清と抗λ血清に対し沈降線を形成し、尿でいわゆるBence-Jones蛋白を検出したこと、骨髄生検で形質細胞の腫瘍性増殖を認めたことから、多発性骨髄腫に伴う全身性アミロイドーシスと診断した。その後、他院でボルテゾミブを用いた化学療法が開始された。

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63歳女。労作時胸部絞扼感を主訴とした。循環器内科で冠攣縮狭心症、心不全として内服治療が行われたが、心不全が悪化した。また、IgG-λ型M蛋白血症、尿中Bence-Jones蛋白が認められ、多発性骨髄腫合併全身性アミロイドーシスが疑われた。血液内科で骨髄穿刺により多発性骨髄腫と診断され、全身性アミロイドーシスに対し十二指腸・直腸生検が行われた。しかし、アミロイドの沈着はなく、皮膚生検のため当科を紹介受診した。明らかな皮膚、粘膜症状は認めず、腹部の無疹部の皮膚生検で真皮の小血管壁と汗腺周囲に好酸性無構造物の沈着を認めた。構造物はcongo red染色とdirect fast scarlet染色で橙色の陽性像を呈した。偏光観察で緑色の発光を認め、アミロイドの沈着と考えられた。以上より、骨髄腫合併ALアミロイドーシスと診断した。多発性骨髄腫はボルテゾミブ・デキサメタゾンの治療が奏効し、心不全は内服治療中である。

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92歳女。全身紫斑を主訴とした。4年前から上肢に紫斑が出現し、徐々に拡大して血疱、びらんを生じるようになった。眼囲を含む全身に大小様々な大きさの紫斑を認め、臀部に手掌大のびらん、首に巨大な弛緩性血疱が存在した。紫斑の皮膚生検で表皮下に裂隙形成を認め、真皮浅層から中層および真皮血管周囲に好酸性無構造物の沈着を認めた。無構造物はcongo red陽性、過マンガン酸カリウム処理抵抗性、AE1/AE3陰性、免疫グロブリンλ鎖陽性であった。多発性骨髄腫に伴うALアミロイドーシスと診断し、患者の希望で対症療法で経過をみることにした。ゲンタマイシン硫酸塩軟膏を外用したが、初診後3ヵ月に肺炎、心不全で死亡した。

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57歳男。疼痛を伴う両下腿の紫斑と皮膚潰瘍を主訴とした。慢性腎不全で維持透析中であった。9ヵ月前に右大腿後面に拇指頭大の潰瘍が出現し、下肢全体や臀部に地図状に拡大した。潰瘍は一部が壊疽し、疼痛を伴っていた。入院後、CTで全身の動脈壁に石灰化を認め、潰瘍部の皮膚生検で動脈の内弾性板にカルシウムの沈着を認め、calcipylaxisと診断した。発熱と炎症反応高値があり、抗菌薬やプレドニゾロンコハク酸エステルナトリウムで改善した。その後も皮膚潰瘍が拡大したため、チオ硫酸ナトリウムを投与した。さらにカルシウム・リン値の調整のためシナカルセト塩酸塩、炭酸ランタン、アレンドロン酸ナトリウムを投与した。チオ硫酸ナトリウムの投与後、疼痛が改善し、皮膚潰瘍の拡大が停止した。また、骨シンチグラフィでカルシウム集積の低下が認められた。しかし、入院後75日に胆石胆嚢炎による敗血症性ショックと肝不全で死亡した。

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74歳女。左環指の皮疹を主訴とした。62年前に左環指に鉛筆芯が刺さり放置していた。1年前に刺創部に一致して黄白色の病変が出現し、徐々に増大した。左環指の遠位指節間関節の橈側面に7mm大の硬い黄白色調の結節を認め、辺縁に淡い灰青色斑を伴っていた。超音波で病変の表層に6×4mm大の類円形の内部不均一な高エコー領域を認め、深部では表層よりも輝度の高い4×3mm大の扁平型の高エコー領域を認めた。いずれの領域も後方エコーの減弱を伴っていた。紡錘形に切開して病変を摘出した。病変は硬い結節で、肉眼的に表層が黄白色調、深部が黒色調を呈する病変であった。病理組織学的に真皮浅層に好酸性の硝子化領域を伴う好塩基性の石灰化を認め、真皮深層に多数の黒色顆粒からなる均一な結節状病変がみられた。以上より、鉛筆刺創部に生じた皮膚石灰沈着症と診断した。

