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アジア太平洋眼科学会(APAO)が,5月中旬にインドネシアのバリ島で開催されました。3,100余名の参加者でした。ちょうど神戸で新型インフルエンザの2次感染が拡大した頃で,安全なインドネシアに避難した格好でした。急逝されたAPAO会長の田野保雄先生を偲ぶ追悼文が正面入口に提示され,開会式では全員で黙祷を捧げました。アジアの若手眼科医をサポートする奨学金制度には,尽力された田野先生の名前が冠されました。開会式でのアトラクションは,バリ島の民族舞踊や歌謡のほか,参加者全員での民族楽器の演奏がありました。竹でできた簡単な民族楽器が用意され,音階の1つの音だけが出るようにしてあります。司会者の先導にあわせて,各自が自分の音の番のときに鳴らし,全員で1つの曲を奏でるという趣向で,参加者が国を超えて一体になり国際学会のイベントとして大変好感のもてる催しでした。2014年には国際眼科学会がAPAOと併催で東京で開催されます。学術の交流に加えて世界の眼科医の団結も目的であり,なにかこのような一体感のもてる催しがあればよいと思いました。
病をみて人をみず,とは耳にタコができるほど聞いてきた言葉です。インフォームド・コンセントの概念が広まり,病態についての説明にはかなり時間をかける習慣ができましたが,患者の立場で親身になれるかというと必ずしも十分とはいえません。今月の話題はいつもの先進的な技術や研究の紹介ではなく,患者とのコミュニケーションのずれを扱ったものです。失明という言葉についてのギャップ,視野検査の結果についての理解のギャップ,体感視野と検査視野のギャップという網膜色素変性診療における患者と医師の3つのギャップについて書かれています。こういうギャップは糖尿病網膜症や緑内障,色覚異常などの診療にもあることです。患者の身になるとはどういうことか,考えさせられる話題です。ぜひご一読ください。
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