臨床眼科 58巻11号 (2004年10月)

特集 白内障手術の傾向と対策―術中・術後合併症と難治症例

序文 水流 忠彦
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 白内障は患者数も多く,術後に著明な視機能改善が得られる場合が多いことから術後の患者の喜びも大きい。新しい手術機器の開発,安全で効果的な手術手技の研究,術前・術後管理の研究などが精力的に行われ,他の眼科領域の手術と比較しても目を見張るような進歩,発展を遂げてきた。白内障手術件数は増加の一途をたどり,多くの眼科医が携わる内眼手術となっている。私が研修医として白内障手術の指導を受け始めた頃は,ようやく顕微鏡手術が一般化し,白内障手術も水晶体囊内摘出が全盛の時代であった。当時と現在とを比べれば,手術室のベッドの上で行われている手術は同じ「白内障手術」の名のもとではあっても,まったくの別世界で,正に隔世の感がある。

 現在,日本には世界中で名を知られるような術者が少なくなく,手術機器,検査機器,手術手技などにおいても日本は情報発信の中心の1つであることは疑いない。しかしながら,名だたる名医もはじめは皆初心者である。言い換えれば今現在多くの施設で白内障手術の研修をしている若い眼科医こそ,将来の白内障手術の進歩,発展を担う重要な人材である。進歩の陰には必ず苦い失敗がある。今現在,何気なく手術をこなす名人にも,手術合併症の経験は少なからずあり,それを教訓にしてさらなる手技の上達につなげてきているはずである。皆が同じ合併症を繰り返さなくても済むように,経験者は自分の経験を後進に伝える義務がある。険しい山道を登ろうと挑戦したものは,次に登る人のために「入山して最初の分かれ道は右に行ってはダメだ,行き止まりだ」「4合目の曲り道は落石が起こりやすいから注意せよ」のように,自分の経験を伝える責務がある。そうすれば次に登るものは余計な試行錯誤に時を費やすことなく,さらに安全で質の高い手術を目指すことができる。

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 はじめに

白内障による視機能障害は,一般的には矯正視力の低下で評価されるが,実際には羞明,グレア障害,コントラスト感度低下,高次収差の増加,屈折異常,単眼複視,両眼視機能障害など,さまざまな視機能障害の原因となり,患者の主訴や治療に対する要望は決して単純ではない。角膜と水晶体の眼光学的な特性をみると,若年者では角膜が正の球面収差であるのに対して,水晶体は周辺部の屈折力が相対的に弱く,負の球面収差となっており相補的な関係になっている。しかし加齢とともに水晶体核の硬化や水晶体屈折率の分布の変化などにより水晶体の球面収差も正となるため,眼球全体としての球面収差も増大すると考えられている1)。したがって,白内障手術の適応や効果あるいは合併症を評価する場合には,中心視力の良否のみでなく,水晶体が本来有しているさまざまな光学的・生理学的機能の回復や障害の程度を多元的にとらえる必要性がある2)。また,患者の自覚的・主観的・日常生活の改善度などに関する評価も今後はいっそう重要視されることになると考えられる3)。白内障手術は単に混濁した水晶体を透明な眼内レンズ(IOL)に置換すればよいという単純なものでは決してない。

 白内障の有病率は,白内障の定義や対象,人種などによっても異なるが,わが国では初期の混濁も含めると40歳代で29~32%,50歳代で24~54%,60歳代で43~83%,70歳代で60~97%,80歳代以上では98~100%と報告されている4~6)。諸外国の報告でもほぼ同様な有病率が報告されている7~9)。これらがすべて手術適応となるわけではないが,高齢者人口の増加に伴い白内障手術の重要性と手術件数は今後とも増加する可能性が高い。いうまでもなく視機能の質(quality of vision:QOV)は生活の質(quality of life:QOL)の極めて重要な位置を占めている。わが国では年間50万件以上の白内障手術がなされていると推計されているが,本手術が国民の健康的生活の獲得と維持のみならず社会経済的貢献に果たしている意義は極めて高い10)

 近年白内障手術の手技や機器などの進歩は目覚ましく,小切開・超音波乳化吸引・foldableレンズを用いた手術はほぼ完成の域に達したように思われる。実際,国民のなかには白内障手術は“簡便”で,“安全”で,“必ずよく見える”手術との過大で安易な認識が広まりつつある。しかしいうまでもなく,患者の視覚器や全身状態は千差万別であり,同一の術者が同一の手技と機器を用いて行っても常に同じ結果が得られるわけではない。また,手術は人間が行う以上,熟達した術者が行っても一定の確率で術中・術後合併症が生じることは避けることはできない。白内障手術の術前・術中・術後合併症の可能性を常に念頭におき,適切な対処ができる準備を行っておくことが重要である。白内障手術に伴う主な合併症を表1に示す。

Ⅰ.術中合併症の予防と対処

創口作製不備 松島 博之
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 傾向

創口作製は白内障手術操作で麻酔の次に行う早い過程での手技であり,白内障手術工程のなかで最も大切な手技の1つである。近年foldable眼内レンズの進歩やインジェクターの開発により切開創はますます小さくなり,ほとんどの症例で自己閉鎖創による小切開水晶体超音波乳化吸引術が行われるようになってきた。小切開無縫合白内障手術のおかげで手術時間は短縮し,術後成績が向上している反面,計画的囊外摘出術などの大きい強角膜切開や強角膜縫合を行う機会が減少していて,若手医師の創口作製不備に対する経験不足が懸念される。

 ほんの3~4mmの切開創であるが,創口作製の不備はその後の手術の流れに大きく影響する。早期前房穿孔を生じると虹彩の嵌頓から毛様痛を生じ,縮瞳,硝子体圧上昇を引き起こし,白内障手術の難易度が急激に上昇する。切開創に関しては不備な切開創にならないように細心の注意を払うことが一番ではあるが,創口作製の不備が生じると視認性の増悪から術中眼内操作に影響し,次の合併症に連鎖しやすくなる(図1)。生じた合併症が連鎖反応式に進まないように,早期より正しく対応して続発する合併症を断ち切ることが大切である。他方,手術指導医も,予期せずして生じる合併症とその後に連鎖する可能性のある合併症の対策方法を事前に知ることで,手術指導時に冷静に対応できる。白内障手術が強角膜切開,角膜切開から始まることを忘れてはならない。

デスメ膜剝離 佐々木 洋
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 傾向

 デスメ膜剝離は内眼手術操作により角膜実質からデスメ膜が剝がれた状態で,水晶体囊内摘出術,囊外摘出術による白内障手術が主流であった時期には,高頻度に生じる術中合併症であった。Monroe1)は,囊内摘出術を行った120眼について術後に隅角検査を行い43%でデスメ膜剝離がみられたとしている。Austら2)は,囊外摘出術を行った1,163眼中69眼(5.9%)にデスメ膜剝離を生じたと報告している。超音波乳化吸引術による小切開白内障手術が主流になった現在では,高度のデスメ膜剝離の合併は著しく減少した。デスメ膜剝離の多くは強角膜切開創あるいは角膜切開創部に限局しており,通常,デスメ膜剝離の範囲が1mm以内のものであれば,術後短期間で自然治癒することがほとんどである3,4)。しかし,1mmを超えるデスメ膜剝離は何らかの処置が必要であることが多い。剝離が高度であると角膜実質の浮腫をきたし,手術によってもデスメ膜の接着が得られない場合5)や放置した場合は不可逆性の変化を生じ水疱性角膜症になる。