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60歳男。左上眼瞼の皮下腫瘍を主訴とした。約1年前に左上眼瞼に米粒大の丘疹が出現し、以後増大し皮下結節を形成した。左上眼瞼に径11mm大のドーム状に隆起した結節を認め、下床との可動性は比較的良好であった。皮膚生検を施行し、病理組織学的に真皮中層から深層に境界明瞭な結節を認めた。真皮内に淡好酸性の無構造物質が結節性に集簇し、その周囲を取り囲むような組織球の浸潤がみられた。偏光顕微鏡で無構造物質内に針状結晶を認め、痛風結節と診断した。局所麻酔下に切除術を施行し、被膜に包まれた白色腫瘍を摘出した。術後経過は良好であったが、抜糸後は通院が途絶えたため、その後の経過は不明である。

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8ヵ月女児。顔面と陰部の紅色調発疹を主訴とした。牛乳アレルギーのため生後2ヵ月より牛乳アレルゲン除去調製粉乳の単独哺育が開始された。6ヵ月後に外陰部の紅斑・びらん、両眼囲・鼻孔・口囲の紅斑、頭髪の疎毛、高乳酸血症および代謝性アシドーシスを認めた。尿中有機酸分析を行ったところ、マルチプルカルボキシラーゼ欠損症(MCD)の所見と一致した。牛乳アレルゲン除去調製粉乳の単独哺育から6ヵ月後に発疹が出現していることから、ビオチン欠乏に伴うMCDと診断した。ビオチン1mg/日の経口投与を開始し、7日後に顔面の紅斑が消退し、外陰部のびらんも上皮化した。また、高乳酸血症、代謝性アシドーシスも改善した。その後もビオチンの内服と牛乳アレルゲン除去調製粉乳を継続し、発疹の再燃なく頭髪の疎も改善した。10ヵ月後の現在、乳製品を除去した離乳食が進んだため、ビオチンの補充は中止とし、成長障害も改善傾向にある。

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下肢蜂窩織炎として入院加療を行った36例中、下肢静脈超音波検査を行った19例を対象に、年齢、性別、BMI、下肢静脈超音波検査における慢性静脈不全症(CVI)の所見、皮膚所見、リンパ浮腫、蜂窩織炎の既往、CRP値をレトロスペクティブに検討した。その結果、平均年齢は67.8歳で、男性8例、女性11例であった。19例中15例(78.9%)に下肢静脈超音波検査でCVIを認めた。その内訳は、弁不全による逆流12例(63.2%)、もやもやエコー2例(10.5%)、器質化した深部静脈血栓症1例(5.2%)であった。蜂窩織炎の既往があった5例中4例(80%)に下肢静脈超音波検査でCVIを認め、他の1例(25%)はリンパ浮腫があった。下肢静脈超音波検査でCVIを認めた15例のうち6例(40.0%)は、視診上静脈環流障害を示唆する皮膚所見がなく、CVIの予測は困難であった。また、7例(46.7%)はBMIが25.0未満で肥満はなかった。

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51歳男。掌蹠の紅斑と水疱を主訴とした。糖尿病コントロールのためジペプチジルペプチターゼ4阻害薬であるビルダグリプチンを内服し、約1ヵ月後に手掌・足底に水疱が出現した。手掌・足底に環状に広がる紅斑を認め、びらんを伴っていた。足底の一部は水疱を形成していた。水疱の皮膚生検で表皮真皮接合部に空胞変性、真皮浅層に帯状のリンパ球の浸潤を認め、一部表皮内に浸潤するリンパ球がみられた。クロベタゾールプロピオン酸エステルクリームを外用し、皮疹は軽快傾向を示した。また、薬疹を疑い、かかりつけ医にビルダグリプチンの中止を依頼した。ビルダグリプチンの中止後、新たな水疱形成、紅斑やびらんの拡大はなくなった。また、症状が改善し、その後再発していないため、ビルダグリプチンによる水疱型薬疹と診断した。糖尿病は良好な血糖管理が出来ていたため、ビルダグリプチン中止のまま経過観察されている。

