胃と腸 43巻4号 (2008年4月)

特集 小腸疾患2008

序説

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 2000年にカプセル内視鏡,2001年にダブルバルーン内視鏡が論文発表され,その普及とともに小腸疾患に対する臨床医の興味は著しく増し,消化器関連の学会や研究会でも多数の小腸疾患症例が報告されるようになった.また,小腸病変を高率に伴うCrohn病やNSAIDs(nonsteroidal anti-inflammatory drugs)起因性腸炎の増加傾向も近年の小腸疾患診療への関心の高まりの一因となっている.さらに,小腸内視鏡検査のうち保険適応となっていなかったカプセル内視鏡も,最近やっと保険適応となり,小腸疾患の発見増加に一段と拍車がかかるものと期待されている.このような背景から,小腸疾患の診断と治療について,現時点における最新の知見を整理し理解を深めておくことは日常臨床において極めて重要と考えられ,本増刊号は企画された.

 カプセル内視鏡とダブルバルーン内視鏡の開発は小腸疾患の診断に大きな変革をもたらした.つまり,上述の小腸内視鏡検査が施行可能となった2001年以降と2000年以前で小腸疾患の診断手順は大きく変化した.すなわち,2000年以前においては小腸X線検査が小腸疾患のスクリーニングと精密検査の両面で主役を務めていた.小腸X線検査法には経口法と経ゾンデ法の2つの方法が用いられているが,それぞれ長所と短所を有する.つまり,経口法は,患者に与える苦痛が少なく簡便であるが,充満像と圧迫像しか撮影できない.しかし,バリウムの先端を丹念に圧迫・観察していくことによって大部分の病変はスクリーニング可能となる.一方,経ゾンデ法は,二重造影像によって微細病変の描出には優れているが,ゾンデを挿入するため患者に与える苦痛は大きい.したがって,日常診療においては,小腸病変のスクリーニングを目的とする場合には経口法がまず選択されてきたのに対し,小腸疾患の存在が強く疑われる場合や,他検査で既に病変の存在が指摘されている場合には,経ゾンデ法が優先されてきた.

総論 1.小腸疾患診断のための解剖組織学

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要旨 小腸は腹膜後器官である十二指腸と腸間膜を有する腸間膜小腸から成り,後者は空腸と回腸に分けられる.小腸の粘膜は輪状ひだおよびその表面に密生する腸絨毛から成り,十二指腸下行部から空腸上部にかけて最もよく発達している.十二指腸には粘膜のみならず粘膜下層に豊富に分布するという粘液腺である十二指腸腺があり他の消化管にはみられない特異性を示す.粘膜上皮は腸陰窩を形成し,陰窩底部にみられる腸内分泌細胞は十二指腸が最も豊富で空腸,回腸に向かうに従い減少し,Paneth細胞は回腸で最も豊富である.腸管粘膜はリンパ装置が多彩に発達し,特に回腸にみられるPeyer板は分泌型IgAを主体とする粘膜免疫による感染防御機構を構成する重要なリンパ組織であり,かつ他の臓器にはみられない特殊な形態と機能を有するリンパ組織である.

総論 2.小腸疾患の症候と診断手順

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要旨 カプセル内視鏡,ダブルバルーン内視鏡が開発され選択肢の広がった小腸疾患の診断について,小腸疾患と関連のある症候を,下血,腹痛,便通異常,腹部膨満,るいそうに分類し,鑑別手順,疾患につき概説した.下血に関しては上部・下部消化管の検索をしたうえでの小腸検索が基本であるが,出血の種類によっては早目の小腸検索も良いと考えられる.腹痛は部位からの同定や,様々な検査の複合的施行により迅速に診断されるべき症候である.便通異常のうち下痢は小腸疾患と関連するものが多く注意を要する.腹部膨満は腸閉塞なども疾患として含まれ,膨満の原因を見い出すことが早期診断に繋がる.るいそうは悪性疾患や精神疾患も含まれ,適切な鑑別が必要である.

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要旨 近年,小腸内視鏡はカプセル内視鏡とダブルバルーン内視鏡の出現により目覚しく進歩した.カプセル内視鏡は本邦でも2007年10月より原因不明の消化管出血を適応疾患として保険診療が開始された.そこで,従来の検査法に加えこの2つの新しい検査法をどのように組み合わせて効率的および低侵襲的に小腸出血を診断・治療するかが現在議論されている.また,各種検査の費用対効果の検討も必要である.本稿ではカプセル内視鏡,ダブルバルーン内視鏡,および従来の検査法を用いた小腸出血性疾患の診断手順および各検査の診断能を当院の検査結果を用いて解説する.

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要旨 カプセル内視鏡やバルーン内視鏡の登場により全小腸の内視鏡検査が可能となり,小腸疾患の診断は大きな転換期を迎えているが,小腸疾患の重要な位置を占める慢性炎症性疾患の診断には小腸X線検査は必要不可欠である.有管法による小腸二重造影法においては体位の工夫や用手・骨盤内圧迫を加えることにより小腸係蹄を分離することが病変描出に重要である.また大腸内視鏡に引き続いて行う内視鏡的逆行性回腸造影法は骨盤内回腸の微細所見の描出に有用であり,特にCrohn病患者における検査の負担軽減に有用である.小腸X線検査の診断には質の高いX線写真と,丁寧な読影が必要であり,検査の基本を習熟してきめ細かな診断を心がける習慣が大切である.

