臨床眼科 63巻7号 (2009年7月)

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要約 目的:40歳以下の緑内障患者の臨床的特徴の報告。対象と方法:2007年までの5年間に2回以上受診した緑内障または高眼圧がある40歳以下の265例を診療録に基づいて検索した。結果:男性159例,女性106例であり,平均年齢は22.4±11.5歳であった。続発緑内障が148例(56%)であった。発達緑内障45例(17%)のうち詳細に経過を追えた33例62眼では,早発型10眼(16%),遅発型36眼(58%),他の先天異常がある16眼(26%)であった。遅発型発達緑内障では17例中8例(47%)が偶然に発見され,6例(35%)では重篤な視機能障害が初診時からあった。結論:40歳以下の緑内障には発達緑内障があることに注意する必要がある。

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要約 背景:未熟児網膜症の劇症型はⅡ型網膜症とされていた。2005年の新国際分類で,これはaggressive posterior retinopathy of prematurity(AP-ROP)と定義された。目的:AP-ROPの臨床経過と治療成績の報告。対象と方法:過去3年間にAP-ROPと診断した6例12眼を対象とした。結果:全例に光凝固を行った。光凝固の3.2週間後に網膜前出血が8眼に生じ,7.3週間後に牽引性網膜剝離が11眼に生じた。輪状締結術を4眼に行い,2眼で網膜が復位した。他の2眼と締結術をしなかった1眼に瘢痕期硝子体手術を行い,3眼とも復位しなかった。早期硝子体手術を行った6眼では5眼で復位が得られた。結論:AP-ROPは光凝固後も牽引性網膜剝離に進行した。牽引性網膜剝離には早期硝子体手術が有用であった。

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要約 目的:眼窩底骨折の受傷機転と年齢分布の報告。対象と方法:2006年までの3年間に治療した眼窩底骨折253症例を診療録の記述をもとに検索し,1986年と1999年の状況を発表した同様な報告と比較した。結果:10歳代と20歳代の症例が56%を占め,65歳以上の症例は5%であった。以前の報告よりも成人の受傷が飛躍的に増加し,全年齢を通じてスポーツによる受傷が増えた。子供では不慮の事故,大人では交通事故による受傷が減少した。結論:眼窩底骨折の原因は変化している。かつては子供に多いと思われていた眼窩底骨折は,最近では大人の疾患になった。

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要約 目的:インフリキシマブで治療したBehçet病3症例の報告。症例:症例はすべて男性で,それぞれ34歳,35歳,42歳である。Behçet病の眼発作が始まってから,7年,13か月,30か月の間,コルヒチンとシクロスポリンで加療したが,ぶどう膜炎の発作が続いていた。体重1kgあたり5mgのインフリキシマブの全身投与を開始した。最初は0,2,6週間の投与とし,以後は8週間ごとに投与した。結果:3例ともインフリキシマブ投与前の発作時視力が0.1以下であったのが,投与後は0.6ないし1.2に改善した。年あたりの発作回数は,17回が0回,2回が0回,3回が2回になった。結論:インフリキシマブはBehçet病の難治性ぶどう膜炎に有効であった。

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要約 目的:Leber先天盲に円錐角膜が併発し,急性角膜水腫が生じた症例の報告。症例:16歳男性が左眼に突発した視力低下で受診した。生後4か月で眼振があり,網膜電図が消失型で,Leber先天盲と診断された。12歳で両眼に円錐角膜が発症した。15歳での矯正視力は右0.03,左0.04であり,両眼とも視覚誘発電位は反応がなかった。所見:左眼視力は手動弁で,角膜に急性水腫があった。浮腫は3週間後に軽快したが,Descemet膜の破裂に伴う角膜の瘢痕性混濁が残った。8か月後の現在,角膜移植の待機中である。結論:Leber先天盲に稀ではあるが円錐角膜が併発することがある。今回の症例は急性水腫にすみやかに進展した。LCA遺伝子による関与の可能性がある。

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要約 目的:多数例についての上方視神経低形成の臨床像の報告。対象と方法:臨床的に上方視神経低形成と診断した40例66眼を対象とした。男性16例,女性24例で,年齢は4~68歳(平均43歳)であり,両眼26例,片眼14例であった。結果:矯正視力は全例で良好であった。下方視野異常があり,乳頭の形態は上方欠損型7眼(11%)と上方低形成型59眼(89%)であった。乳頭から上方の網膜神経線維層菲薄化と,乳頭面上での網膜中心動脈の上方偏位が高率にあった。経過観察中の乳頭出血,乳頭周囲の網脈絡膜萎縮はなかった。結論:上方視神経低形成での乳頭には,上方欠損型と上方低形成型とがあり,後者が多かった。乳頭から上方の網膜神経線維層菲薄化と,乳頭面上での網膜中心動脈の上方偏位が診断に有用である。

