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本章では,架空症例に対する3つのシナリオを用意しました。そして,4人のIntensivistsに,この患者に関する下記の3つのシナリオにおける,それぞれが実際に行うであろう治療手順を,ご自身のポリシーを交えつつ述べていただくようにお願いしました。事前の打ち合わせも行いませんでしたので,どういうことになるのか正直心配いたしました。しかし,案ずるより産むがやすしと言いましょうか,結果的には非常に読み応えのある興味ある内容となりました。
【症例】
73 歳の男性。下部消化管穿孔でabdominal sepsis。汎発性腹膜炎の状態でドレナージ,S 状結腸切除,ストーマ造設。術後6時間経過し,敗血症性ショックになった。
・既往歴:糖尿病(ヘモグロビンA1C 6.9%),軽度腎機能障害(ベースライン血清クレアチニン値1.3mg/dL),陳旧性心筋梗塞,PCI の既往×2,EF 35%
・服薬:バイアスピリン,ラシックス,アルダクトン,クレストール,ディオバン,アマリール。服薬コンプライアンスは良好
・現症:手術後より鎮静なし。現在の意識は,肩を強く揺さぶって,かろうじて開眼。両上肢・下肢ともに痛み刺激に逃避あり
・検査所見:HR 110/min,BP 84/40(平均58)mmHg,CVP 9mmHg,SpO2 92%,ScvO2 58%,T max 38.8℃,T current 37.8℃。呼吸数35/min(陽圧換気中)
・術中イン・トータル:6100mL(含むPRBC 4単位),アウト・トータル:480mL(尿量80mL,ドレーン250mL 淡血性,胃管150mL)
・血液検査:pH 7.21,PaCO2 41mmHg,PaO2 78mmHg,HCO3- 17mEq/L,BE -10,SaO2 94%,WBC 2300,Hb 8.9,Hct 26,血小板数 4.3 万,PT-INR 1.23,APTT 58 秒,Alb 2.1g/dL,Na+ 132mEq/L,K+ 5.4mEq/L,Cl- 102mEq/L,BUN 34mg/dL,Cr 3.9mg/dL,BS 212mg/dL,乳酸 7mmol/L,その他肝酵素,CPK の軽度上昇あり。
●シナリオ1:
上記の心機能の悪い敗血症性ショック患者がICUに搬送された。
●シナリオ2:
上記患者の治療開始後,3日目には病態が安定し,利尿期となって尿流量が増加してきた。
●シナリオ3:
上記患者の治療開始後,3日経ってもカテコールアミンが減らせない,乏尿も継続し,重症ARDS(PEEP 15cmH2O でP/F<100)になった。
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