 デスメ膜剝離は術中合併症であり,術後に生じることは少ない。術中に生じるデスメ膜剝離は手術器具の挿入時,切れないメスの使用時,粘弾性物質やBSS(balanced salt solution)の注入時,浅前房や前房ができにくい場合などに生じることが多い。術翌日~数週間で高度のデスメ膜剝離を生じることがある。術中に生じたデスメ膜剝離に対して適当な処置を行わずに手術を終了した例で発症する可能性が高く,デスメ膜剝離が広範囲である場合,角膜実質に強い浮腫を生じ前房側は透見できないことがある。角膜内皮障害による白内障手術後の水疱性角膜症との鑑別が重要になってくる。デスメ膜剝離が角膜浮腫の原因のときは水疱性角膜症に比べ比較的急激な視力低下を生じることが多い。前房内が観察できない場合は超音波生体顕微鏡(ultrasound biomicroscope:UBM)により剝離したデスメ膜を確認することができ診断に有用である6)。稀ではあるが,術中特に問題がなかった症例で術後数か月目に両眼に高度のデスメ膜剝離を生じたとの報告もあり7),先天的に角膜実質とデスメ膜の接着が弱い症例が存在する可能性がある。

前房形成困難 松田 章男
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 傾向

 術中の前房形成保持は,超音波白内障手術を成功させるには不可欠なものである。前房形成不全は超音波操作を困難にし,後囊破損の危険をもたらし,また,角膜内皮障害を起こして水泡性角膜症に陥ることもある。

 前房の状態で,すでに術前より浅い症例がある。緑内障術後などの症例であるが,今回は合併症のない,手術既往のない症例に限らせてもらう。また手術中に関しては,超音波チップを挿入する前後,眼内レンズ挿入前,手術終了時などで前房の形成が困難な症例について検討してみたい。

不完全CCC 永原 幸
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 傾向

 白内障手術において前囊切開は必須の手技であり,不適切な処理が行われるとその後に続く核処理や眼内レンズの挿入に悪影響を及ぼすだけでなく,術後の炎症,眼内レンズの偏位,脱臼など合併症の原因になる場合がある。このような合併症を避けるために,水晶体囊の構造や解剖の知識が必須である。

 水晶体囊は胎生期の水晶体上皮細胞が形成した基底膜に由来する。赤道部を境にして前極側を前囊,後極側を後囊と呼ぶが,前囊は加齢とともに厚さが変わる。成人の水晶体では赤道部付近が約20μm,後極の薄いところは約0.2μmである。その構造は囊の表面に平行に,濃淡の周期性をもつ層状構造が形成されている。生化学的には他の組織の基底膜同様にコラーゲン様蛋白(Ⅳ型コラーゲン),プロテオグリカン,糖蛋白などから構成されている。

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 傾向

 ハイドロダイセクション(hydrodissection)が不確実な場合,術中に水晶体核を回転させることが困難になる。術中に水晶体核の回転ができない場合,手術の難易度は非常に高くなり,そのような状態で行う超音波乳化吸引術は術中合併症の発生する危険性も高い。また,水晶体核のみを分離しエピヌクレウス(epinucleus)が水晶体囊に貼り付いて残ると,このエピヌクレウスの吸引除去も大変困難で破囊の危険性も高い。したがって,確実なハイドロダイセクションは安全に超音波乳化吸引術を行うための大切なステップであることは間違いない。

 本項のテーマであるハイドロダイセクション困難とは,ハイドロダイセクションが確実に作用しない場合と定義し,次の2つに分けて考えることにする。

 (1)ハイドロダイセクションの手技がうまくない,未熟である場合

 (2)ハイドロダイセクションはうまく行えるが核が回転しない

核分割困難 柴 琢也
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 傾向

 以前は成熟白内障に対する手術は,水晶体囊外摘出術(extracapsular cataract extraction:ECCE)が第一選択とされていた。しかし,手術方法や器械の進歩などにより水晶体超音波乳化吸引術(phacoemulsification and aspiration:PEA)の適応が広がり,現在では成熟白内障に対してもPEAが第一選択とされることが多い。PEAの適応が広がった大きな理由の1つに核分割法の登場が挙げられる。核分割を行うことにより,以前と比べて核処理に要する超音波発振を減らして効率よく核処理を行うことが可能になると同時に,後囊やチン小帯への負荷を軽減させて手術することが可能になった。しかし,時として不適切な核分割操作が重篤な合併症を引き起こすことがある。安全に白内障手術を行うためには確実な核分割が必須条件となり,その理論と技術の十分な習得を行うことが大切である。

 核分割が困難になる原因は,主に術者側または患者側にある。さらに術者側要因は核分割以前の操作が原因になるものと,核分割操作そのものに原因があるものとに分けられる。核分割が困難な場合は病態を把握してそれぞれに対処する必要がある。

虹彩障害 馬嶋 清如
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 傾向

 術中合併症としての虹彩障害について述べるのには,まず術前の虹彩の状態がどうであるかが重要となる。術前の瞳孔径が極大散瞳をしても小さい小瞳孔の場合がまさにそれである。糖尿病患者の症例,偽落屑(pseudoexfoliation)を伴った症例,閉塞隅角緑内障のため縮瞳薬が長期間使用されていた症例,あるいはぶどう膜炎があり虹彩炎の後に虹彩後癒着が生じている症例などは,いくらがんばってみても散瞳薬ではとても十分な散瞳は得られないことが多い。以前はトロピカミド(ミドリンP(R),塩酸フェニレフリン)の結膜下注射などを施行していたこともあったが,最近あまりこうした操作は行われなくなった。

 こうした小瞳孔の症例でも,そのままの状態で手術を施行することができる術者はそれで問題ないが一般的でなく,小瞳孔の症例では核硬化が高度なこと,浅前房のこともあること,毛様小帯(チン小帯)が脆弱であることなど,術中合併症の危険因子が存在していることも多く,通常の場合,何らかの方法で瞳孔の拡張操作を行い,術野を広げ手術を施行するのがよい。すなわち小瞳孔の場合,push-pullフックの使用,虹彩リトラクターの使用,瞳孔拡張器の使用,あるいは瞳孔括約筋を切開するなどして,なるべく術者の受けるストレスを減らし,またより安全に手術を進めることが一般的である1~8)。しかし熟練した術者のなかには,瞳孔縁に手を加えず周辺部に虹彩切開術を施行し,そこから超音波乳化吸引術(phacoemulsification and aspiration:PEA)を施行する方もおられる。筆者はこの手法を以前ビデオで拝見したことがあるが,そこまでしなくてもという感じを受けた。ただこれは10年くらい前の報告なので,現在はこうした手技を行っている術者はいないかもしれない。

チン小帯断裂 徳田 芳浩
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 傾向

 本章の前提として,経験数100例程度の研修医が対象ということで記載するので,経験者の方法とは異なる場合があることをお断りしておく。

 術中チン小帯断裂には大きく分けて2種類の場合がある(表1)。

 1つは,術前のチン小帯強度にまったく問題がなかったにもかかわらず,術者の操作ミスで断裂を引き起こしてしまった場合で(グループA),具体的には以下のようなケースがある。