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要約 背景:アクリル眼内レンズであるEternity X-70は7.0mmの光学径があり,眼底の視認範囲が広い。しかし専用インジェクターであるXJ-70(参天製薬)を使うと,強角膜創を3.2mmにする必要がある。目的:この眼内レンズを小切開創から挿入する報告。対象と方法:水晶体乳化吸引術を行った20眼を対象とし,2.4mmの強角膜切開創から眼内レンズを挿入した。挿入にはHOYA-ISインジェクターとType E-1カートリッジ(HOYA)を用いた。結果:光学径7.0mmのアクリル眼内レンズを安全に眼内の定位置に挿入できた。結論:光学径が大きな眼内レンズが有用な眼底疾患がある白内障眼でも,極小切開創による白内障手術が可能であった。

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要約 目的:単独または硝子体手術と同時に行う白内障手術で,シングルピースアクリルレンズ用に設定されたIOL MasterTMのA定数の検討。対象と方法:眼内レンズとしてSN60WF(Alcon社)を挿入した94眼を対象とした。60眼には白内障単独手術,34眼には硝子体手術を同時に行った。34眼中9眼にはガスを注入した。眼軸長をIOL MasterTMで測定し,A定数を119.2に設定し,SRK/T式で度数を算出した。目標度数からのずれを術後3か月まで測定した。結果:白内障単独手術群では術後1日目に若干の近視化が生じ,最終的には目標屈折度数に近似した。硝子体同時手術群では約0.5Dの近視化があった。両群とも術後屈折は全期間を通じ安定していた。結論:SN60WFに対するIOL MasterTM用のA定数119.2は適正である。硝子体手術を同時に行う場合には,近視化があるのでA定数の変更が必要である。

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要約 背景:Churg-Strauss症候群では,気管支喘息,好酸球増加,全身性肉芽腫性血管炎がみられる。目的:本症候群の患者に後部虚血性視神経症が発症した報告。症例:70歳女性が右眼の視力低下で受診した。5年前に気管支喘息があり,6か月前から発熱,咳,喀痰があり,Churg-Strauss症候群と診断され,プレドニゾロンを内服中であった。所見:矯正視力は右0.15,左0.8で,前眼部と眼底に異常はなかった。右眼に傍中心暗点があった。ステロイド大量療法に抵抗を示し,シクロホスファミドの大量投与で初診から13週間後に視力は1.0に回復した。以後6か月間の経過は良好である。結論:本症例は後部虚血性視神経症であったと推定され,シクロホスファミドの大量療法が奏効した。

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要約 目的:日帰り手術として行った25ゲージシステムによる硝子体手術の報告。対象と方法:硝子体手術を行った連続する127例143眼を対象とした。年齢は31~85歳(平均67歳)である。原因疾患は,糖尿病網膜症59眼,黄斑上膜43眼,網膜静脈分枝閉塞症16眼,黄斑円孔12眼などである。白内障同時手術を106眼に行った。手術は無縫合で,25ゲージを使用し,全例が日帰り手術であった。結果:術後の眼内炎の発症はなかった。黄斑円孔の非閉鎖が2眼にあり,再手術と自宅での徹底した伏臥位により閉鎖が得られた。ほかに重篤な合併症はなかった。結論:25ゲージによる日帰りの硝子体手術では術後眼内炎の予防が最も重要である。全身管理が必要な症例は日帰り手術の適応にはならない。黄斑円孔では自宅での体位維持が必要である。日帰り硝子体手術には早期の社会復帰などの利点があるが,慎重な対応が望まれる。

