INTENSIVIST 3巻2号 (2011年4月)

特集 モニター

1.はじめに 橋本 悟
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Intensivist誌は,これまで集中治療に関連した各種病態を対象とした特集を組み,その診断および治療についてエビデンスに基づいた詳細な解説を読者に提供してきました。しかし,この第10号では少し趣向を変えて,「モニター」を取り上げてみました。

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集中治療室に装備される医療機器の筆頭といえば,ベッドサイドモニター,セントラルモニターに代表されるモニター機器であろう。これらモニター機器は刻々とデータを与えてくれる便利なものとして存在感はあるものの,深い関心が払われることは意外に少ない機器でもある。ただ当たり前のように目の前にあり,故障知らずに動いてくれ,操作に困ったらMEさんを呼べばよいし,少々アラームはうるさいけど,時にはアラームで助かったこともある,医療スタッフのモニター機器に対する認識はそんなところであろうか…。それでいて,もしモニターの画面が突然消えたら,すなわち,モニターがモニターであることを放棄したなら,スタッフは皆,間違いなく不安に陥るであろう。

 本稿では,なくてはならない(?)のに,そのことに気がつかない,そんな空気のような存在であるモニター機器について概括してみたい。

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はじめに症例を2つ提示する。特定の出来事を指すものではないが,実際にあった事例を参考にしている。

【症例1】A氏(80歳代男性)は膵頭十二指腸切除術を受けたが,術後肺炎を合併していた。約1か月後,痰を喉に詰まらせ,呼吸が停止した際,看護師らが心拍モニターの心停止状態を知らせるアラームを約20分間にわたって見逃した。いったんは蘇生したものの,3日後に心不全で死亡した。

【症例2】B氏(70歳代男性)は腹部大動脈瘤破裂の緊急手術を受けたが,呼吸管理が長期化したため気管切開されていた。手術から約1か月後,気管カニューレに痰が詰まり,SpO2が低下し始めていたが,パルスオキシメータのアラームが切ってあったために異常に気づかれなかった。20分後,心停止を知らせる心電計のアラームが鳴り,看護師が駆けつけると心肺停止状態であった。心肺蘇生を行いいったんは蘇生されたが,3日後に呼吸不全で死亡した。

なぜアラームが鳴っているのに対応しなかったのであろうか。なぜアラームを切ってしまったのか。現場で発生するこれらの問題に答えるには,その背景に隠れている本質的な問題に目を向けなければならないこともある。

 本稿ではアラームの抱える,重大であるにもかかわらずほとんど関心の向けられてこなかった(ように見える)問題点について考えてみたい(主として,ICUのベッドサイドモニターから発せられる,音によるアラームを念頭に置いている)。

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生体情報モニターとは,心電図や呼吸波形,脈拍,血圧,経皮的動脈血酸素飽和度などの数値を監視して異常時にはアラームで知らせる装置である。近年,そのモニターに関するヒヤリ・ハット報告やアクシデント報告が急増してきた。そのなかからアラームに関係する事例をいくつか以下に紹介する。

【事例①】横浜のある公立病院。脳出血で救急搬送され,1か月以上にわたるICU管理ののちに,やっと状態が落ち着いたということで一般病棟に移った50歳代の男性。しかし,その翌日,10人の看護師がナースステーションにいたにもかかわらず,何度も鳴っているアラームに気づかなかったために心肺停止状態に陥る。この患者は数日後に死亡した。

【事例②】東北地方の大学病院。転落事故で脊髄を損傷し,四肢麻痺と呼吸不全で緊急入院していた80歳代の男性。人工呼吸器の接続が外れたにもかかわらず,アラームに気づかれずに心肺停止に陥った。

