総合診療 28巻3号 (2018年3月)

特集 糖尿病のリアル—現場の「困った!」にとことん答えます。

片岡 仁美
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糖尿病患者数は増え続けており、超高齢社会を迎えて、糖尿病診療はさらに大きな課題となっています。

高齢患者の増加は、患者の抱える問題の多様化・複雑化をもたらしています。

近年、治療薬の選択肢が増えたことは、よい面もある一方で、治療方針の立てにくさにもつながっています。

本特集では、現場のリアルな「困った!」に、糖尿病専門医がとことん答えました。

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 糖尿病患者の血糖値を中心とした代謝管理は、合併症の発症・進展を抑制するうえで有用であるが、限界があることも知っておくべきである。今日までさまざまな臨床研究が行われ、周術期の血糖値と術後予後の関係についても検討されてきた。本稿では、日常臨床において一般臨床医や研修医が押さえておくべき、糖尿病患者の「血糖管理」に関するエビデンスについて概説する。

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Case

患者:54歳、男性。

家族歴:父親が糖尿病・高血圧で通院中。

現病歴:健診でHbA1c 6.7%を指摘され、経口ブドウ糖負荷テストを受けたところ、早朝空腹時血糖値109mg/dL、1時間値183mg/dL、2時間値201mg/dLであった。

 身長165cm、体重55.0kg、BMI 20.0kg/m2、診察室血圧128/72mmHg。飲酒は月1〜2回の飲み会の時だけだが、喉が渇くとジュースやスポーツ飲料を1日1L程度飲んでいた。運動は、電車通勤で毎日1時間程度歩いている。

 清涼飲料水を中止し、1600kcalの糖尿病食を指導されて帰宅した。その後、抗GAD(グルタミン酸デカルボキシラーゼ)抗体が5,200U/mLと高値であることが判明した。

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インスリン抵抗性型

Case1-1

患者:66歳、男性。身長168cm、体重88kg、BMI 31.7。

現病歴:家族歴のない2型糖尿病を3年前に指摘され、ビグアナイド薬(メトホルミン1,000mg)が処方されている。HbA1cが半年で6.7%から8.2%と悪化してきたが、患者は野菜を先にとり低炭水化物食を主体にしていると自己申告している。

 血液生化学検査では、軽度の脂肪肝(AST 68IU/mL、ALT 88IU/mL、γ-GTP 188IU/mL)と高中性脂肪血症(388mg/dL)で、腎機能はeGFR 88.2であった。

 ビグアナイド薬に追加する薬剤は、何が望ましいか? 空腹時血糖値は153mg/dL、空腹時インスリン値は14μU/mLであった。

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インスリン導入のトレンド「BOT」

Case1

患者:56歳、男性。身長168cm、体重77kg。2型糖尿病歴8年。

内服薬:シタグリプチン50mg(DPP-4阻害薬)およびグリメピリド3mg(SU薬)。

現病歴:上記内服にてHbA1c8.9%とコントロール不良のため、BOTにてインスリン導入となった。グリメピリドは1mgに減量したうえ、シタグリプチンは同量で継続したまま、インスリンデグルデク4単位から開始し、毎受診時に空腹時血糖を測定し、120mg/dLを切るまで2単位ずつ増量した。最終的には14単位の投与により、空腹時血糖値110mg/dL前後まで低下し、HbA1cも6.8%台まで改善した。

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食事指導の“リアル”

Case1

患者:54歳、女性。肥満を伴う2型糖尿病。

現病歴:20歳頃には体重52kg前後であったが、3人の子どもを産むごとに体重が増えてきたという。現在、体重は70kgでBMIは28.8kg/m2(身長156cm)。最近、血糖コントロールもHbA1c 8%前後と不良気味である。年末年始になると、体重がさらに増加し、血糖コントロールも悪化する。しかし、本人は「そんなに食べていない」と訴える。カロリー計算をさせようと思うが、“面倒くさがりや”のようである。さらに、膝の痛みがあり、歩く量も少なくなっているようである。

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Q1 高血糖・低血糖に伴う重篤な「急性合併症」について、押さえておくべきことは?

