臨床雑誌内科 102巻4号 (2008年10月)

膵癌診療最前線 新たな抗癌薬により長期生存を目指す

  • 文献概要を表示

膵癌は最難治癌であり、罹患数と死亡数がほぼ同数で、根治例は限られた早期癌切除例のみである。生存期間の延長には切除例、非切除例を問わず、効果的な化学療法が必須である。gemcitabine(GEM),TS-1を中心に展開している膵癌化学療法に、新規抗癌薬、分子標的薬が加わることにより、さらなる生存期間の延長が期待される。膵癌の診療にはinterventionと化学療法の両方の技術・知識を併せ持った医師があたるべきである。膵嚢胞症例が、早期発見のための高危険群として確立されつつある。

  • 文献概要を表示

日本膵臓学会から刊行された本邦初の膵癌診療ガイドラインは、一般の診療施設における膵癌の診断を効率よく進める指針を提示した。治療についても現状を示し、選択肢は多くないながらも的確な治療方針へと到達し、患者に説明する際の助けとなっているものと思われる。本稿ではガイドライン作成の経緯を簡単に記し、その概略を述べたうえで、今後の展望についても少しふれた。一方で、専門施設にとっては参考になるような指針の記載が少ないという声もあるが、診療ガイドラインは本来、一般施設の診療のガイドとなるべく作成されるもので、専門施設はその先の診断法・治療法を開発するために適正な手続きを踏んで臨床試験として試していくべきである。

  • 文献概要を表示

膵癌は、その他の癌と比較し、発見時すでに根治手術ができない症例が多く、きわめて予後不良である。本邦における2006年の膵癌死亡率は男性20.4、女性16.8と微増傾向を認め、70歳以上の高齢者、男性にやや多い傾向にある。リスクファクターとしては、(1)膵癌の家族歴、(2)糖尿病や慢性膵炎、遺伝性膵炎の合併疾患、(3)喫煙、があげられ、そのほか高脂肪食、アルコール、コーヒーの多量摂取なども関与している可能性がある。今後、膵癌の予後を少しでも改善させる手段としては、リスクファクターを複数有する患者には膵癌を疑い、積極的に検査を行うことが有用である。

  • 文献概要を表示

膵癌の最新の治療成績につき、日本膵臓学会による全国膵癌登録(2001~2004年)の解析結果や、標準手術と拡大手術に関する無作為比較試験(RCT)の成績、切除後補助療法や術前補助療法に関する最新の文献報告および自験例の成績を検討した。膵癌登録からStage別予後を本邦規約とUICC規約でみると、Stageの進行とともに予後はきわめて不良となるが、早期膵癌に相当する症例が全体の5%前後にすぎないことを銘記すべきである。拡大手術と標準手術に関するRCTの成績からは、拡大手術による予後の改善効果はなく、外科的に確実な局所制御を行うこと(R0手術)の重要性が指摘された。現在のところ膵癌化学療法の第一選択はgemcitabine(GEM)であり、切除後の補助化学療法においても優れた効果が示されている。術前補助療法としてGEM併用化学放射線療法が注目されており、当科での最近3年間の成績からも、予後向上への貢献が期待される。

  • 文献概要を表示

膵癌の多くは発見時進行癌で予後はわるいが、腫瘍径20mm以下(pTS1)のStage Iに限ると、完治が期待できる。小膵癌には特異的症状はなく、軽度の腰背部痛、心窩部痛が唯一の症状であることが多い。腹背部に何らかの症状を訴えた症例にはUSを施行し、腫瘤、膵管拡張、嚢胞性病変など異常所見がみられたらMDCTやEUSを施行する。急性膵炎が膵癌の初発症状であることもあるので、経過中のCT,MRCPで膵管拡張、とくに十二指腸まで追跡できない膵管をみたら精査が必要である。軽微な腹部症状でもUSにてscreeningすること、急性膵炎例は膵癌を念頭に置くことが、小膵癌の拾い上げにつながる。

  • 文献概要を表示

膵癌は予後不良な疾患であり、予後の向上には早期発見が重要である。ハイリスク群の拾い上げと、スクリーニング法の確立が必要である。膵の観察に重点をおいた腹部超音波(US)検査について紹介する。