【事例③】関東のある公立病院。70歳代の男性患者の心停止を知らせる警告音を看護師3人が「無駄鳴り」と思い込み対応が遅れる。この患者は数時間後に亡くなった。

このように,病棟で看護師がモニターの警告音に気づかずに対応が遅れ,入院患者が心肺停止に至るという事故は枚挙にいとまがない。にもかかわらず,モニターのアラームの発生状況やその信頼性などの実態については十分に検討されていない。本稿では,アラーム内容を検討し発生頻度や心電図での不整脈判定における信頼性の分析について,我々が調べた内容を紹介する。

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集中治療室における記録の電子化には,生体モニターなどの医用電子機器の発達により実現されてきた側面と,「カルテ」の電子化としての病院情報システムの発達により実現されてきた側面の2つの面がある。このことは,集中治療室での電子記録を複雑にすると同時に,興味深いものにしている。集中治療に携わる医師は,セントラルモニターなどの医用電子機器側における電子的な記録保持の機構に対する理解はもちろん,病院情報システムが普及してきた今日では,電子化された医療記録に関する知識を深めることが必要となろう。

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現在主に使用されている肺動脈カテーテルpulmonary artery catheter(PAC)は,ほとんどがBalloon-tipped catheter,いわゆるSwan-Ganzカテーテルと呼ばれるものである。Swan-Ganzカテーテルという名称はその発明者のHarold J SwanとWilliam Ganzの名前をとってつけられた,エドワーズライフサイエンス社の登録商標である。Swan-Ganzカテーテル以前にも肺動脈カテーテルや右心カテーテル自体は存在したが,これをベッドサイドで挿入することを可能にし,広く臨床応用させたのはSwan-Ganzカテーテルの発明以降のことである。そのため,現在でもPACと言えばSwan-Ganzカテーテルを指すことが多い。

 本稿では,まず現在のPACの主流であるSwan-Ganzカテーテルの構造と測定原理について述べ,次いで歴史的な変遷と議論に触れる。なお,PAC一般について述べる場合はPACとし,特にSwan-Ganzカテーテルの機能や特徴について述べる場合にはSwan-Ganzカテーテルと表記することにする。

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肺動脈カテーテル(PAC)は1970年代から急速に普及していったが,1990年代後半からその使用量は減少に転じている1)。この現象の背景となった文献を紹介していくとともに,今後のPACのあり方について論じたい。

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読者は,肺動脈カテーテルpulmonary artery catheter(PAC)に関する以下の質問にとっさに答えられるだろうか。

1. 肺動脈楔入圧(PAWP)を測定する際に,呼吸サイクルのどのタイミングで測定すべきか(連続波形のどの時点をPAWPとして採用すべきか)?吸気時か呼気時か?その開始期か終末期か?なぜそのタイミングで測定すべきなのか?ベッドサイドで実際の測定を自信を持って行うことができるか?

2. PAWPを測定する際に,心周期のどのタイミングで測定すべきか?心室収縮期か心室拡張期か?その開始期,中期,終末期か?それとも心房収縮期か?なぜそのタイミングで測定すべきなのか?ベッドサイドで実際の測定を自信を持って行うことができるか?

3. ベッドサイドでPAWPのa波,c波,v波,x谷,y谷を同定できるか,また,生理的,病的になぜそのような波形を生じるか説明できるか?

4. PEEP付加時のPAWP測定をどのように行うべきか?測定値をどのように解釈すべきか?

5. 肺動脈破裂を防ぐための有効な予防手段は何か?

6. PAWPと肺動脈拡張期圧の相関が低くなるのはどのような病態か?

7. 心機能の良好な乏尿患者が陽圧換気中と自発呼吸中でPAWPが14mmHgと同一の値を示した。同様な血行動態管理を行うべきか?判断のためにどのような情報が必要か?

8. ショック発症0日,5日でそれぞれPAWPが12mmHgと同一の値を示した。同様な血行動態管理を行うべきか?判断のためにどのような情報が必要か?