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要約 目的:サイトメガロウイルス(CMV)網膜炎から網膜剝離になり,両眼に25ゲージ硝子体手術を行った症例の報告。症例:62歳男性の両眼に数日前から霧視が生じた。両眼に虹彩炎と眼圧上昇があった。加療により消炎し,眼圧が正常化した。初診の3週間後に成人T細胞白血病と診断され,化学療法を開始した。CMV肺炎が複数回起こった。初診の4か月後に左眼の虹彩炎が再発し,血管炎を伴う胞状網膜剝離が生じた。25ゲージ硝子体手術とシリコーンオイル注入で復位が得られ,硝子体液からCMVが検出された。左眼の発症から6か月後に右眼に虹彩炎と網膜炎が生じた。予防の目的で左眼と同様の手術を行い,寛解した。その後両眼に視神経萎縮が生じ,失明した。初診から16か月後に全身状態悪化で死亡した。結論:CMV網膜炎と網膜剝離に対し,25ゲージ硝子体手術が有効であった。

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要約 目的:裂孔原性網膜剝離に対し,広角観察装置を用いて行った硝子体手術の報告。対象と方法:過去17か月間に硝子体手術を行い,3か月以上の経過が追えた網膜剝離74例74眼を対象とした。男性47例,女性27例で,年齢は18~89歳(平均59歳)である。18眼には20ゲージシステム,56眼には23ゲージシステム,広角観察装置としてOFFISS(トプコン)を用いた。結果:初回復位は70眼(95%),最終復位は73眼(99%)で得られた。非復位の1眼は増殖性硝子体網膜症になり,現在はシリコーンオイル下で復位している。結論:裂孔原性網膜剝離に対し,広角観察装置を用いて行った硝子体手術の成績は,従来のコンタクトレンズを用いた成績と同等であった。両方法の利点を活かして使い分けることが望ましい。

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要約 目的:糖尿病による乳頭新生血管(NVD)に対するベバシズマブ硝子体内注入の効果の報告。症例と方法:症例はそれぞれ30年と20年の糖尿病歴があり,増殖網膜症とNVDがある61歳と53歳の男性である。1例では汎網膜光凝固とベバシズマブ硝子体内注入から3か月後に,ほかの1例では50日後に,検眼鏡的には退縮したNVDを含む組織を摘出した。摘出組織はCD31染色ののち,光学顕微鏡で検索した。結果:摘出組織には,2症例ともわずかではあるが血管が残存していた。結論:ベバシズマブ硝子体内注入は,増殖糖尿病網膜症に併発したNVDを短期間に退縮させるが,完全には消滅させない。この理由から,新生血管からの滲出を抑える効果はあるが,これを消失させる治療ではない。

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要約 目的:スペクトラルドメイン光干渉断層計(OCT)で測定した健常眼の黄斑部網膜厚と測定誤差の報告。対象と方法:男性6例と女性19例の25例50眼を対象とした。年齢は18~58歳(平均30歳)で,屈折は+0.5~-5.5D(平均-2.2D)であった。固視点を中心に水平30°,垂直20°の範囲の網膜厚をSpectralis®で測定した。付属のフォローアップ機能で,第1と第2の検者による測定値を比較した。結果:網膜厚は,中心窩で272.5±16.0 μmであり,傍中心窩と外中心窩では鼻側,上方,下方,耳側の順に厚かった。測定誤差はフォローアップ機能使用時で0.50±0.47%,不使用時で0.70±0.73%であった。結論:スペクトラルドメインOCTで黄斑部網膜厚を測定した。検者間の測定誤差は1%以下であった。

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要約 背景:多発消失性白点症候群(MEWDS)は,若年者の近視眼に好発し,片眼に急激な視力低下をきたす。原発病巣は網膜色素上皮と視細胞とにあり,視細胞の萎縮に伴い光干渉断層計(OCT)で視細胞の内節と外節の接合部が消失する。目的:スペクトラルドメインOCTが診断に有用であったMEWDSの症例の報告。症例:29歳女性がテレビの観覧中,左眼の視野異常を自覚して受診した。所見:右眼に-4.25,左眼に-3.75Dの近視があり,矯正視力は両眼とも1.5であった。左眼網膜に淡い白色斑があり,盲点が拡大していた。スペクトラルドメインOCTでは左眼乳頭周囲の網膜の視細胞内節と外節の接合線が消失しており,臨床症状とあわせてMEWDSと診断した。結論:MEWDSの診断にスペクトラルドメインOCTが有用であった。

