胃と腸 43巻3号 (2008年3月)

今月の主題 まれな食道良性腫瘍および腫瘍様病変

序説

食道の良性腫瘍 吉田 操
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 食道の腫瘍性病変の大部分を食道癌が占めており,食道原発良性腫瘍の頻度は低い.さらに良性腫瘍の大部分を平滑筋腫が占めているため,他の良性腫瘍の頻度は極めて低い.消化管の診断・治療を専門にしていても,実際に平滑筋腫以外の食道良性腫瘍に遭遇する機会は少ない.一方,上部消化管の診療を担当するものは,食道・胃・十二指腸全般にわたって診断することが必須であるため,この領域の消化管疾患は一通りわきまえていなくてはならない.良性食道腫瘍に関する予備知識がないと,診断を間違える可能性があるだけではなく,腫瘍に対する臨床上の対処を間違える可能性も無視できない.食道の良性腫瘍は病理組織学的特徴に加えて肉眼的所見も独特のものが多く,慣れてくると臨床画像所見を基にその組織学的特徴を推測することがかなりの程度可能である.同じ理由で病理組織診断を行う際に臨床所見が大いに助けになることはしばしばある.食道の良性腫瘍の診療に際して,腫瘍の特徴を知り,これを踏まえた観察を行い,適切な組織の採取をし,病理部門へは生検標本だけでなく,適切な臨床情報を提供することにも大きな意味がある.

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要旨 食道良性腫瘍および腫瘍様病変の病理組織学的分類と形態学的分類を行った.病理組織学的分類では良性腫瘍を上皮性と非上皮性に分け,さらに上皮性を充実性腫瘍と嚢胞性腫瘍に分類した.腫瘍様病変は上皮性,非上皮性,その他,に分類した.さらに,良性腫瘍ごとの細分類を行った.食道良性腫瘍と腫瘍様病変のうち,平滑筋腫と糖原過形成はまれでないもので,その他が"まれな良性腫瘍"であると言える.自験例からみると食道手術例1,013例中,良性腫瘍は13例(1.3%)であり,内視鏡検査施行25,369例中48例(0.2%)を良性腫瘍が占めて,その40%は平滑筋腫で,その他の良性腫瘍は0.12%ということになる.良性腫瘍および腫瘍様病変の鑑別診断についても詳述した.

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要旨 食道の良性腫瘍は頻度が低く,自覚症状に欠けるため,内視鏡検査や食道造影検査時に偶然発見されることが多い.治療の適応例は少なく,経過観察例が大半を占めるが,なかには悪性腫瘍との鑑別が必要な症例や,治療対象となる症例もある.食道の良性腫瘍には,上皮性腫瘍と非上皮性腫瘍があり,上皮性腫瘍は,特徴的な形態から容易に診断できるが,表面を正常上皮が覆う非上皮性腫瘍は,通常観察だけでは診断困難であり,超音波内視鏡検査やMRI,CTなどを併用し診断するが,最終的には,粘膜下に存在する腫瘍組織を確実に採取し,組織学的に診断することが必要である.非上皮性腫瘍を発見した場合は,(1)形状,(2)大きさ,(3)色調,(4)硬さ,(5)表面性状,(6)陥凹や潰瘍形成の有無,(7)多発性の有無などについて観察する.大きさ3 cm以上,表面不整で結節状などを呈し,陥凹や潰瘍を有するもの,また,短期間に急速に増大するものは,悪性の可能性が高い.

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要旨 食道にみられるまれな腫瘍および腫瘍様病変について自験例の臨床・病理学的所見を呈示するとともに文献的な特徴と診断の要点を加えて概説した.いずれもまれな病変であるため厳密な臨床的診断は困難であるが鑑別の要点として,(1)黄色調の小結節である黄色腫と食道皮脂腺は粘膜内病変であるため生検による診断が可能で,さらに粘膜内存在部位の違いから内視鏡所見でも鑑別可能と推測された.(2) fibrovascular polyp,lipomaやinflammatory fibroid polypは肉眼的に類似する大きな粘膜下腫瘍様のポリープであるが形態的特徴から診断は可能で,さらに食道内の発生部位の違いが鑑別の要点と考えられた.(3)病理学的に一見悪性細胞様の異型を示す食道胃接合部のpseudomalignant erosionや白色調の0-IIa型癌と鑑別を要するepidermizationは,臨床と病理双方がこのような病変の存在に留意することが診断上重要と考えられた.(4)扁平上皮乳頭腫は一般にポリープ状の病変であるが,まれなものとして側方伸展様の形態を呈するflat-type papillomaが認められた.