解答は総論*1や4人の症例討論*2を参照していただければと思うが,自信を持って全問解答できた方は少ないのではないかと想像する。

 冒頭にあえてこのような挑戦的な質問を配置した理由は,読み進んでいただければご理解いただけると思うが,ここにPACがもつ宿命が暗示されているといってもよい。PACに対する強い逆風が吹き荒れるなか(もしかしたら吹き荒れた後の静けさのなか?),“PACという1つの文化”は消滅してしまうのであろうか。

6.その他の心拍出量測定 小竹 良文
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今回の特集において,筆者に与えられたタスクは肺動脈カテーテル(PAC)以外の低侵襲心拍出量モニターを紹介し,その有用性を述べることである。できるだけ無作為化比較試験(RCT)の結果に基づき,エビデンスレベルの高いものについて述べるように,とも指示されている。しかしながら,多くの報告はそれぞれのモニターの精度を検証したもので1),有用性のエビデンスを示した報告はわずかしかない。

 本稿では,精度に関するデータおよび手術室での使用に関しては省略し,集中治療領域における低侵襲心拍出量モニターの使用方法に重点を置いて紹介することとしたい。記載にあたっては,可能なかぎり測定原理,長所,短所,臨床的有用性の紹介,小児に対する適応の有無,心拍出量以外のパラメータという順序で記述するよう留意した。

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近年,集中治療室(ICU)におけるモニタリングは,侵襲的モニターから可能なかぎり非侵襲的なモニターへとシフトしつつある。特に,重症患者の血行動態把握と循環管理を目的とした肺動脈カテーテルの有用性が否定されたこと1~4)は,世界の集中治療医に大きなインパクトを与えた。

 そして,モニタリングとしての中心静脈圧central venous pressure(CVP)も,肺動脈楔入圧pulmonary artery wedge pressure(PAWP)と同様に,集中治療医学の発展の歴史とともに用いられてきた古典的な指標である。これらの指標は,静的パラメータstatic parameterとも呼ばれ,血圧などと同様,ある一点における生体情報を数値化したものである。容量評価や輸液の指標としての静的パラメータの有用性には限界があり,否定的な見解5~8)が数多く報告されている。一方,これらに代わり,動脈圧や左室1回拍出量の呼吸性変動などの生体情報の変化率が動的パラメータdynamic parameterとして最近注目されており,重症患者の容量評価において,静的パラメータを凌駕するモニターとして期待されている5,6,8,9)

 しかしながら,カテコールアミンをはじめとした薬物投与,高カロリー輸液などの目的で,中心静脈カテーテルが挿入されている重症患者は少なくない。また,敗血症性ショックの治療ガイドライン10)においても,CVPを8~12mmHgに維持することが治療指標の1つに位置づけられている。ドイツのICUにおける調査11)によれば,約90%の集中治療医がCVPを輸液の指標として,他の指標よりも圧倒的に高い率で用いていた。おそらく我が国でも,CVPをまったく測定しないICUは数少ないと思われる。本誌の読者は,この古典的な圧モニターであるCVPをどのように位置づけ,どのような目的で利用し,どのように解釈しているであろうか。

 本稿では,重症患者のモニタリングとしてのCVPの歴史・生理学的意義・有用性・限界などに焦点を当て解説していく。

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中心静脈圧(CVP)は,前負荷(循環血液量)の指標として用いられている。CVPが低下することは,心拍出量の低下につながり,組織酸素代謝に影響を与える。ショックの本態は,末梢循環不全および末梢組織酸素代謝異常であり,CVPは,輸液による蘇生を行ううえで,非常に重要な指標であると考えられてきた。これは集中治療医,いや,すべての医師が第一の教義のようにすり込まれてきた,必須事項の1つである。

 しかし,これから述べるように,CVPは循環血液量の指標とはなり得ず,補液によって心拍出量が増加するかどうか(輸液反応性fluid responsiveness)の指標としても限界があることが,多くの研究1~3)で示されている。CVPは,あくまでも右房または上大静脈で記録される「圧」であって,循環血液「量」や補液に対する反応性を適切には反映しない。したがって,輸液管理に関する臨床判断に用いるべきではない4,5),と考えられる。