後囊破囊,硝子体脱出 谷口 重雄
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 傾向

 後囊破囊は,超音波水晶体乳化吸引術(phacoemulsification and aspiration:PEA)における角膜内皮細胞障害,創口熱傷,虹彩損傷などさまざまな術中合併症の1つであり,2.5~4.1%の割合で発生する1~3)。核破砕中の超音波(US)使用時,核分割時,灌流吸引(irrigation and aspiration:I/A)操作時,眼内レンズ(IOL)挿入時などPEAのほとんどの場面で起こりうる。

 破囊原因としては,US使用時のサージ現象に起因するものが第1に挙げられる。サージ現象とは,USチップの先端に核片が閉塞して設定吸引圧に達した状態でUSをかけ,核片が吸引された瞬間に吸引圧が急激に低下したときの圧変化により前房が虚脱する状態をいう。このとき,後囊が前房側に浮き上がってくるため後囊破囊の危険が高くなる。

核落下 吉田 紳一郎
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 傾向

 白内障手術に際して硝子体内への核落下は重篤な合併症である。放置すると落下水晶体が原因となって水晶体過敏性眼内炎や眼圧上昇など二次的な合併症を起こす。原因は術者の不注意が最も多いが,患者側の要因として水晶体脱臼や高齢者の偽落屑症候群などが考えられる。

 不幸にして核落下を生じた場合,早期の完全な核片除去を考えるべきである。しかし,硝子体手術の設備がない場合や術者が硝子体手術の経験がないときは決して無理をせず,一度創を閉鎖し硝子体専門病院に転送すべきである。また1/8水晶体径以下の軟らかい核片であれば放置していても自然吸収する可能性が高い。しかし眼圧上昇や眼内炎などの二次的合併症を生じた場合や,白内障手術のインフォームド・コンセントにより術翌日より良好な視力回復を目的としている場合は早期の対処をすべきである。

皮質吸引困難 常岡 寛
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 傾向

 皮質の吸引は,超音波乳化吸引術の各過程のなかでは安全性の高い手技の1つである。吸引孔が先端に大きく開いている超音波チップとは異なり,小さい孔を角膜面に向けながら吸引するため,後囊を誤吸引して後囊破損を起こす危険性は少ないことになる。前房を深く保ちながら,吸引孔をつねに上に向けて吸引することができれば,初心者でも安心して行うことができるはずである。

 初心者が皮質吸引時に困難を感じるのは,前房が深く保てない,眼球が歪んでしまう,効率的に吸引できない,創口下の皮質が吸引できない,などのときである。皮質の吸引に夢中になっていると,知らずに挿入したI/Aチップで創口を下に押して眼球を圧迫してしまうこと(図1a)が多く,水晶体囊が膨らまず後囊が挙上した状態で吸引しなければならない事態に陥ってしまうことがある。皮質吸引中に,いかに水晶体囊を膨らませて後囊を押し下げておくことができるかが,安全に行うための重要なポイントである。

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 傾向

 本項では,水晶体核と皮質除去が完了し眼内レンズを挿入する際,挿入が困難であったり,眼内レンズが水晶体囊内に正常に固定されない状況について述べる。その原因として,①前・後房の形成が困難な状態,②眼内レンズの創口通過困難または眼内レンズ挿入手技の不備,③水晶体囊の破損・形態異常および硝子体脱出,が考えられる。角膜混濁,水晶体亜脱臼,小瞳孔例や手術途中で縮瞳した場合などは,眼内レンズ挿入手技以前に何らかの対処がなされているはずであるので,本項では述べない。

脈絡膜下出血 雑賀司 珠也
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 本疾患は,眼手術中に突然,脈絡膜血管の破綻に伴って出血性脈絡膜剝離(脈絡膜下出血)を起こすというもので,局所麻酔下での手術では発症時に患者が中等度ないし高度の眼痛を訴えることが多い。白内障手術のみならず,術中に急激な眼圧の変動をきたす手術は,脈絡膜下出血を起こす危険を伴う。術中の眼圧変化が大きいとリスクが上がるが,これには,術中の極度の一過性低眼圧以外に術前の高眼圧も含まれる。すべての内眼手術では,患者と患者関係者に,術前にこの合併症に対する理解を得ておくことが必須である。本合併症は稀ではあるが,囊外水晶体摘出や囊内水晶体摘出では強角膜創が大きいため,網膜脱出に至るいわゆる駆逐性出血に至ることもあるが,超音波白内障手術あるいは硝子体手術では発症自体が稀であると同時に,自己閉鎖創手術の場合,出血に伴う眼圧上昇が止血に働くと考えられるため,網膜の眼外脱出を伴った駆逐性出血にまで至らず,眼底に高度の出血性の脈絡膜剝離を形成するのがよくあるパターンである。

 全身的背景が本症発症の危険を高くする。高血圧と動脈硬化がよく知られているが,術前の血圧に異常が検出されなくても,患者の緊張や不十分な局所麻酔での術中の痛みに対する反応で血圧が急激に上昇することがあり,脈絡膜下出血の原因となりうるので注意が必要である。また,全身麻酔下でのバッキングも原因となりうる。また,局所のハイリスク患者(高度近視,緑内障など)では,特に術前のインフォームド・コンセントで対応することが肝要である。

Ⅱ.術後合併症の予防と対処

眼圧上昇 原 岳
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 傾向

 眼圧は,毛様体の「房水産生量」と,隅角線維柱帯部での「房水流出抵抗」,および「上強膜静脈圧」によって決定される。白内障手術後の眼圧上昇はこれら3要素のいずれかに原因がある。通常,白内障手術は「房水産生量」や「上強膜静脈圧」には影響を与えないので,術後の眼圧上昇の要因は「房水流出抵抗」の増加にある。房水流出抵抗増加の原因の1つに,房水以外の物質が線維柱帯に流入することが挙げられる。代表的な物質とは粘弾性物質,血液,硝子体,炎症性物質などである。

 粘弾性物質は前囊切開や眼内レンズ(IOL)挿入に欠かせない物質であるが,分子量が高く線維柱帯を通過しにくい。そのため,眼内レンズを挿入した後の前房中の粘弾性物質除去が不十分だと,術後の眼圧上昇の原因となる。また,術中に後囊を破損し眼内レンズを囊外に固定するときは,虹彩と水晶体囊の間に粘弾性物質を注入して囊外固定をしやすくするが,そのときに破損した後囊から硝子体中に粘弾性物質が混入することがある。この場合,眼内レンズを挿入した後の洗浄は硝子体を吸引しないよう通常よりも灌流圧を低くしたり,眼内レンズ下の吸引をしっかり行えなかったりするため,眼内に粘弾性物質が残存しやすい。術後の炎症が強いと,房水中の蛋白が増加し,高分子の蛋白が線維柱帯の房水の流出障害の要因となることがある。手術時間が1時間以上要した,あるいは超音波操作中に虹彩を一部破損した,術中に散瞳が不良になったため瞳孔の拡大操作を行ったなどの場合,術後の炎症が強くなり,眼圧上昇をきたすことがある。