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63歳男。全身の皮疹を主訴とした。3日前に尿管結石、胆石の疼痛に対しロキソプロフェンナトリウム、レバミピド、メフェナム酸を内服したところ、翌日に背部に水疱とびらんが出現し、拡大・増悪した。背部を中心に体表の40%に水疱とびらんを認め、皮膚生検で表皮全層に角化細胞の壊死、真皮上層に軽度のリンパ球浸潤を認めた。中毒性表皮壊死症と診断し、プレドニゾロンの内服とヒト免疫グロブリン大量静注療法を開始し、翌日に血漿交換療法を施行した。皮疹は改善し、第29病日に後遺症なく退院した。入院時より皮膚から市中感染型MRSAが検出され、重症感染症の発症が懸念された。入院中に行った薬剤リンパ球刺激試験でロキソプロフェンナトリウムが陽性、貼付試験でメフェナム酸が強陽性を示し、両薬剤が原因薬剤と判断した。アセトアミノフェンが内服テストで陰性を示したため、今後は解熱鎮痛薬として同薬を使用するよう指導した。

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72歳男。約3年前に心房中隔欠損症に対する左広背筋皮弁術の既往があった。約3ヵ月前に左背部に腫瘤が出現し、徐々に拡大した。左側腹部の広背筋皮弁の縫合側に一致して弾性硬の6cm大の皮下腫瘤を認め、背部に10×5cm大の皮下腫瘤がみられた。血液検査で白血球数と血小板数の減少を認めた。MRIで左側腹部から背部にかけてT1強調像で淡い高信号、T2強調像でも比較的高信号、T1強調脂肪抑制像でも高信号を呈する被膜に被われた嚢胞性の腫瘤を認めた。全身麻酔下に腫瘤摘出術および分層植皮術を施行した。病理組織学所見で腫瘤の周囲に線維性の被膜、内側に出血を伴う腔の形成、腔周囲に炎症性細胞浸潤と毛細血管の増生を認めた。免疫染色で腫瘍性病変や悪性所見は認めなかった。以上より、chronic expanding hematomaと診断した。術後経過は良好で、術後6ヵ月の現在まで再発を認めていない。

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6歳女児。5日前に39℃の発熱と頭痛が出現し、翌日にアデノウイルス迅速検査が陽性であった。クラリスロマイシン、クレマスチンフマル酸塩、耐性乳酸菌製剤の3剤を内服したが、同日夜より紅斑が出現し入院となった。頭部・顔面を除く、ほぼ全身に紅斑が多発して癒合し、下顎部や上肢、臀部、大腿の間擦部を中心に小膿疱が多発していた。血液検査で白血球数とCRP値が高値を示し、膿疱の細菌培養は陰性であった。膿疱の皮膚生検で角層下に好中球性膿疱が認められた。3剤を中止し、ステロイド外用を開始したところ、速やかに発熱や皮疹が改善した。回復後(第23病日)、入院時に陰性であったマイコプラズマ(MP)抗体が陽転し、MPの感染が判明した。3剤の薬剤リンパ球刺激試験、パッチテスト、内服誘発テストは陰性であった。以上より、アデノウイルスとMPの感染、または感染と薬剤の重複要因により発症した急性汎発性発疹性膿疱症と診断した。

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63歳女。左脛骨・脛骨遠位部骨折で整形外科に入院し、内固定術が施行されたが、術後2日に四肢・体幹に痒みのある発疹が出現した。四肢・体幹に融合傾向のある紅斑を認め、入院後に投与されたセレコキシブによる薬疹を疑った。同薬を中止し、2日後に紅斑が消退したが、同日病棟より「皮膚が黄色い」との報告を受けた。2ヵ月前からβ-カロチンを含むサプリメントを服用しており、1日あたりのβ-カロチン摂取量は81mgであった。顔面を含む全身の皮膚が黄色調を呈し、特に両手掌・足底で色調が強かった。血中β-カロチン値は315.6μg/dlと高値を示し、柑皮症と診断した。サプリメントを中止したところ、5週後に血中β-カロチン値が116.9μg/dlに低下し、皮膚色も健常人と同程度にまで改善した。