 本稿では,中心静脈「圧」は循環血液「量」や輸液反応性を予測できるのか,という命題に対する考察を行う。

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歴史上,最初の血圧測定は観血的血圧測定で,1733年に英国の医師Stephen Hales(1677~1761)が動物で,1856年にはJ. Faivreがヒトで,直接動脈にカテーテルを入れて測定している。イタリアの医師Scipione Riva-Rocci(1863~1937)がカフによる非観血的血圧測定を行ったのは,Halesの測定から160年も後である。

 観血的血圧測定は,モニター上に圧波形を連続的に表示してくれるため,我々に大きな安心感を与えてくれる。しかし,その裏には多くの問題が潜んでおり,正しい血圧波形を表示するのは非常に難しいことであることを認識しておかなければならない。本稿では,我々が見ている圧波形とは何であるかを考える。

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血圧が麻酔・集中治療領域において最も重視されるバイタルサインの1つであることは,言うまでもない。例えば,血液循環に必要な運動エネルギーを供給する心機能が障害された病態は周術期における死亡率の増加と密接に関連する。したがって,循環系モニタリングは,不安定な血行動態の早期発見や加えられるさまざまな治療の評価を行ううえで欠くことのできない手段である。一方,近年における生体モニタリング技術の進歩は目覚ましく,これはさまざまな物理量センサやコンピュータの発展に依存する点が大きいが,生体から得られる一次情報や高次情報は極めて多岐にわたり,複雑化の一途をたどっている。臨床では,これら情報過多による消化不良に陥りやすい傾向も認められるが,基本的なバイタルサインの絶え間ない看視というモニタリングの原点に立ち返れば,患者管理の目標を見失うことはないだろう。

 ところで,これらのモニタリング技術は,特に麻酔・集中治療領域において,観血的動脈圧測定や肺動脈カテーテルに代表される侵襲的手段が多用されるが,合併症の可能性や医療コスト増大などの欠点が指摘されている。そこで,本稿では,安全性が高くコストの低い代表的モニタリングとして,非侵襲的血圧測定法non-invasive blood pressure(NIBP)をテーマにその概略を述べる。

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このコラムを読む前に,まだ「観血的血圧:連続波形があるから安心,では決してない!」(261ページ)と「非侵襲的血圧測定法(NIBP):欠かせぬモニター故に,その欠点を知ろう」(271ページ)を読んでいないのであれば,まずそちらを先に読んで,このコラムに戻ってきていただきたい。

 さて,この2つの章を読んで,読者の皆さんはどう感じられたであろうか。私は混乱状態に陥っている。動脈ラインも非侵襲的血圧測定法(NIBP)も正確な血圧を表示してくれないなら,これからどうやって血圧管理をすればよいのであろう…。

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まず,問題です。血圧(BP)に関するありがちな会話:

動脈圧ラインでBP 90/45(58)mmHgの患者を診て,

「あれ,血圧90しかないの? 低いね。ちょっと実測してみて」

自動血圧計で測定すると,102/50(59)mmHg。

「なんだ,100あるじゃん。じゃあ大丈夫だね」

さて,このなかに間違いはいくつあるでしょう?

この問題の答えの1つは,自動血圧計non-invasive blood pressure(NIBP)を“実測”と呼んでいる点である。この言葉,日本中で使われているかどうかは知らないが,少なくとも関東地方ではよく耳にする。“実際に測定”しているのは動脈圧ラインだと思うのだが,いったい誰が実測という言葉を使い始めたのだろうか?