創口閉鎖不全 白尾 裕
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 傾向

 1.白内障手術の創口閉鎖は自己閉鎖が主流

 自己閉鎖創白内障手術は,超音波水晶体乳化吸引術(phacoemulsification and aspiration:PEA)を前提とし,1992年には全白内障手術の11%を占めるにすぎなかった1)が,1997年には54%2),2002年には66%を占めるに至り3),今後も増加することが予想される。この背景には,術直後からの良好な裸眼視力を期待する患者側のニーズと,それを可能にする手術法・眼内レンズ(IOL)の進歩がある。筆者の施設で平成15年度に両眼に白内障手術(硝子体手術同時施行も含む)を施行した249例のうち,234例は術後正視を希望した。このうちの6例は,50歳以上の両眼近視者に生じた片眼の網膜剝離に対して一次的に硝子体手術併用トリプル手術(以下,硝子体トリプル)を施行した8例のうち,僚眼の屈折矯正的白内障手術も希望したものであった。このように患者の裸眼視力向上への期待は医療供給側の想像をはるかに超えて高く,そのためには小切開・自己閉鎖創白内障手術が必須である。

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 傾向

 水疱性角膜症は角膜内皮障害により,内皮細胞のポンプ機能が低下し,角膜の上皮・実質に浮腫が生じた状態である。生体内では角膜内皮細胞は増殖しないため,傷害を受け水疱性角膜症が生じると全層角膜移植術を行わない限り治療の方法はない。わが国での全層角膜移植術のなかで水疱性角膜症の占める割合は全国的に増加してきている1,2)

 宮田眼科病院における過去6年間の手術症例301例の内訳を検討してみると,角膜白斑157例,水疱性角膜症97例,円錐角膜24例と全症例のなかで水疱性角膜症がかなりの割合を占めている(表1)。水疱性角膜症に対する全層角膜移植術の内訳では,白内障術後が最も多く33例で30%以上となっている(表2)。また水疱性角膜症を生じた白内障の術式では,前房レンズや囊外摘出術(extracapsular cataract extraction:ECCE)といった過去に多く行われていた術式よりも,現在の白内障手術の主流を占める水晶体乳化吸引術(phacoemulsification and aspiration:PEA)+IOLが最多であり,全体の約半数を占めている(表3)。また角膜移植術の適応患者のうち白内障術後の水疱性角膜症の占める割合は宮田眼科病院の1990年と2000年を比較しても15%前後とほとんど変化がない(表4)。

眼内レンズ偏位 杉浦 毅
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 傾向

 術後の眼内レンズ(IOL)偏位は,近年の手術手技の進歩やIOLの品質の向上により減少しつつあるが,偏位の程度が大きければ,乱視を伴う視力障害,グレア,複視,術後炎症の持続などの症状をきたし,視力の質は著しく低下するため,的確に対処する必要がある。

 1.IOL偏位の定義:傾斜5°以上,偏心1.0mm以上

 IOL偏位(dislocation)は,IOLの偏心(decentering)と傾斜(tilting)に分けられる。どんなにIOLの中心固定が良好でも,わずかなズレは存在する。では,IOLが偏位したと定義できる基準は何か。

前囊収縮 黒坂 大次郎
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 傾向

 前囊切開縁は,術後1~3か月に白濁し前囊混濁を形成する。混濁した部位には,筋線維芽細胞に変化した水晶体上皮細胞が存在し,前囊切開縁を収縮させ巾着絞りのように前囊切開窓が減少する1)。この変化自体は,一般的に認められる現象であるが,時に著しく前囊切開縁が収縮してしまい前囊切開窓が著しく減少ないしは消失してしまうことがある2~4)。こうなると光学的に障害を生じ,減少した前囊切開窓を広げる必要が出てくる。

 前囊切開縁を収縮させる力は,この部に存在する筋線維芽細胞に変化した水晶体上皮細胞である1)。この細胞は,前囊切開縁下で眼内レンズ上に存在しており,筋線維芽細胞に変化するのには,それに接している眼内レンズの光学部素材が影響することが知られている。一般に,シリコーン製眼内レンズの場合にはこの変化が強く,アクリル系の場合には少ないといわれている5,6)。また,術後の炎症が強かったり,糖尿病などの基礎疾患があると前囊混濁や収縮が強くなる7,8)

眼内レンズパワー誤差 高良 由紀子
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 傾向

 白内障手術が洗練されるとともに,矯正視力だけではなく,術後屈折度に対する患者の欲求の程度も高くなっている。眼内レンズパワー誤差による術後屈折誤差は,大きな問題であり,訴訟の原因となることもある。

 眼内レンズパワー計算式の進歩により,以前に比べ予想屈折度精度は上昇しているが,さまざまな要素によって誤差を生じる。眼内レンズパワー計算式で術後屈折度誤差に関連する重要な要素は,眼軸長,角膜屈折力,前房深度値である。

眼内炎 薄井 紀夫
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 傾向

1.発症頻度

 白内障手術後に発生する眼内炎の頻度は各施設における母集団数,手術環境,手術手技,診断基準などさまざまな要因により影響を受けるので一概に述べられるものではないが,およそ0.01%,つまり「万が一」程度の確率と考えられている1,2)。また,危険因子を検討した結果では,強角膜切開に比べ角膜切開のほうが約2~5倍3~5),術中合併症として後囊破損がある場合はない場合に比べ約5~10倍2,6,7),さらに,切開創不全も眼内炎が発症しやすいと考えられている8~10)

後発白内障 林 研
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 傾向

1.後発白内障の種類

 後発白内障は,白内障手術後の合併症としては最も頻度が高い。組織学的には,水晶体上皮細胞の眼内レンズ上への進展による膜形成,前後囊下の線維組織形成(線維化),水晶体線維細胞の再生によるSoemmering環やそれに続発するElschnig真珠などがあるが,すべてを含めると必発である。ただし,後発白内障が臨床上問題になるのは混濁が瞳孔領に及んだ場合であり,後囊混濁と呼ぶ。

 後発白内障のうち最初に起こるのは,水晶体上皮細胞のレンズ上への進展による膜形成である(図1)。術後数日で細胞が紡錘形に変化して,前囊切開縁からレンズ上へ進展して膜状になる。膜はほとんどが細胞成分であるが,細胞外基質も含んでいる。ハイドロジェルなどの親水性レンズによくみられるが,他のレンズでも起こる。瞳孔領まで進展することは少なく,通常視機能には影響しない。また,時間とともに退縮するが,一部は残存する。

囊胞様黄斑浮腫 太田 一郎
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傾向

   囊胞様黄斑浮腫(cystoid macular edema:CME)は,種々の眼内炎症疾患に合併するが,白内障手術など眼内手術の術後にも生じる。CMEはIrvine-Gass症候群とも呼ばれ,かつて白内障手術の主流だった水晶体囊内摘出術や囊外摘出術でなされたもの,また硝子体脱出など術中合併症を生じた症例では発症しやすい。CMEは重症となると視力が0.3以下にまで低下するが,軽症のものは無自覚のものもあり視力予後もよく見逃されていることも多い。