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要約 目的:壮年期発症の眼底異常に乏しい錐体杆体ジストロフィの1例の報告。症例:51歳男性が両眼の視力低下で受診した。2年前に両眼の中心暗点を自覚したが,眼底所見に乏しく,視神経疾患が疑われていた。所見:矯正視力は右0.1,左0.06で,両眼に中心暗点があった。以後8年間の経過中に視力と視野障害が進行した。杆体錐体分離網膜電図で杆体系と錐体系の双方に振幅低下があった。眼底自発蛍光検査で,黄斑周囲の環状の蛍光増強と,血管アーケード付近の低蛍光があった。以上の所見と経過から錐体杆体ジストロフィと診断した。結論:錐体杆体ジストロフィは眼底所見に乏しく,診断に苦慮することがある。電気生理学的検索が診断に有用である。

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要約 背景:Churg-Strauss症候群では気管支喘息や好酸球増加が先行し,細動静脈から毛細血管を主座とする壊死性血管炎が全身に生じる。目的:Churg-Strauss症候群に網膜動脈分枝閉塞症が生じた報告。症例:42歳女性が1週間前からの左眼上方の視野異常で受診した。26歳のときから気管支喘息があり,最近Churg-Strauss症候群と診断され,内科でステロイドの投与を受けていた。所見:矯正視力は右1.2,左0.02で,左眼底の下耳側網膜動脈の支配範囲が白色化していた。左眼の網膜動脈分枝閉塞症と診断し,眼球マッサージ,前房穿刺,抗凝固療法,プレドニゾロン,免疫抑制薬の投与を行い,2週間後に視力が1.2に改善した。高血圧や糖尿病などの基礎疾患は否定された。結論:本症例では網膜動脈分枝閉塞症の発症にChurg-Strauss症候群が病因として関与した可能性がある。

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要約 目的:小児に発症した傍中心窩毛細血管拡張症2例の報告。症例:6歳と7歳の男児が学校検診で片眼の視力低下を指摘され受診した。所見:矯正視力はそれぞれ0.2と0.08であった。両症例とも,傍中心窩に散在する網膜毛細血管瘤,囊胞様黄斑浮腫,輪状の硬性白斑があった。蛍光眼底造影では傍中心窩領域の全域に網膜毛細血管拡張,毛細血管瘤,色素漏出があり,Gass分類の1A群,Yannuzzi分類の血管瘤型の傍中心窩毛細血管拡張症と診断した。レーザー光凝固を行い,囊胞様黄斑浮腫は軽快し,視力はそれぞれ0.4,0.1に改善した。結論:小児にも傍中心窩毛細血管拡張症が起こることがある。光凝固の是非については,将来の瘢痕拡大の問題があるので慎重に対応する必要がある。

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要約 目的:動力ワイヤーブラシによる眼外傷3例の報告。症例:いずれも男性で,年齢は30歳,55歳,67歳である。3症例とも作業中に受傷し,破損したワイヤーが角膜を穿孔していた。2例ではワイヤーが虹彩と水晶体を貫通し,硝子体腔に至っていた。他の1例では患者がワイヤーを自己抜去し,外傷性白内障が生じていた。3症例に異物摘出と白内障手術などを行い,良好な最終視力を得た。経過:今回の3症例はいずれも良好な経過をとった。受傷を予防するために,動力ワイヤーブラシを使用するときは,防護眼鏡を装用するなどの対策をとる必要がある。

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要約 目的:眼球内容除去後の術創処理にアルギン酸塩膜を使用した症例の報告。症例:64歳女性が右眼の角膜穿孔と水晶体脱出で紹介受診した。35年前から関節リウマチでステロイドを内服し,10年前に線維柱帯切除術後に眼内炎となり,2か月前から角膜感染の徴候があった。経過:抗生物質の投与後に右眼の眼球内容除去術を行った。結膜を縫合して義眼床を作製し,アルギン酸塩膜でカバーした綿球を結膜囊に挿入した。包帯交換時の疼痛は軽く,創部からの出血や二次損傷はなかった。術後10日目に仮義眼を装用できた。結論:眼球内容除去後の創傷処理にアルギンシートを使用し,疼痛軽減,感染防止,創部保護,止血効果があり,義眼床作製に有用であった。

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要約 目的:白内障手術の半年後に出現し,薬剤抵抗性にて遷延化,観血的治療で軽快した術後遅発性眼内炎の報告。症例:80歳,女性。左眼白内障手術の半年後から左眼前房炎症が出現し,近医総合病院を受診した。前房内線維素析出と前房蓄膿,眼内レンズ前後面に白色塊が認められた。抗生物質,ステロイドで一旦軽快したが,減量にて再燃した。再燃時,眼内レンズ上に綿花様白色塊が出現し拡大した。真菌感染が疑われたものの保存的加療では効果不十分であったため,当院を受診した。二度の手術を受け,眼内レンズ・水晶体囊摘出,硝子体切除,抗真菌薬の眼内灌流を施行された。術後は再燃なく,視力良好である。結論:病理で真菌が確認され,真菌性眼内炎と推定された。水晶体囊・眼内レンズ摘出,抗真菌薬の眼内灌流が有効であった。