 のっけから脱線してしまって申し訳ない。本コラムの主題はNIBPについてではなく,血圧の考え方についてである。ちなみに,この問題の答えは“実測”を含め4つある。まだわからない方は以下を読んでほしい。

【コラム】mmHgからhPasへ 橋本 悟
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■平成25年をもってmmHg,cmH2Oは使用まかりならぬ

皆さん,国際単位系The International System of Units(SI単位)はご存知ですね。SI単位は,秒(時間),メートル(長さ),キログラム(重さ),アンペア(電流),モル(物質量),カンデラ(光度),ケルビン(温度)の7つの基本単位と,これらを組み合わせて構成されるSI組立単位から成り立っています。SI組立単位には固有の名称と記号で表現されるものが20以上存在します。例えば周波数のヘルツ(1s-1),電圧のボルト(1m2・kg・s-3・A-1),そして圧力に関してはパスカル(1m-1・kg・s-2)などが挙げられます。多くの学術論文では,国際ルールとしてしばしばSI単位への修正を要求されます。

 ところで,医療の現場でよく使われる単位である,mmHgやcmH2OはSI単位には属しません。しかしながら,医療現場の混乱を避けるため,血圧,血液ガス,人工呼吸器の設定などの単位として,これらは暫定的使用が認められています。学術論文では血圧などに対してkPas(キロパスカル)という表記が時々みられますが,実際の臨床でこの単位にお目にかかることはまずありません。

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本稿はパルスオキシメータと題していますが,責任編集から「歴史の部分をしっかり」と注文されているので半分を歴史にあて,残りをそれ以外のテーマである臨床的な事項・新しい装置,それに麻酔に安全をもたらしたか否かの評価と,日本で確立・普及が遅れた理由の考察などにあてます。

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気管挿管の成功・失敗が判断できて,呼吸の様子がわかり,さらに酸塩基平衡や心拍出量や循環も推察できる。皆さんは「そんな素敵なモニターがあったら使ってみたい」とは思わないだろうか?

 実は,「そんな素敵なモニター」が皆さんの身近に存在する。それは,カプノメータである。しかし,それには条件がある。すなわち,動作原理とモニターの所見,そして酸素と二酸化炭素の生理学と病態を,正しく理解していること,である。

 本稿では,有用性を強調した“pro”の立場で,カプノメータを解説する。

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呼気終末二酸化炭素end-tidal CO2(ETCO2)モニターは,全身麻酔中の標準的なモニターとして使用され,米国麻酔科学会(ASA)も「気管挿管から抜管まで,カプノグラフィ,カプノメトリー,または質量分析mass spectroscopyによって,持続的かつ量的なETCO2分析を行うこと」を推奨している1)(メモ)。また近年,気道開存および換気確認のためばかりでなく2~5),心肺蘇生(CPR)の効果確認(質の評価や自己心拍再開の検出)のためのモニター6)として,救急外来やICUで広く受け入れられるようになった(表1)。人工呼吸中の患者に対する“バイタルサインの1つである”と推奨する文献7)さえ見受けられる。

 しかしながら,ICUにおけるETCO2モニタリングには,数多くの限界が存在すること8)を知っておかねばならない。少なくとも現時点では,人工呼吸管理を適切に行うために,ETCO2を継続して測定することを裏づけるデータは存在しない8),と言ってよい。実際,米国呼吸ケア協会American Association of Respiratory Care(AARC)のガイドライン9)においても,「すべての人工呼吸患者に用いるべきではない」と明言したうえで,カプノグラフィが補助的モニターとして活用できる場面を列挙したのみで,決してルーチンの使用は推奨していない。

 本邦における急性期呼吸療法に関する各種出版物を閲覧すると,しばしばETCO2モニターが人工呼吸患者の標準モニターであるかのような記載をみかけるが,その根拠を提示しているものは少ない。本稿は,そのような乱暴な主張に対する明確な反論を提示する。それを通して「ETCO2モニターは,決してICUの人工呼吸患者にとっては,必須のモニターではない」ことを理解していただければ幸いである。もちろん反論・異論は大歓迎である(icc@medsi.co.jpまで)。

