膵癌診療最前線 新たな抗癌薬により長期生存を目指す
遺伝子改変マウスを用いた膵発癌モデル
伊地知 秀明
1
1東京大学 消化器内科
キーワード:
ras遺伝子
,
疾患モデル(動物)
,
膵臓腫瘍
,
腫瘍過程
,
トランスジェニックマウス
,
ノックアウトマウス
,
p16遺伝子
,
Transforming Growth Factor-Beta Type II Receptor
Keyword:
Disease Models, Animal
,
Neoplastic Processes
,
Mice, Transgenic
,
Pancreatic Neoplasms
,
Genes, ras
,
Mice, Knockout
,
Genes, p16
,
Transforming Growth Factor-beta Type II Receptor
pp.737-742
発行日 2008年10月1日
Published Date 2008/10/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00974.2008338466
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ヒトの膵癌でみられる遺伝子異常をマウスの膵臓に導入することにより、ヒト膵癌の発癌過程を近似した膵発癌モデルが得られる。膵臓上皮特異的に活性型変異Krasを発現させると、前癌病変PanINが出現する。変異Krasに加え、腫瘍抑制因子であるp16,p53,TGF-βII型受容体のいずれかを不活性化させると、PanINから浸潤癌へと進行し、体重減少、腹水貯留、肝・肺転移、腹膜播種などヒトの膵癌と類似した症例を呈し、癌死する。その膵癌組織像は間質の著明な増生・線維化を伴う管状腺癌であり、中でも、Kras発現+TGF-βII型受容体ノックアウトモデルは、未分化な組織型の混在がない点で、ヒトの組織像にもっとも似ている。ヒトの膵癌を近似したモデルの研究から、膵癌の発癌機序の解明や、新しい診断法・治療法の開発に大きく貢献できる可能性がある。
©Nankodo Co., Ltd., 2008