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要旨 カプセル内視鏡は2000年以降,欧米を中心に小腸疾患に対し広く用いられており,本邦においても2007年10月から保険収載された.Olympus Medical System社製の国産新型カプセル内視鏡は現在認可申請中であるが,その特徴は画像解像度の向上,光量の自動調節機能ならびに携帯型のreal-time viewerである.小腸X線造影検査に比し有意に病変発見率が高く,とりわけ血管性病変に対して高い有効性が示されている.またreal-time viewerの機能を利用し,カプセルの胃からの排泄遅延を認めた場合にはmetoclopramideの投与を行うことで,より効率的で良好な小腸の観察が可能になった.バルーン付小腸内視鏡との併用により,これまでは困難とされていた小腸疾患に対する診断・治療に大きく貢献するものと思われる.

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要旨 ダブルバルーン内視鏡は,屈曲した腸管をバルーン付きオーバーチューブで内側から把持し,それ以上の伸展を予防するという原理に基づいて開発された内視鏡である.現在市販化されているものは,EN450-P5(有効長2,000 mm,外径8.5 mm,鉗子口径2.2 mm:観察用),EN450-T5(有効長2,000 mm,外径9.4 mm,鉗子口径2.8 mm:処置用),EN450-BI5(有効長1,520 mm,外径9.4 mm,鉗子口径2.8 mm:大腸・術後腸管用)の3種類である.検査時のセデーションはconscious sedationが理想的であり,年齢などに応じて薬剤の使用量を調整することが大切であり,必ずモニタリングする必要がある.偶発症は,通常内視鏡で報告されている穿孔や出血のほかに急性膵炎やアミラーゼの上昇が報告されており,過度の短縮操作には注意を要する.

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要旨 体外式超音波を用いた小腸疾患の診断に関して概略を述べた.超音波により肥厚した腸管壁を検出し,その部位,分布,さらには層構造や壁外の変化などを評価することで多くの疾患においてその検出,診断,治療効果判定に有用である.加えて近年開発された造影超音波法により消化管の微細循環の描出も可能となった.ただしこれら体外式超音波検査の特性を生かすためには機器性能,検者の技量,さらには被検者の観察条件が一定のレベルを満たしていることも必要であろう.非侵襲的で簡便な体外式超音波検査は,今後小腸疾患におけるスクリーニングを含めた第一選択的検査法となることが期待される.

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要旨 近年,小腸内視鏡が進歩し小腸病変を内視鏡で直接観察する時代になった.しかし,X線検査は内視鏡検査と比較しても診断面における有用性は変わっていない.X線検査は,微小な血管性病変を除けば,簡便性,安全性,ならびに診断能では内視鏡検査と同等と考えられる.そこで,現時点での小腸X線診断の要点と有用性を再確認した.本稿では,基本的なX線学的異常所見を,①隆起(辺縁欠損),②狭窄,③浮腫,皺襞肥厚,④小さな陰影斑(潰瘍),⑤敷石像,⑥複雑な陰影斑(潰瘍),⑦びまん性疾患,に分けて所見を解説し,基本的なX線学的所見の鑑別について述べた.

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要旨 小腸の非腫瘍性疾患の診断に有用と考えられる内視鏡所見として,潰瘍性病変,狭窄,粘膜像,および血管性病変に着目してダブルバルーン内視鏡(DBE)とカプセル内視鏡(VCE)所見を呈示した.小腸内視鏡検査を用いると,微細な潰瘍性病変が観察可能であるが,縦走潰瘍,輪状潰瘍,およびその他の潰瘍に大別して鑑別診断を論じるのが妥当と思われる.狭窄はCrohn病,非特異性多発性小腸潰瘍症,非ステロイド性消炎鎮痛薬起因性小腸潰瘍,虚血性小腸炎でみられる所見であるが,随伴病変を評価することで鑑別は比較的容易である.粘膜像の異常として,皺襞腫大,結節状粘膜,絨毛腫大・萎縮,白点が挙げられるが,これらのみで診断を確定することは容易ではない.一方,小腸の血管性病変の診断は小腸内視鏡検査で飛躍的に向上した.今後,小腸疾患の診断におけるX線と内視鏡検査の役割,およびVCEとDBEの使い分けを確立する必要がある.

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要旨 小腸腫瘍は胃や大腸の腫瘍と比してまれな疾患ではあるが,悪性腫瘍の存在もあり,その診断は重要である.近年,カプセル内視鏡とダブルバルーン内視鏡の登場により,全小腸観察および,小腸腫瘍の内視鏡観察が可能となった.一方,小腸には粘膜下腫瘍が多く生検のみでは診断がつかない場合もあり,その治療方針や追加検査の必要性などを内視鏡所見で適切に判断する必要がある.そのためには病変の表面性状,色調,硬さなどから内視鏡診断を的確に行うことが重要ある.