 このような主旨から,以下,ICUにおけるETCO2モニタリングのpotentialな(考え得る理論的な)目的別に(表1),本当にその目的を達成できるか,すなわち,自分が知りたい情報が本当に得られるのか,また,どのようなときにETCO2が限界を示すかについて吟味した。最後に,筆者が実際に受けた経験のある反論に対する回答を述べた。

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肺動脈カテーテルの先端に装着したオキシメータによって混合静脈血酸素飽和度mixed venous oxygen saturation(SvO2)を連続的に測定できるようになったのは,1971~1973年のMartinらの報告1~3)以降である。それまでは,肺動脈に挿入したカテーテルから血液を採取してSvO2を測定していたが,非連続的な測定でありモニターとしての有用性には限界があった。Martinら3)は,カテーテルの先端に2波長の光を発生させ反射光から酸素飽和度を測定できる装置を作製し,現在のSvO2モニターの端緒を開いた。その後,ファイバーオプティックカテーテルの開発,改良,製品化が進み,現在は安定した高精度のSvO2モニター装置が,手術室や集中治療室,循環器領域で広く用いられている。

 一方,中心静脈血酸素飽和度central venous oxygen saturation(ScvO2)の連続測定装置は,2001年にRiversら4)が重症患者管理での有用性を報告し,それを受けて2002年にエドワーズライフサイエンス社が製品化して発売を開始した。その後,欧米を中心にScvO2連続モニターが広く用いられるようになっている。

 以下,本稿ではSvO2とScvO2の測定原理,臨床的意義,注意点をまとめる。

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本章では,架空症例に対する3つのシナリオを用意しました。そして,4人のIntensivistsに,この患者に関する下記の3つのシナリオにおける,それぞれが実際に行うであろう治療手順を,ご自身のポリシーを交えつつ述べていただくようにお願いしました。事前の打ち合わせも行いませんでしたので,どういうことになるのか正直心配いたしました。しかし,案ずるより産むがやすしと言いましょうか,結果的には非常に読み応えのある興味ある内容となりました。

【症例】

73 歳の男性。下部消化管穿孔でabdominal sepsis。汎発性腹膜炎の状態でドレナージ,S 状結腸切除,ストーマ造設。術後6時間経過し,敗血症性ショックになった。

・既往歴:糖尿病(ヘモグロビンA1C 6.9%),軽度腎機能障害(ベースライン血清クレアチニン値1.3mg/dL),陳旧性心筋梗塞,PCI の既往×2,EF 35%

・服薬:バイアスピリン,ラシックス,アルダクトン,クレストール,ディオバン,アマリール。服薬コンプライアンスは良好

・現症:手術後より鎮静なし。現在の意識は,肩を強く揺さぶって,かろうじて開眼。両上肢・下肢ともに痛み刺激に逃避あり

・検査所見:HR 110/min,BP 84/40(平均58)mmHg,CVP 9mmHg,SpO2 92%,ScvO2 58%,T max 38.8℃,T current 37.8℃。呼吸数35/min(陽圧換気中)

・術中イン・トータル:6100mL(含むPRBC 4単位),アウト・トータル:480mL(尿量80mL,ドレーン250mL 淡血性,胃管150mL)

・血液検査:pH 7.21,PaCO2 41mmHg,PaO2 78mmHg,HCO3- 17mEq/L,BE -10,SaO2 94%,WBC 2300,Hb 8.9,Hct 26,血小板数 4.3 万,PT-INR 1.23,APTT 58 秒,Alb 2.1g/dL,Na 132mEq/L,K 5.4mEq/L,Cl- 102mEq/L,BUN 34mg/dL,Cr 3.9mg/dL,BS 212mg/dL,乳酸 7mmol/L,その他肝酵素,CPK の軽度上昇あり。

●シナリオ1:

上記の心機能の悪い敗血症性ショック患者がICUに搬送された。

●シナリオ2:

