特集 緩和ケア実践マニュアル Start Up & Beyond PEACE
Part3 症状別緩和ケアスキルBeyond PEACE
気持ちのつらさ
鈴木 梢
1
1がん・感染症センター都立駒込病院緩和ケア科
pp.102-107
発行日 2019年4月15日
Published Date 2019/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1430200379
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総論
ケアが必要な「気持ちのつらさ」とは
程度の差はあれほとんどのがん患者が気持ちのつらさを抱えている。がん診断時、治療中、再発時などさまざまなタイミングで将来への不安、治療による副作用、死への恐怖などによって気持ちのつらさが引き起こされるのは通常の反応といえる。医療者はまず目の前の患者がそのようなつらさを抱えていることを理解し、丁寧な説明や気がかりへの声かけを常日頃から行なっていくことがなによりも重要である。
気持ちのつらさは精神的苦痛に関する幅広い概念であり、不安や抑うつが含まれる。通常反応としての気持ちのつらさを超え、ケアが必要な気持ちのつらさがある場合にはがんに対する治療意欲の低下、全般的QOLの低下、入院期間の長期化、家族の心理的苦痛などの悪影響をもたらす。「死にたい」という思いが強まり、最悪の場合自殺につながる可能性もある。特に進行・再発がん、痛みなどの身体症状の不十分なコントロール、全身状態不良、若年者、神経質な性格、うつ病などの精神疾患の既往、独居など乏しい社会的支援、教育歴が短い、などは気持ちのつらさの危険因子となるため十分に注意する必要がある。がん種や病期によっても異なるが、わが国における患者のうつ病の有病率は3〜12%、適応障害の有病率は4〜35%と報告されており、ケアが必要な気持ちのつらさを見逃さないことが重要である1〜6。
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