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欧米には加齢黄斑変性(AMD)についての成書が何冊もあるが,これまでわが国にはなかった。その理由は,長い間わが国ではAMDの頻度が低く,眼科医の関心が低かったことと関連が深いと思う。しかし,近年わが国でも滲出型AMDが増加し,2002年には身体障害者手帳取得原因の4位を占めた。また滲出型AMDと診断されてきた疾患の中にはポリープ状脈絡膜血管症が多く含まれており,日本人のAMDは病態も治療効果も欧米のものとは異なることが明らかになった。さらにインドシアニングリーン蛍光造影や光干渉断層計(OCT)による新知見が報告されるようになり,光線力学療法,抗血管新生薬など新しい治療法も導入され,AMDの臨床はターニングポイントを迎えた。そこでAMD,とくに日本人のAMDについての成書の必要性が痛感されるようになった。
このほどタイムリーに𠮷村長久教授と京都大学黄斑グループによる『加齢黄斑変性』が医学書院から出版された。本書の特筆すべき点は,第一に現在のAMDの最新知見のエッセンスが凝集されていることである。その中には京都大学黄斑グループの優れた研究結果もちりばめられている。たくさんの論文の結果は表にまとめられ,要点は図示され,大切なことだけが簡潔に記述され,読みやすいように工夫されている。また最新知見の意味や問題点が𠮷村教授の鋭い洞察力に基づいて解説されている。さらに内容を理解するために必要な事項も多くが図解してあり,非常に親切な本である。本書を1冊読めばAMDを理解するために必要な基礎的知識,検査,診断,鑑別疾患,日本人に多いポリープ状脈絡膜血管症をめぐる諸問題や日本人のAMDの特徴,および治療の最前線について網羅的に理解できる。
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