特集 白内障手術の傾向と対策―術中・術後合併症と難治症例
Ⅱ.術後合併症の予防と対処
眼圧上昇
原 岳
1
1自治医科大学眼科学講座
pp.102-106
発行日 2004年10月30日
Published Date 2004/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410100798
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傾向
眼圧は,毛様体の「房水産生量」と,隅角線維柱帯部での「房水流出抵抗」,および「上強膜静脈圧」によって決定される。白内障手術後の眼圧上昇はこれら3要素のいずれかに原因がある。通常,白内障手術は「房水産生量」や「上強膜静脈圧」には影響を与えないので,術後の眼圧上昇の要因は「房水流出抵抗」の増加にある。房水流出抵抗増加の原因の1つに,房水以外の物質が線維柱帯に流入することが挙げられる。代表的な物質とは粘弾性物質,血液,硝子体,炎症性物質などである。
粘弾性物質は前囊切開や眼内レンズ(IOL)挿入に欠かせない物質であるが,分子量が高く線維柱帯を通過しにくい。そのため,眼内レンズを挿入した後の前房中の粘弾性物質除去が不十分だと,術後の眼圧上昇の原因となる。また,術中に後囊を破損し眼内レンズを囊外に固定するときは,虹彩と水晶体囊の間に粘弾性物質を注入して囊外固定をしやすくするが,そのときに破損した後囊から硝子体中に粘弾性物質が混入することがある。この場合,眼内レンズを挿入した後の洗浄は硝子体を吸引しないよう通常よりも灌流圧を低くしたり,眼内レンズ下の吸引をしっかり行えなかったりするため,眼内に粘弾性物質が残存しやすい。術後の炎症が強いと,房水中の蛋白が増加し,高分子の蛋白が線維柱帯の房水の流出障害の要因となることがある。手術時間が1時間以上要した,あるいは超音波操作中に虹彩を一部破損した,術中に散瞳が不良になったため瞳孔の拡大操作を行ったなどの場合,術後の炎症が強くなり,眼圧上昇をきたすことがある。
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