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要約 目的:脈絡膜結核腫が片眼に生じ,その10年後に結核性脈絡膜炎が僚眼に発症した症例の報告。症例:70歳女性が1か月前からの左眼霧視で受診した。10年前に脈絡膜黒色腫が疑われ,右眼摘出を受けたが,病理学的検査で脈絡膜結核腫であった。所見:左眼矯正視力は0.6で,眼底後極部に白色斑が散在していた。白色斑は10日後に急増した。既往歴から結核性脈絡膜炎を疑い,4剤併用による抗結核治療を開始した。ツベルクリン反応は強陽性で,腋窩リンパ節の生検で結核性リンパ腺炎と診断した。治療開始から3週間後に後極部に漿液性網膜剝離が生じた。副腎皮質ステロイドの全身投与を行い,4か月後に網膜剝離は消退し,視力は1.0に回復した。結論:脈絡膜結核腫の既往がある症例の僚眼に脈絡膜炎が発症した。抗結核薬とステロイドの全身投与で治癒した。

連載 今月の話題

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 網膜色素変性などのような慢性進行性の視野狭窄を主体とする眼疾患の診療では,第1に「失明」という言葉についての医師と患者との認識のギャップ,第2に視野検査についての医師と患者との理解のギャップ,および第3に視野検査で記録される検査上の視野と患者自身が日常生活で体感する視野とのギャップという3つのギャップを理解することが重要である。

連載 日常みる角膜疾患・76

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症例

 患者:64歳,女性

 主訴:左眼痛,視力低下

 眼科既往歴:他院で1990年頃に両眼にレーザー虹彩切開術を施行された。

 既往歴:特記すべきことはない。

 現病歴:1999年に左眼水疱性角膜症と診断された。徐々に眼痛発作を繰り返すようになり,角膜移植の適応があるとして2000年4月に当科を紹介され受診した。

 初診時所見:視力は右1.0(矯正不能),左0.01(矯正不能),眼圧は両眼とも15mmHgで,左眼に角膜実質浮腫を認めた(図1a)。また,前房は浅く,虹彩周辺部上鼻側にレーザー虹彩切開術後の虹彩切開創があった。白内障を認めたが,角膜実質浮腫のために眼底の詳細は不明であった。

 経過:左眼水疱性角膜症と白内障に対して,2000年6月に全層角膜移植術(penetrating keratoplasty:PKP)+水晶体囊外摘出術+眼内レンズ挿入術を施行した。角膜移植術後,リン酸ベタメタゾンナトリウム点眼を継続していた。角膜移植片は透明性を維持していたものの,術直後から眼圧コントロールが不良となった。リン酸ベタメタゾンナトリウム点眼は継続したままカルテオロール点眼を追加したが,眼圧下降が得られずに2000年10月に左眼の線維柱帯切除術を施行した(図1b)。

 その後5年間は安定していたが徐々に眼圧が上昇しはじめ,マレイン酸チモロール点眼,ドルゾラミド点眼を追加しても十分な眼圧下降が得られず,2006年4月に再度左眼の線維柱帯切除術を施行した。術後,角膜移植片は透明性を維持し,現在の視力は左0.6(1.2×cyl-5.00D 90°),眼圧は左9mmHgと経過良好であり,経過中に視野障害の進行も認めていない。角膜移植片の内皮細胞数は徐々に減少しており,初回の線維柱帯切除術直前は2,954/mm2,再手術直前は1,828/mm2,現在は1,256/mm2である。

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はじめに

 巨大裂孔は,円周方向に90°以上の広がりを示す裂孔のことをいう。巨大裂孔による網膜剝離は裂孔縁の挙上,剝離網膜の翻転を伴っていることが多く,網膜剝離手術の中でも治療困難な疾患の1つであった。これまで,巨大裂孔網膜剝離の治療のために対面通糸法1),網膜鋲2)などさまざまな工夫がなされてきた。

