臨床眼科 58巻10号 (2004年10月)

特集 第57回日本臨床眼科学会講演集 (8)

原著

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 屈折矯正手術を行い1年以上の経過が追跡できた180眼のうち,再屈折矯正手術を必要とした症例を検討した。再手術はPRK 55眼中6眼(11%),LASEK 26眼中1眼(4%),LASIK 99眼中18眼(18%)に行われた。再手術の時期の平均は,それぞれ10.8か月,7.0か月,5.0か月であった。PRKとLASIKでは当初矯正量が大きいこと,LASIKでは高年齢,PRKとLASEKではhazeが強いことが再手術の主原因であった。LASIKでは,術後早期のregressionが原因で,全例で術後1年以内に再手術を行った。PRKでは,術後6か月以降に徐々にregressionが生じ,半数では術後1年以降に再手術を行った。

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 72歳女性が17か月前に左眼,9か月前に右眼の白内障手術とハイドロジェル眼内レンズ(IOL)挿入術を受けた。右眼IOLが混濁し,視力が0.2に低下した。62歳男性が23か月前に右眼白内障手術とIOL挿入術を受けた。そのIOLが混濁し,視力が指数弁に低下した。両患者とも糖尿病があり,1人には心筋梗塞の既住があった。摘出したIOLをエネルギー分散X線分析(EDXA)とアリザリンレッド染色で検索した結果,石灰化が混濁の原因であった。

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 親水性アクリル眼内レンズのカルシウム(Ca)沈着の原因を知るために,11眼について前房水の組成を解析した。2例は糖尿病網膜症眼で,硝子体手術の既往があり,血液透析を受けており,眼内レンズ混濁で摘出が行われた。6例は糖尿病網膜症眼で,硝子体手術の既往があり,眼内レンズ挿入を受けていた。3例には糖尿病網膜症がなく眼内レンズ挿入のみが行われており,対照とした。これら11眼から前房水を採取し,Ca,リン(P),アルブミン濃度を測定した。これらの値は3群間に有意差がなかった。Ca×P値とアルブミン値はともに,糖尿病でない3眼よりも糖尿病網膜症がある8眼が高値を示した。糖尿病網膜症眼では,房水中のCa×P値とアルブミン値が高濃度であることが,眼内レンズ混濁に関係している可能性がある。

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 視神経乳頭の形状を緑内障患者50眼と正常者18眼で測定した。測定には光干渉断層計(OCT3000)を使い,自動解析で得られた測定値をハイデルベルク網膜断層計(HRT)による結果と比較検討した。乳頭面積はOCTによる値がHRTによる値よりも有意に大きかった(p<0.0001)。乳頭面積,陥凹面積,辺縁面積,陥凹/乳頭比は,両測定値間に有意な相関があった(p<0.0001)。OCT3000は,緑内障を含む視神経の形状測定に有用であることが示された。

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 Heidelberg Retina Tomograph(以下,HRT)および光干渉断層計(以下,OCT)を用い,健常眼での測定値,再現性に関して比較検討した。対象は健常者50名50眼で,年齢は19~42歳(25.1±4.6歳)。HRT,OCTの測定値は乳頭面積2.00±0.57mm2,2.44±0.43mm2,陥凹面積0.50±0.46mm2,0.60±0.43mm2,陥凹面積/乳頭面積比0.23±0.15,0.24±0.15,リム面積1.54±0.45mm2,1.91±0.43mm2,リム体積0.43±0.25mm3,0.68±0.53mm3であり,陥凹面積/乳頭面積比を除くパラメータでHRT測定値が有意に低値で,全パラメータで有意な相関があった。変動係数は,全パラメータでHRTのほうが有意に低値であったが,両者とも10%未満の良好な再現性を示した。

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 線維柱帯切除術後に濾過胞から房水漏出(bleb leak)が3眼に生じ,結膜移植を行った。1例は線維柱帯切除術2年後に房水漏出が生じ,有茎結膜弁で濾過胞を被覆した。術後に結膜縫合不全が起こり,再縫合を要した。1例は外傷で房水漏出が起こり,濾過胞を切除し有茎結膜弁移植を行った。他の1例は線維柱帯切除術27か月後に房水漏出が起こり,濾過胞の切除と結膜移植を行った。第2例と第3例では術後に短期間の結膜漏出があった。全例で房水漏出の再発はなく,眼圧の経過も良好であった。