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 食道扁平乳頭腫151症例,156病変を対象として臨床病理学的および免疫組織化学的立場から検討した.平均年齢は60.5歳,男女比は1:1.4でやや女性に多く,中部食道に好発した(51.9%).形態学的に外方へ向かって増殖するexophytic type(75.0%),内方への増殖を示すendophytic type(23.1%),スパイク状の尖った上皮を呈するspiked type(1.9%)の3型に分けられ,各群のkoilocytosis,parakeratosis,炎症細胞浸潤の程度およびKi-67 labeling index(L.I.)には明確な差を認めなかった.Ki-67 L.I.は,上部食道(25.6±9.6%)に比し下部食道(34.6±14.6%)に発生したもので,また炎症細胞浸潤の程度が高度なもので有意に高かった.抗human papillomavirus(HPV)抗体陽性細胞は22病変(14.1%)に認められた.以上より,食道扁平乳頭腫には炎症細胞浸潤による上皮の反応性増殖とHPV感染による増殖が存在することが示唆された.全例において上皮に明らかな異型はなく悪性所見も認めなかったが,HPVには癌化に関与するタイプも存在し,少なくとも経過観察は必要と考えられた.

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要旨 食道におけるepidermizationの臨床像について,内視鏡像および病理組織像を中心に概説した.食道epidermizationは,組織学的に扁平上皮の表面に厚い角化層を有するのが特徴であり,この所見が皮膚の表皮に類似していることから,この名称で呼ばれている.epidermizationの内視鏡的特徴は,"鱗状"あるいは"毛羽立ちを有する"白色の付着物と表現され,同病変はルゴールには不染となる.肉眼的には,食道乳頭腫,錯角化,グリコーゲンアカントーシス,限局性食道炎,食道カンジダなどの良性病変に加えて,表在癌との鑑別が必要な病変である.われわれが検索した限りでは,epidermizationの報告は現在までほとんどないため,その真の成因や発生頻度は現段階では不明である.

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要旨 52歳の男性にみられた食道異所性皮脂腺の1例を報告し文献的考察を加えた.自験例では健診目的の上部消化管内視鏡検査で,中部食道から下部食道に大小不同で黄白色調の小隆起が多発していた.小さなものは細顆粒状であり,大きなものは花弁状分葉を示す扁平隆起で内部に白色細顆粒状の隆起を伴っていた.生検病理組織学的所見では扁平上皮内に皮脂腺組織と同様の明るい胞体を有する細胞集塊を認めた.近年,内視鏡診断技術の向上に伴い報告例が増えており,食道異所性皮脂腺は必ずしもまれな疾患ではないと考えられる.

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要旨 過去には珍しいとされた食道乳頭腫は,内視鏡機器の発展により遭遇する機会が増えている.中部や上部食道にも発生するが下部食道に多く,病因は食道裂孔ヘルニアに伴う逆流性食道炎による慢性刺激と考えられている.また,古くからhuman papilloma virus(HPV)感染との関係が議論されているが,その頻度は低いものと考えられている.組織学的には,血管を中心とした細い間質と過形成性の重層扁平上皮の乳頭状の増殖から成り,異型を伴うことはまれである.その診断は,拡大内視鏡を用いるようになったことで,血管構造を含めて詳細な形態観察が可能になり,より小さな乳頭腫を発見できるようになった.透明感がある白色で表面が細かく分葉したイソギンチャクのような形状や,半球状・桑実状の形態を呈する.拡大観察では分葉した1つ1つの突起の中央に細い血管が観察され,下部食道では発赤調のものもあり,1つ1つの顆粒の中に拡張・蛇行した微細血管が観察された.乳頭腫と食道表在癌の合併例は極めて珍しく,これまで3例の報告が認められた.

