Cancer Board Square 5巻1号 (2019年4月)

特集 緩和ケア実践マニュアル Start Up & Beyond PEACE

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「PEACEを受講したけど、臨床で上手く活かせていない気がする……」

「効果はあるみたいだけど、早期緩和ケアって具体的にいつ始めて、なにをすることなの?」

「ウチの施設だと診断から看取りまでひとりでやらなくちゃいけないんだよな……」

こんな悩みもっていませんか? そんな臨床家のために、①緩和ケアの基本的対応、②陥りやすいピットフォール、③PEACEだけでは対応しきれない場合の「Beyond PEACEスキル」を学ぶ一大特集です。

Part1 タイムラインとイベントからみるACP実践

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ACPをする前に知っておくべきこと

 アドバンス・ケア・プランニング(ACP)は、英国緩和ケア協議会(National Council for Palliative Care;NCPC)の定義によると、「今後の治療・療養について患者・家族と医療従事者があらかじめ話し合う自発的なプロセス」とされている1

 ACPを導入する際にまず知っておくべきことは、がん患者のillness trajectory(病の軌跡)である(Fig.1)2。がん患者のillness trajectoryの特徴は、「がん以外の慢性疾患と異なり比較的長く全身状態が保たれており、最後の1〜2ヶ月(Fig.1②)で急激に全身状態が悪化して死亡にいたること」である。

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はじめに

 早期からの緩和ケアの重要性については世界的なコンセンサスが得られているものの、実際に全ての進行がん患者に対して診断時から専門的緩和ケアサービスが介入していくことは人的資源の不足や費用対効果の問題から難しい面があることも事実である1,2。実際に、診断時からの介入と診断後3ヶ月経ってからの看護師による介入の無作為化比較試験ENABLE Ⅲでは、QOLや症状の改善に差がなかったという結果も示されており、全ての症例に対して一律に同じアプローチを行なうことの妥当性は疑問視されている3

 現実的には、ある程度のところまではがん治療医が中心となって診療を継続し、抗がん剤治療中の適切な時期に、専門的緩和ケアサービスへ紹介していくというのが妥当だろう。

Part2 治療医が行なう緩和ケア初回面接

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はじめに

 緩和ケアの初回面接について、早期からの緩和ケアにおける初診と、緩和ケア病棟に入棟するための初診外来では若干異なることもあるが、本稿では緩和ケア初診面談の実際について、両方の外来に共通する内容を中心に、早期からの緩和ケア外来を例としてお示ししたい。

 理論的な背景はのちに述べることとして、まずはその実際の流れについて、当院で行なわれている緩和ケア外来の会話の例を提示する。もちろんこれは私が使っているひとつの型であり、別の型もあるが、いずれにしても自分のなかである程度「こういう順番で話をしていくぞ」というテンプレートはあったほうが、会話が進みやすいことが多い。緩和ケアにおいては、話題が重たくなることが多く、経験が少ないなかでそれに臨もうとすると、話が続かなくなって不十分な面接に終わることも少なくないからだ。

 まず最初に行なうことは、「病状理解の把握」である。では、そこから開始される会話をみていきたい。

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はじめに

 早期緩和ケアの実践において、初回面接ではどのように相手にアプローチすべきか—これは一旦迷い出したら医療者にとってかなりの精神的苦痛となりかねない問題だろう。

 まずどんな言葉から切り出したらよいのか、どんな表情や態度が適切なのか。そんな当たり前(のはず)のことがわからない。相手が「助かりました、気が楽になりました!」と喜んでくれればめでたいが、もしも微妙な表情を浮かべてしまったらそのアプローチは失敗であったのか。そのあたりも判断がつきにくいし、誰かにスーパーバイズしてもらうのも現実的には難しいだろう。

 すなわち、手法そのものに戸惑うだけでなく、自分の行なったことが成功であったのか失敗であったのか、それすらいまひとつはっきりしない。そんな中途半端な状態を繰り返すのは、「しんどい」と感じて当然だろう。

 本稿では精神科医の立場からその「しんどさ」について私見を述べてみたい。なお筆者は大学病院で6年間の産婦人科医の経験があり、また精神科医になってからはリエゾンの経験がある。そうした体験を踏まえて筆を進めていきたい。