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 涙道閉塞疾患でのブジー挿入に必要な深さと,鼻涙管開口部確認のための硬性鼻内視鏡の挿入長を,臨床例26側と遺体2側について検索した。内視鏡には直径2.7mm,視野角30°のものを用いた。涙点から開口部までの距離は29~40mmであり,開口部の観察には内視鏡を3cm,開口部到達には4cm挿入する必要があった。

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 妊娠第6週の34歳女性が左眼の眼痛と視力低下で受診した。矯正視力は右1.2,左0.15であり,左眼下方に視野欠損があった。Marcus Gunn瞳孔が左眼にあった。眼底に異常がなく,球後視神経炎などの視神経障害が疑われた。2週間後に眼痛が増強し,左眼視力が手動弁に低下した。画像診断で左蝶形骨縁内側部に腫瘍が発見された。摘出された腫瘍は微小囊胞型髄膜腫(microcystic meningioma)であった。左眼視力は術後17日目に0.8に改善し,眼痛と視野は軽快した。腫瘍はプロゲステロンレセプターが陽性,エストロゲンレセプターが陰性で,妊娠が腫瘍の増大に関与した可能性が推定された。妊娠中に球後視神経炎様の症状があるときには,髄膜腫を鑑別診断に加えるべきである。

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 20歳男性が5週間前からの両眼の羞明と視力低下で受診した。5年前にCrohn病と診断され,栄養剤などを服用し低脂肪低残さ性の食事をとっていた。矯正視力は右0.3,左0.5で,両眼に中心暗点があり,中心フリッカ値は測定不能であった。軽度の乳頭浮腫が両眼にあり,蛍光眼底造影で乳頭に軽い過蛍光があった。磁気共鳴画像検査(MRI)で頭部に異常はなかった。臨床所見と経過,Crohn病の既往などからビタミンB欠乏を含む栄養障害性視神経症が疑われた。ビタミンB12の内服と筋注を開始し,16日後に視力,視野が大幅に改善した。消化器疾患に続発した栄養障害性視神経症が,視力低下の原因であると推定された1例である。

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 眼窩内血腫の2例を経験した。1例は51歳女性で特発性であり,発症から12時間以内に眼球突出と眼圧上昇が起こり,血腫除去術で寛解した。他の1例は25歳女性で,落馬して頭部を打撲し,右眼に眼球突出が起こった。急性硬膜外血腫,脳挫傷,外傷性くも膜下血腫があり,血腫除去術が行われた。眼球突出の原因は眼窩内血腫であったが2週間後に自然寛解した。2症例とも骨膜下血腫であった。

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 18眼から角膜鉄粉異物を採取し,これに伴う錆輪を検索した。採取片はHE染色とPeal染色を施し光学顕微鏡で観察した。錆輪は,それが角膜表層,上皮層,基底膜,ボーマン層,実質のどの部位にあるかで異なる所見を示した。得られた所見は,筆者らが仮説として以前に提出した以下の電気化学理論と一致していた。すなわち,角膜鉄粉異物は涙液に包まれると通気差電池になる。電池のカソードに発生する水酸化ナトリウムは,角膜上皮層を円筒状に,基底膜を円板状に,ボーマン膜を逆凹円板状に溶かす。その後実質表層を円筒状に溶かし,溶解跡に水酸化鉄が沈殿して角膜錆輪ができる。角膜鉄粉異物がアルカリ腐食を経て錆輪となることが証明された。

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 黄斑前膜23眼に硝子体手術を行った。17眼は特発性,6眼は続発性であった。16眼では術中にインドシアニングリーン(ICG)で内境界膜を染色した。特発性群の12眼と続発性群の5眼で術後視力が向上した。術前と術後6か月目の視力の比較では,特発性群よりも続発性群での視力向上の程度が大きかった(p=0.013)。術翌日からの低眼圧と脈絡膜剝離がICG染色群の4眼(25%)に起こったが,ICG非使用例にはなかった。低眼圧と脈絡膜剝離は4眼すべてで1週間以内に自然寛解した。低眼圧が硝子体手術時のICG染色の副作用である可能性と,これに毛様体の房水産生能の低下が関係している可能性がある。