 CMEが発生する疾患は多い。ぶどう膜炎,糖尿病網膜症,網膜静脈閉塞症,網膜色素変性症,眼内腫瘍の疾患や白内障や網膜剝離など外科的な損傷が加わった状態にみられることから,CMEの発生には血液眼関門の障害が影響している1,2)と考えられる。

Ⅲ.ハイリスク症例―私はこうする

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 はじめに

 瞼裂狭小眼とdeep set eye(奥目)は白内障手術,特に超音波乳化吸引術(phacoemulsification and aspiration:PEA)において,眼内での手術器具の操作性が悪くまた開瞼不良や灌流液の瞼裂内貯留による視認性の低下で,後囊破損などの合併症を引き起こす可能性が高まる。これらには耳側切開が有効であるが,わが国では上方か利き手より斜めからの切開を選択する術者が多く1),本稿ではこのような症例に対して,PEAの上方強角膜切開を中心とした注意点を述べたい。

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 瞼裂狭小,deep set eyeの白内障例が負うリスクとは

 瞼裂狭小眼では開瞼状態でドレープを貼れないために,睫毛やマイボーム腺開口部が術野へ露出して術野が汚染されやすい。後嚢破損したり手術が長引くと眼内炎発生の危険が増すと思われる。瞼裂狭小眼やdeep set eye(奥目)では視認性不良のために後嚢破損を起こしやすいし,それを恐れるために起きてしまう前房内核乳化吸引による角膜内皮障害も起こりやすい。また,超音波チップが相対的に立つことによる創口の熱傷や破損とそれによる創閉鎖不全の問題もある。

 ドレープ問題

 極度の瞼裂狭小眼では開瞼状態でドレープを貼ることはほとんど不可能である。昔は外眥部を切開する方法(外眥切開)がしばしば行われたものだが,筆者はこの20年間行ったことはない。手術の開始時に患者の痛みの閾値を下げて力みによる硝子体圧上昇を起こしてしまうことは,決して得策とはいえないからである。筆者はここ1年くらいは,筆者らが考案した二重開瞼器を用いてかなり快適に手術が行えるようになった。これは先に開瞼器を装着して強制的に開瞼状態としてからドレープを貼り,さらにもう1つ開瞼器を装着するもので,2つの開瞼器は喧嘩しないようにいわば親子関係のように設計されている(図1)。睫毛やマイボーム腺開口部を術野へ露出させない効果と視認性を良好にする効果がある。

小瞳孔白内障 石井 清
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 はじめに

 小瞳孔の症例に対する白内障手術に関して,筆者のとっている方法を解説したい。

 まず,小瞳孔とは実際何mm以下の瞳孔径であるか定義されていないはずである。したがって,術者の経験量,技量も加味され,手技が困難であると思わせる症例をその人にとっての小瞳孔と表現しているようであるが,おおよそ4~5mm以下と考えて解説したい。

小瞳孔白内障 永原 國宏
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 はじめに

 筆者は3.5~4mm以下の場合を小瞳孔として扱っているので,これ以下の瞳孔の場合は瞳孔を大きくする操作をする。

 単に小瞳孔症例といっても多種の状況があり,1つの方法で処理することは難しい。また角膜の状態,核の状態が違うことによって術式の選択を変える必要がある(PEAか囊外摘出術または囊内摘出術)。

 小瞳孔の原因のうち機械的な散瞳不良の典型的なものとしては,狭隅角緑内障で長期間ピロカルピンを使用したもの,レーザー虹彩切開術を受けたもの,ぶどう膜炎の後のものなどが挙げられる(図1)。また,機能的な散瞳不良として偽落屑症候群(図2)や先天虹彩コロボーマがある(図3)。

 ここではチン小帯が手術に耐えうる十分な強度をもった症例について述べる。

褐色白内障・成熟白内障 大木 孝太郎
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 褐色白内障と成熟白内障の違い

 この2つの白内障の正式な定義は明確ではない。したがって本稿では,褐色白内障とは核の色調が褐色化し眼底の詳細も判別不能になり,水晶体核が著しく硬いことが予想される白内障として取り扱うこととする。また成熟白内障とは,加齢性白内障が進行して全体的に白色調に混濁が強くなり,眼底が透見できなくなった白内障として取り扱う。

褐色白内障・成熟白内障 藤田 善史
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 術式の選択

 褐色白内障では核が非常に硬く,超音波乳化吸引術を選択した場合,核破砕に時間がかかり,角膜内皮障害を起こしやすい。このような症例では,最初から計画的囊外摘出術を選択する術者もあるが,私は,超音波白内障手術を基本にしている。超音波白内障手術器械の進歩,角膜内皮保護作用のある粘弾性物質の使用などにより,このような症例でも,術翌日にほとんど前房内炎症もなく,角膜内皮障害も少なくて,よい術後視力を得ることが可能になってきている。

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 はじめに

 水疱性角膜症は,白内障術者にとって最も避けなければならない合併症の1つであり,角膜内皮細胞の少ない症例(低密度角膜内皮眼)はその危険性が高い。そのような症例に対し,筆者が行っている方法を紹介したい。

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 はじめに

 角膜細胞の少ないハイリスク症例に対する白内障手術の最大の問題点は,術後に水疱性角膜症を生じる可能性があることである。そのためには,まず水疱性角膜症の現状を知り,その危険性を十分に把握することが必要である。また,術前,術中のどのような因子が角膜内皮細胞障害に関与しているか解析し,個々の症例のリスクを把握することが重要である。そのうえで,角膜内皮障害の最も少ない術式を選択する。

角膜混濁眼の白内障手術 木下 茂
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 はじめに

 角膜疾患を伴う白内障に対して手術を行わねばならないことがある。角膜混濁がある場合,かつては水晶体囊内摘出術(ICCE)あるいは水晶体囊外摘出術(ECCE)を行っていた。しかし,最近では手術機器と手術手技の進歩により,多くの場合に小切開超音波白内障手術を行うことができるようになった。結果として,角膜疾患を伴う白内障手術でも,眼内レンズを囊内に固定する,より安全で確実な手術へと移行しつつある。白内障手術を行う際に問題となる角膜の状態は,角膜混濁の場合,角膜内皮異常の場合,そして眼表面疾患を合併している場合の大きく3つに分けることができる。ここでは,この3つの場合について,私なりの対処方法を述べる。

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 はじめに

 近年の白内障手術の進歩により,小切開での手術が主流となっている現在においては,その手術適応も拡大してきているように思う。しかし角膜混濁例などは視認性が悪く,術中操作の困難さから合併症も生じやすい1~5)。そのような症例に対しては,合併症の発生を最小限に抑え術後のquality of vision(QOV)を向上させるために,十分な術前検査で患者の状態を把握し,それに対しての綿密な手術計画を立てることが重要である。最近では治療法,使用器具においていろいろなオプションがあり,それらのいずれを選択し組み合わせたらよいか,術者側にも高度なテクニックと正確な知識が必要となる。

偽落屑症候群の白内障 大槻 潔
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 はじめに

 偽落屑症候群(pseudoexfoliation syndrome)の白内障手術に際しての問題点は,①毛様小帯(チン小帯)の脆弱性,②小瞳孔,③囊性緑内障の合併などである。注意深く術前検査でこれらの点を観察し,あらかじめ症例ごとに対策を立て手術を行うことが,術中・術後の合併症を最小限に抑えるために必要である。なかでも毛様小帯が脆弱な症例が最も厄介で,今回はその対処法に絞って述べてみたい。