Part3 症状別緩和ケアスキルBeyond PEACE

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総論

 がん疼痛の治療は「WHO方式がん疼痛治療法」1を基本とし、日本緩和医療学会の「がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン」2に従って行なわれる。「WHO方式がん疼痛治療法」とは「5つの原則」および「3段階除痛ラダー」を用いて「3つの目標」の達成を目指すものである。

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総論

基本は非がん疼痛におけるエビデンス

 鎮痛補助薬とは主たる薬理作用として鎮痛効果をもたないが、鎮痛薬との併用や特定の状況下で鎮痛効果を発揮する薬物である。非がん疼痛においては慢性痛や神経障害性疼痛に用いられることが多い。鎮痛薬・鎮痛補助薬の神経障害性疼痛(非がん疼痛が中心)に対する有効性を解析したシステマティックレビューでは、三環系抗うつ薬およびオピオイドの有効性が高かった(Table1)1

 日本ペインクリニック学会では各鎮痛薬・鎮痛補助薬の有効性・危険性を勘案し、神経障害性疼痛全般への第一推奨薬剤としてプレガバリン・ガバペンチン(Ca2+チャネルα2δリガンド)、デュロキセチン〔セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(serotonin & norepinephrine reuptake inhibitors;SNRI)〕、アミトリプチリン・アモキサピン・イミプラミン(三環系抗うつ薬)を第一推奨している2。オピオイドは長期使用による有害事象や依存リスクなどを加味され、トラマドールが第二推奨、その他のオピオイドは第三推奨とされている。またプレガバリンの安易な投薬による危険性の上昇が世界的に危惧されている3

呼吸困難 鷹津 英 , 山口 崇
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総論

進行がん患者の呼吸困難

 呼吸困難は、進行がん患者の10〜70%1で合併すると報告されており、特に、肺病変をもつ患者(原発巣、転移巣を含む)では62〜95%と高頻度で呼吸困難を合併するとされる2。また、緩和ケア対象患者では、死亡の3ヶ月前に50%が、死亡直前期には65%が呼吸困難を訴えると報告されており2、終末期に向けその頻度が増加する。

 米国胸部学会(The American Thoracic Society)では「呼吸困難」を、「呼吸時の不快な感覚という主観的な経験」と定義している3。一方、「呼吸不全」は「酸素分圧(PaO2)が60Torr以下であること」という客観的な病態を意味する。つまり、「呼吸困難」を訴える患者が必ずしも「呼吸不全」を呈しているわけではない。頻呼吸や呼吸補助筋の使用などの身体所見や動脈血液ガス検査、胸部X線写真などの検査所見で異常がなくても「呼吸困難」を呈することがあるため、「呼吸困難」と「呼吸不全」は区別して評価する必要性がある。

悪心・嘔吐 平本 秀二
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総論

2つのガイドラインを踏まえた悪心・嘔吐対策アルゴリズム

 日本癌治療学会と日本緩和医療学会から悪心・嘔吐に関するガイドラインが出版されている1,2。対象とする患者背景は異なるものの、これらのなかで悪心・嘔吐に対する制吐剤の使用方法は近い。しかし、同じがん患者でも治療期ではより侵襲的な対応をしても忍容性がある一方、終末期に移行するにつれて忍容性が低下し、副作用は出やすくなる。

 もちろん、臨床試験をする際にも終末期の脆弱な集団を対象とする場合は、無作為比較試験なども困難となりエビデンスレベルにも差が出てくる。がん終末期患者に治療期のエビデンスを応用して投薬など対応することもあるだろうが、これらの背景を十分理解して対応する必要があり、患者の全身状態や背景を十分鑑みてアルゴリズム(Fig.1)に沿った対応をすることを全体を通してお勧めする。

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総論

排便習慣への満足度に応じた治療

 便秘と下痢は、排便に関連した身体症状である。

 便秘は、健康成人の2〜27%が罹患し、更にがん治療や緩和ケアを受けている患者では30〜90%が罹患している。特に女性と高齢者で多く、オピオイド鎮痛薬の投与も便秘の原因となる。