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 27歳女性が右眼の視力低下で受診した。既往として,8年前に左眼の視神経乳頭炎,4年前に左眼の硝子体出血があった。矯正視力は,右1.2,左0.9であった。右眼には格別の異常がなく,左眼周辺部に硝子体混濁と視神経萎縮があった。その6日後に左眼視力障害が突発し,手動弁になった。濃い硝子体出血があった。硝子体出血はその後自然寛解し,2か月後に眼底が透見可能になった。上耳側網膜血管が赤道部で硝子体側に牽引されていた。硝子体手術を行い網膜血管の牽引を解除した。以後3年間の経過は良好で,再出血は起こっていない。視神経炎に続発した網膜血管炎が硝子体網膜癒着の原因であると推定した。

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 27歳女性が前日からの左眼光視症で受診した。矯正視力は右1.5,左1.0であった。左眼の乳頭周囲に浮腫があり,その周囲に白点が若干個あった。蛍光眼底造影で乳頭周囲の脈絡膜に循環遅延があった。原田病を疑い,副腎皮質ステロイドのパルス療法を行った。その翌日に乳頭周囲の浮腫と白点が消失し,多発一過性白点症候群(MEWDS)と診断した。本症での盲点拡大の原因が脈絡膜循環障害である可能性がある。

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 緑内障6例8眼に手術を行い,術前1か月以内と手術3~19か月後に眼圧日内変動を検索した。内訳は原発開放隅角緑内障5眼,Rieger症候群2眼,ぶどう膜炎による続発緑内障1眼である。4眼に線維柱帯切開術,4眼にマイトマイシンC併用の線維柱帯切除術を行った。全例で術前に緑内障治療薬を使用し,術後は使用しなかった。術後では,眼圧が終日下降し,日内変動幅が少なくなった。線維柱帯切除術群のほうが切開術群よりも眼圧下降効果が大きく,日内変動幅が小さかった。線維柱帯切除術群で最高眼圧が特に下降したことが日内変動幅が小さくなる一因であった。線維柱帯切開術群では,切除術群よりも眼圧下降効果と日内変動幅が小さくならず,日内変動リズムが残っていることが推定された。

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 9歳男児が原発開放隅角緑内障として紹介され受診した。4年前に喘息発作時にステロイド薬の吸引を行い,2か月前までアトピー性皮膚炎に対し手指にステロイド軟膏を塗布していた。左眼の視野障害が進行し,初診の2か月後と4年後に線維柱帯切除術を行った。右眼視野は正常であったが,初診の3年後から眼圧が上昇し,30mmHgを超え視野障害が起こった。初診から4年間の右眼眼圧は,夏に低く冬に高い傾向を周期的に繰り返していた。月ごとの平均眼圧は,7月が16mmHg,1月が約24mmHgで,冬のほうが高値であった。治療内容に変更がない成人の原発開放隅角緑内障18眼では,夏よりも冬のほうが眼圧が有意に高値であり,平均眼圧の差は1.2mmHgであった。緑内障の治療では,眼圧の季節変動を念頭におく必要がある。

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 白内障手術と同時または単独で,緑内障に対して行ったT字切開の眼圧下降効果を検討した。20例30眼の緑内障を対象とした。内訳は,開放隅角緑内障21眼,囊性狭隅角緑内障7眼,外傷性緑内障2眼である。術後に眼圧コントロールができたもの,術前よりも点眼数が減ったものを生存と定義した。生存率,術前後の眼圧,濾過胞の有無,点眼数を検討した。術後6か月で平均5.4mmHgの眼圧下降があり,点眼数は平均1.5剤が減少した。濾過胞は7眼に生じた。生存率は術後3か月で83.3%,6か月で76.7%であった。眼圧下降不良のため,3眼に再手術を行った。以上のことからT字切開を併用する白内障手術は,低侵襲であり,眼圧下降が期待できる。本法は緑内障がある白内障眼への手術で積極的に行ってよいと評価される。

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 50歳男性が5年前からの左眼視力低下で受診した。患者は中国黒龍江省に住み,屠殺業に従事していた。矯正視力は右1.2,左光覚弁であった。左眼には虹彩後癒着と白内障があり,眼底は透見不能であった。超音波検査で水晶体の後方に反射が強い腫瘤があった。血液検査で好酸球が7.4%と高く,寄生虫への抗体価が上昇していた。CT検査で左前頭葉に径15mmの囊胞性腫瘤があり,硝子体内と頭蓋内の寄生虫感染が疑われた。硝子体手術と白内障手術で摘出した腫瘤は,組織学的に眼球内有鉤囊虫症であった。その後,条虫に有効なプラジカンテルの内服を行い頭蓋内腫瘤は消失した。眼底が透見可能になったが,網膜が存在せず,最終視力はゼロであった。有鉤囊虫(Cysticercus cellulosae)は有鉤条虫の幼虫である。囊尾虫を含む豚肉を生で食べると人体に入って増殖し,人畜共通感染症が発症する。本症に対する診断と治療が奏効した1例である。