 糖尿病の急性合併症には、「糖尿病ケトアシドーシス」「高血糖高浸透圧症候群」「乳酸アシドーシス」や「重症低血糖発作」などがある。高血糖合併症の主体は、「脱水」と「インスリン欠乏」であることを念頭に置く。一方、低血糖においては、「無自覚低血糖」や「遷延性低血糖」をきたす可能性について検討が必要である。

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後天性反応性穿孔性皮膚症

Case1

腎不全保存期に発症した後天性反応性穿孔性皮膚症

患者:30歳代、男性。2型糖尿病。

主訴:易疲労感、労作時息切れ。

家族歴:母・祖母に糖尿病。

現病歴:15歳で糖尿病を指摘された。食事療法のみで血糖コントロ—ルは改善し、治療を中断。16歳時に高血糖を指摘され内服治療を開始したが、再度治療を中断。

 26歳時に職場の健診で眼底出血を指摘され、近医眼科で光凝固術を施行。内科に通院するも、血糖コントロールは不良であった。29歳時に蛋白尿を指摘され、インスリン療法を開始。30歳時に腎機能低下、31歳時に腎不全が進行し血清クレアチニン6mg/dL台まで上昇したため、当科に紹介された。

 受診時、瘙痒を伴う半米粒大から小豆大の角化性丘疹の多発を、ほぼ全身に認めた(図1ⓐ)。透析導入基準を満たしたため、入院後透析を開始した。皮膚病変は皮膚生検を施行して、「後天性反応性穿孔性皮膚症(ARPC)」と診断した。抗ヒスタミン薬の内服と週2回の維持透析を開始。退院後は週3回の維持透析を継続した。同皮疹は徐々に改善し、8カ月後には瘙痒感はほぼなくなった1)(図1ⓑ)。

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Case

服薬や通院が不規則な働き盛りの糖尿病患者

患者:46歳、男性。2型糖尿病。妻と4人の子どもがおり、マンションを購入したばかり。

現病歴:3年前に会社の健康診断で高血糖を指摘され、当院を受診。空腹時血糖141mg/dL、HbA1c 7.1%で、糖尿病と診断。栄養士から食事指導を受け、メトホルミン250mg 3錠分3毎食後(ビグアナイド薬)が開始された。

 当初は血糖コントロールが改善していたが、数カ月後から徐々に悪化した。昼は仕事で忙しく、夜は接待が多いため薬の飲み忘れが多いとのことで、シタグリプチン50mg 1錠分1朝食後(DPP-4阻害薬)に変更した。しかしHbA1cは改善せず、カナグリフロジン100mg 1錠(SGLT-2阻害薬)を追加した。

 その後、診察予約日に来院せず予約を変更することが増え、2〜3カ月受診間隔が開くこともあった。週に1回の注射薬デュラグルチド(トルリシティ®皮下注0.75mgアテオス®。GLP-1受容体作動薬、p.333・358・364)を導入した際には、久しぶりにHbA1c 7.5%まで改善したが、「痛いし、面倒なので」と中止し、以降は8〜10%で推移している。

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Case

患者:95歳、女性。60歳くらいより、「2型糖尿病」「高血圧」「脂質異常症」を指摘され内服治療。

主訴:ADL低下。

既往歴:80歳代;肺炎で入院、白内障手術。90歳代;転倒し頭部打撲血腫、左前腕熱傷。

家族歴:糖尿病なし。

生活歴:飲酒なし、喫煙なし。

現病歴:夫の援助のもと、インスリン自己注射療法(アスパルト朝6-昼4-夕4単位・食直前、グラルギン6単位・朝食直前)と食事療法を受けていた。夫の逝去に伴い、独居となった。自己管理が難しくなり、施設に入所予定となった。デュラグルチド(GLP-1受容体作動薬)週1回注射を開始すると、インスリンの減量が図れ、最終的にはインスリン注射を中止できた。