  • 文献概要を表示

IPMN(intraductal papillary mucinous neoplasm)、膵嚢胞症例では膵液中に変異ras遺伝子が検出され、膵発癌高危険群となる可能性を考え経過観察を行ってきた。その結果、平均4年の経過観察期間中、197例中7例に膵癌の発生を認めた。膵癌発生は年率0.95%であり、『国民衛生の動向』における年齢性別膵癌のデータに基づく予測値0.042%と比較して、有意に高かった。したがって、これらの疾患群を拾い上げて効率のよいスクリーニング検査を行えば、偶然にしかみつからなかった早期膵癌の診断増加につながると考えられる。

  • 文献概要を表示

膵癌の死亡数は2005年では22,926人で、癌の部位別では第5位である。罹患数は2001年度では20,667人で、罹患数を死亡数が上回る、予後の著しくわるい癌である。糖尿病の該当者かその予備群は、2006年には約1,870万人と推定され、40歳から74歳に限ると、ほぼ4人に1人が糖尿病の疑いがあることになる。膵癌登録報告2007では、膵癌患者の約25%に糖尿病の既往歴を認め、膵癌の診断契機として糖尿病の増悪を4~5%に認めた。糖尿病患者を診察したときには膵癌の存在に注意を払い、腹部超音波検査などのスクリーニング検査を適宜行っていくことが、膵癌早期発見の一つの糸口である。

  • 文献概要を表示

膵癌は予後不良であり、早期発見が課題である。USは、もっとも低侵襲なスクリーニング検査として推奨され、膵嚢胞、主膵管拡張、胆管拡張などの間接所見を拾い上げることが重要である。CTは、MDCTによる3相撮像が必須であり、膵実質相での低吸収域、遅延相での濃染所見を捉えることがポイントとなる。US・CTを組み合わせても腫瘤が指摘しえない例に対しては、EUS(超音波内視鏡)が必要となる。EUSは優れた局所分解能を有しており、現時点では腫瘤描出能がもっとも優れている。US,CTを中心とした低侵襲性画像診断にて間接所見を拾い上げ、EUSを実施することが、早期膵癌診断の効率的なアルゴリズムと考える。

  • 文献概要を表示

非切除悪性胆道閉塞に対する胆道ドレナージは、外科的バイパス術より低侵襲で、経皮的ドレナージよりQOLの高い内視鏡的ドレナージが普及してきた。用いられるステントも、plastic stentより長期開存が期待できるmetallic stentが開発され、中下部胆管閉塞例ではcovered metallic stentの有用性が確立してきている。切除不能膵癌も、gemcitabineやTS-1などの抗腫瘍療法により予後が改善してきており、延長した生存期間に見合った胆道stentingが求められる。膵癌の患者の管理には化学療法の知識だけでなく、適切な胆道ドレナージが重要であり、開存期間が長く抜去可能なcovered metallic stentが推奨される。

  • 文献概要を表示

膵癌は膵頭部に好発するため胆道閉塞を高率にきたすが、非切除例の約20%では経過中にgastric outlet obstruction(GOO)も生じる。GOOに対する姑息的治療法として、胃空腸吻合術に代わりmetallic stentingが広く行われるようになった。GOO症例は前終末期であることが多く、低侵襲性治療である本法の意義は高い。本法によりperformance scoreが改善し、化学療法を可能とすることも期待される。しかし化学療法による本法への影響などは、まだコンセンサスが得られていない。低侵襲的姑息療法として著しい有効性が期待できる治療法であり、一日も早い本邦での承認が望まれる。

  • 文献概要を表示

腹腔神経叢ブロックは、腹腔神経叢に薬液(局所麻酔薬やエタノール)を注入して、腹部内臓に由来する疼痛を緩和させる治療法である。従来は、CT下などで体表背面からアプローチする後方接近法で施行されてきたが、これを経胃的にEUS下で行うことにより、腹腔神経叢に対して前方から至近距離でアプローチすることが可能となった。本法は、主に切除不能の膵癌やその他の消化器癌による癌性疼痛が適応となるが、これまでに高い安全性と有効性が示されている。EUS-FNAと同様の手技で簡便に施行でき、診断に引き続いて行われる治療の一環として、今後のさらなる普及が期待される有用な治療法である。

