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呼気終末二酸化炭素end-tidal CO2(ETCO2)モニターは,全身麻酔中の標準的なモニターとして使用され,米国麻酔科学会(ASA)も「気管挿管から抜管まで,カプノグラフィ,カプノメトリー,または質量分析mass spectroscopyによって,持続的かつ量的なETCO2分析を行うこと」を推奨している1)(メモ)。また近年,気道開存および換気確認のためばかりでなく2~5),心肺蘇生(CPR)の効果確認(質の評価や自己心拍再開の検出)のためのモニター6)として,救急外来やICUで広く受け入れられるようになった(表1)。人工呼吸中の患者に対する“バイタルサインの1つである”と推奨する文献7)さえ見受けられる。
しかしながら,ICUにおけるETCO2モニタリングには,数多くの限界が存在すること8)を知っておかねばならない。少なくとも現時点では,人工呼吸管理を適切に行うために,ETCO2を継続して測定することを裏づけるデータは存在しない8),と言ってよい。実際,米国呼吸ケア協会American Association of Respiratory Care(AARC)のガイドライン9)においても,「すべての人工呼吸患者に用いるべきではない」と明言したうえで,カプノグラフィが補助的モニターとして活用できる場面を列挙したのみで,決してルーチンの使用は推奨していない。
本邦における急性期呼吸療法に関する各種出版物を閲覧すると,しばしばETCO2モニターが人工呼吸患者の標準モニターであるかのような記載をみかけるが,その根拠を提示しているものは少ない。本稿は,そのような乱暴な主張に対する明確な反論を提示する。それを通して「ETCO2モニターは,決してICUの人工呼吸患者にとっては,必須のモニターではない」ことを理解していただければ幸いである。もちろん反論・異論は大歓迎である(icc@medsi.co.jpまで)。
このような主旨から,以下,ICUにおけるETCO2モニタリングのpotentialな(考え得る理論的な)目的別に(表1),本当にその目的を達成できるか,すなわち,自分が知りたい情報が本当に得られるのか,また,どのようなときにETCO2が限界を示すかについて吟味した。最後に,筆者が実際に受けた経験のある反論に対する回答を述べた。
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