 1987年にChang3)により報告された液体パーフルオロカーボン(perfluorocarbon liquid:PFCL)の使用により,仰臥位における術中の網膜の復位が得られるようになったため,手術手技が画期的に進歩し,手術成績は向上した。しかしながら,すべての症例が硝子体手術の適応になるわけではなく,裂孔の大きさ,剝離の範囲,網膜の翻転の有無,増殖硝子体網膜症の有無,水晶体の状態,年齢などを十分に考慮し,術式を選択する必要がある。

連載 説き語り論文作法・4

論文をめぐる人々 西田 輝夫
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教授 題名はあとで検討するとして,この著者は……。

―原稿のプリントアウトの仕方について,ヘェ~と思うような話が続いていたので,教授の目が中身に注がれはじめたのに伊集院はすぐにはついていけなかった。

教授 この22例を,一所懸命集めたのは誰や。これは,治療をした人やろ? このデータを集めた人,誰や?

伊集院 ……僕です。

連載 もっと医療コミュニケーション・19

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 小規模のT病院の受付でのことです。

 「だいたいあとどれぐらいかかるの」と,50歳代の男性が聞いています。もうずいぶん長い間待ったのかもしれません。

 受付:「さあ,日によって違いますから…。」

 男性:「だから,およそのことを言えばいいじゃないの。」

 受付:「2時間くらいですかね。」

 このやりとりの後,さまざまな診療が済んだのでしょう。会計のところで,また男性が何かを言っています。周りの人たちに十分聞こえるような独り言です。

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要約 目的:アレルギー性結膜疾患がある患者での,全身アレルギー疾患の頻度と眼病変の重篤度の報告。対象と方法:過去19か月間にアレルギー性結膜疾患と診断した1,079例を検索した。内訳は季節性アレルギー性結膜炎876例,通年性アレルギー性結膜炎115例,アトピー性角結膜炎47例,春季カタル41例である。結果:アトピー性皮膚炎はアトピー性角結膜炎の全例と春季カタルの71%にあり,気管支喘息は春季カタルの83%,アレルギー性鼻炎は各結膜疾患のすべてに多かった。全身アレルギー疾患の合併の有無は,結膜病変の重篤度とは無関係であった。結論:全身アレルギー疾患の頻度はアレルギー性結膜疾患の種類により異なるが,その有無は結膜病変の重篤度とは関係しない。

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要約 目的:眼瞼と顔面に基底細胞癌が多発した症例の報告。症例:70歳女性が右の上眼瞼と下眼瞼の腫瘍で受診した。農業に従事し,悪性腫瘍,砒素摂取,放射線治療などの前歴はなかった。所見:上眼瞼の腫瘍は縁が隆起し,5mm×3mmの大きさで,下眼瞼の腫瘍は扁平黒色で,4mm×2mmの大きさであった。生検で基底細胞癌と診断した。以後10年間に上下眼瞼に6個,左頰部,上口唇,前額部に各1個,合計9個の腫瘍が発症し,いずれも切除した。診断はいずれも基底細胞癌であった。結論:基底細胞癌は多発することがあり,注意が必要である。本症例ではその誘因として,長期にわたっての日光曝露,特に紫外線の影響が推定された。

べらどんな

近視がない島
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 バリ島で集団食中毒があった。ただしずっと前のことである。

 1990年にシンガポールが国際眼科学会を主催した。雨季が明けたばかりの3月だったと記憶している。

長い名前
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 手紙を書くときには,本文にはワープロを使うが,封筒の宛名は手で書くことにしている。パラフィンで窓を封筒につくり,そこを通して便箋の宛名が見えるようにする方法もあるが,とにかく面倒だし,費用もかかる。

 宛名の手書きで困るのが,相手の住所や肩書きがやたらに長い場合である。大学では,「京都市上京区河原町通広小路上ル梶井町465」がその代表例だ。

今月の表紙

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 30歳,女性。3か月前から38℃を超える発熱が続き,近くの総合病院を受診した。その後も解熱と発熱を繰り返し,肝・胆道系酵素の上昇がみられたため,精査目的で当院内科へ紹介された。抗核抗体,抗Sm抗体が陽性で,顔面および外耳道に紅斑がみられた。耳介内皮疹の生検の結果,全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus:SLE)と診断され,合併する眼所見の精査目的で眼科を受診した。初診時には,眼底所見にて放射状乳頭周囲毛細血管が分布する領域に軟性白斑がみられるなど,網膜循環の虚血があった。視力は右(1.0),左(1.2)と良好であった。