  • 文献概要を表示

近年、膵癌に対する動注化学療法は、肝転移巣のみならず原発巣治療にも有用性があるといわれている。今回、当科において切除不能膵癌、とくに肝転移を伴ったStage IVb膵癌に対して、原発巣および肝転移巣を同時に局所制御する膵周囲動脈塞栓術と、血流改変術後のリザーバー動注化学療法を14例に行った。治療成績は、評価可能であった13例中partial response(PR)が4例で奏効率は30.1%で、生存期間中央値(median survival time:MST)は9ヵ月、1年生存率は47%で、平均生存期間は15.5ヵ月であった。最長は51ヵ月で、現在も外来加療中である。本治療法は技術的に複雑ではあるが、長期生存も期待でき、切除不能膵癌に対する治療法の選択肢の一つと考えている。

  • 文献概要を表示

これまで進行膵癌に対する化学療法は、fluorouracil(5-FU)を中心として、さまざまな試みがなされてきた。しかし、いずれも効果が得られることはきわめてまれであった。そうした中、新規抗癌薬gemcitabineの登場により、膵癌化学療法は本邦でもやっと夜明けを迎えたといえる。筆者らの多施設共同研究でも、gemcitabineの腫瘍縮小効果はそれほど顕著ではないが、QOLが保たれ、外来治療が可能であり、延命効果を認めるようになってきた。近年、科学的根拠に基づいた膵癌診療ガイドラインが発行され、gemcitabineが一次化学療法薬に認定されている。しかし、gemcitabineとの他剤併用療法の結果はいずれも単独療法に比べ有意差を認めず、投与方法の工夫および第二選択薬の開発は、今後の問題点である。さらに、gemcitabineの化学放射線療法での結果が期待される。

  • 文献概要を表示

gemcitabine(GEM)は、進行膵癌に対する標準治療として確立しているが、その治療成績は十分とはいえず、他の抗癌薬との併用療法の臨床試験が多く行われている。TS-1はフッ化ピリミジン系の経口抗癌薬であり、単剤あるいはGEMとの併用による全身化学療法、あるいは局所進行例における放射線化学療法において、その有効性が示されつつある。経口薬であることからQOLの面でも優れており、期待される薬剤である。当科の進行膵癌の治療成績の検討においても、TS-1導入前後で生存期間が9.5ヵ月から12.9ヵ月まで改善を認めている。現在進行中のGEM単剤とGEM/TS-1併用療法との比較試験の結果が待たれる。

  • 文献概要を表示

膵癌における全身化学療法の適応は、切除不能膵癌に対する治療と術後補助療法に分けられる。その適応規準として、病理学的診断がされている、全身状態が保たれている、主要臓器機能が保たれている、十分な説明のうえ同意が得られている。などが必要である。現在、gemcitabine(GEM)が膵癌に対する標準化学療法であり、続いてTS-1が使用可能である。これらの薬剤を用いた化学療法は、いずれも外来で行われている。安全性の確保のためには、適応規準と禁忌を十分認識して実施する必要がある。膵癌の予後改善にはより有効な一次治療の開発とともに、GEM耐性後の二次治療の確立が今後の課題であり、現在TS-1を中心とした開発やoxaliplatinを加えたレジメンの有効性が報告されつつある。

  • 文献概要を表示

高齢化社会の到来により、高齢の膵癌患者の数も増加している。国内外の報告では、高齢者膵癌患者における明確な投与基準は存在しない。70歳以上のStage IVb膵癌患者におけるgemcitabine(GEM)の投与では、週1回3投1休3コースの達成率は低率であるが、投与間隔の延長、全身状態に応じた減量を行うことで、安全に遂行可能である。70歳以上のStage IVb膵癌患者におけるGEMの投与は、生存期間の延長、症状緩和効果が期待できる可能性がある。

  • 文献概要を表示

切除不能膵癌に対する標準的な一次治療はGEM(gemcitabine)単剤治療であるが、さらなる治療効果を求めて、さまざまな併用療法が試みられている。わが国では、TS-1を用いた治療が積極的に行われており、GEMとの併用療法(一次治療)や、GEM不応例に対する二次治療として頻用されている。GEM、さらにはTS-1が不応となった場合の治療として確立された治療法はなく、エビデンスの確立が急務となっている。