総論 8.小腸炎症性疾患の病理学的鑑別診断

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要旨 代表的な小腸炎症性疾患であるCrohn病,虚血性小腸炎(病変),腸結核,腸管(型)Behcet病,単純性潰瘍の特徴的肉眼像および組織像,主な病理学的鑑別点について概説した.Crohn病は特徴ある縦走潰瘍,敷石像,非乾酪性類上皮細胞肉芽腫,全層性炎症,裂溝などのうち前3者が比較的特異性が高く,病理診断にはこの3者の組み合わせが大切である.虚血性小腸炎は多岐にわたる成因が考えられるため,急性期,慢性期の特徴ある病理所見に加えて臨床情報が重要となってくる.腸結核は回盲部に好発する輪状潰瘍が特徴で,乾酪性肉芽腫ないしは結核菌を証明することで確定診断に至る.腸管(型)Behcet病および単純性潰瘍は回盲弁上に主潰瘍が好発し,多くは回腸末端にも娘潰瘍が併発する.小腸炎症性疾患の鑑別診断に際しては,特徴的病理形態像の把握とともに臨床情報も加えて総合的に判断することが大切である.

総論 9.小腸腫瘍性疾患の病理学的鑑別診断

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要旨 小腸腫瘍性病変の鑑別には,上皮性,非上皮性,転移性の多岐にわたる疾患を念頭に置く必要がある.肉眼的に,隆起主体の病変では,粘膜下腫瘍かどうか,表面性状,色調,随伴潰瘍の形状から,上皮性腫瘍(腺腫,M癌,進行癌),悪性リンパ腫,脂肪腫,血管腫,GISTの診断が可能である.潰瘍主体の病変では,単発か多発病巣か,腸管狭窄の有無,潰瘍縁の形状,が疾患鑑別のポイントになり,転移性腫瘍,悪性リンパ腫,原発性分化型進行腺癌の推定ができるが,低分化充実型進行腺癌とdiffuse large B cell悪性リンパ腫の鑑別が問題となる.小腸腫瘍の診断を確定するためには各種免疫染色が必要であり,基本的セットとしてはケラチン,ビメンチン,S-100,LCA,KIT,CK20,CK7が推奨される.

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要旨 小腸疾患の内視鏡診断や内視鏡治療の分野はこれまで消化器内視鏡の分野における暗黒大陸であったが,カプセル内視鏡とダブルバルーン内視鏡の登場により小腸疾患の内視鏡診断学が大きく前進した.また,ダブルバルーン内視鏡を用いた内視鏡治療の有効性と安全性が広く認知されることにより,小腸疾患に対する内視鏡治療はプッシュ式内視鏡や術中内視鏡が主体であった時代から,ダブルバルーン内視鏡を用いた内視鏡治療を中心とする時代へと移行しつつある.本稿では,ダブルバルーン内視鏡を用いた内視鏡的止血術,内視鏡的拡張術,ステント留置,ポリペクトミー,EMRなどにつき概説する.

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要旨 最近,Crohn病を含めた小腸疾患は増加傾向にあり,手術症例数も増加している.本稿ではCrohn病に対する腹腔鏡下手術の現状と適応について概説する.Vienna分類を用いて,合併症,開腹移行について検討した.Lap(腹腔鏡下手術群)ではB3L3/4の総合併症,major合併症,開腹移行は,それ以外のグループより有意に高率であった.単変量解析ではB3L3/4は有意に開腹移行と相関していた.またB3L3/4は,多変量解析で総合併症の独立した危険因子であることが示された.次にB3L3/4においてLapとOpen(開腹手術群)を比較したところ,総合併症,major合併症ともに差を認めなかった.以上から,B3L3/4以外のグループでは腹腔鏡下手術はよい適応で,外科手術の第一選択となりうる.また,B3L3/4の患者に対しては,腹腔鏡下手術は安全に施行可能であるが,開腹移行率が高いことに留意すべきである.

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要旨 小腸腺腫は良性疾患であり基本的に治療不要だが,まれに癌化することもありcapsule endoscopy (CE)によるスクリーニングやdouble balloon endoscopy (DBE)による内視鏡治療が有用である.特に家族性大腸腺腫症では十二指腸で高率に癌化するため注意が必要となる.小腸癌は特異的な症状がなく早期発見は困難であったが,DBEで小腸全域の組織診断が可能となり早期診断が期待される.なおCEは狭窄症状がなくても癌性狭窄による滞留の危険性があるため,適応には慎重でなければならない.従来のX線検査にCEやDBEを安全かつ効率的に組み合わせることで,小腸腫瘍の早期診断や予後の改善に繋がると期待される.今後patencyカプセルの保険認可や小腸癌の化学療法の確立が望まれる.

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要旨 小腸原発悪性リンパ腫の臨床病理学的特徴と画像所見について,自験例を中心に概説した.組織型では,びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫が最も多く,胃原発例と比べ,MALTリンパ腫は少なく,T細胞性リンパ腫や濾胞性リンパ腫の頻度が高い.X線・肉眼分類では隆起型,潰瘍型(狭窄・非狭窄・動脈瘤),MLP型,びまん型,その他に分類され,組織型と相関がみられる.治療は,病変の範囲,組織型および病期に応じて,手術,化学療法,抗菌剤治療,watch and waitなどが選択され,限局例では外科的切除+術後化学療法が一般的である.予後は胃原発例より不良である.各組織型に特徴的な画像所見を理解して,適切な画像診断を行うことが重要である.

