連載 フロンティア・リポート[1]【新連載】
意外に身近な質量分析─質量分析の基礎から術中診断への応用
新間 秀一
1
1大阪大学大学院工学研究科生命先端工学専攻科
pp.147-151
発行日 2015年10月15日
Published Date 2015/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1430200026
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はじめに
この連載を読まれているあなたは「分析」という言葉を聞いたことがあるでしょうか? おそらく聞いたことがないというひとを見つける方が難しいでしょう。今やいろいろな場面で「分析」という単語を目にも耳にもします。ひとたび新聞を開けば「金融情勢を分析」や、はたまた「事故原因を分析」のように様々な「分析」を目にします。本稿を読んでいる皆さんも、日常的に「病状を分析」しているものと思います。
このように日常的にみられる「分析」とは、本来「複雑なことをひとつひとつの要素に分けて解明すること」という意味を持っています。しばしば簡単なことも小難しく「分析」する人もいますが……。いずれにせよ、正確に物事を理解するためにとる行動の一つであるといえるでしょう。
筆者の現在の専門は「分析化学」という分野になります。その中でも特に「質量分析」と呼ばれる方法を専門に研究しています。質量分析は、読んで字のごとく「質量」を「分析」するわけですけれども、成分分析するための方法のひとつと考えてもらった方がわかりやすいかもしれません。
例えば、読者のなかには新規医薬品に関する治験に携わっている方もいらっしゃると思います。治験の現場では、薬物動態試験のために患者さんへの薬品投与後に採血し、薬物血中濃度を測定することがあるでしょう。では、この薬物血中濃度はどのような方法で測定されているかご存知でしょうか? 実は質量分析を使って測定されているのです。まずは質量分析の基礎と医療につながる最先端の質量分析技術について、2回にわたって紹介したいと思います。
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