 ステロイド療法の開始から2か月で退院したが,その10日後に再び発熱が生じて再入院となった際,視力低下を訴え,眼科を再受診した。視力は右0.02(矯正不能),左0.07(0.4)であった。眼底所見は,初診時と比べ著しい軟性(綿花様)白斑の増加,網膜血管の白鞘化,黄斑浮腫が認められ,小出血斑も伴っていた(a)。光干渉断層計にて測定した中心窩厚は,右876μm,左521μmであった。フルオレセイン蛍光眼底造影では,眼底全体に毛細血管閉塞領域が認められ,造影後期まで網膜細動脈閉塞が持続した。網膜静脈の著しい口径不同,血管壁への色素の取り込みと血管周囲への蛍光漏出がみられ,静脈周囲炎の所見と考えられた(b)。

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 『プロメテウス解剖学アトラス』の第3巻「頭部/神経解剖」は,「解剖学総論/運動器系」,「頸部/胸部/腹部・骨盤部」に続く最終巻である。本書を手に取ると,つい引き込まれてページをめくりながら読んでしまう。その理由を分析してみた。

 まず第一に,本書の図の1つ1つが実に美しいことである。これまでの解剖学図譜で行われてきたような,実物を精巧に再現する図や,できるだけ多くの構造体を網羅するカラフルな図や,理解を助けるために単純化した模式図とも異なり,プロメテウスならではのユニークな図が満載されている。例えば,最初の頭蓋の章では,約40頁に百数十点の頭蓋の全体や各部の図が登場する。そこには,まるで写真のような精巧さで頭蓋底や頭蓋の断面が描かれた図が登場する一方,その隣には各頭蓋骨をパステルカラーで色分けした図も提示され,個々の頭蓋骨がどのように頭蓋を構成しているのかがよくわかる。頭部の断面解剖では,CTやMRI画像の理解を意図した図も豊富に提供されている。さらに,これらの図が,著者らの意思と目的を具現する手段として作成されている。例えば,脳神経や眼窩領域の部分では,理解させたい部分の表情筋や骨を順次切り取った図が提示され,脳神経や血管の走行経路と分布が理解できる。剖出を行いながらその先の構造体を明らかにしていく,ちょうど解剖学実習を行っているような感覚になる。

医療事故初期対応 嶋森 好子
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 1999年に重大な医療事故が発生し,医療現場が必ずしも安全ではないことを,患者を含む国民皆が知ることになりました。2001年には,厚生労働省医政局に医療安全推進室が設けられ医療安全の推進を国としても図ることが明確に示されました。各種検討委員会が設けられ,医療安全を推進するためのさまざまな取り組みが行われるようになりました。それから約10年を経ましたが,果たして医療現場がより安全になったといえるでしょうか。

 医療現場での研究的な取り組みや他分野の知見を得て,安全のためになすべきことはある程度明らかになってきています。しかし,それがなされないままに10年前と同じような事故が生じているように思います。改めて,医療現場でなすべきことは何かという視点で安全確保を検討するときではないかと考えます。

加齢黄斑変性 湯澤 美都子
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 欧米には加齢黄斑変性(AMD)についての成書が何冊もあるが,これまでわが国にはなかった。その理由は,長い間わが国ではAMDの頻度が低く,眼科医の関心が低かったことと関連が深いと思う。しかし,近年わが国でも滲出型AMDが増加し,2002年には身体障害者手帳取得原因の4位を占めた。また滲出型AMDと診断されてきた疾患の中にはポリープ状脈絡膜血管症が多く含まれており,日本人のAMDは病態も治療効果も欧米のものとは異なることが明らかになった。さらにインドシアニングリーン蛍光造影や光干渉断層計(OCT)による新知見が報告されるようになり,光線力学療法,抗血管新生薬など新しい治療法も導入され,AMDの臨床はターニングポイントを迎えた。そこでAMD,とくに日本人のAMDについての成書の必要性が痛感されるようになった。

 このほどタイムリーに𠮷村長久教授と京都大学黄斑グループによる『加齢黄斑変性』が医学書院から出版された。本書の特筆すべき点は,第一に現在のAMDの最新知見のエッセンスが凝集されていることである。その中には京都大学黄斑グループの優れた研究結果もちりばめられている。たくさんの論文の結果は表にまとめられ,要点は図示され,大切なことだけが簡潔に記述され,読みやすいように工夫されている。また最新知見の意味や問題点が𠮷村教授の鋭い洞察力に基づいて解説されている。さらに内容を理解するために必要な事項も多くが図解してあり,非常に親切な本である。本書を1冊読めばAMDを理解するために必要な基礎的知識,検査,診断,鑑別疾患,日本人に多いポリープ状脈絡膜血管症をめぐる諸問題や日本人のAMDの特徴,および治療の最前線について網羅的に理解できる。

