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パーキンソン病(PD)を含む神経変性疾患の治療は、大きく分けて「対症療法」と「疾患修飾療法」の2つに分類される。PDにおいては、従来よりレボドパ(L-ドパ)が対症療法のゴールドスタンダードとして使用されてきた。しかし長期投与に伴い、薬効の減弱や、逆に内服直後に過剰な効果が現れ、不随意運動(ジスキネジア)を引き起こすといった運動合併症が問題となる。そのため、これらの合併症に対応可能な新たな薬剤の開発が求められている。一方、疾患修飾療法とは、疾患の自然経過に介入して進行を抑制する治療法であるが、これまでその実現にはきわめて高いハードルがあった。近年では、アルツハイマー型認知症における抗アミロイドβ(Aβ)抗体療法がブレークスルーとして注目され、神経変性疾患治療全体の流れにも変化が生じつつあるが、PDにおいては依然として疾患修飾療法の確立には至っていない。
このような状況のなかで、2018年以降に国内で使用可能となった新規内服薬として、オピカポン(オンジェンティス®)とサフィナミド(エクフィナ®)が挙げられる。オピカポンは末梢性カテコール-O-メチル基転移酵素(COMT)阻害薬であり、L-ドパの末梢での分解を抑制することで血中濃度を安定させ、結果として中枢への移行量を増加させて症状を緩和する。長時間作用型であることから、従来のCOMT阻害薬とは異なり、1日1回の内服で効果を発揮し、多剤併用が一般的なPD患者にとっては服薬負担の軽減が期待できる。一方、サフィナミドはモノアミン酸化酵素B(MAOB)阻害薬であり、内因性ドパミンおよび中枢移行後のL-ドパ由来ドパミンの分解を抑制することで、シナプス間隙のドパミン濃度を高め、症状を改善する。従来のMAOB阻害薬と異なり、グルタミン酸の放出抑制作用も併せもつことが報告されており、これによる神経保護作用やジスキネジアの抑制効果が期待されている。

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