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要旨 症例は68歳,男性.上部消化管内視鏡検査にて食道病変を指摘されたため,当センターに紹介された.諸検査および生検で腺腫と診断し,ESDを施行,最終病理診断は食道固有腺由来の粘膜下導管腺腫であった.極めてまれな疾患であり,報告例は自験例を含めて世界でも13例のみである.今回われわれが,術前診断しえたのは,詳細に形態を観察したためと思われる.空気変形所見のない0-Isep型を呈するが,中心陥凹に不整さがないことや,自験例で観察されたIPCLは,粘膜下導管腺腫の特徴とも考えられる.病変の形態学的特徴を詳細にとらえることの重要性を再認識した症例であった.

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要旨 食道黄色腫(xanthoma)は極めてまれとされているが,筆者の経験では,内視鏡検査施行例中0.46%の頻度であった.食道xanthomaの典型例は,非常に微小な黄白色斑が多数集簇する,黄白色の領域として観察される.病理学的には,多数の泡沫細胞(foam cells)が線維化や慢性炎症を伴って粘膜固有層の上皮下乳頭内に充満し,乳頭の拡張が認められる.大きさは1~6 mmほどと小さいものが多い.拡大観察すると,乳頭の配列に沿って集合する円形から不整形の微細な黄白色斑の集簇として観察され,表面には縮れた微細血管が観察される.圧倒的に男性に多く,食道癌や頭頸部癌を合併した症例がほとんどであった.病因は明らかになっていないが,様々な食道への刺激(飲酒や喫煙,放射線治療など)が要因となっていることが示唆された.

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要旨 患者は54歳,約10年来の胸焼けと嘔気のため内視鏡検査を施行,SCJ 12時方向に約8 mm大の立ち上がり明瞭なポリープを認めた.表面は光沢があり一部白色調粘膜と発赤の混在した隆起性病変で,口側には逆流性食道炎を伴っていた.X線検査では食道裂孔ヘルニアを伴う食道胃接合部に10×10 mmの丈の低い隆起がみられ表面は比較的平滑な顆粒状を呈し,肛門側には胃側から連続する腫大した皺襞を伴っていた.生検病理組織所見ではポリープを覆う扁平上皮は肥厚し,粘膜固有層の間質に慢性炎症細胞浸潤と小血管の増生がみられ,一部には短紡錘形から楕円形の異型細胞が認められた.しかし病理学的に悪性所見は指摘されず,間質の反応性異型を伴う食道胃接合部(EGJ)ポリープと診断しプロトンポンプ阻害剤(PPI)による内服治療を行った.約1か月後の内視鏡検査ではポリープの縮小傾向となり経過観察中である.

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要旨 炎症性線維状ポリープ(inflammatory fibroid polyp;以下IFPと略)は通常,胃に発生し,食道にはまれである.その非常にまれな食道IFPを報告した.患者は73歳,男性.主訴は腹痛.X線・内視鏡検査にて,食道・胃接合部にぶらさがるように発生した紡錘状の粘膜下腫瘍様腫瘤を認め指摘された.内視鏡的に切除された.腫瘤は,大きさ4.5×2.0×2.0 cm,弾性硬で,表面色調は中心部より基部側で白色調,頭部側で褐色調で,割面は灰白色~淡褐色調を呈し,充実性であった.病理組織学的には,表面白色調を呈する部は食道扁平上皮で覆われ,褐色調を呈する部はびらん~潰瘍を形成していた.腫瘍組織は紡錘形~星芒状の線維芽細胞様細胞と毛細血管の増生を主体とし,これに好酸球,リンパ球,形質細胞等の炎症細胞浸潤を伴っていた.増殖の主体を成す紡錘形~星芒状細胞は免疫組織化学的にvimentin,CD34,α1-antitripsinに陽性であったが,S100蛋白,α-SMA,desmin,およびcytokeratinには陰性であった.粘膜下腫瘍状の形態をとる,頭部にびらん形成を示すポリープの診断に際してはIFPも考慮に入れる必要がある.