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要旨 消化管間葉系腫瘍は紡錘状細胞を主体とする消化管非上皮性腫瘍の総称で,免疫組織学的なマーカーの発現形式により平滑筋性腫瘍,神経性腫瘍そしてGISTの3つに大別され,特に小腸ではGISTの発生頻度が高い.本稿では小腸間葉系腫瘍の概説を行い,さらに小腸に多発性GISTを合併するvon Recklinghausen病および家族性多発性GISTについて画像所見を中心に呈示する.

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要旨 小腸カルチノイドは欧米に比し本邦では比較的まれな疾患であるとされている.これまでは部位的な問題から早期発見が困難で,進行した状態で発見されることが多かった.しかし,近年のダブルバルーン小腸内視鏡,カプセル内視鏡などを用いた小腸疾患に対する診断能の目覚ましい進歩により,今後は早期の段階で小腸カルチノイドに遭遇することが予想される.そのため小腸カルチノイドの臨床像を正確に認識しておくことが必要である.本稿では,過去の本邦報告例を検討し,小腸カルチノイドの臨床像(発生部位別頻度・転移率),画像診断の特徴などを概説し,新しい小腸内視鏡を用いた本疾患の取り組みかたについて述べる.

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要旨 小腸腫瘍はまれな疾患ではあるが,小腸脂肪腫は小腸良性腫瘍の中では比較的多い.症状としては腸重積による腹痛と出血が多い.内部の脂肪組織を反映した軟らかい腫瘍であることが基本的な特徴である.腹部CT検査,腹部超音波検査でも腫瘍内部の脂肪を反映した所見が得られ,検出ができれば質的診断にも有用である.最近ではダブルバルーン内視鏡を用いた内視鏡的切除も可能となり,より小さいうちに発見することが重要である.

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要旨 小腸のリンパ管腫は,剖検例の0.07%に発見されるのみで極めてまれである.単純性リンパ管腫,海綿状リンパ管腫,囊胞状リンパ管腫の3種類に分類され,小腸では海綿状リンパ管腫が多い.それらの多くは無症状である.色調は黄白調で,軟らかく粘膜下腫瘍の形態をとる.血管腫は,小腸良性腫瘍の10%程度を占める.本邦では,海綿状血管腫の頻度が高い.症状は下血や貧血である.血管肉腫は,ほとんどが他部位からの転移であるがまれに原発が存在する.Kaposi肉腫は,AIDS患者だけではなく,免疫抑制剤を服用した移植患者にも発症する.グロームス腫瘍は,極めて珍しく,報告例は少ない.今後は,カプセル内視鏡やダブルバルーン式小腸内視鏡を用いることで小腸疾患の発見頻度が増すことが予想される.

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要旨 小腸の過誤腫は比較的まれな良性腫瘍である.1995~1999年の5年間に報告された本邦の小腸良性腫瘍196例中,過誤腫は20例(約10%)であり,うち9例はPeutz-Jeghers症候群に合併したものであると報告されている.過誤腫も他の小腸腫瘍と同様に症状を呈することは少ないが,腫瘍が増大すると内腔を狭小化し,閉塞症状を現したり,腸重積による腹痛や出血が主症状となることも多い.診断は小腸造影,CT,腹部超音波検査,出血シンチグラフィー,血管造影検査などを組み合わせて行うことが重要であるが,近年,カプセル内視鏡や小腸内視鏡による診断・治療が積極的に導入されている.

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要旨 転移性小腸腫瘍の臨床的特徴について述べた.小腸内視鏡の進歩による発見機会の増加と癌化学療法の進歩による患者予後の改善により,今後,頻度は変化していくものと思われた.原発巣は肺癌,悪性黒色腫が多く,転移部位は空腸が多く,病変が多発しやすかった.下血や腸管閉塞症状を来すことが多く,画像診断ではbull's eyeやtransverse stretchが特徴像であった.転移性小腸腫瘍の内視鏡検査は,腫瘍の全体像が認識しやすく,生検も可能なダブルバルーン小腸内視鏡が,より適していると思われた.小腸内視鏡検査の進歩による早期診断,病態解明が,予後不良例が多い本疾患患者の予後改善につながることを期待している.

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要旨 inflammatory fibroid polypは粘膜下腫瘍の形態を呈する良性腫瘤であり,小腸では回腸に発生することが多い.腹痛,嘔吐を来すことが多く,出血の頻度は低い.X線・内視鏡検査では亜有茎または有茎の粘膜下腫瘍様隆起を呈し,表面にびらん,潰瘍を形成し,陰茎亀頭様の外観を呈する場合がある.治療は腹腔鏡下腸切除が行われることが多い.腸管子宮内膜症は子宮内膜組織が腸管に存在し,腹部膨満や腹痛,血便などの症状を伴う良性疾患で,小腸ではほとんどが回腸にみられる.X線・内視鏡検査では横走ひだの集中を伴う粘膜下腫瘍様隆起,腸管の狭窄や圧排所見がみられる.治療は合成アンドロゲン製剤やゴナドトロピン放出ホルモンのアナログを使用することが多い.