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Case

患者:88歳、男性。「アルコール性肝硬変(Child-Pugh分類A)」「慢性腎臓病(G4A2)」「慢性心不全」を合併する2型糖尿病。

 独居で、徒歩10分のところにキーパーソンである長女が3歳の孫と住む。同居していた妻は昨年、脳出血のために亡くなり、それからは元気が出ない。服薬アドヒアランスは、長女の手助けで守られているようである。要介護1。

現病歴:車で20分ほどの総合病院の循環器内科・消化器内科・腎臓内科で診療を受けており、糖尿病管理は消化器内科でされていたようである。通院が困難となり、自宅に近い当院に紹介された。

 アルコールは1年前にやめたが、そのぶん食事量が増え、糖尿病のコントロールおよび塩分過多による心不全・腎不全の増悪・寛解を繰り返している。アルコール性末梢神経障害による足底から下腿のしびれと疼痛が強く、歩行には杖が必要でゆっくりしか歩けない。日常生活で転倒しそうになることが多いようだ。他のADL(activities of daily living:日常生活動作)はおおむね自立、IADL(instrumental activities of daily living:手段的日常生活動作)は軽度の聴力低下以外は問題ない。

 身長167cm、体重72kg、BMI 25.8。

血液検査:Alb 3.2mg/dL、AST 19U/L、ALT 11U/L、ALP 273U/L、γ-GTP 147U/L、BUN 35mg/dL、Cr 2.23mg/dL、eGFR 24mL/分/1.73m2、Crr 23mL/分、Hb 12.1g/dL、Plt 9×104/μL。HbA1c 9.3%、随時血糖284mg/dL、尿蛋白(1+)。

内服薬:シルニジピン10mg 1錠朝、ビソプロロール 2.5mg 1錠朝、アゾセミド 30mg 1錠朝、ポリスチレンスルホン酸カルシウム(アーガメイト®)20%ゼリー25g 2個分2朝夕、グリメピリド2mg 1錠朝(SU薬)、シタグリプチン50mg 1錠朝(DPP-4阻害薬)、ラクツロースシロップ40mL分2朝夕、肝不全用成分栄養剤(アミノレバン®EN配合散)50g 2包分2朝夕、フェブキソスタット20mg 1錠朝。

 担当医師はつぶやいた。「腎機能がかなり悪い。超高齢。これで糖尿病の管理って、どうすればいいのかな……」。

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Case

患者:79歳、男性。2型糖尿病(インスリン依存状態)。

生活歴:軽度認知障害の妻と2人暮らし。子どもはいない。大酒家であったが、数年前から断酒している。

既往歴:慢性心不全、アルコール性肝硬変、慢性膵炎、高血圧。要介護1。

現病歴:20数年前から近医で糖尿病の治療を受けていた。数年前から経口血糖降下薬での血糖コントロールが困難になり、混合型インスリン製剤の1日2回注射を導入される。インスリン注射は本人が操作しており、妻はほとんど関与していなかった(針を見るのが怖い)。HbA1cは8.4〜9.6%と高値だが、時に低血糖を認めていた。

 発熱・咳嗽が出現、上気道炎として治療を受けるも改善せず、次第に食事摂取量が減少し、立ち上がりも困難となる。「肺炎」および「脱水症」と診断され、当院へ紹介入院となる。

入院後経過:インスリン頻回注射で血糖管理しながら、抗菌薬投与と輸液により病状は徐々に改善した。一方、筋力低下が著しく立ち上がれず(要介護3)、Alzheimer型認知症も判明した(長谷川式簡易知能評価スケール16点)。インスリン自己注射手技は不安定で、皮下硬結(インスリンボール)を認めた。

 空腹時血中Cペプチド0.1ng/mL、尿中Cペプチド 2.7μg/日。グルタミン酸脱炭酸酵素(GAD)抗体は陰性。「糖尿病増殖網膜症」「糖尿病腎症(第3期)」「多発神経障害」を認める。