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 シリコーンオイルタンポナーデを行い120日以内に抜去した42眼での合併症を検索した。内訳は黄斑円孔23眼,裂孔原性網膜剝離12眼,糖尿病網膜症5眼,穿孔性眼外傷2眼である。術後合併症は,一過性眼圧上昇20眼,術後虹彩後癒着9眼,角膜内皮細胞密度減少7眼,後発白内障6眼,シリコーンオイル下膜増殖5眼,シリコーンオイル油滴の眼内レンズ付着5眼,視野異常3眼であった。後発白内障1眼を除き,視力が術前よりも悪化したものはなかった。さらに,術後視力を大きく障害する重篤な合併症もなかった。前房隔壁がない症例では角膜内皮障害が高率に生じた。眼内レンズまたは後囊による前房隔壁を温存することの重要性が示された。

連載 今月の話題

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 はじめに

 網膜静脈閉塞症に対して従来から行われてきた血栓溶解薬の全身投与や新生血管緑内障などの予防措置としてのレーザー光凝固,黄斑浮腫に対する格子状光凝固は,いずれをとっても視力改善効果に乏しく,ここ数年新しい治療の試みがなされている。網膜静脈分枝閉塞症に対する動静脈交叉部さや切開術,網膜中心静脈閉塞症に対する放射状視神経切開術や組織プラスミノゲンアクチベータ注入による血栓溶解手術などである。ここではこれらの新しい治療法を紹介し,問題点や今後の展望について見解を述べたい。

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 X染色体劣性網膜色素変性(X-linked retinitis pigmentosa:XLRP)は,進行性の網膜変性をきたす疾患で,夜盲,重症な視力低下,視野狭窄(輪状暗点,求心性狭窄)を主症状とする。欧米ではXLRP患者は網膜色素変性患者の約11~33%といわれているが1),日本人では約2~3% と報告され,海外に比べ低頻度である。

 XLRPは,連鎖解析によりその局在が5か所(RP2,RP3,RP6,RP23,RP24)にマッピングされ2,3),1996年,2つのグループよりRPGR(retinitis pigmentosa GTPase regulator)遺伝子がRP3の原因遺伝子として同定された1,4)。その後1998年にRP2遺伝子がRP2 regionの原因遺伝子と報告され,現在までに2種類の原因遺伝子が報告されている。さらに1998年,RPGR遺伝子異常がX染色体劣性錐体ジストロフィ(COD1)の表現型もきたすことが報告された5)

連載 日常みる角膜疾患19

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 症 例

 患者:13歳,男性

 主訴:視力低下

 現病歴:1年前,学校健診での視力検査にて両眼の視力低下を指摘され,近医を受診し,右眼の円錐角膜を疑われ,精査・加療目的で当科外来を受診した。

 既往歴:喘息

 家族歴:特記すべきことはない。

 初診時所見:視力は右0.2(0.6×S+0.50D()cyl-5.00D Ax180°),左0.3(0.9×S+0.50D()cyl-1.50D Ax180°)で,眼圧は右8mmHg,左11mmHg(非接触型眼圧計)であった。オートレフラクト・ケラトメータによる他覚的屈折値および角膜曲率半径測定では,両眼に高度の直乱視がみられた(表1,2)。細隙灯顕微鏡検査において両眼の角膜中央部に突出がみられたが,角膜混濁,フライシャー環およびVogt's striaeなどはみられなかった。中間透光体,眼底には異常はなかった。Photokeratoscope(PKS)(R)では両眼の角膜中央部からやや下方を頂点としたプラチドリングの狭細化を認め(図1),TMS-2N(R)のKeratoconus Screening(Klyce/Maeda)の値は右眼55.7%,左眼25.4%で(図2),両眼の円錐角膜と診断された。