落屑症候群の白内障 庄司 信行
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 はじめに

 落屑症候群(exfoliation syndrome)の白内障手術は,チン小帯の断裂によって眼内レンズ(IOL)の挿入が叶わないこともあるため,私自身,白内障手術において最もストレスを感じる手術の1つである。本稿では,いくつかの場面を想定して細かい手技を述べるのではなく,本症候群の白内障手術を行う際,私自身,どのような点に注意して実際の手術に臨んでいるかを述べたい。

外傷性白内障 木村 亘
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 はじめに

 外傷性白内障の診断は比較的容易で,診断を誤ることは少ない。しかし,外傷の種類(穿孔性か鈍的か)や程度によって観血的治療の戦略は1例ごとに異なる。本稿では木村眼科内科病院で最近5年間に経験した症例の総括と,そのなかのハイリスク症例への戦略や注意点について「私はこうする」を解説する。

外傷性白内障 林 研
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 外傷による分類

 外傷性白内障は,チン小帯や水晶体囊が傷害されている場合が多く,難しい症例であるにもかかわらず対処法に基準がない。1つには,明らかな穿孔創がある場合を除いて,術前診断が困難なことに原因があると思われる。また,外傷の既往があってもチン小帯や囊の傷害の程度もわかりにくい。壮年男性の手術で,予想外にチン小帯が弱かったとか,原因不明の後囊破損を起こしたということですまされている例も多いと思われる。

 外傷は,穿孔性外傷と非穿孔性外傷に分けられる。非穿孔性外傷は,さらに鋭的な外傷と鈍的外傷に分けられるが,大きな差はないと思われる。穿孔性外傷で,水晶体囊が大きく裂けた場合は急速に過熟白内障に至るが,囊傷害が小さな場合は穿孔部局所の皮質混濁とチン小帯傷害でとどまると考えられる。囊が裂けていない場合も同様である。非穿孔性外傷では,囊破裂の場合は過熟白内障に至るが,囊傷害がない場合は,チン小帯断裂による水晶体の亜脱臼を起こしたり,皮質混濁が緩除に進行したりする。

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 対処の基本

 無硝子体眼の白内障も基本的には超音波白内障手術で対処される場合がほとんどであるが,表1に列記されるように硝子体手術後であることに起因するいくつかの注意すべき点が挙げられる。さらに硝子体手術後に増強する白内障は核の硬化が主たる病像の核白内障であるため,超音波破砕吸引手技自体も難易度が高くなる場合がある。

 筆者も無硝子体眼であるからといって特別のことはなく,基本的には日帰り超音波白内障手術で対処するが,核硬化度が高い症例では,後囊破損,硝子体腔への核落下の危険性が高い手技をわざわざ選択することは避け,「安全第一」を基本として,患者,家族と相談のうえ,入院のうえ計画囊外水晶体摘出を行っている。また,硝子体手術時にマイナーな後囊の損傷が起こっても水晶体全体が早期に白内障に陥らずに経過し,のちに白内障手術を必要とすることになった場合,超音波白内障手術では,水流分離や超音波核破砕中にその既存の後囊破損部からの核落下に至る可能性もある。本稿ではこの計画囊外法について記載し,超音波白内障手術は別項に譲る。

無硝子体眼の白内障手術 松島 博之
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 無硝子体眼白内障の特徴

 網膜硝子体手術の進歩とともに糖尿病網膜症,網膜剝離,黄斑部疾患など多岐にわたる疾患に対して手術が施行され,良好な経過を得られる傾向にあり,術後のquality of visionは向上してきている。水晶体摘出術後の調節機能の低下を考え,水晶体を温存して網膜硝子体手術を行う症例も少なくないが,糖尿病やぶどう膜炎などの基礎疾患のために白内障が進行しやすいほか,50歳以上の症例では網膜硝子体術後高率に水晶体の混濁が進行する1)。硝子体手術により白内障が進行する原因は未だに明らかでないが,灌流液に置き換えられた硝子体液のなかに流失したサイトカインや酸化反応が透明水晶体に影響し水晶体線維の配列が乱れて水晶体の混濁が発症する2,3)といわれている。

 硝子体切除後に生じる白内障は核白内障が典型的で,手術後短期間に水晶体核部の色調が黄色化し,屈折が近視側に移行し不同視が生じやすい4)。視力低下がなくとも不同視から屈折矯正目的で手術適応になることもある。

強度近視眼の白内障 佐々木 洋
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 手術適応と症例の選択

 強度近視眼では加齢白内障に比べ,40~50歳代の壮年期から比較的進行した白内障を発症する。近年の疫学調査でも強度近視眼は白内障の危険因子であることが報告されている1,2)。強度近眼での白内障手術の意義は混濁水晶体の除去による中間透光体の透明性の回復だけではなく,眼内レンズ移植による屈折矯正手術としての効果を有する。LASIK(laser in situ keratomileusis)に代表される屈折矯正手術がそれのみで有効性が認められているなか,最近では屈折矯正を目的に透明水晶体眼に対する水晶体摘出術および眼内レンズ移植術を行う術者も増えている。強度近視眼に対する白内障手術はまさに一石二鳥の手術であり,その手術適応も屈折異常を伴わない白内障眼のそれとは異なってくる。水晶体混濁が比較的軽度であっても手術行う場合があること,手術は術後不同視を考慮し,多くの症例で両眼の手術を行うことになる。なかには弱視の症例もあるため,術後視力の説明に際し注意が必要である。

 強度近視眼では網脈絡膜萎縮を合併していることもあり,それらの症例では術後視力はあまり期待できないことも多いので手術適応は慎重を期すべきである。高度の黄斑萎縮がある場合は屈折矯正を主眼においた白内障手術は行うべきではない。また,強度近視眼では緑内障の合併のリスクが高いが,視神経乳頭の形状から緑内障の診断をするのが難しいこともあり,疑い例については術前視野の評価も行い手術に臨むべきであろう。

強度近視眼の白内障 原 優二
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 はじめに

 白内障手術はもちろん,どんな手術でも私は術前から不安を感じない症例は1例もない。「今日は思わぬ困難な局面に遭遇するのではなかろうか」など,毎回心のどこかにある種の恐怖心を持っている。簡単と思った症例に限って痛い目に遭った経験を持つ術者は私だけではないのではなかろうか。

 例えば,皮質混濁の白内障症例では,核は硬くはないものの核分割は困難になり,普段どおりの操作を行っていると,思わず後囊をパンチアウトする危険性をはらんでいる。逆に核硬化の例では核分割はそんなに困難ではないものの,皮質が少なく後囊ぎりぎりまでUSチップ操作を求められる。また白内障自体は厳しくはないものの,緊張の強い方では術野のアプローチから困難となる(例えば,このような症例では眼球が上転して,角膜の下方がやっと見えるような場面もあり,術野の確保すら困難なこともある)。さらに現役の眼科医を手術するときなど患者さんの生活背景など考えてしまうと,容易な症例はそんなに存在するものではない。