CASE5 糖尿病神経障害 八木橋 操六
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Case

患者:55歳、男性。15年来の2型糖尿病にて経口血糖降下薬やインスリンによる治療を断続的に受けていた。

現病歴:3年前より、両側足先・足裏のしびれ感を自覚したが放置。数週前に、右足拇趾の打撲で爪から出血、痛みはなく様子をみていたが、指全体が赤く腫脹。市内外科より、血糖コントロールを目的として当院糖尿病科を紹介となった。

 外来での観察では右足指の腫脹を認めるが潰瘍・壊疽はなく、血糖320mg/dL、HbA1c 10.2%、CRP 3.7、WBC 9,500/μLであった。ただちに入院、超速効型インスリン6-6-6単位開始。足指の消毒・洗浄とともに、点滴にて広範囲抗菌薬投与を行った。足の腫脹は徐々に改善、退院後3カ月目の現在、HbA1c 7.5%、血糖148mg/dL、持効型インスリン12-0-0単位にて経過観察中である。

現症(神経学的検査):

●アキレス腱反射;両側の消失(膝立位)、膝蓋腱反射;左右減弱。

●振動覚検査;C128音叉にて内踝左6秒・右5秒と両側低下。

●自覚症状;特に訴えないが、詳しく聞くと「足の感覚が鈍い」という。自発痛はない。

合併症:入院時糖尿病合併症検査にて、眼底は増殖前網膜症、腎は持続性蛋白尿陽性、eGFR 52、BUN 23mg/dL、Cr 2.1mg/dL、大血管障害として頸動脈IMT 1.25mm/1.30mm、心電図でV4〜V6に虚血性変化を認める。

身体所見:血圧152/82mmHg、安静時脈拍数86回/分、CVR-R 1.82。便秘気味で、起立性低血圧あり(30mmHg以上下降)。しばしば顔面に発汗過多を覚え、下肢は乾燥する。

*本論文中、[▶動画]マークにつきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2021年2月28日まで)。

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Case

食行動異常を契機に精神科医との連携が進んだ一例

患者:45歳、男性。身長178cm、体重102kg。生来健康であったが、22歳で「統合失調症」を発症。自宅近くの精神科クリニックで加療されており、不眠の症状は強いが安定している。

現病歴:もともと運動をかなり行っていたが、統合失調症を発症した頃から運動をしなくなって体重が徐々に増え、35歳で「2型糖尿病」を発症。40歳でインスリンを導入したが、体重がさらに増え、血糖コントロールも改善しないため、当院を受診されることとなった。

 インスリンは超即効型を合計60単位以上、持効型を22単位で使用されていたが、来院時HbA1cは9%とコントロール不良であった。なお、独居だが、インスリン自己注射手技は問題ない。

連携の要所 ミニQ&A

❶1型糖尿病 木村 那智
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Q1 1型糖尿病の患者さん、やはり“専門医”にお願いすべきでしょうか?

 結論は、「Yes and no」である。

 もちろん、糖尿病専門医であるに越したことはない。しかし、頭の柔らかい若手の総合診療医や一般内科医がきちんと1型糖尿病を勉強して、熱意をもって診療に当たったほうが、むしろ患者さんにとってよい結果となる場合も少なくない。実際、すべての糖尿病専門医が1型糖尿病に造詣が深いわけではない。

❷妊娠糖尿病 和栗 雅子
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Q1 妊娠糖尿病の患者さんを、家庭医として診療するためのポイントは?

◦「妊娠中」と「非妊娠時」の糖代謝異常の違い

 妊娠中は、軽度であっても母体の血糖上昇が続けば、妊娠高血圧症候群、羊水過多症、巨大児に伴う肩甲難産・分娩時外傷、新生児低血糖症・黄疸・呼吸障害など、種々の「周産期合併症」が生じやすくなる。これらを予防するには、可能なかぎり健常妊婦の血糖値に近づけることが必要となる。

 また、胎盤から分泌されるインスリン拮抗ホルモンなどが妊娠中期以降増加するため、週数が進むにしたがいインスリン抵抗性が増大し、血糖が上昇しやすくなる。初診後、血糖値やHbA1cが1〜2回正常内であっても、分娩するまで経過をみる必要がある。

❸小児糖尿病 田久保 憲行
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Q1 小児1型糖尿病の患者さんを、家庭医として診る時のポイントは?