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25歳女。頭頂部の結節を主訴とした。2年前に頭頂部の小結節が出現し、拡大傾向にあった。頭頂部に小豆大の淡紅色ドーム状結節が単発していた。弾性硬で、下床との可動性は良好であった。色素性母斑や付属器腫瘍を疑い、局所麻酔下に全摘出した。病理組織学的に表皮はドーム状に隆起し、真皮中層から皮下組織にかけて境界やや不明瞭な結節状病変があり、表皮との連続性はなかった。結節中央部に層状の角化物を入れる毛包漏斗部様嚢腫構造があり、同部位を中心に放射状に脂腺が増殖し、周囲に線維性の結合織が増生していた。脂腺小葉を取り巻く結合織内に脂肪細胞や小血管腔が散見された。病変下部には、間質内の膠原線維と脂肪細胞の増生とともに、alcian-blue染色でムチンの沈着が確認された。毛包周囲にムチン沈着を伴うfolliculosebaceous cystic hamartomaと診断し、切除術を施行した。現在まで再発を認めていない。

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78歳女。十数年前に右下腿に褐色局面が出現し、3ヵ月前に一部が隆起した。右下腿内側に17×11mm大の褐色扁平局面を認め、一部に黒色隆起性病変がみられた。皮膚生検で扁平局面部に過角化があり、肥厚した表皮内に小型基底細胞様細胞が胞巣状に増生し、クローン型脂漏性角化症と診断した。一方、黒色隆起部には過角化と錯角化があり、表皮内の胞巣状小型基底細胞様細胞増生部に異型角化上皮が混在し増生していた。異常核分裂像や異常角化細胞も認め、Bowen病と診断した。真皮にはリンパ球を主体とする軽度の炎症細胞が浸潤していた。脂漏性角化症とBowen病の合併を疑い、3mmマージンで全切除した。術後の病理組織学的所見で2つの病変が連続していることが判明した。以上より、クローン型脂漏性角化症の病変内に発生したBowen病と診断した。

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症例1は80歳女性で、3ヵ月前に前医で肛門の黒色腫瘤を指摘された。肛門4時方向に1.2×1.0cm大で境界明瞭な楕円形の黒色結節を認め、辺縁が一部びらんを伴っていた。皮膚生検で表皮と連続して好塩基性に染まる胞巣が、地図状に真皮に向かって増殖していた。充実型基底細胞癌と診断し、腫瘍辺縁から3mm離して切除し、単純縫縮術を施行した。1年後に下顎部に新たに基底細胞癌が発生し、切除した。症例2は77歳男性で、2ヵ月前から肛門に黒色腫瘤が出現した。肛門9時方向に2.0×1.0cm大の境界明瞭なまだらに黒色調を呈する結節を認めた。皮膚生検で表皮から連続して好塩基性に染まる胞巣が真皮内に増生し、辺縁に柵状配列と裂隙を認めた。充実型基底細胞癌と診断し、腫瘍辺縁から3mm離して切除し、単純縫縮術を施行した。以後、再発なく経過している。

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3ヵ月女児。生後まもなく左前頭部の隆起を母親が発見した。生後2ヵ月に左眉毛部に紅色皮疹が出現し、徐々にドーム状に隆起した。左眉毛部に9×5mm大の硬く表面平滑な紅色結節を認め、左前額部に僅かに隆起を触れた。結節の皮膚生検で真皮全層に密な細胞浸潤を認め、浸潤している細胞は細胞質が豊富で核に切れ込みをもつ組織球様細胞から成っていた。免疫組織学的に組織球様浸潤細胞はCD1a陽性、S-100蛋白陽性であり、Lngerhans細胞由来と考えられた。X線で左前頭部の骨縫合に重なって打ち抜き像が認められた。生検後、左眉毛部の結節は徐々に縮小傾向となり、約1ヵ月後に僅かに瘢痕を残して消退した。その後、2年間の経過観察で皮疹の再燃はなく、左前頭部の隆起も平坦化し、同部位の骨打ち抜き像も縮小傾向にあった。以上より、congenital self-healing reticulohistiocytosisと診断した。