 困難さが術前より予想される症例では,逆に気合の空回りと思われるように難なく手術を終了するケースもある。ただ,術前に予想されるあらゆる局面を想定するにこしたことはない。「己の敵を知れば,百戦危うからず」である。

緑内障合併眼の白内障 狩野 廉
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 緑内障を合併した症例の白内障手術を躊躇してしまう原因は,術後眼圧と手術の難易度にある。また手術を決断した際には,術式を決定し術中・術後の合併症対策を講じなければならない。本稿では手術の問題点を整理し,病型別のポイント,周術期の注意点について具体的に解説する。他項と重複する部分もあるので,詳細についてはそちらを参照されたい。

緑内障合併眼の白内障 原 岳
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 私の方針

 筆者は,白内障手術既往のある緑内障手術症例に数多く遭遇している。その経験から,緑内障を合併している白内障手術患者は,手術時に眼圧が調整されていても,後に(翌日かもしれないし,何十年後かもしれない)眼圧調整不良になり緑内障手術を受ける可能性があることを念頭におくべきであると考えている(図1)。

 現在,最も眼圧調整幅の広い手術は線維柱帯切除術であるから,線維柱帯切除術を前提とした白内障手術を行うべきである。すなわち,強膜,結膜を温存する手術が望ましい。したがって筆者は,緑内障合併眼ではほぼ全例で透明角膜小切開の自己閉鎖創白内障手術を行っている。この方針は核硬度が高くても同様で,角膜内皮細胞数が極端に少なくない限りは褐色白内障でも超音波乳化吸引術を行っている。ただし例外は若年者で,自己閉鎖が得られにくいこと,術後の衛生管理が難しいことを考慮し,30歳未満の若年者では強膜小切開の手術を行っている。その場合,左右どちらの眼であっても耳側を温存し,鼻側寄りに手術を行うよう心がけている。

小児の白内障 稲富 誠
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 小児の白内障手術では成人と異なっていくつかの注意点,あるいは留意点がある。成人に比べて小さい眼球,屈折要素の違い,易刺激性,易炎症性,諸検査の困難さ,などの理由から生じる手術手技上,術後治療上の問題点である。

 小児白内障手術には経輪部アプローチと経強膜毛様体アプローチがあり,眼内レンズ挿入術と非挿入術がある。ここでは経輪部アプローチによる水晶体吸引と眼内レンズ(PMMA 1ピースレンズ)挿入術を主体に,日頃筆者が注意している点について述べる。手術順序に従って解説し,注意点あるいは留意点をポイントとして追加する。

小児白内障の手術 茨木 信博
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 はじめに

 小児の白内障を治療する際には,眼球が発育,発達途上であることを念頭におくことが重要である。特に,発見(発症)時期により術式の選択を考慮する必要があり,また,両眼性か片眼性かによって屈折矯正方法が異なる。

 本稿では術式選択,屈折矯正方法,手術の際の注意点,術後の弱視訓練について当院で行っている方法を述べる。

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 はじめに

 アトピー性皮膚炎(以下,本症)に伴う白内障(以下,アトピー性白内障)は若年者の視力障害原因となるだけでなく,網膜剝離との関連が深く,単純に白内障のことだけ考えて診療や手術を行っていると,後に取り返しがつかない事態を生じる場合がある。眼瞼あるいはその周囲に皮膚炎を生じている例では,瘙痒感から眼周囲の顔面叩打癖を有している場合が少なくない。近年ではこの患者自身による顔面叩打が白内障や網膜剝離の発症原因として有力視されている1~4)。すなわち,白内障を生じているということは網膜にも何らかの異常を生じている可能性があると考えなくてはならない。現に手術を要するほどの白内障を生じている本症患者には,すでに高率に網膜剝離あるいは網膜や毛様体上皮の裂孔を併発していたとの報告5,6)もあり,筆者自身もしばしば同様の経験をしている。したがってアトピー性白内障に対しては,白内障のみでなく,その奥に潜んでいる可能性がある網膜剝離をも念頭において診察,手術をしなくてはならない。もし網膜剝離が合併している場合,重症度から考えれば,当然IOLの挿入も含めた白内障の手術よりも網膜の復位が優先されるべきである。そこで本稿ではまず網膜剝離への対処法について述べたうえで,白内障への手術方針につき述べる。

アトピー性白内障 松尾 俊彦
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はじめに

   「まとめ」から始める。

 1)アトピー性皮膚炎では術後感染のリスクが高い!

 ・顔面のアトピー性皮膚炎が沈静化してから手術をしよう。

 ・アトピー性皮膚炎の眼瞼にはMRSAが多い。

 ・眼球を叩いたり,こすったりする習癖がある。

 ・術前の眼脂培養は念入りにしよう。

 ・術前に予防的抗生物質の点眼を必ずしよう。

 2)アトピー性白内障では,網膜剝離があることが多い。

 ・術前に眼底をよく見よう。

 ・術前に超音波検査をしよう。

 3)アトピー性白内障では,水晶体偏位や赤道部欠損が多い。

 ・しかし,手術に影響は少ない。

 4)アトピー性皮膚炎では,白内障術後の前囊収縮が強い。

 ・大きいしっかりした眼内レンズを挿入しよう。

 ・術後の前囊収縮が毛様体上皮裂孔を誘発するという説もある。

 5)眼球を叩く習癖に対応する。

 ・強角膜切開3.5mmでも5mmでも,1糸縫合しよう。

 ・角膜切開はやめよう。

 ・結膜切開も縫合しよう。

ぶどう膜炎併発白内障 門田 遊
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 手術適応

 白内障による視力障害のため日常生活または社会活動に支障をきたしている,あるいは,白内障のため眼底病変の観察が困難でぶどう膜炎の治療管理に支障のある症例が適応と考えている。ぶどう膜炎の病因別では,眼炎症発作を繰り返すベーチェット病では適応時期を慎重に決めている1~3)。囊胞様黄斑浮腫のあるサルコイドーシスや薬物治療に抵抗する硝子体混濁を伴うサルコイドーシスでは,硝子体手術との併用手術も選択の1つとしている4,5)。久留米大学眼科(以下,当科)のぶどう膜炎外来では,1995~2001年に新患のぶどう膜炎患者740名が受診しているが,そのなかに若年性関節リウマチは0名であったため経験はないが,若年性関節リウマチは若年で術後後囊混濁や眼圧上昇が問題となる。そのため炎症と眼圧のコントロールを考え,手術時期や緑内障手術との併用など慎重に行うべきであると考える6)

ぶどう膜炎併発白内障 後藤 浩
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 術前に注意すべき点

1.臨床診断・病態把握の重要性1)

 ぶどう膜炎症例に何らかの外科的侵襲を加えなくてはならない場合,原則としては活動性炎症のない,あるいは低下している時期を選んで実施することが理想であることはいうまでもなく,併発白内障手術についても例外ではない。しかし,例えばFuchs虹彩異色性虹彩毛様体炎のように,眼内炎症の存在下に手術を行っても問題の生じにくい疾患もあれば,若年性関節リウマチに伴う虹彩毛様体炎や女児に多い若年性慢性虹彩毛様体炎(chronic iridocyclitis in young girls)のように,いかなる時期に手術を行っても術後の眼圧上昇や後発白内障などに悩まされる疾患もある。ベーチェット病に対する併発白内障手術も侵襲の小さい手術が滞りなく行われた場合には,手術そのものが病態を悪化させる可能性は非常に少なくなったが,それでも術後に炎症発作を生じる可能性は皆無ではない。