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総論

消化管閉塞の疫学と病態生理

 消化管閉塞(イレウス)とは、器質的な異常により口腔から肛門にいたる消化管の正常な流れが妨げられることである。悪性腫瘍が原因で発生する消化管閉塞は「悪性消化管閉塞(malignant bowel obstruction;MBO)」と称される1。がん患者においては術後の癒着やヘルニア嵌頓などに伴う良性の消化管閉塞も起こりうるが、本稿では進行がん患者における悪性消化管閉塞に対しての症状緩和のスキルについてまとめる。

 消化管閉塞の有病率は、特に婦人科がんと消化器がんで高く、卵巣がん患者では6〜42%、大腸直腸がんなどの消化器がん患者では4〜24%である。腹腔骨盤内以外の原発巣としては、乳がん、肺がん、悪性黒色腫で有病率が高く、3〜15%である2。閉塞部位は、胃流出路が16%、小腸が64%、大腸が20%と報告されている3。生存期間の中央値は125日で、内視鏡的または放射線治療が行なわれた患者は69日、薬物治療は135日、外科的治療は314日と報告されている3

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総論

がんに伴う倦怠感

 がんに伴う倦怠感(cancer-related fatigue)は化学療法中、放射線療法中、終末期のいずれの時期でも高頻度に認められる。特に予後が1ヶ月以内では他の身体症状よりも頻度は高く、その苦痛の強度も急速に増強する1

 がんに伴う倦怠感の機序としては、サイトカインによる一次的倦怠感と貧血や薬剤などによる二次的倦怠感が想定されている2。一次的倦怠感は、がんやがん治療によるサイトカインの調節障害との関連が推測されている(Fig.1)。

せん妄 上村 恵一
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総論

せん妄にどう気づくか

 せん妄というと、幻覚、興奮、拒否などケアに苦慮する激しい症状がまずイメージされるが、それらの出現頻度はそれほど多くない。むしろ、進行がん患者のせん妄における必須症状は「注意力低下」と「睡眠覚醒リズム障害」であり、これらは97%に起こる1とされる。

 他の症状の出現頻度では短期記憶障害88%、見当識障害76%、多動・寡動62%、情動不安定53%、幻覚50%と報告されている2。興奮が強く、幻覚もあり、不眠が目立つ症例はまず見逃されることはない。つまり、せん妄の見逃しを減らし介入しようとするには、軽度でも注意力の低下を見抜くことが大切である。

気持ちのつらさ 鈴木 梢
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総論

ケアが必要な「気持ちのつらさ」とは

 程度の差はあれほとんどのがん患者が気持ちのつらさを抱えている。がん診断時、治療中、再発時などさまざまなタイミングで将来への不安、治療による副作用、死への恐怖などによって気持ちのつらさが引き起こされるのは通常の反応といえる。医療者はまず目の前の患者がそのようなつらさを抱えていることを理解し、丁寧な説明や気がかりへの声かけを常日頃から行なっていくことがなによりも重要である。

 気持ちのつらさは精神的苦痛に関する幅広い概念であり、不安や抑うつが含まれる。通常反応としての気持ちのつらさを超え、ケアが必要な気持ちのつらさがある場合にはがんに対する治療意欲の低下、全般的QOLの低下、入院期間の長期化、家族の心理的苦痛などの悪影響をもたらす。「死にたい」という思いが強まり、最悪の場合自殺につながる可能性もある。特に進行・再発がん、痛みなどの身体症状の不十分なコントロール、全身状態不良、若年者、神経質な性格、うつ病などの精神疾患の既往、独居など乏しい社会的支援、教育歴が短い、などは気持ちのつらさの危険因子となるため十分に注意する必要がある。がん種や病期によっても異なるが、わが国における患者のうつ病の有病率は3〜12%、適応障害の有病率は4〜35%と報告されており、ケアが必要な気持ちのつらさを見逃さないことが重要である1〜6

不眠 山川 宣
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総論

 不眠はがん患者の1/3〜1/2が経験し、苦痛と感じる主要な5症状の1つであるが、診断や治療が十分ではない1。わが国では精神科などの不眠症治療のリソースが十分ではないため、がん治療医が不眠に精通することはQOLの大きな向上につながる。

