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読者は,肺動脈カテーテルpulmonary artery catheter(PAC)に関する以下の質問にとっさに答えられるだろうか。
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1. 肺動脈楔入圧(PAWP)を測定する際に,呼吸サイクルのどのタイミングで測定すべきか(連続波形のどの時点をPAWPとして採用すべきか)?吸気時か呼気時か?その開始期か終末期か?なぜそのタイミングで測定すべきなのか?ベッドサイドで実際の測定を自信を持って行うことができるか?
2. PAWPを測定する際に,心周期のどのタイミングで測定すべきか?心室収縮期か心室拡張期か?その開始期,中期,終末期か?それとも心房収縮期か?なぜそのタイミングで測定すべきなのか?ベッドサイドで実際の測定を自信を持って行うことができるか?
3. ベッドサイドでPAWPのa波,c波,v波,x谷,y谷を同定できるか,また,生理的,病的になぜそのような波形を生じるか説明できるか?
4. PEEP付加時のPAWP測定をどのように行うべきか?測定値をどのように解釈すべきか?
5. 肺動脈破裂を防ぐための有効な予防手段は何か?
6. PAWPと肺動脈拡張期圧の相関が低くなるのはどのような病態か?
7. 心機能の良好な乏尿患者が陽圧換気中と自発呼吸中でPAWPが14mmHgと同一の値を示した。同様な血行動態管理を行うべきか?判断のためにどのような情報が必要か?
8. ショック発症0日,5日でそれぞれPAWPが12mmHgと同一の値を示した。同様な血行動態管理を行うべきか?判断のためにどのような情報が必要か?
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解答は総論*1や4人の症例討論*2を参照していただければと思うが,自信を持って全問解答できた方は少ないのではないかと想像する。
冒頭にあえてこのような挑戦的な質問を配置した理由は,読み進んでいただければご理解いただけると思うが,ここにPACがもつ宿命が暗示されているといってもよい。PACに対する強い逆風が吹き荒れるなか(もしかしたら吹き荒れた後の静けさのなか?),“PACという1つの文化”は消滅してしまうのであろうか。
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