◦発達段階に応じた最適な治療・教育を

 成人と異なり小児では、患児の発達段階や能力に応じて、最適な治療法を選択することがポイントである1)。食事摂取量が安定しない乳幼児期には、インスリンポンプの導入が有用な場合がある。保育施設や幼稚園に通っていて自己注射などで自己管理ができない場合は、昼食時のインスリン注射をせず、朝食時と夕食時の2回法で治療導入する場合もある。

 就学前の小児には自己管理が難しく、療養者の主体は親であり、糖尿病教育の対象も親中心となる。そのため、家庭の状況や親の理解度を、常に把握することがポイントである。さらに、患児にも発達段階に合わせてわかりやすく説明して理解を促し、成熟度に応じた自己管理を促すことが重要となる(表1)2)

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Q1 「地域連携パス」はあるのですが、煩雑な気がしてあまり使っていません……。やはり、頑張って使うべきでしょうか?

 たしかに、「地域連携パスを運用するのは、煩雑で手間がかかる」という印象をおもちの方が多いのではないかと思います。

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本問題集は、今月の特集のご執筆者に、執筆テーマに関連して「総合診療専門医なら知っておいてほしい!」「自分ならこんな試験問題をつくりたい!」という内容を自由に作成していただいたものです。力試し問題に、チャレンジしてみてください。

Editorial

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 糖尿病患者数は増加の一途をたどり、特に高齢者の割合はいっそう増加し、全糖尿病患者の約半数が「70歳以上」という時代を迎えています。一方、日本糖尿病学会が認定する糖尿病専門医の数は5,508名(2017年、学会ホームページより)と患者数と比べて少ないため、かかりつけ医の先生方の担う役割はいっそう大きくなっています。

 また、2型糖尿病診療においては、経口血糖降下薬の新規開発が診療を大きく変えました。2009年に「DPP-4阻害薬」(p.327・330)が、2014年には「SGLT2阻害薬」(p.318・327)が市場に出ましたが、特にDPP-4阻害薬は一気に糖尿病診療の中心と言えるまでのシェアを占めるに至りました。また、2009年には「GLP-1受容体作動薬」(p.333・358)が発売されましたが、週1回投与できる製剤が登場したことにより、「自己注射できない」「内服管理困難」といった場合にも訪問看護などの方法を用いて治療が可能となりました(p.334・368・377)。

GM Group Dynamics・2

21世紀 適々斎塾
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今年、医師国家試験は大きく変わった。単に医学的知識を問うのではなく、臨床医の思考過程に沿った「臨床実地問題」が重視され、暗記力とテクニックに頼る国試対策は通用しなくなるかもしれない。

であれば、第一線の臨床医による国試解説ほど役立つものはないはずだ。そんな試みにいち早く「21世紀 適々斎塾」が取り組み、2017年9月3日(日)、特別セミナー「国試をぶっとばせ!!!」に全国から140名が参集した(半分は医学生、残りは研修医・医師)。本誌連載「国試にたずねよ」の著者 山中克郎氏(p.403)をはじめ、徳田安春氏(p.429、同塾理事)、上田剛士氏(p.421、同塾理事)、須藤博氏(大船中央病院)、佐田竜一氏(亀田総合病院)が、めまい・下痢・頭痛・動悸・嘔吐・リンパ節腫脹・しびれ・浮腫・皮疹・腰痛と「症候別」に国試を解説。さらに、鈴木富雄氏(大阪医大)がスペシャルコメントを寄せた。実際の症例も交えた臨床医オリジナルの解説は、「試験」と「臨床」の溝を事もなげに埋めていく。「まずは合格」と根を詰める医学生に、臨床の楽しさ・醍醐味をも伝え、“国試の向こう側”へと誘った。