  • 文献概要を表示

膵癌の術後補助療法は有用であるとするエビデンスレベルの高いランダム化比較試験は少ない。米国では、化学放射線療法が術後補助療法の中心となった。欧州で行われた大規模なESPAC-1では、fluorouracil(5-FU)を使用した化学療法は有効であるが、化学放射線療法はむしろ弊害であると結論づけた。CONKO-001の結果ではgemcitabine(GEM)による化学療法施行群では手術単独群よりも無再発生存期間・生存期間が有意に良好だった。欧州と日本では、GEMによる化学療法が術後補助療法の中心となった。術前補助療法については切除断端やリンパ節転移の陰性化率を向上させたとする報告があるものの、予後の改善に関するエビデンスは得られていない。

  • 文献概要を表示

局所進行膵癌に対する治療は、従来fluorouracil(5-FU)併用放射線療法が主たる役割を果たしてきたが、その生存期間中央値(MST)は6~10ヵ月と十分ではない。膵癌の全身化学療法における標準的治療薬であるgemcitabineや、新しい5-FU系経口薬であるTS-1やcapecitabineなどを用いた化学放射線療法が報告される。局所進行膵癌の再発の多くは遠隔転移であり、治療成績の向上のためには、局所のみならず、遠隔転移の制御を重視した治療体系の構築が必要である。

  • 文献概要を表示

局所進行膵癌に対する標準的治療については、長いあいだ論争がある。米国、日本では放射線化学療法を標準治療とする傾向が強いと考えられるが、欧州では全身化学療法を標準とすることが多かった。両者の治療を比較した無作為化試験は少なく、症例数も少なく、また結論もさまざまである。gemcitabineの登場以来、これが進行膵癌に対する標準薬となったため、局所進行膵癌にも全身化学療法が広く行われるようになった。gemcitabineを用いた放射線化学療法の試験もあるが、その方法、成績は一定ではない。放射線化学療法とgemcitabineによる全身化学療法の両者の治療成績に著明な差があるとは考えにくいが、今後は局所進行膵癌をさらに詳細に分析し、それぞれの治療に、より適した対象を見出すことが重要と考えられる。

  • 文献概要を表示

動脈浸潤膵癌18例に、11例の上腸間膜動脈、10例の肝動脈、17例の門脈の合併切除を伴った膵切除を行った。17例がStageIVの進行癌であったが、14例でROとなった。最終病理所見でM1(H,N3)が6例あり、手術適応を厳格にする必要が考えられた。1例の肝不全死、2例の抗癌薬関連死亡、などを認めたが、42ヵ月無再発生存例を経験し、全症例の1生率47.5%、3生率31.2%、MST 11ヵ月であった。M0に限った場合、1,3生率は56.6%と良好であり、MSTにいたっていない。手術適応や手術の意義は、今後の検討課題であるが、MO症例では手術を選択する意義があると考えられた。

  • 文献概要を表示

ヒトの膵癌でみられる遺伝子異常をマウスの膵臓に導入することにより、ヒト膵癌の発癌過程を近似した膵発癌モデルが得られる。膵臓上皮特異的に活性型変異Krasを発現させると、前癌病変PanINが出現する。変異Krasに加え、腫瘍抑制因子であるp16,p53,TGF-βII型受容体のいずれかを不活性化させると、PanINから浸潤癌へと進行し、体重減少、腹水貯留、肝・肺転移、腹膜播種などヒトの膵癌と類似した症例を呈し、癌死する。その膵癌組織像は間質の著明な増生・線維化を伴う管状腺癌であり、中でも、Kras発現+TGF-βII型受容体ノックアウトモデルは、未分化な組織型の混在がない点で、ヒトの組織像にもっとも似ている。ヒトの膵癌を近似したモデルの研究から、膵癌の発癌機序の解明や、新しい診断法・治療法の開発に大きく貢献できる可能性がある。

  • 文献概要を表示

膵癌において、現在までに第III相試験で有効性が示されている分子標的薬はerlotinibのみであり、gemcitabineとの併用において、生存期間の延長が示されている。現在、日本においてもgemcitabineとの併用で、第II相試験が進行中である。その他の分子標的薬として、大腸癌で上乗せ効果が示されたbevacizumabとcetuximabに関しては、それぞれgemcitabineとの併用の第III相試験の結果、有効性は示されなかった。現在、期待されている分子標的薬としてはaxitinibがあり、国際共同の第III相試験が進行中である。