 治療・経過:眼鏡による視力補正で日常生活に不自由のない矯正視力が得られたため,眼鏡処方にて経過を観察していたが,最近,眼鏡による矯正視力の低下を自覚したため当科を再診した。再診時の矯正視力は右0.15(0.4p×S+1.25D()cyl-2.5D Ax60°),左0.3(0.9×S+0.50D()cyl-1.50D Ax180°)で,表3,4に再診時のオートレフラクト・ケラトメータによる他覚的屈折値および角膜曲率半径を示す。角膜形状解析は,左眼は初診時とほぼ同程度の角膜の突出であったが,右眼は角膜中央部下方の突出が進行していた(図3)。両眼ともレンズ交換法による矯正視力が不十分であったことから,ハードコンタクトレンズ(以下,HCL)の適応と診断し,HCLを処方した。HCLのフィッティングは,右眼は2点接触,左眼は3点接触(図4)で,センタリングや瞬目に伴うレンズの動きも十分で涙液交換も良好であった。自覚的にも異物感や眼痛などはみられず,HCL装用下での矯正視力は右(1.2×HCL),左(1.2×HCL)であった。

連載 緑内障手術手技・16

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 セッティング

 風間法は流出路手術と考えられており,濾過胞をつくらない手術であるためアプローチは上下どこからでもよい。したがって,ベッド,顕微鏡のセットや制御糸の掛け方もトラベクロトミーの場合と同様に考えればよい。ただ,風間法は白内障手術との同時手術を基本としているため,同時手術を行うこととしてセッティングを考える。同時手術の場合,白内障手術を同一創とするか別創にするかに分かれるが,原法では同一創としているため,ここでは同一創としての術式を説明する。

 ベッド・顕微鏡,制御糸

 同一創によるトラベクロトミーの同時手術の場合と同様に考えてよく,顔の傾きは額を高く,制御糸は上直筋付着部に掛ける。切開部位の強膜が水平になるように眼球の傾きを調節する。

連載 あのころ あのとき45

クリスマスツリー白内障 河本 道次
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 はじめに

 日常の白内障の診療で水晶体内に多彩な色調を呈する,光った結晶様物質を観察することがある(図1)。加齢白内障の初期にみられる,このクリスマスツリー白内障の呈色は色素によるものではなく,いわゆる構造色である。

 これを解明するために本学(東邦大学)理学部生物分子科学科の故藤井良三教授のご協力をいただいた。研究の詳細については教室の小早川信一郎先生が「有色白内障における呈色原因の検討」と題して1991年の日本眼科学会総会で発表し,1992年の刊行論文に掲載されているので参照されたい1,2)

連載 他科との連携

リンパ腫をめぐって 安積 淳
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 このところリンパ腫に「はまって」いる。もともと免疫だのリンパ球だのといったことに興味があったのだが,診断・治療を通じてさまざまな科の先生から刺激を受ける機会が多いことも大きな理由の1つだ。リンパ腫にかかわる他科との連携を思いつくままに書き落としてみる。

 リンパ腫ですか? ― 病理医との連携

 少し前まで,MALTリンパ腫という診断は悩みの種だった。ほとんどの場合,放射線照射が有効なのだが,ちっとも効かないケースもあるのだ。プレドニン内服に変更すると,涙腺の腫瘤はたちどころに消退するではないか。これってほんとにリンパ腫なの? 免疫グロブリン遺伝子再構成は陰性と出ている。「先生,これって反応性リンパ過形成じゃないでしょうか?」「うーん」。その後,病理医からは次のような回答が返ってくることが多くなった。「反応性リンパ過形成(MALTリンパ腫)と考える。しかし,MALTリンパ腫(反応性リンパ過形成)との鑑別には遺伝子再構成やフローサイトメトリーの結果を合わせて判断すべきである。」この回答を病理医の優柔不断と捉えるのは正しくない。眼窩に発生するリンパ増殖性病変の診断は,それを専門としない病理医にとってけしてやさしい仕事じゃないのだ。臨床屋として嬉しいのは,病理医が遺伝子再構成の結果や治療経過を病理診断にフィードバックしてくれている姿勢だ。眼科医は重要情報の発信源とみなされているのだ。逆に,「患者さんのその後についての連絡がない」と別の病理の先生から厳しくお叱りを受けたことがある。「へへーっ」と病理診断頂戴,というだけでは病理医とのいい連携なんてありえないのだ。