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要旨 食道切除後の残存食道にpyogenic granulomaが発生した症例を経験した.患者は60歳,男性.1998年,食道癌に対して食道切除胃管再建術が施行されている.主訴は摂食時のつかえ感.手術後は定期的に内視鏡検査を行っていた.2005年7月には逆流性食道炎のみを認めたが2006年7月には吻合部直上に5 mm大の表面平滑な隆起性病変が出現した.2007年2月には長径約10 mm大に増大し生検では血管腫の診断であった.腫瘤増大・通過障害がみられ,癌との鑑別も必要なため同年3月に内視鏡的切除を施行した.切除時に病変はさらに増大し表面が発赤調となり白苔付着を認めた.標本は12 mm大で病理組織学的に毛細血管の増生を伴う肉芽組織の形成を認めpyogenic granulomaと診断した.

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要旨 患者は53歳,女性.上部消化管内視鏡検査で食道ポリープを指摘され,当院に紹介された.内視鏡検査では,胸部下部食道にともに大きさ約1 cmの,2個の黄色調粘膜下腫瘍を認めた.超音波内視鏡検査では,内部均一な高エコー像を呈した.多発性食道脂肪腫と診断し,内視鏡的粘膜切除術(EMR)を施行した.腫瘍は,粘膜下層において成熟した脂肪組織の結節性分葉状の増生を認め,脂肪腫と診断された.食道脂肪腫は食道良性腫瘍の中でも非常にまれである.黄色調の柔らかい粘膜下腫瘍の形態を示し,診断には通常内視鏡検査に加え超音波内視鏡検査が有用である.粘膜下層に主座をもつ病変であり,内視鏡治療の良い適応である.

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要旨 68歳,男性.2年前より上部消化管内視鏡検査にて食道の隆起性病変を指摘されていたが,増大傾向を認めたため当院紹介となった.食道内視鏡検査にて軟らかい青色調の粘膜下隆起性病変を認め食道血管腫と診断した.EEMR-tube法を用い内視鏡的粘膜切除術(EMR)を施行し,出血なく安全に完全切除が可能であった.病理組織学的には食道粘膜下に著明に拡張した小静脈様血管群を認め,背景に粘膜固有層から粘膜下層の小動・静脈,毛細血管の拡張を伴っており,食道血管腫と診断した.食道血管腫は非常にまれであり,症状を呈することも少ないので,治療においては十分なインフォームドコンセントのうえで安全に施行しなければならない.

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要旨 59歳,女性.全身PET検診を受診したところ,食道への集積亢進を指摘された.内視鏡通常観察では上切歯より20 cmの食道左壁に表面平滑で正常上皮に完全に被覆された可動性に乏しい粘膜下腫瘍を認めた.超音波内視鏡では境界明瞭で内部が一様な低エコーの腫瘍であり固有筋層を圧排するように描出された.食道造影でUt領域左壁に表面平滑な隆起性病変であり,胸部CTでは左上方に突出する直径20 mm大の造影効果に乏しい腫瘍であった.画像上食道平滑筋腫を疑い腫瘍摘出術を施行した.病理組織学的にはHE染色では卵円形の核を有する紡錘形細胞が柵状配列を示し,免疫染色でS-100蛋白陽性,Vimentin陽性で,c-kitは陰性であり神経鞘腫と診断した.明らかな悪性所見はなかった.本症例では画像診断から神経鞘腫を確診することはできず病理組織学的検査により診断された.

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要旨 患者は30歳台,男性.嚥下時胸痛と嚥下困難で他院を受診,上部消化管内視鏡検査で中部食道に粘膜下腫瘍様の隆起性病変を指摘され当科紹介受診となった.食道X線検査では気管分岐部直下Mt前壁に管外圧排による粘膜下腫瘍様の隆起がみられ,表面には潰瘍を形成していた.潰瘍形態に不整はなく,周堤様の辺縁隆起も表面平滑であり正常上皮に覆われ,さらに潰瘍面には瘻孔開口部が認められた.胸部CT,EUSでは気管分岐部近傍のリンパ節は腫大し,食道と隣接していた.生検病理組織では類上皮細胞肉芽腫と多角巨細胞が認められた.結核菌や乾酪性肉芽腫は認めなかったが,ツベルクリン反応は中等度陽性であり各種画像所見から食道結核と診断した.抗結核剤による治療で症状は速やかに改善し経過良好であった.