各論 2.小腸炎症性疾患

1) Crohn病 長坂 光夫 , 平田 一郎
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要旨 Crohn病は近年その症例数は増加の一途を辿り,いまや小腸疾患の代表と言える.近年の様々な検査機器,検査技術の進歩により小腸の詳細な情報を得ることが可能となった.また生物製剤など新たな治療薬の開発で栄養療法中心の治療から欧米型の薬物療法主体の治療へと変化を遂げた.Crohn病の画像上の特徴はまず初期の病変と考えられるアフタ様潰瘍/病変,不整形潰瘍が縦走化し,次いで縦走潰瘍,敷石様外観へと進展しさらに狭窄,瘻孔,膿瘍などの合併症を惹起する.また,手術適応の頻度として最も高い合併症である狭窄に対して,近年のダブルバルーン小腸内視鏡による内視鏡的拡張が可能となり手術を回避できる症例も増加している.

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要旨 高齢化社会の到来や免疫抑制剤の多分野での使用に伴い,小腸結核は増えると考えられる.以前は小腸結核の診断は困難であったが2001年以降,新たな小腸内視鏡であるカプセル内視鏡とダブルバルーン内視鏡の登場により全小腸の観察が可能になり,今後は無症候性患者の拾い上げや早期診断が行われると思われる.当科では390例の小腸疾患診療の中で,胃や大腸に病変を認めない小腸結核確診4例を経験した.それらの内視鏡像では回腸が病変の主座であることが多く,不整形の浅い潰瘍性病変の多発と浮腫状粘膜が特徴的であった.治療は化学療法が中心となるが,難渋することがあり少なくとも1年間は継続することを勧めたい.

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要旨 腸管Behcet病(BD)・単純性潰瘍(SU)は術後に約70%再発した.再発例に臨床症状が出現した場合,吻合部に大きな潰瘍を形成し,再手術になった.手術例では早期に大腸内視鏡で吻合部を検索し,小潰瘍であれば,無水エタノール撒布やPentasa(R)注腸液撒布により潰瘍は縮小または瘢痕化する.無水エタノールは大きな潰瘍では腹痛などの症状が出るので,Pentasa(R)撒布が有用である.また,回腸に潰瘍が多発した症例ではPentasa(R)注腸液は100 mlあるので病変部に薬剤が行きわたることが推測できる.現在ではPentasa(R)注腸液による治療を主に行っている.

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要旨 慢性出血性小腸潰瘍症,いわゆる非特異性多発性小腸潰瘍症は,小腸の病変からの持続する潜出血のため,臨床的には慢性の貧血,低栄養を来す疾患である.本疾患は,特徴的な形態学的所見ならびに切除標本の肉眼所見と病理組織所見を有しており,独立した疾患単位として取り扱うべきである.本稿では,臨床的事項,病理学的所見,形態学的所見,鑑別を含めた診断および治療について概説した.

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要旨 カプセル内視鏡およびダブルバルーン小腸内視鏡の導入により小腸病変の診断能が画期的に向上した.ことにnonsteroidal anti-inflamatory drugs (NSAIDs)による小腸病変に関しては膜様狭窄以外にもびらん,アフタ様潰瘍,打ち抜き状円形潰瘍などの病変が指摘されるようになった.またNSAIDsによる出血性の小腸潰瘍についてはダブルバルーン小腸内視鏡により止血できる場合もあり,診断および治療に関して大きな変革を迎えている.

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要旨 虚血性小腸炎は,腸管の微小循環障害による可逆性の虚血性病変である.狭窄型の報告が多くを占め,60歳代の男性に好発し,初発症状は突発する腹痛,嘔気・嘔吐で,慢性期にはイレウス症状を認める.高血圧,虚血性心疾患などの基礎疾患を伴うことが多い.好発部位は回腸であり,狭窄型では慢性期に小腸X線造影や小腸内視鏡検査で全周性の管状狭窄,口側腸管の拡張などの所見を認める.病理組織学的所見として,腸管壁の肥厚を伴う境界明瞭な管状・求心性狭窄と同部の全周性潰瘍,粘膜下層を中心とする線維化,比較的強い慢性炎症細胞浸潤などが特徴である.狭窄型虚血性小腸炎は保存的治療により改善する可能性は少なく,手術が必要になる場合が多い.

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要旨 放射線性腸炎は,骨盤内悪性腫瘍に対する放射線治療の合併症として約1.5~12.0%に発症するとされている1).発生部位として直腸,次いでS状結腸が多く,一般的に小腸は可動性に富んでいるため障害を受けにくい2).しかし術後照射の場合など癒着により腸管の可動性が制限されている場合,発生の可能性が高くなる.小腸における放射線性腸炎の頻度,病態・分類,臨床像と画像所見の特徴,診断,治療について述べる.

8) 好酸球性胃腸炎 清水 誠治
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要旨 好酸球性胃腸炎は消化管に好酸球浸潤を来す比較的まれな疾患であり,小腸はその好発部位である.小腸X線では空腸を主体として広範囲の小腸にKerckring皺襞の密度上昇や浮腫性肥厚,結節状の隆起形成,伸展不良,蠕動・分泌の亢進等を認めるが,びらんや潰瘍がみられることは少ない.内視鏡では粘膜面の変化に乏しく,浮腫,発赤,皺襞の密度上昇以外に明らかな異常として捉えられないことが多い.CTや腹部超音波検査は腸壁肥厚や腹水を検出するうえで有用である.末梢血中好酸球増多や小腸の広範な伸展不良がみられる場合に,本症を念頭に置く必要がある.治療には副腎皮質ステロイドが著効を示すが,抗アレルギー剤も有効である.まれに狭窄や穿孔を来すこともあり,早期に診断し不可逆的な変化が出現する前に治療を行うことが重要である.