実践報告―私の工夫

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 われわれが従来から行ってきた,主訴や症状,所見,説明,計画などを記載する診療録では,医学的問題(M:medical problem)のみの解決に終わりやすい。最も有効な治療を行っても,それが必ずしも患者の求めるものとは限らず,納得と同意を得た医療になり得るとは限らない。当院では,医学的問題に加えて心理的(P:psychological problem)および社会的(S:social problem)問題を記録することで,患者の抱える問題の背景についても理解するように努め,患者のケアに役立てている。多忙な外来診療においても,電子カルテを使用することで,このような問題志向型カルテ記載法(problem oriented medical record:POMR)を実践することができると考えている。パソコンを用いて記録しているので,多くの情報を読みやすい文字で記録でき,過去の診療内容も説明しやすい。疾患のみならず,患者自身をより深く理解することができると考えた。しかしながら,これを実践するには訓練が必要である。外来診療においても,電子カルテを使用することで長期的なPOMRが可能となり,患者との相互理解が深まった。その結果,症状に診断をつけ,治療を行う医療から,患者のケアの一環として治療を行う医療への意識改革がなされた。

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 流涙症患者に対し鼻涙管チューブなどを挿入して,鼻涙管の鼻内開口部のチューブ先端を確認した。鼻内視鏡を用いて開口部を確認するためには,①上涙点から涙囊鼻側壁までの距離の平均値(14mm)を考慮した正確なプロービング,② 内視鏡検査前に血管収縮薬や希釈ボスミンを使用して確実に鼻粘膜の止血と収縮を行い,下鼻道の立体的な角度を把握すること,③ 外径2.7mmと4.0mmの内視鏡を用いて外鼻孔から鼻涙管開口部までの平均距離(27~43mm,平均34mm)を考慮して観察し,鼻内の全体像と涙道の3次元的な位置関係を把握することなどが重要と考えられた。

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 80歳女性が2か月前からの急激に進行する両眼の視力低下で受診した。高血圧があり,5年前に無症候性胆囊結石と慢性膵臓炎が指摘されている。視力は右手動弁,左0.15であった。両眼とも,網膜が粗そうで血管が狭細化し,血管アーケード付近に色素沈着があった。蛍光眼底造影で網膜血管の透過性亢進があった。両眼に輪状暗点があり,右眼には中心暗点があった。網膜電図は消失型であった。全身検査で胆囊癌が発見された。総肝管,総胆管,門脈,肝動脈などへの浸潤があり,手術の適応なしと判断された。患者血清のWestern blotによる免疫学的検討で,27 kDaの網膜抗原が同定され,癌関連網膜症(cancer-associated retinopathy:CAR)の診断が確定した。網膜症に対しては治療を行わず,初診から約4か月後に逝去した。

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 31歳女性が右眼の視力低下で受診した。3年前に転倒し,後頭部を打撲して脳振盪と診断された。矯正視力は右0.2,左1.5であった。右眼底に黄斑前膜と,これによる乳頭牽引と血管の蛇行があった。蛍光眼底造影で乳頭の上方に色素漏出があった。左眼は正常であった。右眼に硝子体手術を行い黄斑前膜を剝離,除去した。6か月後の蛍光眼底造影で色素漏出はなく,右眼視力は0.9に改善した。以後3年後の現在まで黄斑前膜の再発はない。

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 上眼瞼の基底細胞癌4例とマイボーム腺癌1例に腫瘍切除術を行い,その後の欠損部の修復に局所皮弁を使用した。いずれも70歳以上の高齢者であった。欠損部の大きさ,部位,形態などにより,伸展皮弁か島状皮弁を選択し,整容的,機能的に良好な結果が得られた。

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 27歳女性が視力低下と羞明で受診した。14歳の頃から両眼の羞明と色の判別困難があった。家族内に同様の疾患はなく,両親の血族関係もない。前医では,通常の白色閃光全視野刺激による暗順応網膜電図(ERG)で異常がなく,中心暗点があることから,occult macular dystrophyが疑われていた。矯正視力は左右とも0.1であり,眼底ならびに蛍光眼底造影で異常所見はなかった。改めて全視野刺激による暗順応網膜電図を検査した。杆体系反応と杆体・錐体混合反応は正常であったが,錐体系反応は消失していた。Occult macular dystrophyでは錐体系反応が正常で,黄斑部局所または多局所網膜電図のみが異常を示すことから,本症例がcone dystrophyであると診断した。

基本情報

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臨床眼科
58巻10号 (2004年10月)
電子版ISSN:1882-1308 印刷版ISSN:0370-5579 医学書院

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