上記患者の治療開始後,3日目には病態が安定し,利尿期となって尿流量が増加してきた。

●シナリオ3:

上記患者の治療開始後,3日経ってもカテコールアミンが減らせない,乏尿も継続し,重症ARDS(PEEP 15cmH2O でP/F<100)になった。

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■経過観察1

心機能の悪い敗血症性ショック患者の循環管理は,極めて難しい。それは,適正水分管理の幅が極めて狭いからである。言い換えれば,敗血症性ショックの病態もあり循環血漿量不足となりやすく,逆に多少でも多くなればすぐに左心不全(肺うっ血)をきたしてしまうからである。さらに,両心機能不全患者では右心機能の低下もあるため,右室への前負荷が満たされなければ,左室拡張終期容量を確保することができなくなる。それ故,左室拡張終期容量かつ,心収縮力を最大限にする治療戦略を立てるようにしている。

 すなわち,Frank-Starling の法則に従い,

①血管内容量が心収縮力をmaxにする点をどのようにして読み取るか

がポイントなってくる。その他の注意点として,

②肺の水分負荷に対する許容力の程度(肺傷害スコアであるMurray score≧3など,今後人工呼吸器にて調整できる幅がどのくらいあるか)

③肺間質への水分の移動の程度(循環血漿量の血管外漏出の程度=透過性亢進度)

が挙げられる。

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■私のバックグランド

実際の患者に対しての治療は,同じ医者でも施設(周囲の環境)が異なれば治療のストラテジーも変化するであろうし,同じ施設でも医師のバックグランドによってその治療ストラテジーは異なると考える。そのため,まず筆者と所属する施設の背景を最初に提示する。

 筆者は,麻酔科出身の救急医であり,重症患者の初期診療から集中治療までを専門としている。また,所属する部門は,1000床規模の大学病院内唯一の院内ICU(10床)を含む。院外からの重症救急症例も入室するが,内科/外科系,成人/小児を問わない院内重症例や定期手術症例も入室してくるclosed 型のgeneral ICUである。このような背景で,提示されたケースに対し,筆者であれば以下のように治療していく。

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■経過観察1

Surviving Sepsis Campaign 20081)によると,敗血症および重症敗血症,敗血症性ショックでは,

①敗血症の病態時期に合わせた厳密な循環・呼吸管理

②適切な抗菌薬投与

③感染源コントロール

が治療の大きな柱となる。

 このケースでは,②すなわち,腸内細菌科である好気性グラム陰性菌,嫌気性グラム陰性菌を広域にカバーする抗菌薬の選択〔メロペネム(ないしピペラシリン/タゾバクタムないしアンピシリン/スルバクタム+アズトレオナム)±ゲンタマイシン(ないしアミカシン)などが第一選択となる〕と十分量と適切な投与間隔で迅速に投与すること2),③すなわち,消化管穿孔であり腸管切除・ストーマ造設を迅速に行い,全身状態が改善するまでの間を厳密な循環・呼吸管理でしのぐ,という流れで治療を行う。

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■はじめに:ハイポって何だ?

ICU患者の循環管理について議論していると,「ハイポ」や「血管内脱水」といった言葉を頻回に耳にする。しかし,このような言葉が使われているときに本当に循環血液量が不足しているかというと,実はその多くにおいてそうではないと感じている。症例の具体的な管理方法について述べる前に,脱水だと何が困るのか,脱水かどうかを診断する方法はあるのか,この2点について,まず考えてみたい。

 脱水だと何が困るのか。単純な答えは,循環血液量が減少し,心臓の前負荷が減少し,心拍出量が減少し,臓器への酸素/栄養の運搬量が減少するから困る1),である。ということは,心拍出量がモニターされていてそれが十分な値であれば,他の指標がどうであろうとその患者は脱水ではない,ということになる。例えば,心臓外科手術後で肺動脈カテーテルが留置されていて,強心薬なしに心係数が3L/min以上維持され頻脈でもないときに,中心静脈圧(CVP)や肺動脈楔入圧(PAWP)が低いという理由で補液が行われるのが,脱水だと何が困るのかを理解していない典型である。