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要旨 カンピロバクター腸炎は回腸末端に病変を認める頻度は少なく,大腸病変が主体である.サルモネラ腸炎では回腸末端病変の頻度は約80%と高く,病変部位は回盲部主体のものと大腸主体のものに分類できる.この両者は大腸病変を見て,ほとんど診断可能である.腸炎ビブリオ腸炎は病変の主座は小腸であるが,回腸末端と回盲弁にびらん・発赤を認める.エルシニア腸炎とチフスは回腸末端のPeyer板や孤立リンパ小節に病変を作り,回盲弁や上行結腸にも病変を認める.エルシニア腸炎ではびらんやアフタ様病変が主体であるが,チフスでは潰瘍を作ることが多い.これらの診断には内視鏡だけでなく,腹部エコーや腹部CTも役立つ.

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要旨 Whipple病は,下痢,体重減少,腹痛,関節痛などを認め,吸収不良症候群を呈する疾患であり,Tropheryma whippleiの感染により生じる全身性疾患である.消化管では十二指腸を含む小腸が病変の主体であるが,アジア地域では極めてまれな疾患である.内視鏡検査でびまん性の白色絨毛の所見が特徴的であり,生検組織で粘膜固有層のPAS染色陽性マクロファージを証明し,確定診断には電顕とPCRが重要である.糞線虫症(strongyloidiasis)は糞線虫(Strongyloides stercoralis)によって起こる寄生虫感染症の1つである.糞線虫はヒトに経皮的に感染し,主に十二指腸や小腸上部に寄生する.わが国では沖縄県と鹿児島県の南西諸島が浸淫地である.糞線虫症は低蛋白血症や麻痺性腸閉塞が診断の契機となることが多いが,播種性糞線虫症としての細菌性肺炎や髄膜炎など致命的合併症で診断されることも少なくない.内視鏡検査所見として粘膜ひだの腫大・混濁,びらん・潰瘍形成などであり,生検組織に虫体や虫卵を認めることがあるが,ほとんどが重症化した症例の所見であり,糞便を用いた普通寒天平板培地法による診断が重要である.

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要旨 セリアック病は食事中のグルテンにより生じる自己免疫性疾患である.グルテン過敏性腸炎や栄養障害などの消化管症状に加え,鉄欠乏性貧血,骨粗鬆症,Ⅰ型糖尿病,小脳失調などの消化管外症状が知られ,また無症候性の病態も存在する.長期的には一部の悪性リンパ腫のリスクを高めることから,適切な早期介入が公衆衛生上の課題となっている.欧米での罹患率は約1%だが,本邦での頻度はいまだ不明である.

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要旨 小腸出血の原因のうち,かなりの割合を血管性病変が占めているが,従来の検査方法では診断が困難であった.近年の小腸内視鏡の発展により,小腸血管性病変の内視鏡的診断のみならず,治療までも可能となってきた.消化管の血管性病変は,静脈の特徴を持つangioectasia,動脈の特徴を持つDieulafoy's lesion,動脈と静脈の間に吻合あるいは移行がみられるarteriovenous malformationの3つが代表的である.この病理学的背景に基づいて,拍動性の有無に着目した内視鏡分類を用いることで,内視鏡的診断とともに,適切な治療方法の選択が可能となる.

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要旨 小腸憩室は,Meckel憩室を除くと頻度が少なく,X線検査,剖検での発見率は0.02~1.3%,全消化管憩室の1.4~3.2%と報告されている.一方,Meckel憩室は剖検の2%前後で発見されるが,多くは無症状で経過することが多く,まれに消化管出血,腸閉塞,憩室炎などの症状を来す.他方,小腸および大腸の先天奇形の1つである重複腸管は小児期に消化管出血,腫瘤触知などで発症することが多く,成人での発症はまれである.しかし,近年の内視鏡検査の進歩により憩室を確認する機会も増えてきた.われわれの経験した症例を交え概説する.

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要旨 腸リンパ管拡張症は,リンパ流障害によるリンパ管の著明な拡張とともに,蛋白を含むリンパ液が腸管内へ漏出する疾患である.臨床的には浮腫,下痢,脂肪便,腹痛,乳糜腹水・胸水,低アルブミン血症,低Ca血症,末梢血リンパ球数の減少,低γ-グロブリン血症,易感染性を示す.診断には,十二指腸・小腸内視鏡検査で特徴的所見(白色絨毛,散布性白点,白色小隆起,粘膜下腫瘤様隆起)を認めること,およびα1アンチトリプシン・クリアランス試験や99mTc-human serum albuminシンチグラフィーで蛋白漏出性腸症を確認することが有用である.また,リンパ管造影やリンパ管シンチグラフィーでのリンパ管異常も参考になる.治療の原則は経口脂肪摂取の制限であるが,二次性では基礎疾患の治療を行う.

