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2000年にカプセル内視鏡,2001年にダブルバルーン内視鏡が論文発表され,その普及とともに小腸疾患に対する臨床医の興味は著しく増し,消化器関連の学会や研究会でも多数の小腸疾患症例が報告されるようになった.また,小腸病変を高率に伴うCrohn病やNSAIDs(nonsteroidal anti-inflammatory drugs)起因性腸炎の増加傾向も近年の小腸疾患診療への関心の高まりの一因となっている.さらに,小腸内視鏡検査のうち保険適応となっていなかったカプセル内視鏡も,最近やっと保険適応となり,小腸疾患の発見増加に一段と拍車がかかるものと期待されている.このような背景から,小腸疾患の診断と治療について,現時点における最新の知見を整理し理解を深めておくことは日常臨床において極めて重要と考えられ,本増刊号は企画された.
カプセル内視鏡とダブルバルーン内視鏡の開発は小腸疾患の診断に大きな変革をもたらした.つまり,上述の小腸内視鏡検査が施行可能となった2001年以降と2000年以前で小腸疾患の診断手順は大きく変化した.すなわち,2000年以前においては小腸X線検査が小腸疾患のスクリーニングと精密検査の両面で主役を務めていた.小腸X線検査法には経口法と経ゾンデ法の2つの方法が用いられているが,それぞれ長所と短所を有する.つまり,経口法は,患者に与える苦痛が少なく簡便であるが,充満像と圧迫像しか撮影できない.しかし,バリウムの先端を丹念に圧迫・観察していくことによって大部分の病変はスクリーニング可能となる.一方,経ゾンデ法は,二重造影像によって微細病変の描出には優れているが,ゾンデを挿入するため患者に与える苦痛は大きい.したがって,日常診療においては,小腸病変のスクリーニングを目的とする場合には経口法がまず選択されてきたのに対し,小腸疾患の存在が強く疑われる場合や,他検査で既に病変の存在が指摘されている場合には,経ゾンデ法が優先されてきた.
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