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制作側にいることによる贔屓目かもしれないが,Intensivist誌は面白い雑誌だと思う。各号を読むたびにいつもそう感じるのだが,今回は担当編集委員として,このモニター特集号の制作に携わり,さらにこの雑誌が好きになった。

 これまでのIntensivist誌では,疾患や病態や治療について特集を組んだが,今回は言ってみれば診断方法についてなので,いつもと雰囲気が違う。しかし,その違い以上に,これまでの号とはずいぶん異なった内容になっているのではないだろうか。せっかくいつものIntensivist誌と趣が異なるので,解説も変えて,各章のサマリーはしないでおこうと思う。ただ,どの章も非常に面白い(なかにはタイトルから想像される内容とはかけ離れた章まである)ので,是非,熟読していただければと思う。

連載 ICUと皮膚病変

第1回:紅斑 菅谷 誠
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紅斑は,最も頻度の高い皮膚病変の1つである。

鑑別診断も多岐にわたっており,湿疹から薬疹,白癬まで,さまざまである。

このうち,緊急の処置を要するものは,帯状疱疹,蕁麻疹,蜂窩織炎などの細菌感染症,重症薬疹である。

これらの疾患が疑われた場合は,すみやかに皮膚科専門医にコンサルトし,治療を開始することが重要である。

連載 集中治療に役立つ内科ベッドサイド診断学(米国内科専門医の内科診断学)

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【総 論】

■病態

oncologic emergenciesとは「悪性腫瘍患者に生じる,直ちに精査と処置をしないと致死的になるか,重大な障害を残す病態」を総称した概念であり,特定の疾患群を表すものではない。我々腫瘍内科専門医には基礎として欠かすことのできない分野である。この病態は,表1,表2に記すように,多岐にわたり,あらゆる臓器に生じ得る。

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【疾患各論】

前編(334ページ)に続き,重要な病態のキーポイントを列記する。

連載 集中治療室目安箱:ナース/ME,私の言い分

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■集中治療におけるチーム医療の重要性

近年,チーム医療の重要性が叫ばれている。集中治療領域では特にその必要性が高い。集中治療領域で扱う患者は,高い重症度とともに,緊急性も有することが多く,人工呼吸器,血液浄化装置,循環補助装置などの,生命維持機能の強い各種医療機器を駆使せねばならない。それだけに,特有の知識・技術が必要となる。このような環境下では,ヒューマンエラーが不可避である。また,小さな有害事象でも重篤な結果となりやすい。

 このヒューマンエラーを避けるためには,多職種,多人数が存在し,監視の目を増やすことが望ましい。なぜなら,一個人,一職種が単独で行える医療には限界があり,自らの能力を十分に発揮するためには,優秀なパートナー(同職種,他職種ともに!)の存在が重要だからである。このパートナーの集合体が,チームである。

連載 ICUフェローからのメッセージ

第12回:Pittsburgh雑感 酒井 哲郎
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私は1989年に医学部卒業後,天理よろづ相談所病院で初期研修および心臓血管外科のレーニングを受けた。1996年から3年間にわたるトロント総合病院での臨床研究フェローシップの後,1999年よりPittsburgh大学病院心臓胸部移植外科講師として,手術室とICUに文字どおり“住み込んだ”。24時間360日オンコールだった。

 2001年から心機一転,1年間のインターンおよび3年間の麻酔科レジデンシーを経て,2005年より同大学の麻酔指導医として,主に腹部臓器移植手術麻酔を中心に勤務している。

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次号目次

基本情報

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INTENSIVIST
3巻2号 (2011年4月)
電子版ISSN:2186-7852 印刷版ISSN:1883-4833 メディカル・サイエンス・インターナショナル

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5月25日~5月31日
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