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要旨 腸管囊腫様気腫症(pneumatosis cystoides intestinalis;PCI)は,腸管壁の粘膜下または漿膜下に多発性の気腫性囊胞を形成する比較的まれな病態である.基礎疾患,合併疾患の有無により特発性と続発性に分類され,続発性の多くは,消化管疾患,慢性呼吸器疾患,膠原病などとの関係が考えられている.本症は,特徴的な含気性の多発性囊腫であることから画像診断は比較的容易であり,確定診断が得られれば保存的に治療が可能である.まれにfree airを合併することがあり,腹膜刺激症状に乏しい場合は本症を念頭に置く必要がある.

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要旨 ポリポーシス症候群は,消化管粘膜から腸管内腔内に突出した限局性隆起のポリープが多発した疾患群であり,その組織像と遺伝性の有無などにより分類されている.多くは胃や大腸に発生してくるが,小腸に発生することもまれではない.最近のカプセル内視鏡やダブルバルーン内視鏡の登場はこれらの疾患の診断のみではなく,治療方針の決定に非常に有用な検査であり,注目を集めている.特に遺伝性消化管ポリポーシスは,癌を好発するという特徴を有しており,臨床上極めて重要である.本稿では,他臓器病変を伴う各ポリポーシス症候群を中心に概説する.

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要旨 全身性アミロイドーシスのうち消化管への親和性が高く臨床上遭遇する機会が多いのはAL型とAA型アミロイドである.小腸は最も高頻度かつ高度にアミロイドが沈着する部位であるが,両者は沈着様式の相違により形態学的に異なる特徴的な所見を呈する.すなわち,AL型では粘膜筋板と粘膜下層,固有筋層に塊状沈着を生じるため,Kerckringひだの肥厚と粘膜下腫瘤様の小隆起の多発が特徴的である.一方,AA型では粘膜固有層と粘膜下層の血管壁に沈着するため,絨毛構造に変化を生じ典型例では微細顆粒状隆起が多発する特徴的な粗ぞうな粘膜像を呈してくる.近年,カプセル内視鏡とダブルバルーン小腸内視鏡の登場による小腸疾患診断学の向上は目覚しいが,びまん性小腸疾患の診断に際しては,全体像が見渡せるX線検査はいまだ簡便かつ有用であり,消化器医としてはそのX線学的特徴を知っておくことは重要と思われる.

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要旨 強皮症は全消化管に罹患しうるが,食道,小腸,大腸,胃の順に多く,小腸病変は強皮症患者の約50%に認める.上部消化管X線検査では食道中部~下部の蠕動低下と下部の拡張を認める.小腸病変には偽性腸閉塞や腸管嚢腫様気腫症などがある.小腸X線検査所見はhide bound appearance,coil spring appearanceが言われている.今回,CREST症候群に小腸病変を伴った症例を経験し,比較的まれな症例であったので報告する.

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要旨 血管炎症候群は血管壁の炎症を来し,種々の臨床症状を呈する全身性炎症性疾患の総称である.障害される血管の部位と太さにより,大型血管炎,中型血管炎,小型血管炎に分類され,それぞれ異なる臨床像を呈する.これらの疾患では,臓器症状の1つとして消化管病変をしばしば認め,腹痛や消化管出血,穿孔などの症状を伴う.これらの症状は時に全身症状や皮膚所見に先行してみられ,日常診療において診断に難渋することも少なくない.治療にあたってはステロイド剤や免疫抑制剤を用いるが,時に致死的合併症を生じる場合があり,早期診断,早期治療が極めて重要である.

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要旨 代表的な免疫不全状態である移植片対宿主病(graft-versus-host disease;GVHD)および後天性免疫不全症候群(acquired immunodeficiency syndrome; AIDS)の小腸病変について概説した.GVHDは下痢を主症状とし発症し,下部消化管の中では終末回腸が好発部位である.終末回腸の内視鏡像は浮腫,発赤,潰瘍の頻度が高いがこれらの所見はGVHDに特異的な所見ではない.びまん性の広範囲な粘膜脱落はGVHDに特徴的で他の疾患ではみられない.病理組織では腺窩上皮のアポトーシスが特徴的である.AIDSでは小腸に日和見感染症および腫瘍性病変を生じる.感染症ではサイトメガロウイルスの感染の頻度が高く,そのほか原虫,寄生虫感染もみられる.腫瘍性病変としてはカポジ肉腫が重要である.免疫不全状態では小腸病変が予後に影響すると考えられ,その内視鏡像,病理像の理解が重要と思われる.

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要旨 里吉症候群(里吉病,全身こむら返り病)は進行性筋痙攣(こむら返り),全身脱毛,下痢を3主徴とする病因不明の疾患である.下痢が高度な例ではまれに全消化管の器質的異常を認め吸収不良症候群を来すが,症例の集積も乏しくその病態は不明な点が多い.自験例を含めた報告例における小腸病変の臨床所見,病理組織学的所見の特徴は以下のごとく要約される.X線検査所見では,小腸のKerckringひだが消失し,粘膜面は大小不同の微細顆粒状隆起あるいは不整形な結節状隆起の密在から成り立ち,明らかなびらん,潰瘍は認めない.あたかも軽石状の外観(pumiceous appearance)を呈する.内視鏡検査所見では,粘膜面はまだら発赤調で,散布性白斑を伴う微細顆粒状の粘膜変化や腫大した絨毛の集簇から形成されたポリープ状の隆起を認める.高度の消化器症状を呈した症例の剖検病理組織所見では食道を除く全消化管にgastroenterocolitis cystica polyposa(GCP)の像を呈する.