 ぶどう膜炎症例では少なくとも全症例の60%以上が同定不能(分類不能)と考えられるが,手術の施行にあたっては原疾患によって術後の経過が大きく異なることを認識しておくことが重要である。そのためには術前に病歴を含めた臨床像を整理し,特定の診断には至らないにしても,どのようなカテゴリーに当てはまるぶどう膜炎であるのか,少なくとも肉芽腫性・非肉芽腫性炎症の鑑別,急性炎症・慢性炎症の区別などについて把握しておくことが求められる。

先天白内障 仁科 幸子 , 東 範行
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 先天白内障は,疾患そのものの治療(手術・術後管理)と弱視治療とが長期的に成功してはじめて良好な視機能が得られる疾患である。形態覚遮断弱視が確立すると手術は無効となり,いたずらに術後合併症の危険を増加させるだけである。完全白内障であれば両眼性で生後2~3か月以内,片眼性では生後1か月以内の早期手術が必要であり,眼・全身合併症が高率のため術前の評価が非常に重要である。弱視治療の成功の見込み,手術や全身麻酔に伴うリスク,術後合併症の長期管理が不可欠であることなどを十分に家族に説明して,手術適応を決めることが大前提である。

 われわれの施設で過去に治療を行った先天白内障では,何らかの眼・全身合併症を伴う患児が両眼性で64%,片眼性で48%を占めていた。このような他の先天異常を伴う白内障の治療経験をもとに術前評価,術中・術後の留意点と代表的な眼合併症例の対応策について以下に述べたい。

先天白内障 徳田 芳浩
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 はじめに

 当院は眼科単科施設であり,麻酔科医や小児科医は常勤していないので,他の先天性異常に併発する白内障例は扱っていない。また,他の先天性眼疾患に併発する白内障症例の経験もない点をお断りしておく。

 小児白内障手術の実際

 小児白内障手術はハイリスクではあるが,それはテクニカルな難易度よりも,術者の技量や努力とは関係のない小児白内障独特の問題に起因している部分も少なくない。以下,手術の手順に沿って順に述べる。

資料:私の使用している白内障手術クリニカルパス

大学病院 植田 俊彦
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 クリニカルパス導入前

 当院は病床数885床の大学病院である。クリニカルパスは1996年より作成を開始し,現在約240種が使用されている。白内障手術を1,300件/年行っている。白内障手術は入院の場合でも3泊4日と短期間の入院にもかかわらず,診療録は大学病院全体で統一された診療録形式に従う必要がある。すなわち,以下の書類が必要となる。

 ・入院診療録サマリー(2枚) ・診療記録の表紙

 ・既往歴用紙        ・入院治療計画書

 ・診療記録の2号用紙(3枚)

 ・手術記録(2枚)      ・説明同意書

 ・説明同意書の別紙     ・コスト伝票

 ・薬剤管理指導依頼書    ・看護情報1,2

 ・系統レビュー       ・フローシート

 ・輸液管理チェック表    ・白内障パス

 ・ミニプリント貼付用紙   ・温度板

 なるべく効率をよくするために,定型とスタイルを異にした白内障専用の診療録の作成を計画した。大学には診療録管理室という部門がある。診療録の保存管理の問題で未解決の点があるものの,その部署と連携して作成に取りかかった。

市中総合病院 市川 一夫 , 中村 英樹
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 クリニカルパス導入直後

 クリニカルパスの導入を病院が決定し,それに伴い眼科でもパス化が要求され白内障に実施しだしたのが4年前でした。導入当時,入院時における治療・ケアなどはパターン化しているため,クリニカルパスは導入しやすいように思われました。白内障の医師としてやるべきことは簡単な言葉にすれば,「点眼は術前日まで2種類,術翌日から3種類,点滴は術後2日間施行,内服は点滴終了から開始と指示。他科の内服続行か,入院中他科受診続行かを指示。診察は毎日の眼圧検査,細隙灯顕微鏡検査,眼底検査,術翌日の屈折・視力検査」とおおむね3行で済んでしまうと思っていました。

 実際にスタートしてみると看護部分,全身合併症の対処,術後の合併症に対する処置など多岐にわたる配慮が必要なことがわかってきました。当初は病院全体としても試みの段階で,片眼手術の2泊3日・両眼1週間の全身的に問題のない眼科管理のみ症例とし,クリニカルパスの導入率は20%を超える程度の狭いものでした。しかし,やりだしてみるとパス症例の経過やパス症例でないものとの比較から少ないなかにも問題点がみえてきて,全身的には糖尿病,腎不全が問題になる場合が多いこと,術中・術後合併症を起こすとパスから外れる場合が起こりうること,術後合併症では特に眼圧上昇が多いこと,パス適応とされる症例でもパスを外れる最も大きな理由は術者の術日限定により日程がパスの企画どおりに組めないことがわかりました。

眼科病院(1) 井上 賢治
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 クリニカルパス作成までの経緯

 井上眼科病院では,2001年5月頃より白内障クリニカルパス導入のために医師1名と病棟看護師2名が中心となり準備作業に取りかかった。クリニカルパス導入にあたり,それまでのシステムの問題点を明確にする必要があった。手術件数が多く,術者も多い当院では術前・術後検査,使用薬剤(手術時点滴の抗生物質,筋肉注射,術後点眼薬および内服薬),術後指導(術後の洗顔および洗髪開始日,退院指導パンフレット)についてはおおむね統一されていた。しかし以下に述べるような問題点が挙げられた。

眼科病院(2) 小澤 忠彦
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 はじめに

 クリティカルパスは,1950年代の米国の産業界より生まれた方法で,いくつかのグループが1つの工程表を共有して,各々が作業を分業し,製品を完成させるものである。医療界でも「質の高い医療」や「効率のよい医療」,「確実に行う医療」という目的にかなっていることからクリティカルパスが利用されはじめ,わが国でも200床以上の病院では,クリティカルパスを実施しているところと計画中を合わせると9割前後に上っていると報告されている1)。また最近では,医療用との理由により「クリニカルパス」と呼ばれることも多い。

眼科医院 杉浦 康広
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 はじめに

 当院では,白内障日帰り手術を始めるに当たり,①看護師の入れ替わりがあっても同一レベルの看護が提供できる手段として,②患者に手術までの手順,術後の注意を理解し実行してもらうために,③速く安全に手術を行うために,クリニカルパスを導入した1,2)。しかし,医療事故と医療訴訟が頻発する最近の医療環境を考慮し,現在のクリニカルパスの位置づけは「リスクマネージメント」と考えており,①医療ミスを起こさない,②医療事故を起こさない3,4),そして,③万が一の医療訴訟の際には「過失」を指摘されない5),を目標にクリニカルパスを作成した。

基本情報

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臨床眼科
58巻11号 (2004年10月)
電子版ISSN:1882-1308 印刷版ISSN:0370-5579 医学書院

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