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はじめに
國頭 私が日赤看護大学で1年生を対象にやっているコミュニケーション論のゼミ〔『死にゆく患者と、どう話すか』(医学書院)に講義録としてまとめ、2016年10月に出版〕のスピンオフ企画シリーズも第4回になりました。
今回のテーマは、患者さん本人ではなくて、その隣にいる家族へのケアを考えます。さて、君たちが受けてきた今までの実習や授業では、家族へのケアはどう扱われてきたのかな?
レイ 家族のことも考えろ、とは言われます。実習でご家族がおられれば話しかけたりはします。介入してもいいよ、とも言われてはいるのですけど、実際にはあまり「家族ケア」として学習する機会はないですね。
チカ レイはまだ回ってないみたいですけど、小児科の実習では、家族、つまり親が考えていることを聞きなさい、というのがひとつのテーマになっています。だけど成人の看護では、確かにあまりご家族のことをどうこう、というのは少なかったと思います。
卒業してナースになって病棟勤務したりすれば、退院指導というのは必須で、そのなかで家族ケアはどうしてもやらなきゃいけないことなんですけど、学生のうちは授業でも出てこないですね。「家族社会学」とか「家族看護学」なんて科目もあるんですけど、必修にはなっていません。
國頭 最近は入院期間がものすごく短くなってきているし、そもそもがん治療も外来治療がメインになって、よっぽど具合が悪くならないと入院しない、なんてことにもなってきてるから、家族のことを把握するのも難しいんじゃないかな。
チカ そうですね。私が行った実習でも、あっという間に退院してしまうから、家族関係図すら書けない、とスタッフのナースが仰っていました。私が受けもちになった患者さんについてプレゼンしたら、「ああ、そんな家族がいたの」みたいな話になってしまったこともあります。
だけど患者さんのケアを考えるにあたっては、今後家族のサポートがどのくらい見込めるか、なんてのはものすごく重要ですよね。「できる、できない」もそうですけど、どのくらい意思があるか、も含めて。私が受けもった患者さんが退院するときの栄養指導につかせてもらったのですが、奥さんが、「自分が工夫して作った食事は全然食べないのに、病院食なら完食するのがとてもムカつく」と仰っていました(笑)。
國頭 実際問題として、そういうのを含めた家族への指導は、外来でできるものだろうか。
レイ 外来では時間がなさ過ぎるから難しいんじゃないですか。
チカ 小児科の外来では、ずっと通院しているから、ナースは皆よく知っているみたいですけど。
國頭 そうだよね。繰り返しきていると状況がわかってくる。外来でも、例えば化学療法室でがん治療を受けている人は、化学療法室のナースが初回に時間を掛けて情報を取っているし、通院しているうちに、家族との関係性を含めて観察しています。この家族はよく患者をケアしているけどくたびれてきてるな、とか、この家族はもう半分見放してるな、とかね(苦笑)。
そういうのとはまた別に、家族自体がケアの対象になるのか、が今回のテーマの趣旨だけど、なにか考えてきたかな?
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