口腔粘膜炎 福永 暁子
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総論

がん患者の口腔粘膜炎

 がん化学療法中には、口腔粘膜炎をはじめ、口腔乾燥症、口腔感染症(歯性感染症;歯周炎・う蝕、感染性口内炎;ヘルペス性口内炎・口腔カンジダ症)、義歯不適合、味覚障害など、さまざまな口腔合併症が発生する。

 口腔合併症は、食事・睡眠・会話を困難にしQOLを低下させる。時として、がん治療の遅れや中断につながることもある。患者の訴える「口内炎」には、これらの口腔合併症が含まれている(Fig.1)。「口内炎」が抗がん剤による真の「口腔粘膜炎」なのか、それ以外の病変なのかを見極めて対応することが重要である。

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がん患者の皮膚障害

 がん治療においては高頻度に皮膚障害が出現する。生命を脅かすことはまれだが、患者のQOLを阻害する症状が少なくない。皮疹による痛みやかゆみ、また皮疹は目に見えるため患者のセルフイメージを低下させることもある。

 がん治療の初期段階から緩和ケアが必要とされるなか、PEACEプログラムが浸透し全国的に研修会が行なわれている。しかし、がん性疼痛ならびに身体症状(呼吸器や消化器症状など)や精神症状(不安、抑うつなど)に対する緩和ケアが主であり、皮膚症状についてはほとんど取り上げられていないのが現状である。

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総論

 高カルシウム(Ca)血症は最も頻度の高い腫瘍随伴症候群で、がん患者の20%程度に起こる。悪性腫瘍患者が高Ca血症をきたした場合、一般に予後が悪く、80%が1年以内の予後で、中央値は3〜4ヶ月といわれている1

 機序としては、①副甲状腺ホルモン関連蛋白(parathyroid hormone-related protein;PTHrP)の分泌、②骨融解性骨転移部位での局所サイトカイン放出、③腫瘍からの1,25-ジヒドロキシビタミンD(活性型ビタミンD)の産生がある。

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総論

 悪性腫瘍由来の脊髄圧迫で有症状のものは3〜5%の患者に起こる。原発巣として肺がん(25%)、前立腺がん(16%)、多発性骨髄腫(11%)、乳がん(7%)の順で多い。原発巣毎の年間発症率は多発性骨髄腫(15%)、悪性リンパ腫(6〜8%)、前立腺がん・腎がん(5%)、甲状腺がん(2%)である1

 機序としては、がん細胞が骨芽細胞を介して破骨細胞を活性化し、骨吸収を促して腫瘍細胞が定着、そこから骨基質からの物質(TGF-βなど)が腫瘍細胞を更に刺激するという悪循環で骨転移が進む。脊髄圧迫による麻痺は、脊椎に転移した腫瘤がバトソン静脈叢を圧迫して閉塞を起こし、脊髄の浮腫・梗塞をきたすことで生じる。

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総論

皮下輸液

 輸液製剤は本来静脈に投与するものである。また、注射剤は薬液が直接適用される組織によって、皮内注射、皮下注射、静脈内注射、脊髄腔内注射などと呼び、「静脈内注射用」「筋肉注射用」など、本来その適用部位が指定されているものである。

 しかし、静脈内に注射針やカテーテルを挿入することが困難な場合や、在宅医療や死亡直前における薬剤投与など、環境上それが好ましくない場合に、輸液製剤や静脈用注射剤を皮下投与することがある1。輸液を必要とする認知症患者に対して皮下輸液と静脈輸液を比較した結果、少なくとも48時間の輸液を行なった後の血清尿素窒素、クレアチニン値に差がなかったとする報告2や、脱水をきたしている長期療養患者に対して皮下輸液を行なった場合、88%の患者で全身状態の改善を認めたとする報告3もあり、皮下輸液は近年見直されている。

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総論

進行がん患者へのANHに関するエビデンス

 全てのがん患者への栄養サポートは必須であるが、進行がん患者への人工的栄養水分補給(artificial nutrition and hydration;ANH)に関するエビデンスは乏しい1,2。更に進行がん患者へのANHについては倫理的観点からの検討が重要である3。現時点では、進行がんで死の差し迫った患者にはANHを控えるべきであるが、そうでない場合は緩和ケアセッティングであろうと患者と家族が望むならANHを検討するのが妥当である1