 21世紀 適々斎塾は、「開業医の、開業医による、全ての医師・医学生のための医学塾」だ(p.397)。毎回の塾は1年を通して行われ(Data参照)、診療所/病院の垣根を越える骨太なテーマに一歩踏み込み、1回につき計12時間みっちり学び合う。ベテランが若手に教えたり、若手がベテランに教えたり、世代も越える。塾長は中西重清氏(中西内科)で、理事に安田英己氏(安田内科医院)、板金広氏(いたがねファミリークリニック)、松村榮久氏(松村医院)と、地域医療・家庭医療の最前線に腰を据える医師が中核を担う。たしかに適塾(江戸時代後期の大阪の医師・緒方洪庵による私塾。適々斎塾)を思わせる。2016年に現代によみがえった“街場”の医学塾は、ストイックかつ和気あいあいと温かい。

(『総合診療』編集室)

What's your diagnosis?[183]

コブラツイスト 後藤 雅史 , 小山 弘
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病歴

患者:60代、男性。

主訴:炎症反応高値。

現病歴:来院9カ月前、DIC(播種性血管内凝固症候群)を伴う左肺化膿症にてA病院に入院し、メロペネム、アンピシリン/スルバクタムを計4週間投与され治癒した。8カ月前から慢性C型肝炎に対してペグインターフェロンα-2b、リバビリンにて5カ月間治療を行った。3カ月前、炎症反応高値を認め、A病院へ再入院。ピペラシリン/タゾバクタム、メロペネムにて軽快した。その後再度、炎症反応高値を認めたため、紹介受診した。

既往歴:小学生の時に急性虫垂炎にて手術。

内服薬:アセトアミノフェン屯用。

生活歴・アレルギー歴:ex-smoker(3カ月前まで20本/日)。飲酒習慣なし。独居。建築関係の仕事(9カ月前より休職中)。ピペラシリン/タゾバクタムにてショック症状。

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 2016年4月、「開業医の、開業医による、すべての医師・医学生のための医学塾」をスローガンに、「21世紀 適々斎塾」(p.305)を開塾しました。病歴聴取や身体診察に重点をおいた実臨床さながらの勉強会で、総合診療の達人たちを講師に抜擢しています。月に1回、大阪に集合するだけで、診療が楽しくなるという斬新な企画で、より深く、広く、楽しく進化中です。若者(医学生・研修医)の参加も多く、年齢関係なしで会場は熱気に満ちあふれています。

 「国試問題って、臨床で使えるな。国試対策講義を適々斎塾で開講すれば、学生さんも集まるし、われわれも若返れる。これって一挙両得かも!」という甘い?企画で、特別セミナー「国家試験をぶっとばせ!!!」の開催は決まりました。このセミナーのレベルは予想以上に高く、大きな学びを得ました。実際に医師国家試験に役立つセミナーだったかどうかは、今年度の国試を解答して楽しみたいと思います。

みるトレ Special・15

これぞ問診が肝! 忽那 賢志
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患者:40歳代、男性。都内在住の会社員。

主訴:便から白い紐のようなものが出てきた。

現病歴:昨晩、排便時に紙でお尻を拭く際に違和感を感じ、紙を観察したところ「白い紐状のもの」が観察された。気持ち悪かったので、白い紐状のものはトイレに流してしまったという。翌日、気になったため総合病院を受診し、感染症内科の外来に案内された。

既往歴:特記事項なし。

アレルギー:なし。

海外渡航歴:なし。

身体所見:特記すべき異常所見なし。

検査所見:便の直接塗抹検査を施行したところ、図1のような所見が観察された。

診察で使える!|急性期Point-of-Care超音波ベーシックス・12

心停止の評価 亀田 徹
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はじめに

「4H 4T」のうち心臓超音波で評価可能な病態は?

