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リベド血管症(livedo vasculopathy)は,下肢に好発する慢性再発性で網状を呈する紫色の皮斑であり,下腿,足関節部,足の順に病変を認めることが多い1)(図1-a)。有痛性のことが多く,ときに潰瘍を伴う2)。皮膚潰瘍の好発部位は足関節部と足背部である。辺縁に毛細血管拡張や色素沈着を伴う萎縮性,白色調の星状の瘢痕,すなわちatrophie blanche(図1-b)を残すことがある3)。推定発症率は1人/10万人で,若年から中年に多く,女性と男性の比率は3:1と報告されている4)。病理組織学的病態は,真皮内血管の血管内皮の増殖,内膜下のヒアリン化および血栓が主であり,明らかな血管炎は通常認めない5)。皮膚生検する時期によって異なる組織学的所見をみる6)。早期病変では,真皮の乳頭層から中層の小血管の管腔内に血栓の形成がみられ,潰瘍形成に伴い,真皮乳頭層の虚血病変と小血管の非特異的な増生がみられる。血管周囲のリンパ球浸潤がみられることがあるが,明らかな血管炎所見は認められない。赤血球の血管外漏出が真皮乳頭層にみられることもある。進行した病変では,血管壁の肥厚とヒアリン化がみられ,血管内皮の浮腫や増殖が非特異的に認められ,血管壁のフィブリンの沈着が顕著となり,これらの変化は潰瘍部位だけでなく,潰瘍から離れた部位にも認められる。さらに進行した病変では,真皮の線維化,拡張したリンパ管を伴う瘢痕形成および表皮の萎縮が認められる。直接蛍光抗体法では,血管壁に早期にはフィブリンの沈着,後期には免疫グロブリンや補体の沈着がみられることがあるが,これらは二次的なものであり,病態には直接関与しないと考えられている7)。特発性または二次性に真皮内の血管に血栓傾向を示す病態と考えられ,臨床症状,組織学的所見,血液・画像・生理機能などの検査所見などから総合的に診断する必要がある。鑑別疾患としては,結節性多発動脈炎などの血管炎,全身性エリテマトーデスなどの膠原病,うっ滞性皮膚炎(潰瘍),クリオグロブリン血症,抗リン脂質抗体症候群,プロテインC・プロテインS欠乏症,コレステロール結晶塞栓症,ホモシステイン血症,薬剤性(ヒドロキシカルバミドなど),ワルファリン誘発性皮膚壊死,壊疽性膿皮症,サルコイドーシス,感染に伴う皮膚潰瘍,自傷皮膚炎など多岐にわたる。
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