特集 緩和ケア実践マニュアル Start Up & Beyond PEACE
Part3 症状別緩和ケアスキルBeyond PEACE
呼吸困難
鷹津 英
1
,
山口 崇
1
1甲南病院緩和ケア内科
pp.64-69
発行日 2019年4月15日
Published Date 2019/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1430200373
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総論
進行がん患者の呼吸困難
呼吸困難は、進行がん患者の10〜70%1で合併すると報告されており、特に、肺病変をもつ患者(原発巣、転移巣を含む)では62〜95%と高頻度で呼吸困難を合併するとされる2。また、緩和ケア対象患者では、死亡の3ヶ月前に50%が、死亡直前期には65%が呼吸困難を訴えると報告されており2、終末期に向けその頻度が増加する。
米国胸部学会(The American Thoracic Society)では「呼吸困難」を、「呼吸時の不快な感覚という主観的な経験」と定義している3。一方、「呼吸不全」は「酸素分圧(PaO2)が60Torr以下であること」という客観的な病態を意味する。つまり、「呼吸困難」を訴える患者が必ずしも「呼吸不全」を呈しているわけではない。頻呼吸や呼吸補助筋の使用などの身体所見や動脈血液ガス検査、胸部X線写真などの検査所見で異常がなくても「呼吸困難」を呈することがあるため、「呼吸困難」と「呼吸不全」は区別して評価する必要性がある。
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