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はじめに

 食道の有色素性病変としては原発性悪性黒色腫がよく知られているが,他の黒色の隆起性病変に食道炭粉沈着症がある.

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要旨 61歳,男性.上部消化管内視鏡スクリーニング検査にて食道表在癌,食道静脈瘤,咽頭・食道melanosisを認めたため,当院紹介となった.食道静脈瘤に対しEVL,食道癌に対しEMRを施行し,咽頭・食道melanosisは現在経過観察中である.食道melanosisの組織学的所見では粘膜上皮内にメラニン色素を有するmelanocyteの増殖を認めた.他症例の電子顕微鏡検査では,メラニン色素を有するmelanosomeを含むmelanocyteの増殖を認めた.食道melanosisは高飲酒歴,高喫煙歴の症例に多くみられ,食道癌と同様のリスクファクターを有することから,食道melanosisを有する症例は食道癌の発生に注意が必要である.

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要旨 症例は59歳,女性.食事嚥下時の違和感を主訴に近医受診し,食道腫瘍を指摘され,当院に紹介となった.当院での上部消化管内視鏡検査では0-III型癌類似の病変を認めたが,食道悪性腫瘍としては柔らかい印象であり,生検組織検査では非特異的炎症と診断された.問診より口腔内アフタの出現と消失が以前よりあったことから,食道Behcet潰瘍と考えた.Behcet病の認定基準では"疑い症例"となり,HLA-B51は陰性であった.診断的治療としてprednisoloneの投与を行ったところ,6か月後には完全に治癒・瘢痕化に至った.それ以後食道に潰瘍の再燃を認めていないが,Behcet病は急性炎症を繰り返す疾患として特徴づけられており,注意深い経過観察が必要である.

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 〔患 者〕 54歳,男性.2003年9月ごろより上腹部痛あり,同月検診を受け,胃前庭部に隆起性病変を指摘され精査目的に紹介受診となった.来院時理学所見および臨床検査成績に異常所見は認めなかった.

 〔胃X線所見〕 前庭部の大彎側に大きさ約3 cm,境界明瞭でなだらかな立ち上がりを有する粘膜下腫瘍様の隆起性病変を認めた.中央に不整形で深い潰瘍を有しているが,胃辺縁より突出してはおらずSchattenplus im Schattenmius1)の所見であった(Fig. 1 a).撮影体位によっては後壁側から病変に向かうbridging fold様の所見も認められた(Fig. 1 b).圧迫撮影でも同様の所見であったが,圧迫の程度によっても形態の変化をほとんど認めず,比較的硬い病変と考えられた(Fig. 1 c).

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要旨 患者は57歳,男性.自己免疫性膵炎精査中に腹部骨盤部CTで回盲部に腫瘤状の石灰化病変を指摘された.注腸X線検査では盲腸に大きさ2 cm程度の表面平滑な隆起性病変が描出され,大腸内視鏡検査では糞便物が貯留した陥凹面を伴う粘膜下腫瘍様隆起を認めた.超音波内視鏡検査では同部位に強い音響陰影を認め,虫垂結石と診断した.腹腔鏡下盲腸切除術が施行され,手術標本では虫垂根部は盲腸内腔側に反転し,内部に3 cm大の結石を認めた.粘膜下腫瘍様形態を呈する虫垂結石は非常にまれであるが,盲腸の隆起性病変の鑑別診断として考慮する必要があると考えられた.

追悼

丸山雅一君を悼む 長廻 紘
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 尊敬する友人・丸山雅一(1941~2007)君が亡くなられた.あまりにも早い訃報に言葉もありません.「胃と腸」編集顧問ならびに同世代を代表して心からご冥福をお祈りいたします.人間がものを思いものを書くようになって以来,思い書きしてきたことは人の世の儚さですが,それにしても君の無念であるに違いない訃報には驚きを禁じ得ません.天は君に多くのものを与えたが,長寿は与えなかった.