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34歳女。両側小指基部尺側の小結節を主訴とした。出生時より両側小指基部尺側に小結節があり、数日前から右小指基部の小結節に圧痛を伴うようになった。右小指基部尺側に6×7mm大、左小指基部尺側に4.5×3mm大の弾性硬で半球状に隆起する淡紅色小結節が認められた。右小指の小結節の皮膚生検で表皮突起の不規則な延長を伴う表皮肥厚を認め、真皮乳頭下層に神経終末小体と毛細血管の増生が認められた。皮膚付属器や骨・軟骨組織はみられなかった。真皮中層から深層にかけて様々な断面を示す神経線維束を多数認め、神経線維束はS-100染色で陽性を示し、周囲の間質はalcian-blue染色で陽性を示した。左小指の小結節の皮膚生検も同様の所見であった。以上より、両側性の痕跡的多指症と診断した。

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症例1は68歳女性で、右上腕の結節を主訴とした。右上腕に大豆大で皮内から皮下にかけて弾性硬に触れる常色結節を認めた。症例2は62歳男性で、左前胸部の結節を主訴とした。左前胸部に拇指頭大で皮内から皮下にかけて弾性硬に触れる紅色結節を認めた。下床との可動性は良好で、表皮との可動性は不良であった。症例3は66歳女性で、右鼠径部の結節を主訴とした。右鼠径部に拇指頭大の表皮に乳頭腫状変化を伴う紅褐色局面を認めた。下床に拇指頭大の腫瘤を触れ、下床への浸潤が強く、可動性が不良であった。3例とも局所麻酔下に摘出術を施行した。病理組織学的に腫瘍細胞は類円形の豊富な胞体を有する比較的大型の細胞で、細胞質に好酸性の微細な顆粒を伴っていた。免疫組織学的に腫瘍細胞はS-100染色で陽性、細胞質の顆粒はPAS染色で陽性を示し、顆粒細胞腫と診断した。3例とも術後に再発を認めていない。

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28歳女。外陰部から肛門周囲の皮疹を主訴とした。2ヵ月前より外陰部から肛門周囲に軽度のそう痒感を伴う黒褐色の皮疹が出現した。外陰部から肛門周囲に米粒大までの黒褐色丘疹が多発していた。皮膚生検で表皮の肥厚を認めたが、基底層は保たれ、真皮への浸潤はなかった。表皮では全周性に異型ケラチノサイトや個細胞角化、核分裂像がみられた。Bowenoid papulosisと診断し、イミキモドクリーム5%を週3回外用を開始した。外用開始後2週に皮疹は消退傾向を示し、軽度の紅斑とそう痒感を認めた。外用開始後4週に皮疹は退色し平坦化した。以後、無治療で経過観察しているが、皮疹の再発は認めていない。

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40歳男。右下肢の疼痛と発赤を主訴とした。生体腎移植後で免疫抑制剤を内服中であった。前医で右下肢蜂窩織炎の診断で抗菌薬が投与されたが、全身管理を含めた治療が必要となり、症状の出現から約20時間後に当科へ入院となった。第2病日(発症約30時間後)に敗血症性ショックとなり、右大腿遠位部に紫斑と水疱形成が出現した。壊死性筋膜炎に伴う敗血症性ショックと診断し、免疫グロブリン製剤の投与と皮膚デブリードマンを追加した。血液と組織の培養からStreptococcus pyogenesが同定された。以上より、Streptococcus pyogenesによる重症の壊死性筋膜炎およびStreptococcal toxic shock syndromeと診断した。しかし、皮膚から筋膜にかけての壊死が進行し、感染コントロールのため整形外科で右大腿切断が施行された。その後も残存壊死に対しデブリードマンを数回施行した。第29病日に陰圧閉鎖療法を導入し植皮術で閉創した。