 心停止の初期対応は、すべての医療従事者に求められます。本邦で蘇生行為は、国際蘇生連絡委員会(ILCOR)による推奨に基づき、日本蘇生協議会(JRC)が作成した蘇生ガイドラインに準拠して行われます。2015年に公開されたガイドライン1)では、「心臓超音波検査は、標準的な蘇生を妨害することなく実施可能であれば、可逆性の原因を同定するための追加的診断機器として考慮されうることを提案する(弱い推奨、非常に低いエビデンス)」と述べられており、蘇生時の心臓超音波検査の利用について、一定の評価はされています1)。言い換えると、心臓超音波検査は、二次救命処置において必須の手技とはされていないということです。理由としては、心臓超音波検査を行うことで予後改善を示す質の高いエビデンスがないこと、さまざまな現場で起こる心停止に対して、つねに超音波が施行できるとは限らないことなどが考えられます。実際には心停止の原因が特定されないなかで、蘇生処置が継続されることが少なくありません。

 心停止の原因となる可逆的病態として、「4H 4T」が知られています(表1)。そのうち蘇生中に心臓超音波検査で評価が可能な病態として、心タンポナーデと急性肺塞栓症が挙がります。前者では心膜ドレナージ、後者では血栓溶解療法が考慮されます。

 本稿では心停止におけるfocused cardiac ultrasound(FoCUS)の役割と可能性について述べたいと思います。

*本論文中、[▶動画]マークにつきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2020年2月29日まで)。

I LOVE Urinalysis|シンプルだけどディープな尿検査の世界・12

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Case

患者:77歳、男性。

現病歴:アルコール依存症と高血圧の既往があったが、現在は加療を受けていない。数日前から食欲がなかったが、飲酒は継続していた。その後、嘔吐と意識障害が出現したため救急受診した。

バイタルサイン:血圧168/68mmHg、体温36.2℃、脈拍数100回/分・整、呼吸数24回/分、SpO2 98%(room air)。

動脈血液ガス(pH 7.30、pCO2 26mmHg、HCO3- 12.5mEq/L、アニオンギャップ29mEq/L、血糖 71mg/dL、乳酸3.8 mmol/L)では、顕著なアニオンギャップ開大性代謝性アシドーシスと、代謝性アルカローシスを認めた。

 尿定性

比重 1.022

pH 5.5

蛋白 1+

糖 -

ケトン体 ±

潜血 1+

ウロビリノゲン 正常

ビリルビン -

ジェネラリスト漢方Basics|東西2つの視点でアプローチ・3

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 「○○病には△△湯」という単純な病名対応の処方では、漢方薬の効果を得にくかったり、副反応を招きやすかったりする。漢方の基本を理解し、漢方薬の構成生薬を意識すると、治療の幅や応用が拡がり、より安全に漢方薬を使用できる。

オール沖縄!カンファレンス・15

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CASE

患者:89歳、女性。

主訴:来院9日前から持続する発熱。

既往歴:高血圧症、脳梗塞(左片麻痺残存)、不眠症、便秘症。

内服歴:バルサルタン、アムロジピン、シロスタゾール、ラメルテオン、スボレキサント、メマンチン、トラゾリン、大黄甘草湯。

家族歴:特記事項なし。

生活歴:喫煙・飲酒歴なし。

現病歴:来院9日前に上腹部痛と嘔吐を認め、当院救急外来を受診し、急性胃腸炎の診断で対症療法後に帰宅となった。腹痛などの自覚症状は改善したが、帰宅後から37.4〜38.4℃の発熱が持続。来院前日にかかりつけ医を受診したところ、血液検査でCRP 12.9mg/dLを指摘され、当院へ紹介となった。

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 古代バビロニア(紀元前2000年頃)には、医者がいなかった。病人が出ると、家族は病人を広場へ連れて行く。通行人は病人に必ず症状を訊ね、自分や知り合いに同じ病気を治した経験があれば、その治療法を教えてやるのだ。

 オスラーは、哲学者や作家の医師論や医師批判に非常に興味をもっていたようである。古代ギリシャの哲学者プラトン(紀元前427年〜紀元前347年)や医師ヒポクラテス(紀元前460年頃〜紀元前370年頃)の思想からも、オスラーは大きな影響を受けている。哲学者ソクラテスが処刑された紀元前399年、当時ヒポクラテスは60歳くらい、プラトンは28歳の青年であった。本稿サブタイトルの「プラトンが描いた医術と医師」とは、オスラーが1893年に行った講演である。