  • 文献概要を表示

近年膵癌に対する超音波内視鏡下穿刺術を用いた治療が、臨床や、基礎実験の場で試されている。すなわち、膵癌の疼痛に対する腹腔神経叢ブロックは臨床の場で汎用されており、78~88%の症例でその治療効果が有効とされている。そのほかは基礎実験、臨床試験レベルが多いが、paclitaxelを含有するOncoGelの膵臓への局注、その他膵臓に対する光力学療法、エタノール局注療法、radiofrequency ablation(RFA)の基礎実験が行われている。さらに、放射性物質を膵臓にimplantationするbrachytherapyは基礎、臨床試験が行われている。免疫療法として、樹状細胞を超音波内視鏡下穿刺術(EUS-FNA)下に膵臓へ局注する臨床試験が進行中であり、放射線感受性に係わるTNFeradeという遺伝子を用いた遺伝子治療gene therapyも臨床試験中である。いずれにせよ、EUS-FNAを用いた膵癌に対する新しい療法の開発が期待され、目が離せない領域である。

  • 文献概要を表示

鳥インフルエンザウイルスが変異して、ヒトからヒトへと効率的に伝播する特性をもつ新型インフルエンザウイルスとなり、世界規模の大流行を起こすのではないかと予想されている。新型インフルエンザウイルスに対して、人類は免疫をもっていないため、多くのヒトで重症化する可能性が懸念される。新型インフルエンザの世界的な流行(パンデミック)は、10~40年周期で起こっており、この周期からみると、今後いつ新型インフルエンザが発生してもおかしくないということになる。また、鳥インフルエンザのヒトへの感染が繰り返し生じている現状は、鳥インフルエンザウイルス遺伝子の変異を起こしやすくし、結果として、新型インフルエンザウイルスの発生確率を高めていると考えられる。厚生労働省の被害予想は、罹患率を全人口の25%とし、医療機関への受診患者数は約1,300万人から2,500万人、入院患者数は53万人から200万人、死亡者数は17万人から64万人にのぼると推定。対策としては鳥インフルエンザの発生抑止、発生してもヒトへの感染阻止を行うが、海外で発生した場合は初期段階において、水際対策などにより、感染進入防止を行う。それでもパンデミック期に突入した場合は、対策の主眼を、健康被害を最小限にとどめること、社会・経済機能の破綻を防ぐことに移す。医学的な介入としては、ワクチンと抗ウイルス薬が準備されている。

  • 文献概要を表示

皮膚に水膨れすなわち水疱をきたす疾患は化学・物理的障害、感染症、皮膚炎など多岐にわたり、主なものをTable 1に示す。水疱の形状・分布、経過から原因の推測、診断の容易な症例もあるが、診断に至るまで長期間他の疾患と見なされた症例も経験する。ここでは代表的な自己免疫性水疱症について述べる。

診療controversy medical decision makingのために CKDにおける脂質コントロールレベル

  • 文献概要を表示

23歳女。患者は頸部違和感、全身倦怠感を主訴とした。近医で瀰漫性甲状腺腫を指摘され、その後、動悸、息切れ、振戦、発汗、頻脈等の甲状腺機能亢進症状を強く訴えて、著者らの施設へ受診となった。所見では内分泌検査でTSH不適切分泌症候群が認められたが、甲状腺自己抗体は陰性であった。下垂体前葉ホルモン分泌能はTSHを含めて正常に保たれており、TRH負荷試験ではTSHは正常反応を認めた。一方、下垂体MRIでは下垂体にマクロアデノーマがみられた。以上より、本症例はTSH産生下垂体腺腫と診断され、オクトレオチド負荷試験でTSHの抑制を認め、持続皮下注射が開始された。その結果、投与後、頻脈は消失し、17日後には甲状腺機能が改善した。また同時に、腫瘍の著明な縮小がみられた。以後、オクトレオチドは手術前日まで20日間投与され、経鼻的に腫瘍は全摘された。

