特集 モニター
3.“Crying Wolf”―アラームは敵か味方か?
石川 淳哉
1
Jun-ya ISHIKAWA
1
1横須賀共済病院 救命救急センター
pp.181-188
発行日 2011年4月1日
Published Date 2011/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102100030
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はじめに症例を2つ提示する。特定の出来事を指すものではないが,実際にあった事例を参考にしている。
…
【症例1】A氏(80歳代男性)は膵頭十二指腸切除術を受けたが,術後肺炎を合併していた。約1か月後,痰を喉に詰まらせ,呼吸が停止した際,看護師らが心拍モニターの心停止状態を知らせるアラームを約20分間にわたって見逃した。いったんは蘇生したものの,3日後に心不全で死亡した。
【症例2】B氏(70歳代男性)は腹部大動脈瘤破裂の緊急手術を受けたが,呼吸管理が長期化したため気管切開されていた。手術から約1か月後,気管カニューレに痰が詰まり,SpO2が低下し始めていたが,パルスオキシメータのアラームが切ってあったために異常に気づかれなかった。20分後,心停止を知らせる心電計のアラームが鳴り,看護師が駆けつけると心肺停止状態であった。心肺蘇生を行いいったんは蘇生されたが,3日後に呼吸不全で死亡した。
…
なぜアラームが鳴っているのに対応しなかったのであろうか。なぜアラームを切ってしまったのか。現場で発生するこれらの問題に答えるには,その背景に隠れている本質的な問題に目を向けなければならないこともある。
本稿ではアラームの抱える,重大であるにもかかわらずほとんど関心の向けられてこなかった(ように見える)問題点について考えてみたい(主として,ICUのベッドサイドモニターから発せられる,音によるアラームを念頭に置いている)。
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