 また死が差し迫った場合でも人工的水分補給(artificial hydration;AH)は個々の患者で検討するのがよい4。ところでANHの手段として静脈栄養と経管栄養があるが、がん患者におけるその優劣については十分なエビデンスがなく判定は困難である5

苦痛緩和のための鎮静 池永 昌之
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総論

 緩和ケアでは、できるだけ最期のときまで患者の意識が清明に保たれた状態で、周りの人と十分にコミュニケーションが図れるように苦痛を緩和することが望まれる。しかし、終末期がん患者の臨死期には、標準的治療に反応しない耐え難い苦痛が出現することがあり、その際に患者の意識を保ったまま身体症状を緩和することは難しくなることが少なくない。

 そのような臨床現場では、苦痛緩和のための鎮静が必要になる。本項では、『がん患者の治療抵抗性の苦痛と鎮静に関する基本的な考え方の手引き 2018年度版』(以下、2018年版手引き)1を元に、臨床現場で活用できる苦痛緩和のための鎮静の知識について整理したい。

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Q 化学療法中や終了後に、エビデンスのない補完代替療法を患者が希望されたとき、どのように答えるべきでしょうか

A 腫瘍内科医の立場から:大場先生

「エビデンスがない」と断じてしまうのは容易ですが、それら療法が心配や不安に対するある種のよりどころになっていることに一定の理解を示してあげましょう。もちろん、インチキ免疫療法のような高額自由診療や家族と過ごす大切な時間の足枷となるエセ医学に対しては、生存利益がないことをしっかり説明しておく必要はあります。一方で、腫瘍内科医としてのプロフェッショナリズムを再考する機会でもあります。例えば、化学療法以外の営為で患者の幸福や安心に寄与できているか、予後を数字で裁いておきながら緩和ケアには無関心を装っていないかなど。言うは易しですが、患者のQOL維持を常に意識しながら、より優しい対話を心がけてほしいです。

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症例

50歳代、男性。

病歴

・主訴

発熱、関節痛。

・現病歴

20XX年9月末から37〜38℃台の発熱と関節痛を認め、近医を受診した。

抗菌薬を1週間内服したが症状の改善がみられなかった。

同年11月に前医を受診したところ不明熱と判断され、同月当院内科を紹介され受診となった。

・既往歴

高尿酸血症、胃潰瘍(治療は終了)。

20(XX−1)年に右鼠径リンパ節腫大と発熱を認め、受診歴あり。アレルギーなし。

・家族歴

父:大腸がん、母:リウマチ、兄:糖尿病。

・生活歴

喫煙:current smoker(喫煙者群)20〜58歳×15本/日、飲酒:焼酎1杯/日。

・アスベスト曝露歴

なし。

連載 Dose intensityを維持する漢方スキル[0]【新連載】

総論 元雄 良治
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なぜdose intensityを維持するべきなのか?

 DI(dose intensity)とは用量強度のことであり、がん薬物療法に用いる薬剤の用量を単位時間(週)で除したものである。例えば、XELOX療法などで用いられるオキサリプラチン(L-OHP)は標準的には130mg/m2を3週間毎に投与することが1サイクルであるので、DIは、130mg/m2÷3 weeks=43.3mg/m2/weekとなる。もし副作用などで1段階減量して100mg/m2になった場合、DIは100mg/m2÷3=33.3mg/m2/weekとなる。その場合、このサイクルは標準量の76.9%(33.3÷43.3)となり、これをRDI(relative dose intensity)と呼ぶ。すなわち、標準量に対する実際の投与量の強度を表す。XELOXのように、カペシタビン(ゼローダ®)とL-OHPの組み合わせの場合、各薬剤のRDIの平均を計算したものがARDI(average relative dose intensity)である。

 さて、ではなぜDIが重要かという点であるが、特に術後補助化学療法では、Fig.1のように治療強度を維持して治療を完遂することが無再発生存率、全生存率などの予後の改善につながるとされているからである1,2。副作用のモニタリング・マネジメントを行なってRDIを高く保つことが、治療効果を最適化・最大化するうえで重要である(Fig.2)3