やさしい目で きびしい目で・115

いつでも修行 堀 好子
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 最近,立ち上げから12年間勤務した屈折矯正手術を専門とする施設を退職し,大学付属病院眼科のスタッフへと転身した。前職の施設の立ち上げ当時,国内ではまだレーザーによる屈折矯正手術は臨床治験として行われた以外にあまり実績がなく,かなり新しい分野であったため,大変なことも多かったが非常にやりがいもあった。こつこつと症例を重ねてデータを集積し,国内外の学会などで発表し,論文も書くことができた。しかし,自分の眼科医としての原点に立ち返ると,屈折矯正手術だけの道を進むわけにはいかないぞという気持ちがいつもどこかにあった。

 私が生まれ育った町は周辺人口を加えてもおそらく十万人には満たないが,広い土地に眼科医がたった1人という地方都市であり,その眼科医が私の父であった。両親に医者になれとか跡を継げなどということはまったく言われたことはなかったが,気がつけば医学部を第一志望とし,入局を決める際は2,3科での迷いはあったが最終的には眼科を選択した。眼科手術に惹かれたせいもあるが,専門とするからには全国どこへ行っても役に立つレベルの医師になりたいと思った。いろいろなことのできる眼科医になりたかったが,生まれた町に帰るつもりもなかった。入局した地方の大学病院では臨床だけでなく,研究や留学の機会にも恵まれ,地方から首都圏に出てくることなどは想像もしていなかった。ご縁は不思議。

ことば・ことば・ことば

シロップ
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 アイスクリームとシャーベットが違うことは誰でも知っていますが,正確には説明できません。雪のように白く,半球形でお皿の上にあるのがアイスクリームで,浅いグラスに入り,ちょっとザラザラしているのがシャーベットというだけでは不十分です。

 辞書によると,sherbetは次のように定義されています。「東洋からきた冷たい飲み物で,果物のジュースと砂糖を入れた水の混合物」。英語では1603年に最初に使われました。エリザベス女王が亡くなった年です。

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あとがき 根木 昭
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 アジア太平洋眼科学会(APAO)が,5月中旬にインドネシアのバリ島で開催されました。3,100余名の参加者でした。ちょうど神戸で新型インフルエンザの2次感染が拡大した頃で,安全なインドネシアに避難した格好でした。急逝されたAPAO会長の田野保雄先生を偲ぶ追悼文が正面入口に提示され,開会式では全員で黙祷を捧げました。アジアの若手眼科医をサポートする奨学金制度には,尽力された田野先生の名前が冠されました。開会式でのアトラクションは,バリ島の民族舞踊や歌謡のほか,参加者全員での民族楽器の演奏がありました。竹でできた簡単な民族楽器が用意され,音階の1つの音だけが出るようにしてあります。司会者の先導にあわせて,各自が自分の音の番のときに鳴らし,全員で1つの曲を奏でるという趣向で,参加者が国を超えて一体になり国際学会のイベントとして大変好感のもてる催しでした。2014年には国際眼科学会がAPAOと併催で東京で開催されます。学術の交流に加えて世界の眼科医の団結も目的であり,なにかこのような一体感のもてる催しがあればよいと思いました。

 病をみて人をみず,とは耳にタコができるほど聞いてきた言葉です。インフォームド・コンセントの概念が広まり,病態についての説明にはかなり時間をかける習慣ができましたが,患者の立場で親身になれるかというと必ずしも十分とはいえません。今月の話題はいつもの先進的な技術や研究の紹介ではなく,患者とのコミュニケーションのずれを扱ったものです。失明という言葉についてのギャップ,視野検査の結果についての理解のギャップ,体感視野と検査視野のギャップという網膜色素変性診療における患者と医師の3つのギャップについて書かれています。こういうギャップは糖尿病網膜症や緑内障,色覚異常などの診療にもあることです。患者の身になるとはどういうことか,考えさせられる話題です。ぜひご一読ください。

基本情報

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臨床眼科
63巻7号 (2009年7月)
電子版ISSN:1882-1308 印刷版ISSN:0370-5579 医学書院

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