丸山雅一先生を偲ぶ 松川 正明
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 財団法人早期胃癌検診協会(早胃検)理事長丸山雅一先生は平成19年(2007年)10月29日にお亡くなりました.謹んで追悼の意を表します.先生は本誌「胃と腸」の編集委員を1981年から2002年まで務められました.

 先生は昭和41年(1966年)に千葉大学医学部を卒業しました.昭和42年(1967年)春の医師国家試験をボイコットしたために,千葉大学第一内科への入局は半年遅れました.入局しないうちも白壁彦夫先生の研究室に出入りしていました.白壁先生より今後は語学が重要になると言われ,英会話を重点的に励み,先生自体の語学に対する優れた素養もあり英会話を習得されました.白壁先生の英文著書などは丸山先生が中心に上梓したものでした.また,南米に長期出張しスペイン語も短期間に修得されました.

 昭和42年10月に千葉大学第一内科に入局し,同年12月には癌研究会附属病院に移り,熊倉賢二先生の下で早期胃癌のX線検査を修得しました.当時,本誌の表紙は「胃と腸」でしたときに,丸山先生はこれから大腸の時代になると,大腸癌,特に早期癌を中心に精力的に研究しました.当時の大腸内視鏡検査では下行結腸に内視鏡を挿入することも困難でした.一般的に大腸検査はX線検査でした.西澤護,狩谷淳によってX線検査前処置はBrown変法(1970年)に改良され,注腸二重造影法によりX線検査の精度は飛躍的に向上しました.そしてジャイロ式万能透視台を駆使し,大腸X線診断学を確立しました.大腸癌の美麗な写真を描出して,X線所見・切除標本・組織像を対比して,「大腸癌の変形5段階論」(日本医放会誌,1973年)として,これまでの業績をまとめて発表しました.この発表後,大腸癌の深達度診断を腸管変形からみることがX線所見の基本となりました.丸山先生は早期大腸癌の定義が決まる前から,早期胃癌の肉眼分類を大腸癌にも使うことは矛盾しないことを提唱されていました.

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欧文目次

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 本書は,英国医師会出版部(BMJ Publishing Group)が世界中の医師に「根拠に基づいた医療(EBM:Evidence-based Medicine)」を実践してもらうために作成・出版している『BMJ Clinical Evidence Concise』(第16版)の日本語訳である.

 内容は,日常よく遭遇する226疾患の治療法や予防的介入の一つひとつについて,有効性や有害性を示す根拠(エビデンス)を体系的(システマティック)に検索・評価し,次のような6つに分類したものである.

編集後記 井上 晴洋
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 本誌では,これまで食道扁平上皮癌の診断と治療はしばしば取り上げられており,また「特殊組織型の食道癌」は40巻3号(2005年)に取り上げられている.しかしながら,"食道良性腫瘍および腫瘍様病変"に的を絞りこんだ企画はこれまでにみられなかった.日常臨床で扁平上皮癌を診断・治療していくにあたり,その鑑別診断として良性疾患の詳細な知識が重要であることは言を待たないが,良性疾患そのものの画像診断と病理を1つ1つよく理解しておくことが食道病変を総合的に理解するうえで重要である.またまれな良性腫瘍様病変の診断は,特殊な悪性腫瘍の拾い上げの背景としても役立つ.今回の企画は,編集委員のなかでも特に岩下明徳先生(福岡大学筑紫病院)の強い推薦のもとにここに至った.食道を専門として研究している施設であっても,本特集にまとめ上げられた症例のすべてを網羅して経験されている施設は少ないと思われる.また各執筆者には詳細な文献のレビューと考察をいただいた.さらに,拡大,NBI拡大,超音波内視鏡と最新の診断技術を駆使してすばらしい特集ができあがった.本号は,咽頭・食道で見慣れない内視鏡像に出くわしたおりの座右の書となったと確信するとともに,各執筆者の先生方のご尽力に改めて感謝申し上げる次第である.

基本情報

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胃と腸
43巻3号 (2008年3月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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