  • 文献概要を表示

69歳男。患者は肺癌切除後、肺気腫でフォローアップ中であった。今回、上部消化管造影で十二指腸水平脚の直線的途絶、腹部CT・超音波検査で十二指腸の拡張、先細り様の閉塞、大動脈と上腸間膜動脈(SMA)との角度の低下等が認められ、SMA症候群と診断された。肺癌手術後3年間に約20kgの体重減少を認めていることから、肺気腫に伴う体重減少によりSMAと腹部大動脈の間隙が狭小化し、十二指腸水平脚が圧迫されたことが原因と考えられた。左側臥位で十二指腸の通過が確認できたため、保存的治療を選択、経中心静脈高カロリー輸液下に食後の姿勢療法を継続し、経静脈的脂肪製剤を併用した。その結果、入院25日目には以前と同様の食事摂取が可能となり、体重も増加傾向となった。

  • 文献概要を表示

73歳女。患者は発熱を主訴とした。四肢や体幹の関節の痛みを伴うようになり近医を受診、血液検査では炎症反応は高値であった。膠原病類似徴候を主徴としていたが、特定の膠原病の存在を示す検査所見は得られなかった。そこで、感染性心内膜炎の除外のため経胸壁心エコーを施行したところ、左房に径の拡大は認められなかったものの、内部に約3×2cm大の分葉状の塊状エコーが確認された。その形態から左房粘液腫を疑い、血清IL-6活性を測定したところ、23.5pg/mlと上昇を認め、あわせて頭部MRIでは最近発症した脳塞栓症の存在が明らかになった。心エコー上、腫瘍は極めて可動性に富んだ部分を有しており、新たな塞栓症が生じることが危惧されたため、早急に腫瘍摘出術が施行された。その結果、病理組織学的所見で粘液基質を背景に内部に小型の粘液腫細胞がみられ、左房粘液腫と確定診断された。術後は発熱、関節痛は消失し、血清IL-6活性も基準値まで低下した。

  • 文献概要を表示

71歳女。患者は貧血と黒色便を主訴とした。所見では末梢血で高度の貧血が認められ、BUN・クレアチニンが上昇、総蛋白・アルブミンが低下していた。腫瘍マーカーは軽度に上昇し、便潜血反応は陽性であった。一方、上部消化管内視鏡では慢性萎縮性胃炎以外に病的所見は認めず、下部消化管内視鏡では直腸から回盲部まで多量のタール便を認めたものの、出血部位は確認できなかった。そこで、RIアンギオグラフィと出血シンチグラフィを併用して小腸の出血部位を同定し、あわせてRIアンギオグラフィの集積およびCTとMRIでの造影効果所見に基づき、本症例は豊富な血流を示す小腸腫瘍の特徴を備えた小腸gastrointestinal stromal tumor(GIST)と術前診断された。治療として開腹手術を施行したところ、Treitz靱帯から肛門側約70cmの空腸において、腸間膜付着部対側に壁外に発育した腫瘍が認められ、栄養血管も含めて小腸の部分切除が行なわれた。以後、経過は順調であった。

  • 文献概要を表示

58歳女。患者は特発性顔面痙攣のためcarbamazepineを内服していた。今回、発熱と頭痛等の症状があり、近医で感冒として投薬されたが、顔面ならびに体幹を中心に発疹を生じ、肝障害も認めた。そのため著者らの施設へ紹介となった。所見では体幹・四肢を中心に頸部、顔面に紅色丘疹、瀰漫性滲出性紅斑が認められ、あわせて炎症反応、sIL-2R値の上昇が認められた。ヒトヘルペスウイルス-6(HHV-6)抗体の上昇はなく、当初は発症直前に投与された総合感冒薬あるいはNSAIDsを原因薬剤とする薬疹と薬剤性肝障害と診断されたが、入院20日目に顔面痙攣の症状が出現した。そこで、それまで中止していたcarbamazepineの服用再開の申し出があり、これが偶然にもチャレンジテストとなった。そして、carbamazepineが皮疹を増悪させたことと、更に経過中にHHV-6抗体価の上昇を確認できたことで、本症例はcarbamazepineによる薬剤過敏性症候群と確定診断された。治療としてステロイド投与を行なった結果、皮疹は次第に改善し、肝障害も軽快した。

基本情報

24329452.102.4.cover.jpg
臨床雑誌内科
102巻4号 (2008年10月)
電子版ISSN:2432-9452 印刷版ISSN:0022-1961 南江堂

文献閲覧数ランキング(
11月23日~11月29日
)