苦手克服|野獣のリアル勉強法・15

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 私は、医師12年目を終えようとしている内科医です。野獣クラブの“総帥”より、「リウマチ・膠原病診療の“虎の巻”を」という指令を賜りました。E.coliも知らずに研修医になり、支え・助けてくださったみなさまのおかげで現在に至る身なのですけれども、「目上の方からお願いをされたら、『Yes』か『ハイ』と答えましょう。いつも『My pleasure!』と返事をしていれば、間違いはありません」と指導いただいて参りました。そこで、“猫の巻”になってしまう恥を忍んで、指令に従い、覚え書きを記させていただきます。

総合診療専門医(仮)セルフトレーニング問題・12

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セッティング

あなたは郊外にある無床診療所で働く総合診療を専門とする医師である。専門診療は、大規模病院の専門家と連携をとりながら診療をしている。自院では、血算・検尿・単純X線・心電図・超音波(心臓・頸部・腹部)・上部消化管内視鏡検査を実施することができる。

55歳からの家庭医療|明日から地域で働く技術とエビデンス・15

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diseaseとillnessのギャップ

 私が診療所に赴任して最初に直面したことは、客観的な対象としての疾患と、患者が主観的にとらえている健康問題の間のギャップでした。

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 2017年6月、大学の学外実習の期間に、スペインのバルセロナにあるVall d'Hebron Hospital小児・母子医療センター(写真1)で実習を行いました。

 滋賀医科大学では学生の外部病院実習は提携病院で行いますが、自分で探せば海外での病院実習が可能であるため、自大学小児科の澤井俊宏先生にご紹介をいただき、6年生の5月から1カ月半、Vall d'Hebron Hospitalで実習することができました。

#総合診療

#今月の特集関連本❶

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#今月の特集関連本

#今月の連載関連本

#医学書院の新刊

#編集室に届いた執筆者関連本

#参加者募集

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 在宅医療のフィールドほど多職種連携の効果が発揮される場はなく、だからこそ医師・看護師・ケアマネジャーが、それぞれの思考プロセスを共有し、患者のケアに取り組む姿勢が重要である。

 本書は、これまで状態が安定している患者宅へ訪問した際、「あれ!? いつもと違うな?」という小さな変化を感じる場面から始まる。「普段は和やかな表情の寝たきり患者の意識レベルがなんとなく変」「ここ1カ月間、食事量が徐々に少なくなっている」「オムツ交換をした際に、オムツに少量の出血が付着していた」など、日常の訪問看護・訪問診療で遭遇する頻度の高い状態変化が25話もちりばめられており、看護師と医師の対話形式でお互いの思考プロセスを共有している。

#参加者募集

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目次

『総合診療』編集方針
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 1991年に創刊した弊誌は、2015年に『JIM』より『総合診療』に誌名を変更いたしました。その後も高齢化はさらに進み、社会構造や価値観、さらなる科学技術の進歩など、日本の医療を取り巻く状況は刻々と変化し続けています。地域医療の真価が問われ、ジェネラルに診ることがいっそう求められる時代となり、ますます「総合診療」への期待が高まってきました。これまで以上に多岐にわたる知識・技術、そして思想・価値観の共有が必要とされています。そこで弊誌は、さらなる誌面の充実を図るべく、2017年にリニューアルをいたしました。本誌は、今後も下記の「編集方針」のもと、既存の価値にとらわれることなく、また診療現場からの要請に応え、読者ならびに執筆者のみなさまとともに、日本の総合診療の新たな未来を切り拓いていく所存です。

2018年1月  『総合診療』編集委員会

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次号予告

基本情報

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総合診療
28巻3号 (2018年3月)
電子版ISSN:2188-806X 印刷版ISSN:2188-8051 医学書院

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