連載 Dose intensityを維持する漢方スキル[1]

疲労・倦怠感 元雄 良治
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症状の概要

発症機序

 がん自体による疲労・倦怠感には、がん細胞から産生・分泌されるサイトカイン(IL-6、soluble TNF receptor type Ⅱ)、酸化ストレス、自律神経のバランスなどが関与していると考えられている1〜3。がん薬物療法による疲労・倦怠感も、薬物療法によってがん細胞から放出されるサイトカインなどの関与が想定されているが、不明な点が多い。

連載 國頭ゼミの課外授業 わたしたちは、こう考える[4]

家族ケア 國頭 英夫
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はじめに

國頭 私が日赤看護大学で1年生を対象にやっているコミュニケーション論のゼミ〔『死にゆく患者と、どう話すか』(医学書院)に講義録としてまとめ、2016年10月に出版〕のスピンオフ企画シリーズも第4回になりました。

 今回のテーマは、患者さん本人ではなくて、その隣にいる家族へのケアを考えます。さて、君たちが受けてきた今までの実習や授業では、家族へのケアはどう扱われてきたのかな?

レイ 家族のことも考えろ、とは言われます。実習でご家族がおられれば話しかけたりはします。介入してもいいよ、とも言われてはいるのですけど、実際にはあまり「家族ケア」として学習する機会はないですね。

チカ レイはまだ回ってないみたいですけど、小児科の実習では、家族、つまり親が考えていることを聞きなさい、というのがひとつのテーマになっています。だけど成人の看護では、確かにあまりご家族のことをどうこう、というのは少なかったと思います。

 卒業してナースになって病棟勤務したりすれば、退院指導というのは必須で、そのなかで家族ケアはどうしてもやらなきゃいけないことなんですけど、学生のうちは授業でも出てこないですね。「家族社会学」とか「家族看護学」なんて科目もあるんですけど、必修にはなっていません。

國頭 最近は入院期間がものすごく短くなってきているし、そもそもがん治療も外来治療がメインになって、よっぽど具合が悪くならないと入院しない、なんてことにもなってきてるから、家族のことを把握するのも難しいんじゃないかな。

チカ そうですね。私が行った実習でも、あっという間に退院してしまうから、家族関係図すら書けない、とスタッフのナースが仰っていました。私が受けもちになった患者さんについてプレゼンしたら、「ああ、そんな家族がいたの」みたいな話になってしまったこともあります。

 だけど患者さんのケアを考えるにあたっては、今後家族のサポートがどのくらい見込めるか、なんてのはものすごく重要ですよね。「できる、できない」もそうですけど、どのくらい意思があるか、も含めて。私が受けもった患者さんが退院するときの栄養指導につかせてもらったのですが、奥さんが、「自分が工夫して作った食事は全然食べないのに、病院食なら完食するのがとてもムカつく」と仰っていました(笑)。

國頭 実際問題として、そういうのを含めた家族への指導は、外来でできるものだろうか。

レイ 外来では時間がなさ過ぎるから難しいんじゃないですか。

チカ 小児科の外来では、ずっと通院しているから、ナースは皆よく知っているみたいですけど。

國頭 そうだよね。繰り返しきていると状況がわかってくる。外来でも、例えば化学療法室でがん治療を受けている人は、化学療法室のナースが初回に時間を掛けて情報を取っているし、通院しているうちに、家族との関係性を含めて観察しています。この家族はよく患者をケアしているけどくたびれてきてるな、とか、この家族はもう半分見放してるな、とかね(苦笑)。

 そういうのとはまた別に、家族自体がケアの対象になるのか、が今回のテーマの趣旨だけど、なにか考えてきたかな?