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要旨 潰瘍性大腸炎(UC)は大腸に限局する炎症性腸疾患と定義されているため,古典的には小腸病変はみられない.しかし実際にはbackwash ileitisや術後の回腸嚢炎が知られている.最近はUC関連十二指腸炎の報告が増加している.さらに回腸囊の近位側に炎症が及ぶpre-pouchitisや,十二指腸から空腸に炎症が及ぶUC関連enteritisの報告がみられる.UC関連十二指腸炎の内視鏡的特徴は,もろい粘膜,細顆粒状粘膜,多発アフタであるが,多発アフタはCrohn病でもみられるため,詳細な鑑別診断を要する.

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要旨 門脈圧亢進症は食道胃静脈瘤,門脈圧亢進症性胃症,門脈圧亢進症性腸症を合併する.これらは消化管出血や貧血の原因となり,臨床上重要である.本稿では,門脈圧亢進症性小腸症について,今までの報告とダブルバルーン内視鏡を中心とした当科での知見を概説した.門脈圧亢進症における小腸病変として,発赤,びらん,毛細血管拡張様所見,静脈瘤が今までにも報告があったが,今回,数の子様粘膜を新たな特徴的所見として加えた.小腸の数の子様粘膜は,絨毛の浮腫,毛細血管の拡張像を表したものであり,脾容積増加,門脈圧亢進症性胃症,門脈圧亢進症性腸症の存在,血小板減少などの門脈圧亢進を示す症候に多かった.

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要旨 吸収不良症候群は,消化吸収機能の低下により種々の栄養障害を来す疾患の総称である.診断には各種の消化吸収試験が用いられるが,小腸内視鏡の進歩により小腸病変を直接精査することも可能となった.

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要旨 蛋白漏出性胃腸症は消化管よりアルブミン漏出を来す疾患群であり,低蛋白血症と浮腫を来し,しばしば下痢を生じる.原発性と続発性に分類され,前者は腸管のリンパ系の異常が主な原因と想定されているが,後者はその他に血管透過性亢進や消化管粘膜の炎症や腫瘍に伴うものが多くみられる.腸管からの蛋白漏出はα1-アンチトリプシンクリアランス試験により診断するが,漏出部位はアルブミンシンチグラフィーにて検出する.リンパ管拡張がある場合には内視鏡的に白色絨毛や白斑として認識され,組織所見で確認される.合併する免疫不全や栄養不良に注意して管理する必要がある.

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要旨 multislice CT機器の発達による高速化と高分解能により体幹領域のisotropic dataを獲得した.このことにより任意多断面再構成(multiplanar reconstruction;MPR)や曲面任意多断面再構成(curved multiplanar reconstruction;C-MPR)を用いることでCrohn病の消化管病変を評価することがある程度可能である.また,MRIでもT1WIのGd造影やT2WIで高信号になることが知られている.症例は,16歳女性で口腔内潰瘍,発熱,下痢で紹介され,注腸X線検査でアフタ様病変を認めた.その後の小腸X線検査で回腸に縦走潰瘍を認めCrohn病と診断した.回腸の縦走潰瘍に対して,CT enterography,MRIを行った.回腸の縦走潰瘍はCT,MRIで層状の腸管壁肥厚として認められ,C-MPRでは縦走潰瘍に伴う片側性変化として認められた.

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欧文目次

編集後記 松井 敏幸
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 最近,小腸疾患の増加傾向が著しいが,その理由として以下の3つが挙げられる.第1に小腸内視鏡の著しい進歩により小腸疾患への関心が高まっていること,第2に炎症性腸疾患のうち小腸に病変を来すCrohn病が増加していること,第3に高齢社会を反映しNSAID(nonsteroidal antiinflammatory drug)や抗凝固剤を服用する機会が増えたため,小腸の出血性疾患が増加していること,などである.それぞれが相乗的に作用して小腸への関心が高まっている.さらに小腸内視鏡検査のうち,カプセル内視鏡が保険適応になったことも追い風になっている.最近,著しく小腸内視鏡検査数が増加し,治療を要する疾患も発見されつつある.わが国で開発されたダブルバルーン小腸内視鏡も盛んに臨床応用がなされている.本号では,以上の状況に即した小腸画像が綺羅星のごとく掲載され,読者を魅了するものと思われる.どの論文もその画像の特徴を生かして,説得力のあるものが多い.これまで培ってきた小腸疾患診断への情熱が今後もさらに高まり,有効な診断理論へと発展することを希望する.治療に関しても取り組みが進んでいる.すなわち,診断能力の向上に伴い,内視鏡治療が可能となり,小腸疾患に苦しむ患者さんに福音をもたらすことを期待している.また,複雑な小腸疾患の本質が内視鏡画像や生検組織診断とともに理解・解明されることにも繋がってほしい.本特集号では,これらの最新の診断と治療に関する知見を総合的に掲載し知識を整理しえたものと確信している.

基本情報

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胃と腸
43巻4号 (2008年4月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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