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近年,集中治療室(ICU)におけるモニタリングは,侵襲的モニターから可能なかぎり非侵襲的なモニターへとシフトしつつある。特に,重症患者の血行動態把握と循環管理を目的とした肺動脈カテーテルの有用性が否定されたこと1~4)は,世界の集中治療医に大きなインパクトを与えた。
そして,モニタリングとしての中心静脈圧central venous pressure(CVP)も,肺動脈楔入圧pulmonary artery wedge pressure(PAWP)と同様に,集中治療医学の発展の歴史とともに用いられてきた古典的な指標である。これらの指標は,静的パラメータstatic parameterとも呼ばれ,血圧などと同様,ある一点における生体情報を数値化したものである。容量評価や輸液の指標としての静的パラメータの有用性には限界があり,否定的な見解5~8)が数多く報告されている。一方,これらに代わり,動脈圧や左室1回拍出量の呼吸性変動などの生体情報の変化率が動的パラメータdynamic parameterとして最近注目されており,重症患者の容量評価において,静的パラメータを凌駕するモニターとして期待されている5,6,8,9)。
しかしながら,カテコールアミンをはじめとした薬物投与,高カロリー輸液などの目的で,中心静脈カテーテルが挿入されている重症患者は少なくない。また,敗血症性ショックの治療ガイドライン10)においても,CVPを8~12mmHgに維持することが治療指標の1つに位置づけられている。ドイツのICUにおける調査11)によれば,約90%の集中治療医がCVPを輸液の指標として,他の指標よりも圧倒的に高い率で用いていた。おそらく我が国でも,CVPをまったく測定しないICUは数少ないと思われる。本誌の読者は,この古典的な圧モニターであるCVPをどのように位置づけ,どのような目的で利用し,どのように解釈しているであろうか。
本稿では,重症患者のモニタリングとしてのCVPの歴史・生理学的意義・有用性・限界などに焦点を当て解説していく。
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