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症例はタイ在住の53歳女性で、4ヵ月前より両下腿に数個の皮疹が出現した。タイの病院にて膿培養でMycobacterium abscessusが検出され、抗菌薬の内服治療が行われた。しかし、6ヵ月間の治療が必要といわれ、日本に帰国し当科を紹介受診した。両下腿に径5cmまでの表面に発赤を伴う数個の膿瘍を認めた。皮膚生検で炎症細胞浸潤とLanghans型巨細胞を伴う類上皮細胞性肉芽腫を認め、一部に多数の好中球浸潤がみられた。タイの病院で抗菌薬を投与された影響もあるのか、組織培養で菌は検出されなかった。タイの病院の培養結果や病理所見から、Mycobacterium abscessusによる皮膚非結核性抗酸菌症と診断した。タイの病院の膿培養の抗菌薬感受性結果に基づきアミカシンの点滴とクラリスロマイシンの内服を開始した。1ヵ月後に膿瘍が縮小し、モキシフロキサシンとクラリスロマイシンの内服に変更した。治療開始から6ヵ月後に治癒と判断した。

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57歳男。3日前からの発熱と全身の膿疱を主訴とした。掌蹠膿疱症のためオロパタジン塩酸塩とメキタジンを内服中であった。体幹・四肢に約1cm大までの紅暈を伴う膿疱が多発し、手掌や足底に角化傾向の強い紅斑をびまん性に認めた。皮膚生検で角層下に多数の好中球を含む膿疱を認め、真皮浅層の血管周囲にリンパ球や好中球が浸潤していた。外来で経過観察したが、初診後3日に全身倦怠感が出現し入院となった。急性汎発性膿疱性細菌疹と診断したが、同じ頃に側腹部痛や背部痛が出現した。プレドニゾロンの内服で皮疹は軽快したが、側腹部痛や背部痛が持続した。胸部CTで両側下葉の胸膜肥厚と少量の胸水を認め、胸膜炎と診断した。クリンダマイシンを3日間内服した後、レボフロキサシンの点滴投与を1週間行い、同薬の内服に切り替えた。側腹部痛や背部痛は軽快し、皮疹も消退したため、入院後24日に退院となった。

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61歳男。2年前から背部にある腫瘤が徐々に増大した。背部に4cm大、表面常色で皮面よりなだらかに隆起する皮下腫瘤を認めた。弾性硬で圧痛があり、下床との可動性は良好であった。MRIで皮下に楕円形で、周囲との境界明瞭な腫瘍を認め、腫瘍はT1強調像で低信号、T2強調像で高信号を示した。ガドリニウム造影後のT1強調像で増強効果はみられなかった。脂肪抑制されず、画像上脂肪成分の含有は不明であった。皮膚生検で皮下脂肪組織内に境界明瞭な腫瘍を認めた。腫瘍は大部分が紡錘形細胞から構成され、成熟脂肪細胞の混在は僅かであった。また、粘液腫様の間質と膠原線維の増生を認め、肥満細胞が散見された。腫瘍を構成する細胞に異型性はなかった。免疫組織学的に紡錘形細胞はびまん性にCD34が陽性を示し、Ki-67(MIB-1)の陽性率は約3%であった。局所麻酔下に切除術を施行し、術後5年7ヵ月の現在まで再発を認めていない。

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66歳男。発熱と右腰部痛を主訴とした。前日より38℃台の発熱があり、右腰部を中心に疼痛を伴う水疱と紅斑が出現した。右腰部に帯状に集簇した水疱、紅斑、痂皮を認め、前胸部、背部、下腿屈側に中心陥凹を伴う水疱が数個みられた。汎発性帯状疱疹と診断し、入院となった。採血で腎機能の低下を認め、アシクロビルの点滴を1回250mgの1日2回投与に調製して治療を開始した。皮疹は徐々に痂皮化し、疼痛も改善した。入院から8日後に退院となったが、発症後21日より治療部位に一致して腹部の膨隆が出現し、便秘を伴った。腹部造影CTで内外腹斜筋や腹横筋の分布に左右差を認め、右側で菲薄化がみられた。筋が菲薄化した部分で肝下縁や腸管、腹腔内の脂肪組織が軽度膨隆していた。以上より、帯状疱疹による腹筋麻痺と診断した。便秘症状は内服加療で改善したが、腹部膨隆は7ヵ月経過時まで消失せず、その後は通院を自己中断されている。

基本情報

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皮膚科の臨床
58巻8号 (2016年7月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:0018-1404 金原出版

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