連載 臨床医のためのワンテーマ腫瘍病理[11]【最終回】

我が連載のニュアンス 市原 真
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 医療現場の内外で、しばしば、「見ると診るとは違う」というモチーフが描かれることがあります。『胃と腸』(医学書院)にもかつてそのような連載がありました。この命題は、病理診断を考えるときにも避けては通れません。

 HE染色によってなんらかの構造がしっかり染まっていても、病理医が所見の意味を理解できないことがあります。例えば、desmoplastic reactionをはじめとするがん微小環境は、病理診断医にとっては近年「ようやく診ることができるようになった」ものです。がん細胞そのものを見極めることに没頭していたために、がんの周囲間質に起こっている変化の重要性にはなかなか気づけませんでした。見えていても、診ていなかったということです。

連載 患者さんに「寄り添って」話を聴くってどういうこと?[3]

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今回の登場人物

加藤潤先生:

卒業後6年目のレジデント。内科医で、腫瘍内科の専門研修を開始して2年目。明るい性格で、患者さんを励ますのが上手だが、積極的抗がん治療の適応がなくなった患者さんに接することには若干難しさを感じている。大学時代はテニス部のキャプテンだった。

竹内朋美さん:

46歳、女性。胆管がん Stage Ⅳ。夫と14歳の長女、8歳の長男と4人暮らし。専業主婦。1年前に黄疸を認め、精査ののち診断が確定した。

清水先生:

がん患者とその家族のケア(精神腫瘍学)を専門とする精神科医。心理的な問題に関するコンサルタントとして、担当医や看護師など他の医療者が困るケースの相談も積極的に受けるようにしている。

桜川啓介先生:

20年目の腫瘍内科医で肝胆膵内科を専門としている。患者・家族の信頼も厚く、レジデントの面倒見もいい。

広瀬祐子さん:

ベテラン看護師で、竹内さんの悩みについて相談に乗る機会が多かった。

本多博一先生:

加藤先生の大学時代の同級。テニス部の副キャプテンで、信頼できる友人。

松田ユリさん:

加藤先生のテニス部の後輩。

*清水先生を除き、全て架空の人物です

連載 目から鱗のがん薬物療法—薬学的視点からみたケーススタディ[10]【最終回】

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リツキシマブIRRsの発現頻度

・IRRs(infusion-related reactions)は別名サイトカイン放出症候群とも呼ばれ、非アレルギー性に生じるもので投与薬剤がNK細胞やT細胞などと結合し、TNFαやIL-6などのサイトカインを放出することによって発現します。主な症状として発熱・皮疹・呼吸苦などが出現し、時に生命を脅かす重篤な過敏反応です1

・主な原因薬剤としてはリツキシマブを代表とするモノクローナル抗体製剤が挙げられます。リツキシマブの主な適応疾患はCD(cluster of differentiation)20陽性B細胞性非ホジキンリンパ腫であり、欧米・わが国ともにR-CHOP療法が長年にわたり現在においても標準療法として施行されています。

連載 Medical Oncology 2.0[6]

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学会に行くといつもあの人がいる!!

 学会に行くとマイクの前に立ち質問をしているオーディエンスの姿があります。所属や名前を述べたあと、発表者にいくつか質問をぶつけます。気づくと、「またあの人が質問している」という場面に出会ったことはないでしょうか? その人は次から次へと「臨床的に重要と思われる質問」を繰り出します。がんの領域だとASCOなどの会場で必ず質問しているSteven Vogl医師(New York)が有名です。「Vogl, New York」というフレーズに覚えがある方も多いのではないでしょうか。Vogl先生のコメントは非常に有益でASCO PostなどでもExpert Point of Viewとして度々登場しています。

 「質問するのは苦手なんです」という話はよく聞きます。学会は年に1回程度ですし、大きな会場では緊張してなかなか質問できないこともあります。勤め先のジャーナルクラブなどではどうでしょうか? そこでも特定の人がキレのある質問をしていることを目にしますよね。

連載 Art of Oncology[10]【最終回】

五感を澄ます 栗原 幸江
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 日野原重明先生から始まったこのリレー連載のバトンを、期せずして私が最終走者のお役目を担うことになった。その前にバトンを受け継いでこられた先生方の人間味が伝わる文章に織り込まれた「Art」に触れ、その役割の重みをひしと感じている。なにを取り上げようか逡巡した後、あらためて「病いの語りに五感を澄ます」という原点に立ち返ってみることにした。

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目次

企画・執筆者紹介

Editorial

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基本情報

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Cancer Board Square
5巻1号 (2019年4月)
電子版ISSN:2189-6429 印刷版ISSN:2189-6410 医学書院

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